- 更新日 : 2026年6月16日
福利厚生を充実させる方法は?メリットや制度例を解説
自社の課題に合う支援を選べば、採用や定着につながる職場をつくれます。
- 住宅や食事など生活に近い制度を見直す
- 課税・非課税の条件を項目ごとに確認する
- 申請手順を社内規程に明記する
利用状況や雇用形態による差も点検すると、費用に見合う効果を得やすくなります。
福利厚生を充実させるには、制度を増やすだけでなく、従業員のニーズや利用状況に合わせて見直すことが大切です。福利厚生は、採用力の強化や従業員の定着、働きやすい職場づくりにつながる一方で、対象者や申請方法、課税・非課税の条件が曖昧なままだと、利用率の低下や給与計算上のトラブルにつながるおそれがあります。
本記事では、福利厚生を充実させるメリットや導入しやすい制度例、失敗しやすいケース、見直しの進め方を解説します。
福利厚生が充実していることの5つのメリット
福利厚生は、単なる従業員向けの特典ではなく、採用・定着・働きやすさを支える人事施策の一つです。自社の課題に合う制度を選び、従業員が使いやすい形で運用すると、職場環境の改善につながります。
1. 求職者に選ばれやすくなり採用力を高めやすい
福利厚生の内容を具体的に示すことで、給与や業務内容だけでは伝わりにくい働きやすさも伝えやすくなります。
たとえば、休暇制度やフレックスタイム制度、テレワークの導入、社宅・住宅手当の整備といった情報があれば、応募者は入社後の生活や働き方を具体的にイメージしやすくなります。大和ライフネクスト株式会社が2025年3月卒業予定の学生400人を対象に実施した調査では、44.3%が企業選びで「福利厚生が整っていること」を重視すると回答しました。
同程度の給与や仕事内容を提示する競合企業が複数ある場合、福利厚生の内容は応募先を比較する際の判断材料の一つになります。
参考:2025年卒・Z世代の就活トレンド 学生400人を調査「社員寮」に関する学生の意見とは?|大和ライフネクスト株式会社
2. 従業員の生活不安を減らし仕事に集中しやすくなる
育児や介護、通院などに対応しやすい福利厚生があると、従業員は生活上の不安を抱えたまま働き続ける状況を避けやすくなります。
たとえば、育児・介護休業、短時間勤務、テレワークや時差出勤といった制度が整っていれば、家庭の事情に合わせて働き方を調整することが可能です。困ったときに使える制度があらかじめ用意されていると、休み方や働き方を一から相談する負担も軽くなります。
育児や介護、通院に合わせて働き方を調整できる制度は、従業員の不安を減らし、仕事を続けやすい職場づくりにもつながります。
3. 離職リスクを抑え定着につながりやすい
福利厚生を整えることで、既存の従業員が働き続けやすい環境づくりにつながります。育児や介護、体調不良などで働き方を見直す際に利用できる制度があれば、すぐに退職を選ばずに働き方の調整が可能です。
たとえば、介護休業や短時間勤務、テレワーク、時差出勤などの制度があれば、家庭の事情に合わせた働き方を検討できます。資格取得補助や研修費補助なども、従業員が社内で今後のキャリアを考えるきっかけになるでしょう。
従業員が将来の生活変化に不安を感じたとき、社内に相談先や利用できる制度があると、仕事を続ける選択肢を持ちやすくなります。福利厚生は、従業員が長く働ける職場づくりを進めるうえで支える要素の一つです。
4. 企業イメージの向上につながる
福利厚生の内容は、採用広報や企業サイトで働きやすさを伝える材料になります。給与や仕事内容だけでは伝わりにくい職場の姿勢を示せるため、求職者や取引先に対して、人材を大切にする企業イメージを伝えやすくなります。
たとえば、男性の育児休業取得を支援する制度や、介護との両立を支える勤務制度、健康診断の補助などを掲載すると、従業員を大切にする姿勢が伝わるでしょう。
5. 条件を満たせば福利厚生費として処理できる場合がある
福利厚生にかかる費用は、条件を満たせば福利厚生費として処理できる場合があります。ただし、会社が経費として処理できることと、従業員に所得税がかからないことは同じではありません。制度の内容や金額によっては、従業員側で給与として課税される可能性があります。
2026年4月1日以後に支給する食事については、従業員が食事の価額の50%以上を負担し、会社負担分が月額7,500円以下であれば、原則として給与として課税されません。ただし、現物支給ではなく現金で食事代を支給する場合は、原則として給与課税の対象になります。
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福利厚生を充実させるために導入しやすい制度7選
福利厚生にはさまざまな制度があります。導入する際は、従業員が必要としている支援と、会社が無理なく続けられる予算を照らし合わせて選ぶことが大切です。
1. 住宅手当・家賃補助
住宅手当・家賃補助は、従業員の住居費の一部を会社が支援する制度です。毎月発生する家賃の負担を抑えられるため、生活費の支援につながります。
企業が導入を検討しやすい理由の一つは、社宅制度と比べて物件管理の負担を抑えやすい点です。自社で物件を借り上げる必要がないため、不動産会社との契約手続きや入退去時の対応を会社が担う範囲は限定されます。
導入する際は、社内規程で支給対象者、支給条件、上限額、必要書類などを明確に定めましょう。給与計算で手当として扱うため、社宅制度よりも運用設計をシンプルにしやすい一方、現金で支給する住宅手当は原則として給与として課税されます。
なお、社宅や寮を会社が貸与する場合は扱いが異なり、従業員から1ヶ月あたり賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば、給与として課税されません。
住宅手当については以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
2. 食事補助
食事補助は、昼食代などの一部を会社が補助する制度です。毎日の食事に関わるため、従業員が利用場面をイメージしやすい福利厚生といえます。
仕出し弁当やオフィスに専用冷蔵庫を置いて食品を販売する設置型社食、提携飲食店で使える食事チケットなどが主な導入方法です。
2026年4月1日以後に支給する食事から、食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額は月額7,500円に引き上げられています。ただし、非課税扱いを受けるには、従業員が食事の価額の50%以上を負担し、会社負担分が月額7,500円以下であることなどを確認する必要があります。
制度を導入する際は、補助額や利用方法を決めたうえで、給与課税の扱いも確認しましょう。
食事補助は関連記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
3. 通勤手当
通勤手当は、従業員が自宅から職場へ通う際の交通費を会社が補助する制度です。電車・バスの定期代、マイカー通勤時のガソリン代などが主な対象となります。
導入を検討しやすい理由は、支給対象者や対象経路、上限額、申請方法など、決めるべき項目を整理しやすい点です。給与計算でも手当項目として管理しやすい場合があり、社宅制度や社員食堂のように物件・設備を用意する必要はありません。
税務上は、通勤方法によって非課税限度額が異なります。電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合、経済的かつ合理的な経路・方法による通勤手当は、1ヶ月あたり15万円まで非課税です。
マイカーや自転車通勤の場合は、片道の通勤距離に応じて非課税限度額が変わります。制度を導入する際は、申請方法や通勤経路の確認ルールも社内規程で定めておきましょう。
通勤手当については、関連記事を詳しくご覧ください。
4. 特別休暇・リフレッシュ休暇
特別休暇は、年次有給休暇とは別に、企業が独自に設ける休暇制度です。慶弔休暇や夏季休暇、勤続年数に応じたリフレッシュ休暇、ボランティア休暇などがあり、自社の方針に合わせて対象者や取得条件を定めやすいでしょう。
特別休暇やリフレッシュ休暇は、設備や物件を用意する必要がないため、比較的導入しやすい福利厚生です。住宅手当や食事補助のように毎月一定額を支給する制度とは異なり、金銭支給を前提としない設計もできます。ただし、休暇中を有給扱いにする場合は人件費が発生するため、有給・無給の扱いは就業規則等にあらかじめ定めておきましょう。
特別休暇の詳しい情報は、関連記事をご覧ください。
5. 健康診断・人間ドック補助
健康診断・人間ドック補助は、従業員が健康状態を確認する機会を増やす福利厚生です。企業には、常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回の定期健康診断を実施する義務があります。人間ドックやがん検診などの費用補助を加えることで、法定の健康診断だけでは確認しにくい項目も受診しやすくなります。
全額自己負担では費用が気になりやすい人間ドックも、会社の補助があれば従業員は前向きに検討できるでしょう。なお、人間ドックの費用補助を福利厚生として扱う場合は、一部の役員だけを対象にせず、一定の条件を満たす従業員が利用できる制度として設計する必要があります。
健康診断については、関連記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
6. 育児・介護との両立支援
育児・介護との両立支援は、家庭の事情を抱える従業員が仕事を続けやすくする制度です。育児休業、介護休業、短時間勤務、子の看護等休暇などを整えることで、育児や介護に合わせて働き方を調整しやすくなります。
育児・介護休業法では、対象となる従業員への制度周知や意向確認など、事業主に求められる対応が定められています。たとえば、介護に直面した従業員への個別周知・意向確認や、40歳到達時の介護関連制度の情報提供などが必要です。
制度を用意しても、対象者が内容や申請方法を知らなければ利用につながりません。導入時は、対象者、申請方法、相談窓口を整理し、必要なタイミングで案内できる体制を整えましょう。
7. 学習支援・資格取得補助
学習支援・資格取得補助は、従業員が業務に必要な知識や資格を身につけるための費用を会社が補助する制度です。たとえば、業務に関連する書籍の購入費や講座の受講費、資格試験の受験料などを補助します。
全額支給だけでなく、費用の一部補助や合格時の報奨金支給など、補助額や支給条件を調整しやすい点が特徴です。自社の予算に合わせて始めやすく、従業員は自己負担を抑えながら業務に関わる学習に取り組みやすくなります。
福利厚生が充実しても失敗する3つのケース
企業が多様な福利厚生を導入しても、運用ルールや制度設計が整っていなければ、費用や運用の手間に見合う効果を得にくくなります。制度を形だけで終わらせないためには、導入前に起こりやすい失敗パターンを把握し、自社の運用体制を見直しておくことが大切です。
1. 一部の従業員しか使えない制度になっている
福利厚生の対象者が一部の従業員に偏っていると、社内で不公平感が生まれる場合があります。正社員のみに住宅手当や食事補助を支給し、パートタイム・有期雇用労働者を一律で対象外にする場合は、待遇差の理由を説明できるか確認が必要です。
パートタイム・有期雇用労働法では、同一企業内で正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間に、不合理な待遇差を設けることが禁止されています。福利厚生の対象者を分ける際は、業務内容や責任の範囲、配置変更の範囲などを踏まえて判断しましょう。
2. 申請方法がわかりにくく利用されない
福利厚生の内容を充実させても、申請手続きが煩雑なままでは従業員が利用しづらくなります。申請先や承認までの流れが不明確な場合や、紙の書類への記入・押印が必要な場合は、従業員が利用を後回しにする可能性があります。
制度を利用しやすい状態にするには、申請の流れをわかりやすく整えることが大切です。たとえば、申請から承認までをWeb上で完結できるようにする、社内ポータルサイトに申請フォームへのリンクや記入例をまとめるなどの工夫が挙げられます。
申請先や必要書類、承認までの流れを従業員がすぐ確認できる状態にしておくと、制度を利用しやすくなるでしょう。
3. 課税・非課税や支給条件を整理していない
支給条件が整理されていないと、会社が提供した福利厚生が従業員側で給与として課税される場合があります。給与課税が生じると、従業員にとって想定外の負担になり、制度への不満につながるおそれがあります。
たとえば、食事補助は、従業員が食事の価額の半分以上を負担し、会社負担分が月額7,500円以下であれば、原則として給与として課税されません。一方、社宅や寮を会社が貸与する場合は、従業員から賃貸料相当額の50%以上を受け取っていれば、原則として給与として課税されません。
福利厚生を導入する際は、制度ごとの課税・非課税の条件を確認し、対象者、支給額、申請方法を社内規程に明記しましょう。
福利厚生を充実させるために今すぐ見直したい5つのこと
企業が新しい福利厚生を導入する前に、現状の課題や既存制度の利用状況を確認しておきましょう。他社の事例を参考にする場合でも、自社の従業員のニーズと合っていなければ利用されにくく、費用に見合う効果を得にくくなります。
1. 従業員が困っていることをアンケートで確認する
会社側が必要だと考えて用意した福利厚生でも、従業員の実際のニーズとズレていれば利用されにくくなります。制度を見直すには、まずはアンケートを実施し、従業員が抱えている困りごとを把握しましょう。
具体的には、「家賃の負担が重い」「育児や介護と仕事の両立が難しい」など、生活や働き方に関する悩みを確認しましょう。従業員の困りごとを整理すると、住宅手当やベビーシッター補助など、優先して検討すべき支援策を判断しやすくなります。
アンケート結果を制度設計に反映すると、従業員の実情に合った福利厚生を検討しやすくなります。
2. 既存の福利厚生が使われているか確認する
福利厚生を見直す際は、既存の制度について、従業員が知っているか、実際に使っているか、使った人が満足しているかを分けて確認しましょう。制度の存在を知らないのか、申請が面倒で使われていないのか、利用後の満足度が低いのかによって、見直すべき点は変わります。
利用率が低い制度でも、すぐに廃止すると判断するのは早い場合があります。対象者の偏りや申請の手間、勤務形態との相性を見直すと、利用しやすくなる制度もあるでしょう。
3. 住宅・食事・休暇など生活に近い支援から見直す
住宅・食事・休暇は、従業員の生活に身近な福利厚生です。家賃や食費、休暇の取りやすさに関わるため、優先的に見直す候補になるでしょう。
見直す際は、勤務形態やライフステージによる不公平感を抑えることが大切です。たとえば、出社を前提とした社員食堂や現物での食事補助は、テレワーク中心の従業員が利用しにくい場合があります。
在宅勤務の日も食事補助の対象にする場合は、補助方法や課税関係を確認しましょう。休暇制度では、労使協定を結んだうえで時間単位の年次有給休暇を取り入れるなど、働き方に合わせて利用条件を見直しましょう。
4. 雇用形態によって使いやすさに差が出ないか確認する
福利厚生を見直す際は、雇用形態によって利用条件に差が出ていないか確認しましょう。たとえば、正社員のみに食事補助や慶弔休暇を適用し、パートタイム・有期雇用労働者を一律で対象外にしている場合は、待遇差の理由を説明できるか確認が必要です。
パートタイム・有期雇用労働法では、同一企業内で正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間に、不合理な待遇差を設けることが禁止されています。特に、休憩室や更衣室、食堂などの福利厚生施設は、正社員とパートタイム・有期雇用労働者間双方に同一の利用・付与が求められる項目です。
正社員に利用を認めている場合、パートタイム・有期雇用労働者を対象外にする理由を説明できるか確認しましょう。
5. 支給条件や申請方法を社内規程に明記する
福利厚生を新設・見直したにもかかわらず、運用ルールが曖昧なままでは、従業員間の不公平感や担当部署の確認ミスにつながる場合があります。制度を運用する際は、対象者の条件や申請期限、必要書類などを社内規程に明記しましょう。
たとえば住宅手当を支給する場合、「賃貸借契約書のコピーをいつまでに誰へ提出するか」といった具体的な手順まで定めておくと、現場で確認に迷う場面を減らせます。
手当や休暇に関するルールは、内容によって就業規則への記載が必要になる場合があるため注意が必要です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を変更した場合、所轄の労働基準監督署長へ届け出る必要があります。
福利厚生を見直す際は、就業規則や関連規程との整合性、届出の要否も確認しておきましょう。
住宅関連の福利厚生を整えたい場合は、社宅制度の導入支援サービスを活用するのも一案です。マネーフォワード クラウド福利厚生賃貸は、従業員が住む賃貸物件を法人名義に切り替え、家賃を給与から天引きする社宅系福利厚生サービスです。具体的には、規程制定や労使協定の締結、社内説明会、名義変更手続きなどを支援します。
社宅制度では、規程整備や労使協定の締結だけでなく、賃貸物件の名義変更や管理会社との調整、契約手続きなども発生します。支援サービスを活用すれば、担当者が運用準備を一から抱え込まず、必要な手順を整理しながら導入を進めやすくなるでしょう。
住宅手当や社宅制度の見直しを進めたい企業は、まず資料で支援範囲や導入までの流れを確認してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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