- 更新日 : 2026年1月5日
「つなぎ売り」は儲かるのか?株主優待の仕組みとデメリットを解説
株主優待は魅力的ですが、権利落ち後の株価下落で「結局損をしてしまった」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
つなぎ売り(クロス取引)は、株価変動リスクを排除して株主優待のみを獲得する手法として知られています。この取引で「儲かる」とは、売買益を得ることではなく、手数料などのコストを差し引いても優待品の価値がプラスになる状態を指します。
そのため、利益が出るかどうかは、徹底したコスト管理と銘柄選びにかかっています。
この記事では、つなぎ売りの仕組みや利益計算の方法、失敗しないための注意点について、わかりやすく解説します。
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つなぎ売り(クロス取引)で儲かる仕組みとは?
つなぎ売りで利益を出すためには、獲得する株主優待の金銭的価値が、取引にかかる「トータルコスト」を上回る必要があります。
つなぎ売りは「現物買い」と「信用売り」を同時に行うことで株価変動による損益を相殺する手法であるため、株の値上がり益(キャピタルゲイン)は一切発生しません。したがって、いかにコストを抑えて価値ある優待を手に入れるかが、この取引におけるポイントといえるでしょう。
利益が出る計算式
つなぎ売りは、同じ銘柄を同じ価格・同じ株数で「買い」と「売り」の両方を持つことで、株価が上がっても下がっても損益がプラスマイナスゼロになる状態を作ります。この状態で株主優待の権利だけを獲得します。
この時の「儲け」は以下の計算式で判断します。
例えば、3,000円相当のカタログギフトがもらえる銘柄でも、手数料の合計が3,500円かかってしまえば500円の損失(失敗)です。逆に、コストを500円以内に抑えられれば、2,500円分の利益(儲け)が発生したことになります。
儲かりやすい銘柄の特徴
コスト負けせず、確実にメリットを得やすい銘柄には共通点があります。
- 優待利回りが高い
金券類(クオカード、ギフトカード)や自社商品など、換金性が高い、または生活費の足しになる実用的な優待を提供している銘柄です。 - 一般信用売りが可能
後述する「逆日歩(ぎゃくひぶ)」という不確定なコストが発生しない「一般信用取引」の在庫がある銘柄を選ぶのが鉄則です。 - 株価が手頃である
株価が高いと、それに応じて売買手数料や貸株料(金利)が高くなります。優待価値に対して株価が高すぎない銘柄のほうが、コストパフォーマンスは良くなる傾向があります。
つなぎ売りは意味ない、失敗するといわれる理由は?
つなぎ売りが失敗とされる主な原因は、事前のコスト見積もりが甘く、優待の価値以上に高額な手数料や「逆日歩」を支払う羽目になり、現金を減らしてしまうケースがあるからです。
特に制度信用取引を利用した場合、株不足によって発生する「逆日歩」は、数千円の優待をもらうために数万円のコストを払うという本末転倒な事態も起こり得ます。
リスク要因「逆日歩」とは
信用売りを行うには証券会社などから株を借りる必要があります。売り注文が殺到して株が不足すると、機関投資家から株を調達するための追加コスト「逆日歩(ぎゃくひぶ)」が発生します。
- 制度信用取引:
逆日歩が発生するリスクがあります。金額は取引終了後の事後決定となるため、予想できません。 - 一般信用取引:
逆日歩は発生しません。ただし、証券会社の在庫には限りがあり、人気銘柄はすぐに在庫切れになります。
| 項目 | 制度信用取引 | 一般信用取引 |
|---|---|---|
| 逆日歩 | 発生するリスクあり | 発生しない |
| 在庫 | 原則無制限 | 在庫限り(争奪戦) |
| 貸株料 | 低め(年率1.10%程度~) | 高め(証券会社による) |
| 返済期限 | 6ヶ月 | 無期限または短期(14日など) |
初心者が確実に利益を残すためには、コストが確定できる「一般信用取引」を利用することをおすすめします。
権利落ち日の一時的なマイナス
つなぎ売りでは、権利落ち日に「配当落調整金」という支払いが発生します。
- 現物買い:配当金を受け取る(約20%の税金が引かれた手取り額)
- 信用売り:配当落調整金を支払う(配当金の額面100%相当額)
受け取る金額よりも支払う金額のほうが税金分だけ多くなるため、一時的に資金がマイナスになります。これは確定申告や特定口座内での損益通算によって後から取り戻せますが、一時的なキャッシュフローが悪化するため「損をした」と感じやすいポイントです。
配当金狙いのつなぎ売りで利益を出すことはできる?
結論から言えば、配当金そのものを目的としたつなぎ売りで利益を出すことはできません。
信用売りの建玉を持っていると、配当金と同額の「配当落調整金」を支払う義務が生じるため、現物株で受け取る配当金と相殺されて手元に利益は残らないからです。
配当と調整金の相殺メカニズム
つなぎ売りはあくまで「株主優待」をリスクなしで得るための手法であり、「配当金」を得るための手法ではありません。
- 受取:現物株を保有しているため、配当金が支払われます。
- 支払:信用売りをしているため、同額相当の調整金を支払います。
- 結果:プラスマイナスゼロ(税務処理前)。
配当利回りが高い銘柄であっても、つなぎ売りをしている限り、その配当金は調整金の支払いで消えてしまうため、経済的なメリットはないといえるでしょう。
税務・確定申告の注意点
個人事業主や経理担当者の方は、税務上の区分に注意が必要です。
これらは損益通算が可能ですが、特定口座(源泉徴収あり)を利用していない場合、ご自身で確定申告を行わないと、払いすぎた税金が戻ってこない可能性があります。
つなぎ売りの手順とスケジュール
つなぎ売りを成功させるには、権利付き最終日の前日までに準備を整え、当日の寄付(市場開始)までに注文を完了させるのが一般的なセオリーです。
人気銘柄の一般信用在庫は早期になくなるため、早めの確保が必要です。また、株価変動リスクを完全に消すには、市場が開く前(寄付前)に成行注文を入れる必要があります。
つなぎ売りの4ステップ
つなぎ売りのフローを確認しましょう。
STEP1:在庫の確認と確保
一般信用売りを利用する場合、証券会社の在庫を確認します。人気銘柄は権利付き最終日の数週間前から在庫がなくなることがあります。ただし、在庫確保(信用売り注文)が早すぎると、その日数分だけ「貸株料」がかさむため、コスト計算が必要です。
STEP2:注文の発注(クロス注文)
権利付き最終日の寄付(朝9時)に約定するように、以下の注文を市場が開く前(8時半頃まで)に出します。
- 現物買い:「成行」注文
- 信用売り:「成行」注文
これにより、始値で買いと売りが同値で成立(クロス)します。
STEP3:権利付き最終日をまたぐ
約定した状態で、翌日の「権利落ち日」まで保有し続けます。これで株主優待の権利が確定します。
STEP4:現渡(げんわたし)で決済
権利落ち日になったら、保有している「現物株」を使って「信用売り」を返済します。これを「現渡(げんわたし)」と呼びます。
現渡には手数料がかからない証券会社が多く、市場で売買せずに決済するため、追加の価格変動リスクもありません。
つなぎ売りのデメリットやリスクは?
つなぎ売りの主なリスクは、事務手続きのミスによる意図しない損失や、資金拘束による機会損失などが挙げられます。
オペレーション自体は単純ですが、注文方法の間違いや現渡忘れなどは、慣れている人でもやってしまう人為的ミスです。
オペレーションリスク(注文ミス)
「買い」と「売り」のどちらか一方しか約定しなかった場合、または指値注文などで価格がズレてしまった場合、その瞬間から株価変動リスクにさらされます(片張り状態)。これを防ぐには、必ず「寄付の成行」で合わせるか、証券会社が提供している「優待クロス注文機能」などを活用すると良いでしょう。
資金拘束と機会損失
つなぎ売りを行うには、現物買い代金に加えて、信用売りのための証拠金が必要です(現物株を代用有価証券として使える場合もありますが、現金が必要なケースもあります)。
優待取得のために資金が拘束されるため、その間に他の有望な投資チャンスがあっても資金を動かせないという機会損失が発生するかもしれません。
長期保有特典をつなぎ売りで獲得する方法はある?
長期保有特典の獲得は不可能ではありませんが、株主番号が変わらないようにするための高度な管理が必要であり、確実性は低いといえます。
多くの企業は、株主名簿上の「株主番号」が変わると、一度株を手放したとみなして長期保有のカウントをリセットします。つなぎ売りは一度決済(現渡)してしまうため、通常は株主番号が変わる可能性があります。
端株(単元未満株)を活用したテクニック
一部の投資家の間では、1株だけを現物で常に保有し続け(端株保有)、権利確定日だけつなぎ売りで100株などの単元株をクロスさせる手法がとられています。これにより、株主番号が継続し、長期保有認定を受けられる場合があります。
ただし、企業側も対策を進めており、「100株以上を継続して保有すること」といった厳格な条件を設けるケースが増えています。1株保有だけでは長期認定されないことも多いため注意しましょう。
法人や個人事業主における会計処理や節税効果は?
法人の場合、受取配当金の一部が益金不算入となる一方で、信用売りの調整金は損金算入できるため、税務上のメリットが出る場合がありますが、事務コストに見合うかの検討が必要です。
法人税法上、国内株式の配当金は二重課税防止の観点から一定額が益金から除外されます。一方、つなぎ売りのコスト(手数料・調整金)は経費として計上可能です。
法人における実務上のポイント
企業が余剰資金運用の一環としてつなぎ売りを行う場合、以下の点に留意が必要です。
個人事業主の場合
個人事業主の場合、株取引は原則として事業所得ではなく「譲渡所得」「配当所得」として分離課税されます。事業の赤字と株の黒字を相殺することはできません(逆も同様)。あくまで個人の資産運用の範囲となるため、事業資金と混同しないよう区分管理が必要です。
つなぎ売りはコスト管理が重要
つなぎ売りは、手数料がかかるため完全にタダではありません。しかし、数百円のコストで数千円相当のお米や商品券がもらえるのであれば、家計の節約や会社の福利厚生として十分にお得な取引といえます。
最後に、つなぎ売りで失敗せずメリットを得るためのポイントを整理します。
- 一般信用取引を優先する:逆日歩のリスクをゼロにして、コストを確定させる。
- コストシミュレーションを行う:手数料と貸株料の合計が優待価値を下回るか事前に計算する。
- スケジュール管理を徹底する:在庫確保から現渡までの日程をカレンダーで管理し、現渡忘れを防ぐ。
「絶対に儲かる」投資手法はありませんが、「リスクをコントロールして対価を得る」手法として、つなぎ売りは非常に有効です。初めて「つなぎ売り」を始める際は、少額の銘柄から、取引することをおすすめします。
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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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