- 作成日 : 2026年4月15日
ベースアップとは?定期昇給との違い・実施方法・相場を解説
ベースアップは基本給の基準(賃金テーブル)を引き上げる賃上げ、定期昇給は制度に基づき個人の給与が毎年上がる昇給です。
- ベースアップ:基本給全体を底上げ
- 定期昇給:勤続・評価で昇給
- 両方同時に実施されることもある
ベースアップは必ずしも全社員が対象ではなく、企業が対象範囲を決めます。
ベースアップと定期昇給は、どちらも給与が上がる仕組みですが、意味や仕組みは異なります。ベースアップは賃金テーブルそのものを引き上げる賃上げであり、定期昇給は勤続年数や評価に応じて個人の給与が上がる制度です。
本記事では、ベースアップの基本的な意味から定期昇給との違い、対象となる社員や種類などを解説します。
目次
ベースアップとは?定期昇給との違いは?
ベースアップとは、企業が基本給の水準そのものを引き上げる賃金改定のことです。定期昇給が個人の評価や勤続年数に応じて給与が上がる仕組みであるのに対し、ベースアップは賃金テーブル自体を引き上げる点に特徴があります。
ベースアップは賃金テーブルの水準を引き上げる賃金改定
ベースアップとは、企業が定めている賃金テーブルを改定し、基本給の水準を全体的に引き上げる賃金改定の方法です。社員個人の評価や勤続年数によって給与が上がる制度とは異なり、給与の基準となる金額そのものを底上げする点が特徴です。
多くの企業では、職種や等級、号俸などによって基本給を決める「賃金テーブル」を設定しています。ベースアップは、この賃金テーブルの金額を一定額または一定割合で引き上げることで、同じ等級や号俸にいる社員の基本給を一斉に増額する仕組みです。そのため、新入社員からベテラン社員まで、同じ賃金体系に属する社員の基本給が全体的に上昇します。
また、ベースアップは「ベア(ベースアップの略)」と呼ばれることもあり、労使交渉やニュースなどでは「ベア○円」「ベア○%」といった表現で基本給の底上げ額や割合が示されることがあります。
定期昇給は制度に沿って毎年増える昇給
定期昇給(定昇)は、企業の制度に従って、毎年一定の時期に行われる昇給です。年齢・勤続年数に連動する自動昇給だけでなく、毎年時期を定めて査定を行う場合は、能力や業績評価に基づく昇給も含まれます。
ベースアップと似た用語の違い
ベースアップは賃金制度の中でもよく使われる言葉ですが、定期昇給や昇格など、似た意味で使われる用語も多く存在します。
| 用語 | 意味 | ベースアップとの違い |
|---|---|---|
| 昇格・昇進 | 役職や等級が上がり、それに伴い給与が上がる | 職位や責任の変化による給与上昇 |
| 賃上げ | 給与を増額する施策の総称 | ベースアップや定期昇給などを含む広い概念 |
| 手当改定 | 各種手当の金額を変更する | 基本給ではなく手当が対象 |
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ベースアップの目的は?
ベースアップは、単に給与を増やすためだけに行われるものではありません。企業が賃金テーブルを引き上げる背景には、人材確保や物価上昇への対応など、複数の目的があります。
人材確保や採用競争力を高める
ベースアップの大きな目的の一つは、人材確保と採用競争力の向上です。基本給の水準を引き上げることで、企業は労働市場における給与水準を維持または向上させることができます。
近年は人手不足や採用競争の激化により、企業が提示する給与水準が採用活動に大きく影響しています。ベースアップを行うことで、求人時の初任給や基本給の水準が上がり、応募者にとって魅力的な条件を提示しやすくなります。また、既存社員の待遇改善にもつながるため、人材の流出防止にも一定の効果が期待されます。
物価上昇や社会環境の変化に対応する
ベースアップは、物価上昇や社会経済の変化に対応するために実施されることもあります。生活費の上昇に対して給与水準を引き上げることで、社員の実質的な購買力を維持する目的があります。
物価が上昇している状況では、給与が据え置かれると生活負担が大きくなり、社員の満足度や働く意欲に影響する可能性があります。企業が賃金テーブルを引き上げることで、社会環境の変化に対応しながら、社員の生活水準を一定程度保つ役割を果たします。
従業員のモチベーション向上や組織の活性化につながる
ベースアップは、従業員のモチベーション向上や組織の活性化にもつながります。基本給が上がることは、社員にとって企業からの評価や期待を示すメッセージとして受け止められる場合があります。
また、基本給は賞与や退職金などの計算基準になることも多いため、ベースアップによって長期的な待遇改善につながる場合もあります。こうした効果により、社員の働く意欲が高まり、組織全体の生産性向上や定着率の改善につながることもあります。
ベースアップの対象と時期は?
ベースアップは基本給の水準を引き上げる施策ですが、すべての社員を対象にするとは限りません。ここでは、ベースアップの対象範囲と、企業で実施されることが多いタイミングについて整理します。
【対象】企業の判断で設定できる
ベースアップの対象は企業が決めることができ、必ずしも全社員を対象にする必要はありません。賃金制度の設計や人事方針に応じて、対象となる社員の範囲を設定できます。
多くの企業では、一般社員や正社員を対象として基本給を引き上げるケースが見られます。管理職や役員は別の報酬体系で給与が決められている場合もあり、ベースアップの対象から除外されることもあります。また、若手社員のみを対象にする、特定の職種や職位に限定するなど、対象範囲を絞って実施するケースもあります。企業は人材確保や人事戦略を踏まえながら、対象範囲を柔軟に設定しています。
【時期】春の賃上げ時期に実施されることが多い
ベースアップは、年度の切り替わりに合わせて実施されることが多く、春の賃上げ時期に行われるケースが一般的です。多くの企業では4月の給与改定に合わせてベースアップが反映されます。
この時期に実施される理由の一つは、人事評価や昇給制度の改定と同時に賃金体系を見直しやすいためです。また、日本では労使交渉や賃上げ議論が春頃に集中する傾向があり、その結果として新年度の給与改定に合わせてベースアップが実施される企業が多くなっています。
ただし、すべての企業が同じタイミングで実施するわけではありません。企業業績や経営判断によっては、年度途中で賃金改定を行う場合や、特定の時期に合わせてベースアップを実施するケースもあります。
ベースアップ金額の上限・下限・相場は?
ベースアップを検討する際、多くの企業が参考にするのが「どの程度の金額が一般的なのか」という相場です。ここでは、ベースアップ金額の考え方と、参考にされる相場の見方を解説します。
ベースアップ金額に法律上の上限や下限はない
ベースアップの金額には、法律で決められた上限や下限はありません。企業が自社の経営状況や人件費方針を踏まえて自由に決定できます。
ベースアップは賃金テーブルを引き上げる施策であり、どの程度の金額を上げるかは企業ごとの判断になります。例えば、基本給を一律で数千円引き上げる企業もあれば、賃金テーブルを数%引き上げる企業もあります。ベースアップは基本給に恒久的に反映されるため、賞与や残業代、退職金などにも影響する可能性があります。そのため企業は、短期的な賃上げ効果だけでなく、長期的な人件費の増加も踏まえて金額を決定することが多くなっています。
ベースアップの相場は「春闘のベア」と「企業調査の賃金改定」で見る
ベースアップの相場を把握する際は、「春闘の賃上げ結果」と「企業調査による賃金改定」を分けて見ると整理しやすくなります。どちらも賃上げのデータですが、集計方法や対象が異なるためです。
まず春闘の集計では、「定期昇給相当込みの賃上げ計」と、定期昇給分を除いた「賃上げ分」が示されます。2025年の最終集計では、平均賃金方式で回答を引き出した 5,162 組合の加重平均(規模計)が16,356円・5.25%、賃上げ分が明確にわかる 3,594 組合の賃上げ分が11,727円・3.70%とされています。この賃上げ分が、ベースアップや賃金改善に近い部分として参考にされることが多くなっています。
企業調査では企業全体の平均的な賃金改定が示されます。常用労働者100人以上の民営企業を対象とした2025年の調査では、1人平均賃金の改定額が13,601円、改定率が4.4%となっています。
このように、春闘データは労働組合の妥結結果を集計したものであり、企業調査は企業全体の平均的な賃金改定を示すものです。自社のベースアップを検討する際は、自社の規模や業界がどちらの母集団に近いかを考えたうえで相場を参照すると、実務で活用しやすくなります。
参考:令和7年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況|厚生労働省、2025年春闘|日本労働組合総合連合会
ベースアップの種類は?
ベースアップは基本給の水準を引き上げる賃金改定ですが、その実施方法はいくつかの種類に分けられます。ここでは、企業実務でよく用いられる代表的なベースアップの種類と特徴を解説します。
【定額ベースアップ】一律の金額を引き上げる
定額ベースアップとは、社員の基本給を一定の金額で引き上げる方法です。例えば「基本給を一律5,000円引き上げる」といった形で実施されます。
この方法では、等級や給与水準に関係なく同じ金額が増額されるため、比較的シンプルな賃上げ方法といえます。特に若手社員など給与水準が低い層にとっては、給与上昇率が高くなる傾向があります。一方で、給与が高い社員にとっては上昇率が相対的に低くなるため、給与バランスへの影響を考慮して採用されることもあります。
【定率ベースアップ】基本給の割合で引き上げる
定率ベースアップとは、基本給に対して一定の割合で引き上げる方法です。例えば「基本給の2%を引き上げる」といった形で実施されます。
この方法では、基本給が高い社員ほど増額幅も大きくなります。給与水準に応じた賃上げとなるため、賃金テーブルのバランスを維持しやすい特徴があります。また、企業全体の人件費増加率を計算しやすいという利点もあります。そのため、賃金制度が整備されている企業では定率方式が採用されることもあります。
【選択型ベースアップ】等級や職種ごとに引き上げる
等級別ベースアップとは、等級や職種、年齢層などに応じて引き上げ額を変える方法です。例えば若手社員の給与を重点的に引き上げたり、特定職種の給与水準を調整したりする場合に用いられます。
この方法では、採用競争が激しい職種や給与水準が低い層に対して重点的に賃上げを行うことができます。企業の人材戦略や採用状況に合わせて柔軟に賃上げを実施できる点が特徴です。そのため、近年では人材確保や待遇改善を目的として、対象を限定したベースアップを実施する企業も見られます。
非正規雇用はベースアップの対象外にしてもよい?
ベースアップは基本給の水準を引き上げる賃金改定ですが、対象となる社員の範囲は企業の賃金制度によって異なります。ただし、対象を分ける場合には、待遇差の合理性や賃金制度との整合性を考える必要があります。
非正規雇用をベースアップの対象外にすること自体は可能
非正規雇用をベースアップの対象外にすること自体は可能です。企業がどの雇用区分を賃金改定の対象にするかは、基本的に自社の賃金制度や雇用形態に応じて判断できます。
多くの企業では、ベースアップは正社員の基本給を対象とした賃金テーブルの改定として実施されます。そのため、時給や日給で給与が決まるパート・アルバイトなどの非正規雇用は、同じ仕組みのベースアップの対象にならない場合があります。この場合、非正規雇用については時給の見直しや手当の改定など、別の形で賃金調整が行われることもあります。
雇用形態による待遇差には合理的な理由が求められる
非正規雇用を対象外とする場合でも、雇用形態による待遇差には合理的な理由が必要になります。仕事内容や責任の範囲、配置転換の有無など、働き方の違いを踏まえた説明が求められる場面もあります。
同じような業務内容で働いている場合に、賃金改定の扱いが大きく異なると、待遇差が問題になる可能性があります。そのため企業は、正社員と非正規社員の役割や賃金制度の違いを整理したうえで、賃金改定の対象範囲を設計することが多くなっています。
また近年は、非正規雇用の待遇改善を目的として、正社員のベースアップと同時に時給の引き上げを行う企業も見られます。このように、雇用形態ごとの賃金制度を踏まえながら、全体のバランスを考えた賃金改定が行われることが一般的です。
参考:不合理な待遇差の禁止(同一労働同一賃金)について|厚生労働省
ベースアップは給与体系に影響を受ける?
ベースアップは基本給の水準を引き上げる賃金改定ですが、その影響は企業の給与体系によって異なります。基本給を中心とした賃金テーブル型の制度ではベースアップの影響が大きくなりますが、年俸制や役職給、インセンティブ型の給与体系では反映の仕方が変わることがあります。
【年俸制の場合】年俸改定の中で調整されることが多い
年俸制の場合、ベースアップは賃金テーブルの改定として直接実施されないことがあります。多くの場合、年俸の見直しの中で給与水準が調整されるためです。
年俸制では、年間の報酬額を契約によって決定し、それを月額に分割して支払う仕組みが一般的です。このため、基本給のテーブルが存在しない場合や、あっても影響が限定的な場合があります。その結果、一般社員のように一律のベースアップを実施するのではなく、年度ごとの年俸改定や評価によって給与水準を調整するケースが多く見られます。
【役職給制度の場合】役職ごとの報酬体系が見直されることが多い
役職給を中心とした給与制度では、ベースアップは役職ごとの給与水準の見直しとして反映されることがあります。役職給は、職位や責任の大きさに応じて給与が決まる仕組みだからです。
課長・部長などの役職ごとに固定の役職給が設定されている場合、その金額を引き上げることで実質的なベースアップとなることがあります。ただし、役職給は職責とのバランスを重視して設計されることが多いため、一般社員のベースアップとは別に調整される場合もあります。このような制度では、賃金テーブル全体を一律に引き上げる形ではなく、役職ごとの報酬体系を見直す形で給与改定が行われることがあります。
【インセンティブ制度の場合】成果報酬の設計の見直しが中心になる
インセンティブ制度の割合が大きい給与体系では、ベースアップの影響が相対的に小さくなることがあります。給与の多くが成果報酬や業績連動報酬によって決まるためです。
営業職や専門職などでは、基本給に加えて成果に応じたインセンティブが支給される制度が採用されることがあります。この場合、企業は基本給のベースアップよりも、インセンティブ率や成果報酬の設計を見直すことで報酬水準を調整することがあります。そのため、同じ賃上げでもベースアップではなく、成果報酬の引き上げによって待遇改善を行うケースも見られます。
ベースアップと定期昇給の違いを理解して賃金制度を整理しよう
ベースアップとは、賃金テーブルの水準を引き上げて基本給全体を底上げする賃金改定です。定期昇給は勤続年数や評価などに応じて個人の給与が上がる仕組みであり、両者は目的や仕組みが異なります。ベースアップは人材確保や物価上昇への対応などを背景に実施されることが多く、対象範囲や金額、実施方法は企業の賃金制度によって変わります。
給与体系や雇用区分との関係を整理しながら制度を理解することで、企業の賃上げ施策や給与改定の考え方をより正確に把握できるようになります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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