- 更新日 : 2026年10月19日
年末調整と確定申告が重複したらどうなる?対処法と防止策を解説
重複しても二重課税にはならず、確定申告の内容で税額が再計算されます。
- 確定申告が年末調整を上書きする
- 放置すると加算税や延滞税が生じる
- 自主的な修正なら加算税を抑えられる
2社の年末調整や扶養控除の重複も、はやめの申告で是正できます。
年末調整と確定申告が重複しても、二重課税にはなりません。確定申告の内容が年末調整の結果を上書きし、税額が再計算される仕組みだからです。
本記事では、重複のパターン別の対処法と、放置した場合のペナルティ、実務担当者向けの対応フローを解説します。
年末調整と確定申告が重複したらどうなる?
年末調整と確定申告の両方を行っても、二重課税にはなりません。年末調整と確定申告の両方を行っても、それだけで二重課税になるわけではありません。確定申告では、年末調整済みの給与所得や源泉徴収税額などを含めて年間の所得税額を計算し、納付済みの税額との差額を精算します。ただし、確定申告で控除などを重複して適用した場合は、申告内容の訂正が必要になることがあります。
ただし、以下のパターンでは重複が問題となるため注意が必要です。
- 2社以上で年末調整を行ってしまった(扶養控除等申告書の重複提出)
- 年末調整済みの控除を確定申告でも二重に入力してしまった
- 夫婦が同じ子どもをそれぞれの年末調整で扶養親族に入れてしまった
いずれのパターンも、気づいた時点で正しく修正すれば追徴課税のリスクを抑えられます。所得税法上、確定申告が年末調整に優先するため、確定申告で正しい数値を申告すれば税額は適正に再計算されます。
重複に気づかず放置してしまうと、税務署からの指摘や過少申告加算税・延滞税の対象になるケースがあります。重複しているかもしれないと感じたら、早めの確認と対処が欠かせません。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
年末調整で従業員がやりがちな8つの間違い
年末調整で従業員の方々がやりがちな8つのミスをとりあげ、正しい対応方法についてまとめました。
年末調整業務をスムーズに完了させるための、従業員向けの配布資料としてもご活用いただけます。
扶養控除等申告書 取り扱いガイド
扶養控除等申告書は、毎月の源泉徴収事務や年末調整の計算をするうえで必要不可欠な書類です。
扶養控除等申告書の基礎知識や具体的な記入方法、よくあるトラブルと対処方法などをわかりやすくまとめたおすすめのガイドです。
年末調整業務を効率化するための5つのポイント
「毎年年末調整のシーズンは残業が多くなりがち…」、そんな人事労務担当者の方に向けて年末調整業務をスムーズに行うためのポイントをまとめました。
スケジュールや従業員向け資料を作成する際の参考にしてください。
年末調整のWeb化、業務効率化だけじゃない3つのメリット
年末調整のWeb化=業務効率化のイメージが強いかもしれませんが、実際には労務担当者にしかわからない「もやもや」を解消できるメリットがあります。
この資料ではWeb化により業務がどう変わり、何がラクになるのかを解説します。
年末調整後の確定申告で二重控除を防ぐには?
年末調整後に確定申告をする際、二重控除を防ぐには源泉徴収票の数値をそのまま確定申告書に転記することがポイントです。年末調整で申告済みの控除を確定申告で再入力すると、控除額が実際より大きくなり、本来の税額より少なく申告してしまうリスクがあります。
源泉徴収票をそのまま転記する
確定申告書に転記するのは、年末調整後の源泉徴収票に印字された金額そのものです。
確定申告書には「給与所得の源泉徴収票」の内容を転記する欄があります。確定申告では、年末調整後の源泉徴収票に記載された給与収入、源泉徴収税額、所得控除などの情報を正しく入力します。年末調整ですでに適用されている控除を重複して計上しないよう注意しましょう。一方、医療費控除や寄附金控除など、確定申告で追加適用する控除については、要件を満たすか確認したうえで別途申告します。。
保険料控除の二重入力に注意する
二重控除が起きやすいのが保険料控除の欄です。
年末調整で生命保険料控除証明書を勤務先に提出済みにもかかわらず、確定申告でも同じ証明書をもとに金額を入力してしまうケースが見られます。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、源泉徴収票の内容を入力した時点で年末調整済みの控除が自動反映されます。手書きやExcel管理で申告書を作成する場合は、源泉徴収票の各控除欄を一つずつ確認しながら転記すると安全です。
住宅ローン控除の初年度は確定申告が必要になる
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、適用初年度のみ確定申告での手続きが必要です。
2年目以降は年末調整で控除を受けられますが、初年度だけは年末調整では対応できません。初年度に確定申告で住宅ローン控除を申請する際は、源泉徴収票の転記に加えて「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と金融機関からの「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が必要です。年末調整と確定申告を両方行う形になりますが、源泉徴収票を正しく転記すれば二重控除にはなりません。
参考:年末調整済みと年末調整済みでない源泉徴収票の見分け方|国税庁
2社で年末調整を重複した場合の対処法は?
2社で年末調整が行われてしまった場合は、まず各勤務先の源泉徴収票や年末調整の内容を確認します。確定申告が必要かどうかは、給与収入やその他の所得などに基づいて判定します。
確定申告が必要な場合は、各勤務先の給与を合算して税額を計算し、正しい税額に精算します。
申告義務がない場合でも、年末調整の誤りによって税額が過少になっているときは、適切な是正方法を確認する必要があります。所得税法第194条により、扶養控除等申告書(給与所得者の扶養控除等(異動)申告書)は主たる給与の勤務先1か所に提出する仕組みのため、2社分をそのまま放置すると税額が正しく計算されません。
主たる給与の判定基準を確認する
複数の勤務先から給与を受け取っている場合、主たる給与とは、原則として「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した勤務先から支払われる給与をいいます。
収入の多い勤務先が必ず主たる給与の支払者になるわけではありません。扶養控除等申告書は原則として1か所の勤務先に提出し、その他の勤務先からの給与は従たる給与として取り扱います。
扶養控除等申告書は、主たる給与の支払者に提出します。誤って2社に提出してしまった場合、まずはどちらが主たる給与に該当するかを確認しましょう。主たる給与でない方の勤務先には、扶養控除等申告書の取り下げを申し出る必要があります。
確定申告で合算・是正する
2社分の年末調整が完了してしまった後は、全勤務先の源泉徴収票をもとに確定申告で合算・是正します。
- 全勤務先から源泉徴収票を受け取る
- 各社の給与収入・源泉徴収税額・社会保険料を合算する
- 国税庁の確定申告書等作成コーナー、またはe-Taxで確定申告書を作成する
- 合算した所得に対する正しい税額と、源泉徴収された税額の差額を精算する
2026年分の所得に対する確定申告期限は2027年3月15日(月)です。期限を過ぎると無申告加算税や延滞税が生じやすくなるため、早めに対応しましょう。
例えば、A社で年収300万円・B社で年収120万円の給与を得ている場合、それぞれの源泉徴収票の「支払金額」「源泉徴収税額」「社会保険料等の金額」を合計し、420万円の給与収入として申告します。すでに各社で徴収済みの税額は「源泉徴収税額」欄に合算して記入すれば、過不足が自動的に計算されます。
参考:No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収|国税庁
夫婦間で扶養控除が重複したらどうする?
同一の扶養親族は、夫婦のどちらか一方しか申告できません。所得税法第85条第5項および同法施行令第219条において、2人以上の居住者の扶養親族に該当する者は、いずれか一の居住者の扶養親族にのみ該当するものとみなすと定められています。
共働き世帯で起こりやすいのが、夫と妻がそれぞれの年末調整で同じ子どもを扶養親族として申告してしまうケースです。この場合、各勤務先が市区町村へ提出する給与支払報告書や税務署へ提出する源泉徴収票の内容から重複が把握され、税務署や市区町村から確認の連絡が届くことがあります。
事前に夫婦間で扶養の振り分けを決める
毎年の年末調整が始まる前に、夫婦でどちらが子どもを扶養に入れるかを話し合っておくと重複を防げます。
年末調整の書類提出時期(11月〜12月頃)までに決定し、扶養に入れない側は扶養控除等申告書の扶養親族欄を空欄にしておけば手続き上のミスは起きにくくなります。なお、年の途中で離婚や別居があった場合は扶養親族の要件自体が変わることがあるため、該当年の12月31日時点の状況で判断する必要があります。判断に迷う場合は、税理士に相談するのも一つの方法です。
申告書等の再提出で所属を変更する
扶養親族の所属を変更できるのは、増やす側・減らす側の全員が、変更後の内容を記載した申告書等を提出する場合に限られます。
- 誰も確定申告書を提出していない場合:増やす側・減らす側の全員が、所属を変更した内容の確定申告書(期限後申告を含む)などを提出する。
- いずれかがすでに確定申告書を提出済みの場合:所属の変更はできない。重複して控除を受けていた側は、その控除を除いて修正申告を行い、不足税額を納付する。
修正申告書と更正の請求書は、所属変更に使える「申告書等」に含まれません。個別の事情によって手続きが異なるため、税務署または税理士に確認してください。
参考:No.1181 納税者が2人以上いる場合の扶養控除の所属の変更|国税庁
年末調整の重複ミスへの対応フローは?
年末調整の重複ミスは、発覚した時期によって会社側の対応方法が変わります。バックオフィス担当者は、以下のフローをふまえて従業員への案内を切り替えましょう。
1月中なら年末調整のやり直しが可能
年末調整後に扶養親族の異動などが判明した場合は、状況に応じて年末調整をやり直せることがあります。
翌年1月31日の法定調書提出期限までに訂正できる場合は、源泉徴収票などを正しい内容に修正して提出します。ただし、やり直しの可否や必要な手続きは、誤りの内容や訂正時期によって異なるため、個別に確認する必要があります。
- 従業員から重複の申し出を受ける
- 誤って提出された扶養控除等申告書を回収・取り消す
- 正しい内容で年末調整を再計算する
- 源泉徴収票を再発行し、従業員と税務署・市区町村に提出する
源泉徴収票(税務署)と給与支払報告書(市区町村)の提出期限がいずれも1月31日のため、この日までに修正が完了すれば、市区町村や税務署への報告も正しい数値で行えます。
2月以降は従業員に確定申告を案内する
年末調整の誤りが翌年2月以降に発覚した場合は、まず誤りの内容と源泉徴収票などの提出状況を確認します。
会社側で訂正できるかを検討し、確定申告が必要な場合は従業員本人に申告を案内します。確定申告の要否や具体的な是正方法は、個別の状況に応じて判断する必要があります。
すでに法定調書が提出済みのケースが大半だからです。従業員に案内する際のポイントは以下のとおりです。
- 全勤務先の源泉徴収票を手元に用意するよう伝える
- 確定申告書等作成コーナー(e-Tax)の利用を案内する
- 申告期限(2026年分は2027年3月15日)を明示する
- 不明点があれば税務署の電話相談センターへの問い合わせを案内する
年末調整や確定申告の重複を放置した場合のペナルティは?
年末調整や確定申告の重複を放置すると、過少申告加算税や延滞税が課される場合があります。国税通則法第65条では、正当な理由なく税額が少なく申告された場合に加算税が課される旨が定められています。
| 種類 | 税率・計算方法 | 適用される場面 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 追加納税額の10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%) | 期限内に申告したが、税額が本来より少なかった場合 |
| 延滞税 | 法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課されます。原則税率は納期限の翌日から2か月以内が年7.3%、2か月経過後が年14.6%ですが、実際の適用税率は延滞税特例基準割合などに基づいて計算されます。2026年中の適用割合は、2か月以内が年2.8%、2か月経過後が年9.1%です。 | 納付が期限に遅れた場合 |
| 無申告加算税 | 原則として、50万円以下の部分は15%、50万円超300万円以下の部分は20%、300万円超の部分は30% | 申告期限までに申告しなかった場合 |
延滞税は法定納期限の翌日から日割りで発生するため、放置する期間が長いほど金額が膨らみます。2026年分の所得税は2027年3月15日が法定納期限です。
自主的な修正申告なら加算税が軽減される
税務署から指摘を受ける前に自主的に修正申告を行った場合、過少申告加算税は原則として課されません。
国税通則法第65条第6項に基づく措置で、調査通知を受ける前(かつ更正を予知する前)に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税は課されません。なお、調査通知後で更正の予知前の修正申告には5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)の加算税が課されます。延滞税は別途かかります。実際に、年末調整で扶養控除を重複して申告していたと後から気づき、翌年の確定申告で自主的に修正したケースでは、追加の所得税と少額の延滞税のみで済んだという事例は少なくありません。一方、税務署からの指摘後に修正した場合は加算税が上乗せされるため、重複に気づいたら速やかに対応することが経済的な負担を抑えるポイントとなるでしょう。
参考:延滞税の計算方法|国税庁
年末調整と確定申告の重複に関してよくある質問
最後に、年末調整と確定申告の重複に関してよくある質問とその回答をまとめました。
副業収入が20万円以下なら確定申告は不要?
原則として、副業所得が年間20万円以下であれば、一定の要件のもとで所得税の確定申告は不要です。
ただし、2か所以上から給与を受け取っている場合は、年末調整されなかった給与の収入金額や給与所得・退職所得以外の所得金額などによって、確定申告が必要になることがあります。確定申告の要否は、国税庁が示す要件に基づいて判断しましょう。
所得税法上、給与所得者で副業の所得(収入から経費を引いた金額)が年間20万円以下であれば申告不要とされておりますが、住民税にはこの20万円以下免除のルールはなく、副業所得が20万円以下でも市区町村への住民税申告が別途必要になる点に注意しましょう。
参考:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
ふるさと納税のワンストップ特例は年末調整と重複する?
ワンストップ特例を利用していても、年末調整との重複問題は生じません。
ワンストップ特例は住民税からの控除であり、年末調整の所得税計算とは別の仕組みで処理されるためです。ただし、医療費控除などの理由で確定申告を行う場合、ワンストップ特例の申請は無効になります。確定申告書に寄附金控除を改めて記入しないと控除が受けられなくなるため、確定申告をする年は寄附金受領証明書を手元に用意しておきましょう。
転職した年の年末調整はどうなる?
前職の源泉徴収票を転職先に提出すれば、転職先で前職分もまとめて年末調整を行えます。
前職の源泉徴収票を提出しないまま年末調整を受けると、前職分の収入が反映されず税額が正しく計算されません。前職の源泉徴収票が届かない、または転職先への提出が間に合わなかった場合は、自分で確定申告を行い、前職分と転職先分の給与を合算して申告する必要があります。退職後に届く源泉徴収票は紛失しないよう保管しておくと安心です。
年末調整と確定申告の重複ははやめの対処で解決できる
年末調整と確定申告が重複しても二重課税にはならず、確定申告の内容で税額が再計算される仕組みです。ただし、2社での年末調整・二重控除・扶養の重複を放置すると、過少申告加算税や延滞税の対象になるケースがあります。重複に気づいたら、源泉徴収票を手元に用意し、国税庁の確定申告書等作成コーナーや税務署の相談窓口も活用しながら、正しい数値で申告・修正を進めましょう。
参考:所得税の確定申告|国税庁
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
-
# 年末調整業務
派遣社員の年末調整はどこで受ける?必要書類や流れ、2026年分の変更点と確定申告との違いを解説
派遣社員の年末調整はどこで行う? 派遣社員の年末調整は、就業先ではなく雇用契約を結んでいる派遣会社(派遣元)が行います。 年末調整の窓口は派遣会社(派遣元) 案内は一般社員より早く…
詳しくみる -
# 年末調整業務
【事例付き】年末調整の還付金はいつ、いくら戻ってくる?令和8年分の支払日や金額の計算方法を解説
年末調整の還付金はいつ戻る? 年末調整の還付金は、12月または1月の給与支払日に支給されるのが一般的です。 支払日は12月が多く、1月になる会社もある 受け取り方法は給与振込か手渡…
詳しくみる -
# 年末調整業務
12月に退職した人の年末調整はどうする?
12月退職の年末調整は必要? 12月退職者は原則年末調整の対象外ですが、12月に支給期が到来する給与を受け取った後に退職した場合など、一定のケースでは退職元で年末調整を行います。 …
詳しくみる -
# 年末調整業務
12月入社の人の年末調整は必要?
12月入社の年末調整の手続きは? 12月中に給与を支払うかどうかで、対象になるかが分かれます。 当月支給なら通常どおり年末調整を行う 翌月支給なら対象外で本人が確定申告する 前職の…
詳しくみる -
# 年末調整業務
給与支払報告書の訂正方法は?eLTAX・紙提出や期限後・過年度分の対応まで解説
給与支払報告書の訂正方法は? 給与支払報告書の訂正は、提出方法・時期に応じた手順で正しい内容を再提出すれば可能です。 訂正区分は「訂正・追加・取消」の3種類 eLTAXは対象者分の…
詳しくみる -
# 年末調整業務
年末調整で専業主婦の控除はどうなる?要件と申告する人を解説
専業主婦の世帯の年末調整は誰が手続きする? 給与の支払いがない専業主婦の控除は、配偶者(夫)の勤務先の年末調整で申告します。 控除額は申告する人の所得によって変わる 合計所得金額6…
詳しくみる



