- 更新日 : 2024年12月26日
定額減税はふるさと納税に影響する?関連制度からわかりやすく解説
定額減税とは、2024年6月より行われる減税のことです。1人当たり所得税3万円と住民税1万円の合計4万円が税金から控除されます。一方、ふるさと納税とは、応援したい自治体に寄附をすることにより税金の還付や控除を受けられる制度のことです。本記事では、定額減税がふるさと納税にどのような影響を与えるのかについて解説します。
目次
定額減税はふるさと納税には影響しない
2023年12月22日に、「令和6年度税制改正の大綱」が閣議決定されました。その中でふるさと納税の控除上限額の算定の基礎となる令和6年度分の所得割額は、定額減税額を控除する前の所得割額とすることが記載されています。
すなわち、 ふるさと納税は定額減税をする前の所得で控除上限額が決定されるので、ふるさと納税には影響しません。つまり、今までと変わらずふるさと納税を行うことが可能です。
定額減税の概要
定額減税には、所得税の定額減税と住民税の定額減税があります。所得税の定額減税による控除額は納税者および扶養親族1人につき3万円で、個人住民税は納税者および扶養親族1人につき個人住民税1万円です。
給与所得者に対する所得税の定額減税の事務処理は、「月次減税事務」と「年調減税事務」の2種類です。所得税の定額減税では、令和6年6月1⽇以降の最初に⽀払われる給与や賞与に対する源泉徴収税額から、その時点における対象者の人数に基づいて定額減税額を控除します。最初の給与や賞与で控除しきれない場合は、以後の令和6年中に⽀払われる給与や賞与に対する源泉徴収税額から順次控除していきます。この事務処理が、月次減税事務です。
年調減税事務とは、年末調整時点における対象者の人数に基づいた定額減税額を定めて、年間の所得税額との精算を行う方法のことです。
また、給与所得者に対する個人住民税の定額減税では、令和6年6月分は特別徴収されません。定額減税分を控除した住民税は、令和6年7月から令和7年5月までの11か月間で均等に分割して支払います。
そもそもふるさと納税とは
ふるさと納税とは、自分のふるさとや応援したい自治体に寄附をすることで、税金の還付や控除を受けられる制度です。寄附金に応じて自治体の名産物などの返礼品を受け取れる場合もあります。
ふるさと納税の概要
ふるさと納税とは、自分が選んだ自治体に寄附できる制度です。「ふるさと本舗」のようなサイトから寄附(申し込み)ができます。
選んだ自治体によっては、地域の肉・魚介・果物などの食べ物や、工芸品などの特産品、優待券・宿泊券などを返礼品として受け取れます。
ふるさと納税の寄附額のうち2,000円を越える部分は、原則として所得税と住民税から全額控除されます。ただし、全額控除される寄附金額は、年収・家族構成などによって一定の上限があり、無制限ではありません。
ふるさと納税の上限額
原則として、ふるさと納税額から自己負担額2,000円を除いた全額が所得税および個人住民税から控除されます。ただし、全額控除されるための上限額は決まっており、年収・家族構成などによって異なります。
ふるさと納税の控除上限額を把握しておくと、実質自己負担額2,000円のみでふるさと納税を行うことが可能です。ふるさと納税のポータルサイトでは、全額控除される年間上限の目安を公開していますので、以下で確認してみてください。
参考:全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安|総務省
ふるさと納税の控除
ふるさと納税を行って確定申告により控除する場合、所得税から控除して残りの控除額を住民税から控除します。住民税からの控除は、基本分と特例分の控除があり、特例分は住民税所得割額によって計算式が変わります。
- 所得税からの控除
まずは、以下の計算式で算出された額が所得税から控除されます。
所得税からの控除額=(ふるさと納税額-2,000円)×所得税の税率
控除されるふるさと納税額の上限は、総所得金額等の40%です。
- 住民税からの控除(基本分)
住民税(基本分)の控除額は、以下の計算式で求めることができます。
住民税からの控除額(基本分)=(ふるさと納税額-2,000円)×10%
控除されるふるさと納税額の上限は、総所得金額等の30%です。
- 住民税からの控除(特例分)
住民税(特例分)の控除額は、特例分が住民税所得割額の2割を超えない場合、以下の計算式で求めることができます。
住民税からの控除額(特例分)=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
特例分が住民税所得割額の2割以上の場合は、以下の計算式で求めることができます。
住民税からの控除額(特例分)=(住民税所得割額)×20%
このケースではすべての控除を合計しても全額が控除されず、実質負担額は2,000円を超えるので注意が必要です。
ふるさと納税の控除を受ける方法
ふるさと納税の控除を受ける場合、原則として確定申告を行います。しかし、平成27年4月1日から「ふるさと納税ワンストップ特例制度」という制度が始まりました。ふるさと納税ワンストップ特例制度は、一定の条件を満たすことで確定申告をしなくても控除を受けられる仕組みです。
ふるさと納税ワンストップ特例制度は、以下の条件をすべて満たした場合に利用できます。
ふるさと納税の流れ(確定申告)
ふるさと納税ワンストップ特例制度を申請しないで、ふるさと納税をする場合の流れは以下です。
- 自治体を選んでふるさと納税を行う
ふるさと納税を行った場合には、確定申告に必要な寄附を証明する書類(受領書)が発行されます。
- 確定申告を行う
ふるさと納税を行った次の年の3月15日までに、住所地管轄の税務署に確定申告を行います。確定申告には、寄附を証明する書類(受領書)の添付が必要です。
- 所得税の控除
確定申告を行うことにより、ふるさと納税を行った年の所得税からふるさと納税の控除が行われます。源泉徴収などによりすでに所得税を納めている場合は、還付される可能性があります。
- 住民税の控除
確定申告を行うことにより、ふるさと納税を行った年の翌年度分の住民税から控除されます。
ふるさと納税の流れ(ワンストップ特例制度)
ふるさと納税ワンストップ特例制度を申請して、ふるさと納税をする場合の流れは以下です。
- 自治体を選んでふるさと納税を行う
ふるさと納税を行った場合には、ふるさと納税ワンストップ特例の申請書の提出が必要です。
- 住民税の控除
所得税からの控除は行われずに、その分も含めた控除額の全額がふるさと納税を行った年の翌年度分の住民税から控除されます。
ふるさと納税の反映はあくまで「来年の住民税」
確定申告の場合は、まずはふるさと納税を行った年の所得税から控除が行われ、残りの控除はふるさと納税を行った年の翌年度分の住民税から控除されます。
一方、ふるさと納税ワンストップ特例制度の場合は、控除額の全額がふるさと納税を行った年の翌年度分の住民税から控除されます。住民税からのふるさと納税の控除は、どちらの方法でも翌年度分の住民税からの控除です。
人事労務担当者は定額減税やふるさと納税の知識を取得しておくことが重要
ふるさと納税は、従業員が自分で手続きをするため、人事労務担当者の事務に影響はありません。しかし、2024年は定額減税の実施により、従業員から定額減税がふるさと納税に影響するのか聞かれる可能性があります。したがって、人事労務担当者は、定額減税やふるさと納税の知識を取得しておくことが大切です。
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