- 更新日 : 2025年8月29日
フリーランスは産休がない?給付金や支援、保育園の利用について解説
フリーランスには、会社員のように法律で定められた産休・育休制度はありません。しかし、だからといって何の支援も受けられないわけではありません。フリーランスや個人事業主であっても、出産や育児の際に利用できる公的な給付金や支援制度があります。
この記事では、フリーランスが産休を取得する際に受け取れるお金の種類、必要な手続き、そして育児と仕事を両立させるための具体的な方法について、わかりやすく解説します。
目次
フリーランスに会社員のような産休・育休制度はない
原則としてフリーランスには、労働基準法や育児・介護休業法による産前・産後休業(産休)や育児休業(育休)の制度は適用されません。まずは、会社員との違いを理解し、フリーランスが利用できる公的支援の全体像を把握しましょう。
会社員の産休・育休との違い
会社員の場合、労働基準法にもとづき、出産予定日の6週間以前(多胎妊娠の場合は14週間前)から出産後8週間まで「産前・産後休業」を取得できます。さらに、育児・介護休業法にもとづき、子どもが原則1歳になるまで「育児休業」を取得することも可能です。
休業中の所得を補うために、健康保険から「出産手当金」が、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。これらの制度は、会社に雇用されている人が対象となるため、フリーランスや個人事業主は対象外となります。これが、フリーランスには産休・育休がないといわれる一番の理由です。
フリーランスが利用できる公的支援一覧
会社員向けの制度は利用できませんが、フリーランスでも国民健康保険や国民年金、地方自治体などが提供する支援を受けられます。主な支援は以下のとおりです。
支援制度の名称 | 概要 |
---|---|
出産育児一時金 | 健康保険の加入者が出産した際に、子ども1人につき原則50万円が支給される制度。出産費用の負担を軽減します。 |
出産・子育て応援交付金 | 妊娠届・出生届の提出時に、お住まいの自治体から合計10万円相当の経済的支援(現金やクーポンなど)が受けられる制度です。 |
児童手当 | 中学校卒業までの子どもを養育する家庭に、子どもの年齢や所得に応じて月額10,000円または15,000円が支給される手当です。 |
国民年金保険料の免除 | フリーランスなどの国民年金第1号被保険者が、産前産後期間(4か月間など)の保険料納付を免除される制度です。 |
国民健康保険料(税)の減免 | 産前産後期間の国民健康保険料(税)が減額される制度です(2024年1月から開始)。市区町村への届出が必要です。 |
これらの支援をうまく活用することで、産休中の経済的な負担を軽くできます。次の章から、それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
フリーランスが産休で受け取れるお金の種類
産休中は収入が途絶えることも多く、経済的な不安を感じるかもしれません。しかし、フリーランスでも申請すれば受け取れる給付金や手当があります。ここでは、出産・育児にともなって支給される3つのお金について解説します。
全国民が対象の「出産育児一時金」
出産育児一時金は、健康保険に加入している人が出産した際に、子ども1人につき一定額が支給される制度です。多くのフリーランスが加入しているとされる国民健康保険からも支給されます。2023年4月の出産から支給額が原則50万円に引き上げられ、出産費用の大きな支えとなるでしょう。
申請方法は、医療機関が本人に代わって申請する「直接支払制度」を利用するのが一般的です。この制度を使えば、退院時に出産費用から50万円を差し引いた額だけを支払えばよいため、まとまったお金を事前に用意する負担が減ります。
自治体が独自に行う「出産・子育て応援交付金」
出産・子育て応援交付金は、妊娠期から出産・子育てまでを継続的に支援するための制度で、多くの自治体で実施されています。妊娠届の提出時と出生届の提出時の2回にわたり、合計10万円相当(現金やクーポンなど自治体による)の経済的支援を受けられるのが特徴です。
この制度は、お住まいの市区町村が主体となって行っているため、申請方法や支給内容が異なります。妊娠がわかったら、まずは市区町村の窓口やウェブサイトで詳細を確認することをおすすめします。
出典:妊産婦への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施(妊婦等包括相談支援事業・妊婦のための支援給付)|こども家庭庁
中学生までの子どもが対象の「児童手当」
児童手当は、高校生年代まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもを養育している人に支給される手当です。子どもの年齢や人数、養育者の所得に応じて支給額が変わります。
- 3歳未満:一律15,000円(第3子以降は30,000円)
- 3歳以上 高校生年代まで:10,000円(第3子以降は30,000円)
出生日の翌日から15日以内に、お住まいの市区町村へ「認定請求書」を提出して申請します。申請が遅れると、受け取れるはずだった月分の手当がもらえなくなることもあるため、忘れずに手続きを行いましょう。
フリーランスが産休で利用できる保険料や税の支援制度
収入が減る産休中は、給付金を受け取るだけでなく、社会保険料や税金といった支出を抑えることも大切です。フリーランスが利用できる免除・減免制度や、確定申告のポイントについて解説します。
国民年金保険料の産前産後期間の免除制度
フリーランスや個人事業主が加入する国民年金には、産前産後期間の保険料が免除される制度があります。免除された期間も、保険料を納付したものとして将来の年金額に反映されるため、デメリットはありません。
対象となる期間は、出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間です。たとえば、8月が出産予定月の場合、7月から10月までの4か月分の国民年金保険料が免除されます。
多胎妊娠の場合は、出産予定月の3か月前から6か月間が免除対象です。この制度を利用するには、お住まいの市区町村の年金担当窓口への届出が必要です。
国民健康保険料(税)の減免制度
2024年1月から、国民健康保険に加入しているフリーランスも、産前産後期間の国民健康保険料(税)が減免されるようになりました。
国民年金と同様に、出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間(多胎妊娠の場合は3か月前から6か月間)の所得割保険料と均等割保険料が減免の対象です。
この期間に相当する保険料が、年間の保険料から差し引かれます。こちらも自動的に適用されるわけではなく、市区町村への届出が必要になるため、忘れずに申請しましょう。
フリーランス(個人事業主)が産休中の確定申告で注意すべき点
産休中であっても、その年に事業所得があれば確定申告は必要です。産休中は収入が減る一方で、経費の判断が通常時と異なる場合があるため、注意点をしっかりおさえておきましょう。
経費にできるもの・できないものの判断
経費として認められるのは、あくまで「事業を継続するためにかかった費用」です。出産や育児に直接かかる費用は、事業とは関係のない「家事費」とみなされ、経費にはなりません。
- 出産のための入院・分娩費用
- ベビー服やおむつ、ミルクなどのベビー用品代
- 子どものための検診費用や医療費
給付金や手当の扱いは非課税
出産育児一時金や出産・子育て応援交付金、児童手当などの公的な給付金は、所得税法上「非課税所得」と定められています。そのため、確定申告の際に事業所得や雑所得として収入に計上する必要はありません。これらの給付金を受け取っても、所得税や住民税が増えることはないのです。
所得の減少が翌年度に与える影響
産休によって年間の所得が減少すると、その年の所得税や住民税の負担が軽くなります。さらに、翌年度の国民健康保険料や保育料の算定にも影響します。これらの保険料は前年の所得をもとに計算されるため、産休をとった翌年は、これらの負担も軽減される可能性があることを覚えておくとよいでしょう。
フリーランスの産休と保育園の利用について
フリーランスにとって、産後の仕事復帰を見すえた保育園の確保は大きな課題のひとつです。ここでは、保育園の入園選考の仕組みや、フリーランスが注意すべき点について解説します。
保育園の点数制の仕組み
認可保育園の入園選考は、保護者の就労状況などを点数化し、合計点数が高い世帯から優先的に入園が決まる「点数制」が一般的です。フリーランスの場合、「自営業」や「居宅内労働」といった区分で点数が付けられます。
会社員と比べて点数が低く設定されている自治体もあるため、不利になるのではないかと心配する声も聞かれます。しかし、開業届や青色申告承認申請書、確定申告書の控えなどを提出することで、就労状況を客観的に証明できます。
自身の就労状況をきちんと示すことが、入園の可能性を高めることにつながるでしょう。
産休中の保育園利用の可否と注意点
すでに上の子が保育園に通っている場合、下の子の産休中にそのまま通わせ続けられるかどうかは、自治体の判断によります。会社員の「育児休業」と同様の扱いとなり、保育の必要性が低いと判断されて退園を求められたり、保育時間が短縮されたりするケースもあるようです。
フリーランスには法律上の「育児休業」がないため、産後も事業を継続しているとみなされれば、退園を免れることもあります。これも自治体によって対応が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
保育園の申し込みはいつから準備する?
保育園の申し込みは、入園を希望する前年の秋ごろから始まるのが一般的です。とくに4月入園を目指す場合は、スケジュールがタイトになることも少なくありません。
妊娠中から、お住まいの自治体の保育園情報を集め、見学に行くなど、早めに準備を始めましょう。申し込みに必要な書類も多岐にわたるため、余裕をもって準備を進めることをおすすめします。
フリーランスの産休はいつからいつまで休む?
法律で産休期間が定められていないフリーランスは、いつからいつまで休むのかを自分で決めなければなりません。スムーズに産休に入り、安心して復帰するために、計画的な準備を進めましょう。
フリーランスの復帰のタイミング
フリーランスの産休期間に決まりはありません。自身の体調や仕事の状況、家庭の経済状況などをふまえて、柔軟に設定できます。一般的には、会社員の産休期間である「産前6週・産後8週」を目安にする人が多いようです。産後8週間は、母体の回復に専念すべき大切な時期とされています。
復帰のタイミングも人それぞれです。産後2~3か月で少しずつ仕事を再開する人もいれば、子どもが1歳になる頃まで休む人もいます。無理のない範囲で、少しずつ仕事のペースを戻していくのがよいでしょう。
少し前の調査データですが、フリーランス協会が2017年に行った調査では、出産を経験したフリーランス女性の約59%が産後2ヶ月以内に、約45%が産後1ヶ月以内に仕事へ復帰しているという結果が出ています。
これは、会社員のような休業中の所得補償がないため、経済的な理由から早期に復帰せざるを得ない実情を反映していると言えるでしょう。
出典:【プレスリリース】フリーランスと経営者の妊娠・出産・子育てに関する緊急アンケート調査|フリーランス協会
取引先への報告と仕事の調整
妊娠がわかり、体調が安定してきたら、取引先へ報告と相談を始めましょう。遅くとも産休に入る2~3か月前には伝えるのが望ましいです。報告する際は、以下の点を明確に伝えます。
- 休業予定期間
- 復帰予定時期
- 休業中の連絡方法や緊急時の対応
- 引き継ぎに関する事項
誠実な対応は、取引先との信頼関係を維持し、スムーズな仕事復帰につながります。早めに相談することで、代替案を一緒に考えてもらえるかもしれません。
収入シミュレーションと資金計画
産休中の収入減は、フリーランスにとって最も大きな不安のひとつではないでしょうか。この不安を解消するためには、事前の資金計画が欠かせません。
まず、出産育児一時金などの給付金で、いくら収入があるのかを把握します。次に出産費用やベビー用品代、生活費などの支出を洗い出します。
収入と支出を比較し、不足する金額がどれくらいになるかシミュレーションしてみましょう。不足分を補うために、妊娠中から計画的に貯蓄を進めておくことが大切です。
男性フリーランスが育児に参加するためにできること
パートナーが出産する男性フリーランスも、育児へ積極的に参加することが大切です。会社員のように育児休業制度はありませんが、スケジュールを自分で調整しやすいという強みがあります。
たとえば、パートナーの産後の入院中や体調がすぐれない時期に、仕事量をセーブして家事や上の子の世話に専念するといった対応ができます。夫婦で協力し、どのように育児や家事を分担するのかを事前に話し合っておくことで、産後の大変な時期を乗り越えやすくなるでしょう。
フリーランスが産休・育児と仕事を両立させるために
フリーランスには、会社員のような法律で定められた産休・育休制度や、休業中の所得を保障する給付金はありません。しかし、本記事で解説したとおり、出産育児一時金や国民年金保険料の免除など、活用できる公的な支援は複数あります。
これらの制度を漏れなく利用するためには、妊娠がわかった段階で情報を集め、計画的に準備を進めることが必要です。事前に受けられる支援を把握し、取引先への報告や資金計画を立てておくことで、安心して出産と育児に臨めるようになります。
早めの情報収集と計画的な準備が、産休・育児と仕事の両立を成功させるカギとなるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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