- 更新日 : 2026年6月22日
赴任手当の種類と相場を紹介!税務・社会保険上の取り扱いも解説
赴任手当は転勤に伴う負担を補う法定外の手当で、種類ごとに所得税・住民税や社会保険料の扱いが異なります。
支給条件と金額は就業規則に明記しておきましょう。
転勤を命じられた従業員に支給できる赴任手当には、単身赴任手当・帰省手当・地域手当・引越し手当・着後手当など複数の種類があります。
それぞれで支給目的・相場・課税の扱いも異なるため、制度を設計・運用する人事担当者には正確な知識が求められます。
本記事では、赴任手当の種類や相場、税務・社会保険上の取り扱い、就業規則への明記方法を解説します。赴任手当の整備を検討している担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
赴任手当とは?
赴任手当とは、従業員が転勤を命じられた際に支給される各種手当の総称です。
支給は法律で義務付けられておらず、企業が就業規則や賃金規程にもとづいて独自に定める法定外の制度です。
支給の有無・種類・金額・条件はすべて企業が決定できるため、同業種でも会社によって大きく異なります。
二重生活・引越し費用・物価差といった転勤に伴う経済的負担を補填し、従業員の転勤承諾と定着を支援する目的で整備する企業が多くなっています。
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赴任手当には、支給目的や対象が異なる複数の種類があります。ここでは、赴任手当の主な7種類について解説します。
引越し手当(転勤支度金)
引越し手当(転勤支度金)とは、転勤に伴う引越し費用を会社が負担する一時金であり、転居の実費弁償として機能する手当です。
引越し手当には、実際の費用を精算する「実費精算型」と、一律金額を支給する「定額支給型」があります。
実費精算型は旅費規程にもとづいて支給すれば、非課税扱いです。
一方で、定額支給型は支給額が実費を大幅に上回る場合、過大として課税対象とみなされる可能性があります。
着後手当
着後手当とは、引越し後の一時滞在費・着任当初の雑費等といった、赴任地到着後の転居移転に伴う初期費用にあてるための一時金です。
定額支給が一般的であり、赴任直後に集中する支出を補填して従業員の負担を軽減することが目的です。
着後手当として支給される一時滞在費は、別居手当または住宅手当の一種とみなされ、給与所得として課税対象となります。
ただし、旅費規程にもとづき転居移転費の実費相当として支給した場合は非課税扱いとなるケースもあります。
なお、家具・家電など生活用品の購入費は旅費に該当しないため、非課税の対象外です。
住宅手当(家賃補助)
住宅手当(家賃補助)とは、赴任先での住居費用を補助するために毎月支給される手当であり、転居後の家賃負担を軽減する目的があります。
社宅ではなく住宅手当として支給されていれば、課税対象の給与所得として扱われます。
会社命令による転居かどうかや、家族帯同の有無など支給対象の範囲は企業によって異なるため、就業規則に支給条件を明確に定めておくことが大切です。
単身赴任手当
単身赴任手当とは、家族を残して単身で赴任する従業員に対して、二重生活で増加する生活費を補填するために支給する手当です。
月額の定額支給が一般的であり、「配偶者または子がいること」「転居を伴う転勤であること」を支給条件として定める企業が多くなっています。
給与所得として課税対象になるため、毎月の給与と合算されて所得税・住民税が計算されます。
単身赴任手当の支給開始や終了のタイミング(転居日・帰任日など)についても就業規則に明記しておくと、運用上のトラブルを防げるでしょう。
帰省手当
帰省手当とは、単身赴任者が家族のもとへ帰省する際の交通費を会社が補助する手当です。
月に1回や2か月に1回など帰省頻度を定め、実費または上限付きの定額で支給する方式が一般的です。
帰省手当は、定額支給の場合は給与所得として課税対象となります。
旅費規程にもとづいて実費精算する場合は旅費として非課税扱いとなるケースがあるため、支給形態と規程の整備が課税判断につながります。
なお、帰省頻度の設定にあたっては、転居前後の居住地間の距離を考慮しながら月1回程度を目安に定める企業が増えてきている傾向です。
地域手当
地域手当とは、物価水準や生活費が高い地域へ赴任した従業員に対して、本給に一定額を上乗せして支給する手当です。
国家公務員は地域ごとの支給割合が人事院規則で定められていますが、民間企業は独自の基準で設定できます。
地域手当の支給は、首都圏・大都市圏の勤務地を対象とする企業が大半です。
また、地域手当は給与所得として課税対象となります。
支給割合の設定にあたっては、国家公務員の基準を参考にしながら、転勤先の物価水準や生活コストに応じた水準を検討することが大切です。
転園・転学手当
転園・転学手当とは、転勤に伴い子どもが転園・転校を余儀なくされる際に発生する、制服・教材・入会金等といった諸費用を補助するために支給する手当です。
子どもは家族帯同での転勤が条件となるケースが多く、子どもの人数や就学状況に応じて金額設定や上限額を定める企業もあります。
支給方法は一時金が一般的であり、税務上は通常必要となる支出には該当しないため、課税対象です。
こうした取り扱いを踏まえ、支給条件と金額は就業規則に明記したうえでの運用が望まれます。
赴任手当の相場
赴任手当のそれぞれの相場は以下の表のとおりです。
| 手当の種類 | 支給形態 | 相場 |
|---|---|---|
| 単身赴任手当(公務員) | 月額定額 | 基本月額30,000円 ※距離加算で最大100,000円程度 |
| 単身赴任手当(民間企業) | 月額定額 | 平均49,300円 |
| 住宅手当(家賃補助) | 月額定額 | 平均18,700円 |
| 帰省手当・引越し手当・着後手当 | 一時金または実費精算 | 転勤1回あたり数万〜数十万円 |
| 転園・転学手当 | 一時金 | 実費精算(上限設定あり) |
| 地域手当(公務員) | 月額定額 | 基本給の4〜20% |
| 地域手当(民間企業) | 月額定額 | 首都圏・大都市圏対象に独自設定 |
参考:令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省
参考:人事院規則九―四九(地域手当)|e-GOV 法令検索
赴任手当の種類や公務員・民間企業のどちらであるかによって相場は異なります。
赴任手当の税務・社会保険上の取り扱い
赴任手当は種類によって、所得税・住民税の課税・非課税の扱いや社会保険料への影響が異なります。
ここでは、赴任手当ごとの税務・社会保険上の取り扱いについて解説します。
課税対象となる手当
給与所得として所得税・住民税の対象となる赴任手当として、単身赴任手当や地域手当、帰省手当(定額支給)があげられます。
実費弁償ではなく、生活コスト増加分の補填として定額支給される性質を持つため、課税扱いとなる点を押さえておきましょう。
また、月額で継続支給される手当は毎月の給与に合算されて税額が計算されるため、従業員の手取り額にも影響が及びます。
支給額と実際の手取り増加分には差が生じることから、あらかじめ従業員に説明しておくことが望ましいといえます。
くわえて、社会保険料の算定上も月額で継続支給される定額手当は「報酬」に含まれ、標準報酬月額に影響する可能性がある点にも注意が必要です。
非課税となる手当
引越し手当(転勤支度金)や着後手当は、旅費規程にもとづき実費相当分として支給した場合、所得税法上の旅費として非課税扱いとなるケースがあります。
同様に、帰省手当についても旅費規程にもとづく実費精算であれば、非課税となる場合があります。
ただし、いずれも「通常必要と認められる範囲内」の実費弁償であることが要件です。
支給額が実費を大幅に超える場合や旅費規程に根拠がない場合、過大とみなされ課税対象となる可能性があるため、適正な支給基準を旅費規程に明記しておくことが求められます。
社会保険料の算定対象となる手当
単身赴任手当や地域手当、住宅手当など月額で継続的に支給される手当は、報酬として社会保険料の算定基礎に含まれます。
算定基礎に含まれると標準報酬月額が上昇するため、会社・従業員双方の社会保険料負担が増加する点を押さえておきましょう。
一方で、引越し手当や着後手当のように一時金として支給される手当は、実費弁償性が明確であれば報酬から除外できるケースもあります。
ただし、具体的な算定方法は会社の状況によって判断が異なる場合があるため、社会保険労務士や最寄りの年金事務所にあらかじめ確認しておくと安心です。
なお、社会保険料の算定基礎は毎年4〜6月の報酬月額をもとに決定されるため、この時期に赴任手当の支給がある場合は標準報酬月額に影響する点にも注意が必要です。
赴任手当を就業規則に明記する際のポイント
赴任手当を適切に運用するには、支給条件や金額、算定方法を就業規則または賃金規程に明確に定めることが重要です。
ここでは、就業規則への明記にあたって押さえておきたいポイントを解説します。
支給条件・対象者を明確に定める
単身赴任者・転勤者・家族帯同の有無などの各手当の支給対象者と、支給開始・終了の条件を具体的に定めましょう。
「家族と別居していること」「会社命令による転勤であること」など支給要件を明文化することで、対象・非対象の判断基準が従業員に伝わりやすくなります。
支給条件があいまいだと従業員間の不公平感が生まれやすく、労使間のトラブルにつながるケースがあるため、できるだけ具体的な表現で記載する必要があります。
とくに単身赴任手当は支給条件が複数あるため、条件を列挙する形式で記載すると、担当者ごとの解釈のばらつきを防止可能です。
支給額・算定方法を具体的に記載する
各手当の支給金額は、定額・変動・上限額といった算定基準とあわせて明記しておきましょう。
変動制を採用する場合は、計算方法も具体的に示しておくと運用上のトラブルを防げます。
金額設定にあたっては、他社の相場を参考にしつつ、自社の財務状況や転勤頻度、対象者数を踏まえて現実的な水準を見極めることが求められます。
支給金額は従業員のモチベーションや転勤承諾率にも直結するため、市場水準と自社事情のバランスを意識した設計を心がけましょう。
赴任手当の制度設計と運用上の注意点
赴任手当制度を設計・運用する際は、複数の手当を組み合わせた場合のコスト管理や従業員間の公平性への配慮が求められます。
ここでは、制度設計と運用にあたって注意すべきポイントを解説します。
手当の組み合わせと費用を管理する
転勤時の手当は複数の種類が組み合わさるため、全手当を合算した支給総額が会社の人件費に与える影響を事前に試算することが大切です。
とくに単身赴任手当・住宅手当・帰省手当を合算すると月額10万円以上になるケースもあるため、支給する手当の種類と金額をセットで設計しましょう。
距離要件や家族要件などの支給要件を就業規則に明記して支給対象者の範囲を明確にすることで、意図しない費用の増加を防止できます。
家族構成による不公平感に配慮した設計にする
家族帯同者と単身赴任者では支給される手当の種類や金額が異なるため、従業員間で不公平感が生じる可能性があります。
こうした不満を防ぐには、支給基準を就業規則として明確に定め、全従業員が閲覧できる状態にして判断根拠の透明性を確保することが大切です。
また、支給条件は単純な家族の有無だけでなく、転勤による生活上の負担の程度に応じて設計すると、制度への納得感を得やすくなります。
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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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