- 更新日 : 2025年2月21日
個人事業主の住宅ローン経費まとめ!勘定科目や仕訳、確定申告を解説
個人事業主やフリーランスの自宅兼事務所の住宅ローンは、一部を経費にできます。
住宅ローンは長期間に渡るため、確定申告の際には必ず控除を受けておきたいポイントです。
本記事ではどの部分が経費にできるのか、また勘定科目や仕訳例、確定申告での記入方法まで、わかりやすく解説します。
目次
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個人事業主の住宅ローンは経費にできる?
住宅ローンは一般的に長期間に渡るローンのため、経費にできると所得税をかなり抑えられるでしょう。
ただし、住宅ローンは経費にできる部分とできない部分があるため、申告は慎重におこなう必要があります。詳しく見ていきましょう。
住宅ローンで経費にできる部分
経費にできるのは、以下のようなものです。
- 住宅ローン返済の利息
- 減価償却費
- 火災保険料
- 地震保険料
住宅ローンの元金そのものは経費にできませんが、返済する際にかかった利息の部分は経費にできます。また減価償却費についても、毎年建物に発生する費用として計上が可能です。
家を自宅兼事務所として使っている場合、火災保険料や地震保険料、住宅ローンの利息など、住宅に関わるものを経費にするにはすべて家事按分が必要になります。
住宅ローンで経費にできない部分
住宅ローンの元金の部分に関しては経費にすることができません。
理由としては、住宅ローンは借りたものを返しているだけであって、事業の損益とは関係ないとみなされるためです。事業の継続に関係のある、建物の維持にかかる費用や、火災保険料などは経費にすることができます。
店舗兼住宅の利息は家事按分が必要
事務所や店舗を兼住宅として使用している場合、経費にできるのは事業に必要と判断される部分のみです。
事業用の費用なのか、家庭用の費用なのか区別する手続きを「家事按分」といいます。
住宅ではこの範囲を主に床面積や使用時間で判断します。
たとえば住宅のうち、事業で使用する面積の割合が20%であれば、利息のうち20%は経費にできるという考え方です。
経費にするのは単に面積だけでなく使用時間等も踏まえて、事業のために使用しているという合理的な説明ができる範囲のみにとどめましょう。
自宅兼事務所の減価償却費を経費にする考え方
資産は長期に渡って使用するため、年々古くなり価値が減っていきます。よって、これを帳簿上で表すためには、取得した費用を耐用年数に応じて分割して計上することが必要です。
この分割した費用を「減価償却費」といいます。
住宅と土地を一緒に購入している場合、減価償却費用として扱えるのは建物の購入代のみで、土地代は減価償却できません。なぜなら、土地は古くならないので価値が減らないとみなされるからです。
自宅兼事務所の減価償却費を計算する際には、この建物部分に絞って経費を計算することになります。住宅を自宅兼事務所として使用している場合、経費にできるのは事業に使用している部分のみですので、気を付けましょう。
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個人事業主の店舗兼住宅の住宅ローン控除はどこまで?
自宅と事務所を兼用で使っている個人事業主でも、一定の条件を満たせば住宅ローンの控除を受けて所得税を抑えることができます。詳しく見てみましょう。
住宅ローン控除とは?受けられる条件
住宅ローン控除は正式名称を「住宅借入金等特別控除」といい、ローンを使って住宅を建てた、または増改築した人が所得税や住民税の軽減を受けられる制度のことです。
住宅ローン控除を受けるための条件はいくつかあり、以下のすべてを満たす必要があります。
- 住宅の新築等の日から6ヶ月以内に居住の用に供していること。
- この特別控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住の用に供していること。
- 住居要件において以下に該当すること。
特例居住用家屋または特例認定住宅等 | 床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満であり、床面積の2分の1以上を自己の居住に使用していること。 特別控除を受ける年の合計所得金額が、1,000万円以下であること。 |
---|---|
上記以外の住宅 | 床面積50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上を自己の居住の用に使用していること。 特別控除を受ける年の合計所得金額が、2,000万円以下であること。 |
- 住宅ローンの返済が10年以上あること。
- 2つ以上の住宅を所有している場合は、主に居住していると認められる住宅であること。
- 居住した年及び、その前2年の合計3年間において譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと。
- 居住した年の翌年以後3年以内に居住した住宅以外の一定の資産を譲渡し、当該譲渡について譲渡所得の課税の特例を受けていないこと。
- 住宅の取得等が生計を一にする親族や特別な関係のある者からのものでないこと。
- 贈与による住宅の取得でないこと。
参考:No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)
注意点として、住宅ローン控除が適用されるのは自宅部分のみです。つまり、事業用に使っている部分の経費と重複して控除はできないということです。また、事業用として使用している割合が50%を超える場合も住宅ローン控除の対象外となります。
反対に、事業用に使っている住居の割合が10%以下しかない場合は、住居のすべての部分を自宅に使っているものとして住宅ローン控除の計算をしてもよいということになっています(租税特別措置法関係通達41-29)。
個人事業主の賃貸物件の場合、家賃は経費にできる?
個人事業主が賃貸物件をオフィスや仕事場にしている場合でも、事業に使っている部分であれば経費として計上が可能です。例として、以下のような費用があります。
経費にできる額は、家事按分の考え方で計算しましょう。たとえば家賃を面積と稼働時間で按分する場合です。
月額5万円の家賃で、賃貸物件の総面積30畳のうち10畳のリビングで仕事をしており、作業している時間が1日8時間、週5日とすると次のような計算式になります。
- 面積割合 10畳÷30畳=0.33…(約33%)
- 仕事に使っている時間 8(時間)×5(日)=40(時間)
- 総時間 24(時間)×7(日)=168(時間)
- 時間割合 40÷168=0.23…(約24%)
- 家事按分率 0.33…×0.23…=0.079…(約8%)
- 経費にできる家賃 5万円×8%=4,000円
家賃の5万円のうち、4,000円を経費として算出できる計算になりました。
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個人事業主が経費で計上する際に必要なもの
個人事業主が確定申告のために保存しておくべき書類を確認しておきましょう。証明できるものがなければ実際に事業に使っている費用でも、確定申告ができないためです。経費の確定申告に使える資料や書類は、次のようなものがあります。
領収書がない電車や新幹線代などでも、仕事のために使ったことが明確に説明できる費用であれば、利用履歴を印刷したり、出金伝票に記載したりしておけば確定申告の際の証明書類にできます。
また、新しく改正された電子帳簿保存法により、インターネットで取引した際にネット上で発行された記録書類(ネットショッピングで購入した際の領収書など)は、電子データで保管しなければならなくなりました。必要ないと思って消してしまわないように気を付けましょう。
個人事業主が住宅ローンで用いる勘定科目と仕訳例
住宅ローンは元本と利息は扱いが異なるため、別々の項目を使う必要があります。帳簿に記載する場合の勘定科目や例を確認しておきましょう。
住宅ローンを組んだ場合
住宅ローンは長期の借入金のため「長期借入金」の勘定科目を使いましょう。仕訳例としては、以下のようになります。
(例)住宅ローンとして5,000万円借りたときの仕訳
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 5,000万円 | 長期借入金 | 5,000万円 |
住宅ローンの利息を計上する場合
住宅ローンの利息には「支払利息」を使います。事業とプライベート兼用で住宅を使っている場合は、勘定の混同を避けるため事業用の費用を表す「事業主」勘定が必要です。
(例)住宅ローンの利息の支払いで月5万円、そのうち事業用に使っている割合が11,500円の場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払利息 | 38,500円 | 普通預金 | 50,000円 |
事業主貸 | 11,500円 |
資金を借り入れた場合
資金の借り入れが長期か短期かによって仕訳の項目が異なります。1年以上の長期の借り入れの場合は「長期借入金」を使いましょう。
(例)銀行から300万円の融資を受け、返済期間が3年の場合(1年間元本据え置き)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 300万円 | 長期借入金 | 300万円 |
返済期間が1年以内の場合は、「短期借入金」の勘定科目を使います。
(例)銀行から100万円の融資を受け、返済期間が1年の場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 100万円 | 短期借入金 | 100万円 |
確定申告で住宅ローンの経費を記入する項目
住宅ローンで事業に使っている割合が計算できたら、確定申告の時期に申告しましょう。借入れ初年度の住宅ローンの控除申告には、以下の書類の準備が必要です。
- 確定申告書
- 本人確認書類の写し
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 建物・土地の登記事項証明書
- 建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し
- 住宅ローンの年末残高等証明書
建物が新築か中古か、また増改築なのかによっては上記以外の書類も必要になりますが、これらは共通して必要になる書類ですので、忘れずに用意しておきましょう。
確定申告書への記入方法は、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
住宅ローン控除とは?確定申告の必要書類、ふるさと納税の併用方法も解説
個人事業主の住宅ローンは経費にできる部分がある
個人事業主にとって、自宅兼事務所の住宅ローンは適切に経費に計上することで節税効果が期待できます。しかし、家事按分や減価償却費など、複雑な計算が必要となる場合もあります。
「申告が不安だけど、確定申告で抑えられる税金はしっかり抑えたい」という方は会計ソフトを利用するか、税理士に相談するのもよいでしょう。
マネーフォワードでは、動画でも確定申告について解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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