• 更新日 : 2026年8月4日

内定取り消しになるケースとは?違法・不当になる理由、企業リスクと対応手順を解説

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Point内定取り消しが認められるケースは?

内定取り消しは解雇と同等であり、客観的に合理的な事由がある場合のみ有効です。

  • 卒業・資格未取得や経歴詐称は取消事由になる
  • 軽微・業務無関係な理由は違法と判断される
  • 不当取消は慰謝料請求・企業名公表のリスク

Q. 経営難を理由に内定取り消しはできる?

A. 整理解雇の4要件(必要性・回避努力・人選合理性・手続き相当性)をすべて満たす場合のみ有効です。

企業が内定を出した時点で労働契約が成立するため、内定取り消しは解雇に相当し、原則として認められません。不当な内定取消しを行った場合、訴訟・損害賠償請求・厚生労働省による企業名公表といったリスクが生じます。本記事では、内定取り消しになるケースや違法・不当とされる事例、企業が踏むべき手順と注意点まで、採用担当者・バックオフィス担当者向けに詳しく解説します。

内定と内々定は何が違うのか?

内定と内々定は混同されやすいですが、法的な扱いが大きく異なります。内定は労働契約が成立した状態であるのに対し、内々定は将来的に内定を出すという企業の意思表示にとどまります。

内定

内定とは、企業が応募者に採用の意思を伝え、入社について合意している状況です。内定が出された時点で、一般に労働契約が成立したとみなされます。

ただし、内定時の労働契約は「始期付・解約権留保付労働契約」という特殊な形態です。「始期付」とは、契約自体は成立しているものの、実際の労務提供(働き始め)は入社日からという意味です。「解約権留保付」とは、一定の事由がある場合に限り、労働契約を解約する権利を留保するという意味です。内定通知書には通常、内定取消事由が記載されており、「契約は成立しているが、一定の条件に該当した場合には解約があり得る」という意味合いを持ちます。

内々定

内々定は、正式な内定通知の前段階として採用担当者が口頭などで採用意思を伝えるものであり、通常は労働契約の成立とはみなされません。そのため、内々定の取り消しは内定取り消しほど厳格な法的制限を受けません。

ただし、内々定の段階であっても、企業が他社の選考を辞退するよう強く指示するなど、労働契約が確実に成立するという強い期待を持たせた場合は、内定が成立しているものとして、損害賠償を請求される可能性があります。

内定取り消しとはどういう意味か?

内定取り消しとは、企業側が一度成立した労働契約の解約権を行使することです。つまり、始期付解約権留保付労働契約の解約権を使うことであり、解雇と同等の扱いになります。内定通知書に記載された内定取消事由に該当した場合などに、はじめて取り消しが可能となります。

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内定の取り消しが認められるケースとは?

内定取り消しが有効とされるのは、内定通知書に記載された取消事由に該当し、かつ客観的に合理的・社会通念上相当と認められる場合に限られます。以下に代表的なケースをまとめます。

取消事由 認められる条件の目安
学校を卒業できなかった 卒業を前提に内定を出しており、卒業できないことが確認された場合
免許・資格が取得できなかった 当該業務の遂行に必須の資格であり、取得不可が確定した場合
経歴詐称が判明した 詐称内容が重大で、採用判断に影響を与えるものである場合
健康上の問題で就労不能 通常の業務に重大な支障が生じるほど健康状態が悪化した場合
内定後に刑事事件を起こした 事件の内容・性質が業務や会社の信用に重大な影響を与える場合
経営難による整理解雇 整理解雇の4要件をすべて満たしている場合
入社書類未提出・音信不通 指定期日までに必要書類を提出せず、連絡も取れない状態が続く場合

学校を卒業できなかった場合

新卒採用における内定取り消しとして最も典型的なケースです。企業は高校・大学等を卒業することを前提に内定を出しているため、単位不足など何らかの事由で卒業できなかった場合は、内定取り消しを行えます。

必要な免許・資格が取得できなかった場合

免許や資格がなければ従事できない業務がある場合、内定者がその資格を取得できなかった場合は内定取り消しが可能です。採用の前提条件が満たされなかった以上、解約権の行使が認められます。

経歴詐称など履歴書に重大な虚偽があった場合

経歴詐称など、採用判断に直接影響する重大な虚偽が履歴書にあった場合は、内定取り消しが認められます。ただし、虚偽の内容が軽微で採用判断に影響しない場合は、取り消しが無効とされる可能性があります。虚偽の重大性の判断は慎重に行う必要があります。

健康上の問題により通常勤務が困難な場合

内定後に重篤な疾病や負傷が判明し、通常の業務に重大な支障が生じると判断される場合は、内定を取り消すことが可能です。ただし、支障が軽微な場合や、別の職務であれば就労できる場合、あるいは内定前から企業が健康状態を把握していた場合などは、取り消しが認められないことがあります。

内定後に刑事事件を起こした場合

内定後に内定者が刑事事件を起こした場合も、内定取り消しの事由となり得ます。ただし事件の態様・内容によっては、それが直ちに採用取り消しに相当する重大な事由とは認められない場合もあるため、事案ごとに慎重に判断する必要があります。

経営難により整理解雇の要件を満たした場合

経営上の理由で人員削減が必要となった場合も、内定取り消しが可能です。ただし、この場合は整理解雇と同様に厳格な4要件の充足が求められます。

要件 内容
人員削減の必要性 経営上、人員を削減しなければならない切迫した必要性があること
解雇回避努力 配置転換・残業削減・役員報酬カットなど、解雇を避けるための努力をつくしたこと
人選の合理性 解雇(取消)対象者の選定に客観的・合理的な基準があること
手続きの相当性 対象者や労働組合に対して充分な説明・協議を行ったこと

経営難を理由に内定を取り消す場合は、上記4要件をすべて充足しなければ、内定取り消しが無効と判断されるリスクがあります。

入社書類の未提出・音信不通の場合

就業規則や内定通知書で提出が義務付けられている身元保証書など、指定された書類を何度提出を促しても提出しない場合や、企業からの再三の連絡を拒否して音信不通になった場合も、内定取り消しの理由となり得ます。内定者側に入社意思がないとみなせる状況であれば、取り消しが有効と判断される可能性があります。

内定取り消しが不当・違法になるケースとは?

取消事由に形式的に該当していても、その内容が軽微または業務と無関係な場合は、内定取り消しが不当・違法とされます。法的に無効と判断されると、企業は損害賠償義務を負う可能性があります。

取消事由の内容が軽微な場合

健康状態の悪化が軽微で就労に支障がない場合、あるいは軽微な交通違反など業務に重大な影響を及ぼさない行為を理由に内定を取り消した場合は、「重すぎる処分」として違法と判断されることがあります。履歴書の虚偽についても、採用判断に影響を与えないほど軽微な内容であれば、同様に無効とされる可能性があります。

業務と無関係な理由による場合

内定後の調査で新たな事情が判明しても、それが業務と関係のない個人的事情である場合は、不当な内定取り消しとなることがあります。内定者の国籍・出身地・思想信条・家族構成などは仕事の能力と無関係であり、これらを理由とした内定取り消しは認められません。

内定取り消しをした企業が負うリスクとは?

不当・違法な内定取り消しをした場合、企業には訴訟・損害賠償・企業名公表という3つの主要なリスクが生じます。採用活動への悪影響も含め、そのダメージは長期にわたります。

訴訟・損害賠償を請求されるリスク

内定取り消しが無効と判断された場合、企業は内定者の労働者としての地位確認(雇入れ義務)や、未就労期間分の賃金遡及支払いを命じられることがあります。また、慰謝料・休業損害などの損害賠償請求も受ける可能性があります。

慰謝料の相場は50万円〜100万円程度とされており、前職を退職済みの場合には165万円〜300万円程度の高額になることもあります。大日本印刷事件(最高裁昭和54年7月20日判決)でも慰謝料100万円の支払いが認められており、訴訟リスクは決して小さくありません。

参考:内定取り消しの損害賠償(慰謝料)相場|4つの事例と簡単な増額方法|労働弁護士コンパス

厚生労働省による企業名公表リスク

新卒者への不当な内定取り消しが以下のいずれかに該当する場合、厚生労働省によって企業名がハローワーク経由で公表されることがあります。

  • 2年以上連続して内定取り消しが行われた
  • 同一年度内に10名以上の内定取り消しが行われた
  • 事業活動の縮小を余儀なくされているとは明らかに認められない状況で内定取り消しが行われた
  • 内定が取り消された新規学卒者に対し、取消事由の説明が不十分だった、または再就職支援がなかった

企業名が公表されると採用ブランドが著しく傷つき、将来の採用活動にも深刻な悪影響が生じます。

参考:新規学校卒業者の採用内定取消しの防止について|厚生労働省

内定取り消しを行う手順は?

やむを得ず内定を取り消す場合は、取消事由の精査・早期通知・誠実な説明・補償の検討という4つのステップを踏む必要があります。手続きの不備が後の訴訟リスクにつながるため、慎重に進めることが重要です。

STEP1:取消事由が法的に認められるか精査する

まず、内定取消事由に具体的に該当しているかを確認します。取消事由が客観的に合理的か、本当に内定を取り消さざるを得ない状況かを、可能であれば弁護士・社会保険労務士に相談のうえ慎重に検討します。軽微な事由での取り消しは後の訴訟リスクを高めます。

STEP2:取消対象者へ可能な限り早期に通知する

取り消しが決定したら、できるだけ早く本人へ通知します。内定取り消しは解雇と同様の扱いとなるため、少なくとも就業開始予定日の30日前までに通知することが必要です。早期の通知は、内定者が次の就職活動を始める時間的余裕を生むという意味でも重要です。

STEP3:取消事由を丁寧に説明し、記録を残す

連絡方法は対面・文書郵送・電子メールのいずれでも構いませんが、取消事由を具体的に説明する必要があります。「いつ・どのような説明をしたか」というログを必ず記録しておきます。取り消しについて合意が得られた場合は合意書を作成します。

STEP4:補償内容を提示し、誠意ある対応をする

内定取り消しによって内定者は多大な損害を被ります。金銭補償の検討はもちろん、再就職先の紹介など、実質的な支援を提示することが求められます。一方的な取り消しにならないよう、誠意ある対応が企業としてのリスク低減にもつながります。

内定取り消しに関する主な判例・事例とは?

内定取り消しをめぐる裁判例は数多くありますが、特に参照されることの多い代表的な2件を紹介します。いずれも、内定取り消しの有効性の判断基準を示した重要な判決です。

大日本印刷事件(最高裁昭和54年7月20日判決)

採用内定を受けて就職活動を終えた学生が、就職直前に内定を取り消され、その無効を訴えた事件です。内定した企業は内定当時から内定者への適確性に懸念を持っていたにもかかわらず、何の調査もしないまま雇入れ直前になって内定を取り消しました。

最高裁は「内定取り消しができるのは、内定当時知ることができないか、知ることが期待できないような事実であって、客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できるものに限られる」として、取り消しを無効と判断しました。内定取り消しの有効性を判断する基本的な基準を示したリーディングケースです。

インフォミックス事件(東京地裁平成9年10月31日判決)

採用内定後に経営が悪化した会社が、内定者に内定辞退を勧告した事件です。内定者はすでに前職に退職届を提出しており、元に戻れない状況でした。

裁判所は、経営悪化を理由とする内定取り消しには整理解雇の4要件の充足が必要と判断しました。4要件のうち3つは充足していたものの「手続きの妥当性」(内定者への説明・協議の不足)が認められないとして、取り消しを無効としました。手続きの相当性がいかに重要かを示す事例です。

内定出しに影響を与えるインターンシップの評価実態

近年、新卒採用において内定の合意に至るプロセスでは、インターンシップが大きな役割を果たしています。マネーフォワードでは、新卒採用でインターンシップ業務に関与した経験がある担当者を対象に、その実態を調査しました。

7割以上の企業で選考の優遇措置が存在

調査の結果、インターンシップの評価が最終的な内定出しに与える影響において、最も多かったのは本選考のプロセスが一部免除されることで41.7%、直接内定に直結しているのは31.5%でした。合計して7割以上の企業が何らかの優遇措置を設けており、実質的な選考プロセスとして機能している実態があります。このように、正式な内定通知を出す前段階から、インターンシップを通じた評価が将来の労働契約成立に深く結びついていることが分析から明らかになりました。

出典:マネーフォワード クラウド、最終的な内定出しへの影響【インターンに関する調査データ】(回答者:インターンシップ業務に関与したことがある604名、集計期間:2026年6月実施)

内定通知書のテンプレート(無料)

以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。

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内定取り消しは慎重な判断と誠実な対応が不可欠

内定取り消しになるケースは限定的であり、客観的に合理的な事由がなければ解雇と同様に無効と判断されます。不当な内定取消しは訴訟・慰謝料請求・企業名公表という深刻なリスクにつながります。やむを得ず取り消しを行う場合でも、取消事由の該当性を慎重に精査し、就業開始予定日の30日前までに通知したうえで、内定者への誠実な説明と補償対応を徹底することが企業として求められる姿勢です。

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