- 更新日 : 2026年1月6日
一口馬主は儲からない?黒字化が難しい理由と儲けるための戦略を紹介
一口馬主は、高額な競走馬に数万円程度から出資できる魅力的な仕組みです。しかし、収支面での厳しさが指摘されることも事実といえます。
結論からいえば、一口馬主で金銭的な儲けを出すことは非常に難しく、多くの人が収支マイナスとなっているのが現実です。ただし、儲からない構造的な理由と、それでも多くのファンを魅了するお金以上の価値が存在します。この記事では、一口馬主の収支がなぜプラスになりにくいのか、費用の詳細、そしてお金には代えがたい魅力までをわかりやすく解説します。
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一口馬主は本当に儲からない?
一口馬主で収支がプラスになる(儲かる)確率は、一般的に1割から2割程度といわれています。これは公的な統計データとして発表されているものではありませんが、多くのクラブや出資者の実績から、おおむねの実感として共有されている数字です。
つまり、出資した馬の多くは、出資金と維持費の合計額を上回る賞金を稼ぎ出すことなく引退していきます。9割近くの人が、金銭的には儲からない結果になっているのが実情でしょう。
賞金を得るまでのハードルの高さ、そして賞金を得た後の分配の仕組み、これらが組み合わさることで、出資者の手元にプラス収支が残るハードルは非常に高くなっています。
一口馬主が儲からない6つの理由とは?
一口馬主の収支が「儲からない」結果になりやすいのには、構造的な理由が6つあります。これらは出資する前に必ず理解しておくべき、一口馬主のコストとリスクです。
出資金(馬代金)以外の維持費が継続的にかかるから
一口馬主の費用は、最初にかかる出資金(馬代金)だけではありません。むしろ、収支を圧迫する最大の要因は、出資馬が引退するまで毎月発生し続けるランニングコストです。
具体的には、クラブの「月会費」(毎月3,000円程度)と、馬の飼育・調教にかかる「維持費(預託料)」の出資分(1口あたり月1,000円〜2,500円程度)です。馬がレースに出走していなくても、牧場や厩舎にいる限りこの費用は発生し続けます。出資金を回収する以前に、このランニングコストが出資者の負担としてのしかかってきます。
賞金から差し引かれる手数料(控除)が多いから
レースで獲得した賞金が、そのまま全額出資者に分配されるわけではありません。賞金からは、まず騎手や調教師への「進上金」(賞金の約20%)、さらにクラブへの「運用手数料」(賞金の約5%〜)などが差し引かれます。
その残額が、最終的に出資口数に応じて分配される「配当金」となります。一般的に、獲得賞金の総額のうち、出資者の手元に入るのは6割から7割程度とされています。つまり、収支をプラスにするためには、出資馬が総コストの1.5倍近い賞金を稼ぐ必要があるのです。
競走馬としてデビュー・勝利できる確率が低いから
出資した馬が順調にデビューし、賞金を稼げる保証はどこにもありません。サラブレッドが競走馬としてデビューできる確率は高いものの、そこから1勝できる馬は、世代の半数にも満たないといわれています。
ほとんどの馬は未勝利戦を勝てないまま引退していきます。未勝利戦を勝てなければ、その後の賞金が高いレースに出走できず、賞金を積み重ねることができません。選んだ馬が順調に勝ち上がれるかどうかは、一口馬主の収支を左右する大きな関門です。
競走馬の故障・アクシデントのリスクが高いから
競走馬は非常にデリケートな動物であり、故障(ケガ)のリスクが常につきまといます。順調に調教が進んでいても、レース前の故障で長期離脱したり、最悪の場合デビュー前に引退(ファンド解散)となったりするケースも少なくありません。
出資金が戻ってこないばかりか、活躍を期待していた楽しみさえも失うリスクは、金銭的なリスク以上に大きなものです。
税制上、給与所得との損益通算ができないから
一口馬主で得た利益や損失は、税務上「雑所得」として扱われるのが一般的です。これは、個人馬主の「事業所得」とは異なります。
もし年間で大きな赤字が出たとしても、雑所得の赤字は、会社員としての給与所得など他の所得と相殺する「損益通算」ができません。つまり、一口馬主で損をしても、その分を節税に利用することはできないのです。この点も、個人馬主と比較して儲からないと感じやすい一因でしょう。
そもそも儲けるために設計されていないから
一口馬主の仕組みは、金融商品としての側面を持ちながらも、本質的には馬主体験という娯楽・サービスを提供する側面が強いです。
クラブ側も、利益を出すことだけを追求するのではなく、会員に夢やロマンを提供することを重視している可能性が高いと考えられます。構造的に手数料が引かれ、リスクも高いこの仕組みは、そもそも金銭的な利益(儲け)を第一に追求するようには設計されていない、と考えるほうが自然かもしれません。
儲かるのはいくらから?一口馬主の収支シミュレーション
一口馬主で儲ける(=収支がプラスになる)ためには、どれくらいの活躍が必要なのでしょうか。シミュレーションを通じて、損益分岐点の高さを確認してみましょう。
具体例:募集総額2,000万円(500口)の馬に出資した場合
比較的安価な、募集総額2,000万円の馬(500口募集)に1口出資するケースを考えます。
まず、初期費用として「出資金」が4万円(2,000万円 ÷ 500口)かかります。これに「クラブ入会金」(2万円前後)が加わることが多いです。 次に、毎月のランニングコストとして「クラブ会費」(約3,000円)と「馬維持費」(約1,000円 ※50万円/500口と仮定)の合計約4,000円が発生します。
仮にこの馬が3年間(36ヶ月)現役だった場合、総コストは「出資金4万円 + (月4,000円 × 36ヶ月) = 18万4,000円」となります(入会金除く)。 この18万4,000円を配当金で回収することが、収支トントンのラインです。
賞金の手取りを65%と仮定すると、馬全体では約1億4,150万円(配当18.4万円 ÷ 65% × 500口)もの賞金を獲得する必要があります。これはG1レースを勝つか、重賞でコンスタントに活躍しなければ達成できない数字です。
アーモンドアイのような名馬なら儲かったのか?
ごくまれに一口馬主で儲かるケースも存在します。たとえば、歴史的名牝アーモンドアイ(シルクホースクラブ)の場合です。 同馬は募集総額3,000万円(1口6万円 / 500口)で募集されました。生涯獲得賞金は約19億1,500万円(日本馬歴代1位 ※2025年11月現在)です。
仮に賞金の手取りを65%とすると、馬主側の取り分は約12億4,400万円。これを500口で割ると、1口あたりの配当金は約248万円になります。出資金6万円を差し引いても、1口あたり約242万円もの莫大なプラス収支(儲け)になった計算です。 ただし、これは数千頭に一頭という奇跡的な成功例であり、同じルートを目指して儲けることを考えるのは現実的ではありません。
どうしても儲けたい!一口馬主で儲けるための戦略とは?
一口馬主は儲からないのが前提とはいえ、現実には約1割の儲かった人が存在します。その人たちは、単に運が良かっただけなのでしょうか。ここでは、非常に困難ながら、収支プラスの確率を少しでも上げるために考えられる戦略をいくつか紹介します。
クラブの募集馬傾向と相性を見極める
一口馬主クラブにはさまざまな特色があります。たとえば、G1馬を数多く輩出する「社台系」と呼ばれる大手クラブ(サンデーレーシング、シルクレーシング、キャロットファームなど)は、良血馬(血統の良い馬)が多く集まる反面、募集価格が高く、人気馬は抽選で出資できないこともあります。
一方で、比較的安価な馬を中心にラインナップし、堅実な勝ち上がりを目指すクラブもあります。また、募集口数もクラブによって異なり、40口や100口といった大口の募集は、当たった時のリターンが大きい(ハイリスク・ハイリターン)一方、500口や2000口といった小口の募集は、リターンが小さい(ローリスク・ローリターン)傾向にあります。自分の資金力や、一発逆転を狙うのか堅実性を求めるのか、スタイルに合ったクラブを選ぶことが第一歩です。
ホームラン(大当たり)を狙う血統・厩舎戦略
収支をプラスにする最も手っ取り早い方法は、アーモンドアイのような大当たりの馬を引き当てることです。これを狙う場合、必然的にG1レースで活躍できるポテンシャルを持った馬を選ぶことになります。
注目すべきは「血統」と「預託予定厩舎」です。父がディープインパクトやキタサンブラックといったリーディングサイアー(優秀な種牡馬)であり、母や近親にも活躍馬がいるような、いわゆる「良血馬」は、統計的に活躍馬を出す確率が高いです。当然、募集価格は高額になりますが、ホームランを狙うなら避けては通れません。 また、預託される厩舎が、G1勝利経験の豊富なリーディング上位の厩舎であるかも重要な判断材料となります。
アベレージ(堅実性)を重視する選馬眼
G1のような派手な活躍でなくとも、収支をプラスに近づける方法はあります。それは、まず「未勝利戦」を確実に勝ち上がり、その後も大きなケガなくコンスタントにレースに出走し、コツコツと賞金を稼いでくれる馬を選ぶことです。
このような馬を見極めるには、専門的な選馬眼が必要とされます。血統や価格に惑わされず、馬体(骨格や筋肉)がしっかりしているか、歩様(歩き方)がスムーズで故障のリスクが低そうか、といった点をカタログや募集動画で地道にチェックする作業が求められます。高額馬を避け、安価でも丈夫で堅実に走れそうな馬を選ぶ戦略です。
出資頭数を増やし「打率」の偏りをなくす
1頭や2頭の出資では、その馬が活躍するかどうかに収支がすべて左右されてしまいます。もしその馬が未勝利で引退すれば、収支は必ずマイナスです。
そこで、ある程度の余剰資金があるのであれば、1頭に集中投資するのではなく、複数の馬に分散して出資することも戦略の一つです。出資頭数(打席数)を増やすことで、G1馬は出なくとも、何頭かが勝ち上がり、全体の赤字幅を減らしてくれる(あるいは運が良ければプラスになる)可能性が高まります。ただし、その分、維持費の総額も増えるため注意が必要です。
一口馬主で儲けたら税金や確定申告はどうなる?
一口馬主で運良く利益が出た(儲かった)場合、その利益は税金の対象となり、金額によっては確定申告が必要になります。競馬ファンの中には「馬券と同じで一時所得では?」と考える方もいるかもしれませんが、一口馬主の配当金は税務上、異なる扱いです。
金銭的な儲けを期待しにくい趣味ではありますが、万が一大きな配当を得た場合に慌てないよう、税金に関する基本的なルールを理解しておきましょう。
一口馬主の利益は雑所得
一口馬主で得られる配当金は、税法上「雑所得」に分類されるのが一般的です。「事業所得」として節税に利用できる個人馬主とは、この点が大きく異なります。
雑所得とは、給与所得や事業所得、一時所得など他の9種類のいずれの所得にも当てはまらない所得を指します。雑所得としての取り扱いは、クラブ法人が馬主として事業を行い、出資者はそこから配当(利益の分配)を受けている、という法的な解釈に基づいています。事業として認められないため、一口馬主はあくまで個人の趣味の延長線上の投資活動とみなされます。
確定申告が必要になる基準(儲かった金額)
雑所得が発生した場合、確定申告が必要かどうかは、その人の他の所得状況と一口馬主による配当の利益金額によって決まります。
会社員や公務員など、一つの勤務先から給与を受け取っている人の場合、給与所得以外の所得(雑所得など)の合計額が年間で20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。この「20万円」は、賞金の配当金そのものではなく、配当金から経費を差し引いた「利益」の金額である点に注意してください。
利益の計算方法と経費の範囲
税務上の「利益(雑所得)」は、「収入(配当金)」から「必要経費」を差し引いて計算します。一口馬主において経費として認められる可能性が高いのは、その利益を得るために直接かかった費用です。
具体的には、利益が出た馬の「出資金(当該年分の減価償却費)」、「維持費(預託料)」、クラブの「月会費」などが該当します。たとえば、年間の配当金が30万円あっても、その馬にかかった年間の維持費や会費、減価償却費の合計が15万円であれば、利益は15万円となり、確定申告の基準(20万円)には達しません。
収支がマイナスになった場合の注意点
ここが最も重要な注意点ですが、一口馬主の収支が年間でマイナス(儲からなかった)になった場合、その赤字は税務上「なかったもの」として扱われます。
前述のとおり、一口馬主の所得は「雑所得」です。雑所得の赤字は、給与所得や事業所得といった他の所得の黒字と相殺する「損益通算」ができません。つまり、一口馬主で赤字が出たからといって、その分給与所得など他の所得にかかる税金を安くすることは不可能なのです。利益が出れば課税され、損失が出ても救済されない、この税務上の仕組みも「一口馬主は儲からない」と感じさせる大きな要因です。
儲からないのになぜ続ける?一口馬主の本当の魅力
これほどまでに儲からない仕組みであるにもかかわらず、なぜ多くのファンが一口馬主を続け、魅了されているのでしょうか。それは、金銭的なリターンをはるかに超えるプライスレスな価値があるからです。
「馬主」としての体験と興奮
自分の出資した馬が、自分たちの選んだクラブの勝負服を着て競馬場を走る姿は、馬券を買って応援するのとはまったく質の違う興奮をもたらします。もし勝利すれば、関係者しか入れない「ウィナーズサークル」での口取り式(記念撮影)に参加できるチャンスもあります。これは、まさしく出資者としての特権であり、感動的な体験といえるでしょう。
愛馬の成長を見守るロマン
一口馬主の醍醐味は、レースの勝ち負けだけではありません。まだ名前も決まっていない1歳の幼駒が、調教を経て競走馬としてデビューし、一戦一戦戦って成長していく姿を、まるで親のような気持ちで見守ることができます。
クラブから送られてくる近況報告に一喜一憂し、デビュー戦のパドックでは無事を祈り、引退するまでの一頭の馬の物語に当事者として寄り添えること、これこそが多くの出資者が儲からないとわかっていても、この趣味を愛し続ける最大の理由ではないでしょうか。
一口馬主は儲からないが、大きなロマンがある
「一口馬主は儲からない」という意見は、金銭的な収支だけを見れば、残念ながら事実です。シミュレーションが示すとおり、黒字化のハードルは極めて高く、多くの場合は「持ち出し(赤字)」で終わるでしょう。
しかし、それはあくまで投資の側面から見た評価にすぎません。一口馬主の本当の価値は、愛馬の成長に寄り添い、競馬というドラマの当事者となり、勝利の感動を分かち合うという体験にあります。
一口馬主とは、儲けを期待する投資ではなく、自らが見込んだ一頭の競走馬に対するロマンや興奮を得るための対価を伴う趣味です。その構造を正しく理解し、ご自身の余剰資金の範囲でその価値を見出せるのであれば、これほどエキサイティングな趣味はほかにないでしょう。
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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
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