- 更新日 : 2025年3月27日
納品書を電子化する方法は?電子帳簿保存法への対応も解説
電子帳簿保存法改正により、電子的に作成または送受信された納品書は、電子データでの保存が義務となりました。紙で発行された納品書や請求書は同法の対象外となるため、紙保存かスキャナ保存のどちらかを選択できます。この記事では、納品書を電子化して保存する方法や、電子帳簿保存法、スキャナ保存の際の必要要件について解説します。
目次
納品書は電子化してもよい
納品書とは、顧客に商品やサービスを納品した事実を証明した書類です。法的な発行義務はない一方で、納品書の発行や受領をした場合は一定期間の保存が義務づけられています。
保存期間は、法人の場合、確定申告の翌日から7年~10年、個人事業主の場合は確定申告の翌日から5年です。
保存期間については、こちらの記事をご覧ください。
2022年1月の電子帳簿保存法改正により、条件を満たしている場合は、紙の納品書を電子データ化して保存することが認められるようになりました。2024年1月からは、データで受け取った取引関係書類の紙に出力して保存することは、原則として認められません。
このような流れから、今後は納品書の電子化がより進むことが想定されます。
電子データとして保存
納品書を電子データとして保存する場合、次の3つが対象です。
| 書類の種類 | 認められている保存方法 |
|---|---|
| 自社が電子データで作成し、紙ベースで発行・送付した納品書 | 一定の保存要件のもと保存することが可能 |
| 相手先へ電子データで送付した納品書 | 電子データでの保存が必須 |
| 相手から電子データで受領した納品書 | 電子データでの保存が必須 |
電子データで送受信した受領書については、電子データでの保存が必須です。なお、手書きで納品書を作成した場合は、電子帳簿保存法の対象外となり、紙での保存が認められます。
スキャンして保存
スキャンして保存可能な納品書は、次の2点です。
- 相手から紙で受け取った納品書
- 自社が紙で発行・送付した納品書の控え
こちらは、必須ではなく任意となっています。どちらも、一定の保存要件を満たしている場合、保存することが可能です。
電子データを紙に出力して保存することは認められない
原則として、電子データで送受信した納品書は紙に出力しての保存は認められません。宥恕(ゆうじょ)期間である2023年12月31日までは、電磁的記録の保存を行う準備が困難な事情があると納税地等の所轄税務署長が認めた場合に限り、紙に出力しての保存も可能です。
宥恕期間を過ぎると、保存要件に従って電子データの保存をすることができなかったと税務署長に認められたとき以外は、紙に出力しての保存は不可となります。
納品書を電子化する上で覚えておきたい電子帳簿保存法
電子帳簿保存法とは、税務関係の書類を電子データで保存する要件を定めた法律です。電子帳簿保存法では、書類を大きく3種類にわけ、保存形式を定めています。
| 大分類 | 帳簿の種類 | 保存方法 |
|---|---|---|
| 国税関係帳簿 | 仕訳帳、売掛金元帳、買掛金元帳、総勘定元帳など | 電子データ保存 スキャナ保存 |
| 国税関係書類 | 残高試算表、貸借対照表、損益計算書 請求書、領収書、見積書、納品書、契約書(各控えも含む) | 電子データ保存 スキャナ保存 |
| 電子取引 | 請求書、領収書、見積書、納品書、契約書 | 電子データ保存 |
納品書は「国税関係書類」とされ、発行や受領の際に保存が義務づけられています。
自社で納品書を発行した場合も、受領した場合も、電子データとしての保存、もしくはデータをスキャンして保存するスキャナ保存が可能です。
電子帳簿保存法について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
スキャナ保存には要件がある
スキャナ保存の主な要件は、次のとおりです。なお、令和5年3月28日に可決された令和5年度税制改正法案により、令和6年1月1日以後に保存したものについては若干要件に変更があります(※箇所を参照してください)。
| 項目 | 要件の内容 |
|---|---|
| 入力期間 |
|
| 解像度やカラー |
|
| 読み取り情報の保存 | 読み取った際の解像度、階調、書類の大きさに関する情報を保存する ※令和6年1月1日以後保存のものについては不要 |
| タイムスタンプ | 付与が必要 |
| ヴァージョン管理 | 訂正又は削除の事実及び内容の確認 |
| 入力者情報の確認 | スキャナ保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報が確認できる ※令和6年1月1日以後保存のものについては不要 |
| 書類等の備付け | マニュアルのようなシステムの開発関係書類 |
| 検索機能の確保 |
|
参考:国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存!(令和3年11月)」
納品書のスキャナ保存は任意となっています。スキャナ保存は手間もかかるため、今後の動向を見て導入を検討してもいいでしょう。
納品書を電子化するメリット
納品書を電子化する主なメリットは、次の5点です。
- すぐ相手に届く
- コストと時間が節約できる
- 業務の効率化が図れる
- 紛失や盗難を防げる
- リモートワークでも効率的に管理できる
それぞれ詳しく解説します。
すぐ相手に届く
紙の納品書を郵送した場合、発行してから取引先企業に届くまでに時間がかかります。納品書を電子化すると担当者へ直接納品書を送信できるため、発行当日に受け渡しが可能です。
加えて、納品書を電子化すると記載内容の確認がしやすくなるため、業務効率が上がることも想定されます。
コストと時間が節約できる
納品書の内容が違っていた場合、先方に確認し、納品書の再発行を依頼しなければなりません。納品書が紙発行だと、修正から印刷、発送までにさまざまな費用が発生します。納品書を電子化することで、紙代や発送費用などの削減が可能です。
納品書を電子化すると、時間も削減できます。納品書を紙で発行する場合、自分の手元に届くまでに時間が必要です。納品書を電子化することで、郵送にかかっていた時間が短縮できるでしょう。
業務の効率化が図れる
紙で納品書を保存する場合、仕入管理のために別途データ入力が必要です。
納品書を電子化すると、データ入力を簡略化することができます。納品書をシステムで発行した場合、納品書とシステム間でデータの紐づけができるため、さらなる業務の効率化が図れるでしょう。過去の納品書を探す際も、紙の場合は探す時間と手間がかかります。納品書をスキャンして電子データにすることで、検索を簡略化し効率よくデータを見つけられるようになるでしょう。
紛失や盗難を防げる
紙の納品書だと、紛失や破棄の可能性が考えられます。さらに、経年劣化や汚損により原本が見られなくなるかもしれません。スキャンや電子データにより納品書を電子化することで、このような心配が不要になります。
納品書を紙で発行した場合、誰にでも閲覧されるため、情報漏えいの恐れがあります。電子保存であればアクセス制限をかけることで、第三者の閲覧による情報漏えい被害を防ぐことが可能です。
リモートワークでも効率的に管理できる
近年、新型コロナウイルス感染症対策によりリモートワークが増加しています。納品書を電子化することで、出社しなくても納品書の発行や管理ができるようになります。
納品書データを電子化していると、リモートでも格納場所を探せます。リモートワークでも効率的に納品書が管理できる点も、納品書を電子化するメリットです。
納品書を電子化する際の注意点
納品書を電子データにして保存する際は、注意点がいくつかあります。また、紙の納品書をスキャンしてデータ化する場合は、スキャン時の仕様を決めておくことも大切です。
それぞれ詳しく解説します。
法規制の確認
納品書を電子化する際は、法律や規制が変わっていないか都度確認が必要です。
2022年4月1日以前に電子帳簿保存及びスキャナ保存の申請をしている場合、過去の要件に沿って運用する必要があります。
電子帳簿保存法では「重要書類」と「一般書類」が区別され、重要書類は一般書類より規制が多くなっています。
納品書は重要書類です。納品書を一般書類として処理をしてしまうと、悪質とみなされた場合、青色申告の取り消しや追徴課税・推計課税などの罰を科される可能性もあります。
データ管理とアクセス制限
納品書を電子化した際、データの管理には注意が必要です。インターネットは誰でもアクセスできるため、納品書データの情報漏えいやハッキングに遭うかもしれません。
第三者の不要なアクセスを防ぐには、適切なアクセス権限を付与する、アクセスログを記録できるシステムを導入するなど、必要な人以外アクセスできない環境を構築することが大切です。
取引先との調整
業種によっては、納品書の電子化が難しい場合も想定されます。指定のフォーマットを利用した紙での納品書発行を希望されるケースもあるでしょう。
自社で行った電子化対応を、取引先にも求めるべきではありません。電子化の導入度合いが違う取引先に対しては、自社も紙で発行するといった調整も必要となるでしょう。
社内のマニュアル化
納品書を電子化する際は、社内でルールを決めマニュアル化しておくことが大切です。対応者により電子化の方法が変わってしまうと、不都合が生じる可能性があるからです。
次の事項を社内で統一し、マニュアル化するといいでしょう。
- 書類のサイズ(A4が好ましい)
- 解像度(200dpi以上)
- ファイル名とフォルダ名
- 保存形式
メリットの多い納品書の電子化を進めよう
電子帳簿保存法改正により、納品書は電子データでの保存も可能となりました。紙で発行された納品書は、原則として電子データ化しての保存が認められています。納品書を電子化することで、時間やコストの削減、すぐ取引先に書類を届けられるなど、さまざまなメリットがあります。
納品書の電子化にあたっては、注意点もいくつかあるため、電子帳簿保存法の基準に則って実施することが必須です。
リモートワークが増えている今日、納品書の電子化は非常に重要です。電子帳簿保存法が改正されたこのタイミングで、電子化の推進をおすすめします。
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