- 更新日 : 2026年6月15日
社員寮と賃貸の借り上げはどっちが良い?法人契約の注意点と管理のコツを解説
従業員の自由度を重視するなら賃貸、管理効率なら一棟貸しの社員寮が最適です。
- 新卒採用なら社員寮、中途採用なら借り上げ賃貸
- 法人契約では入居者入替可能な特約が必須
- 家賃は相場の20~50%を従業員負担に設定
法人契約で注意すべき点は、従業員の入れ替えを可能にする特約を契約書に盛り込むことです。
「社員寮と賃貸の借り上げ、どっちを選ぶべきか」とお悩みの方もいるでしょう。
従業員の自由度を重視するなら賃貸、管理効率なら一棟貸しの社員寮が最適です。自社の目的に応じて選ぶべき形態や、賃貸借契約書の必須特約が異なるからです。
本記事では、家賃相場の目安や運営会社の活用法までを解説します。担当者の管理負担を抑えつつ、従業員に喜ばれる制度を整えるヒントとしてお役立てください。
社員寮と賃貸の借り上げはどっちを選ぶべき?
企業の課題や導入の目的に応じて、福利厚生の形態を選ぶとよいでしょう。方向性が自社の実態と合っていないと、採用力の強化につながらないばかりか、従業員の不満を招くこともあります。
社員寮と賃貸の借り上げの決定的な違い
前提として、社員寮にも会社所有型と借り上げ型があります。ここでは、一棟まとめて借り上げる・所有する形態と従業員が希望する一般賃貸を会社が法人契約する形態を比較します。
一棟借り上げ・所有型の場合は主に単身者向けで、食堂や大浴場などの共用設備を持つ施設を指すことが多いです。一方、一般賃貸の法人契約は形態の指定がなく、従業員が自ら選んだ物件を会社が代わりに契約するのが一般的です。
一棟型は管理が一元化されやすく、コミュニティ形成に向いています。一般賃貸の法人契約は間取りやエリアの自由度が高く、採用競争力として個々の従業員のライフスタイルに応えやすいという特徴があります。
どちらを選ぶかは、コミュニティ形成を重視するか、個人の自由度を優先するかという自社の採用・定着戦略の方針次第で決まります。
導入目的別の選び方
新卒の一括採用や同期の結束強化が目的なら社員寮、中途採用の強化や社員の多様なライフスタイル支援が目的なら借り上げ型が適しています。
社員寮は横の繋がりを強化しやすく、生活インフラを安価に提供できます。一方、借り上げ社宅は個人の好みのエリアや間取りを選べるため、福利厚生としての満足度が高まりやすく、テレワークなどの働き方にも適応しやすいです。
人事院の調査でも、企業が住宅関連の福利厚生を設ける目的は多様化しており、近年は従業員の個別ニーズに応えやすい「借り上げ社宅制度」を導入・拡充する企業が増加傾向にあります。
自社の採用戦略や働き方の変化に合わせて、どちらが人材確保に直結するかを基準に選択しましょう。
賃貸料相当額の考え方
社宅や寮を無償で貸与すると給与として課税されるため、国税庁が定める賃貸料相当額以上を従業員から徴収する必要があります。
税法上、一定額以上の家賃を受け取っていない場合、会社から「経済的利益」を受けたとみなされ、所得税の課税対象となってしまうためです。
国税庁の基準では、建物の固定資産税の課税標準額などを用いて計算される「賃貸料相当額」の50%以上を従業員から受け取っていれば、給与として課税されません。一般的な賃貸物件の場合、相場家賃の10〜20%程度が賃貸料相当額になるケースが多いです。
参考:No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁
企業と従業員の双方が税負担を抑えるには、国税庁のルールに沿って家賃を設定しておくことが重要です。
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社員寮・社宅の賃貸借契約で失敗しないためのポイント
法人契約特有の条項の確認や、貸主との交渉事項を事前に洗い出しておくことが重要です。個人契約とは異なる注意点が多く、事前の確認が後々のトラブル防止につながります。
法人契約における「賃貸借契約書」の確認事項
法人契約では「入居者の入替(名義変更)の可否」や「用途制限」の項目を必ず確認・交渉すべきです。一般の賃貸借契約は特定個人の居住を前提としているため、従業員の異動や退職に伴い、無断で別の従業員を入居させると無断転貸とみなされ契約解除のリスクがあるためです。
契約書の特約事項に「入居者を自社の従業員に限定し、入れ替えの際は貸主へ事前通知することで可能とする」という文言を盛り込むよう管理会社と交渉します。
従業員の異動や入れ替えに対応できるよう、契約を結ぶ前に、法人での運用を前提とした特約を盛り込んでおくと安心です。物件の検討段階から「法人での利用・入居者入替可能な物件か」を不動産会社に明示して探すと効率的です。
退去時の原状回復トラブルを防ぐ特約の結び方
退去時の原状回復費用の負担区分を契約書で明確にし、国土交通省のガイドラインから大きく逸脱した特約がないか確認すべきです。法人契約の場合、法人は資金力があると見なされ、借主(会社)側に不利な定額クリーニング代や過度な修繕費負担が特約で結ばれているケースが散見されるからです。
契約前に、経年劣化による壁紙の日焼けや、通常損耗にあたる修繕が会社負担になっていないかをチェックし、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を基準に交渉をおこないましょう。
予期せぬ修繕コストによる福利厚生費の圧迫を防ぐため、公的ガイドラインを盾にした特約交渉と、入居時チェックシートの整備・徹底が必要です。
従業員と会社間で結ぶ社宅使用契約の重要性
会社が借り上げた物件であっても、貸主との賃貸借契約とは別に、入居する従業員との間で「社宅使用契約」を締結しましょう。
従業員にルールや費用負担、退去条件を法的に同意させておかないと、給与天引きの違法性や、退職後の居座りトラブルに発展するからです。
労働基準法第24条の「賃金全額払いの原則」の例外として家賃を給与から控除するためには、労使協定の締結と、従業員本人からの書面による同意(使用契約)が必須となります。
企業側の法的リスクを最小化するために、入居前に詳細な規程を説明し、書面で合意を得るフローを構築しましょう。
従業員満足度を高める社員寮の賃貸ルール
「やめとけ」と言われないために、現代の若手の価値観に合わせたプライバシー保護と生活環境の整備が必須です。
社員寮の家賃設定方法
従業員満足度と節税効果を両立するには、相場家賃の20%〜50%程度を従業員の自己負担として設定するのが適切です。
国税庁の要件を満たして非課税の恩恵を受けつつ、近隣相場より明確に安い設定にすることで、福利厚生としての魅力が伝わるためです。
東京都内では、相場8万円の物件に対し、給与天引きで2〜3万円を従業員負担とし、残りを会社が福利厚生費として負担するケースが一般的です。従業員からすると毎月5〜6万円の実質的な節約となり、年間60〜70万円以上の差が生まれます。
法的要件を満たしつつ、採用市場でアピールできる「お得感」を実感できる負担割合を戦略的に設定しましょう。
プライベート空間の確保
近年の社員寮や借り上げ社宅では、一人ひとりのプライベート空間を確保することが大切にされています。ワークライフバランスを重視する人が増える中、風呂やトイレが共同の古いタイプの寮は、仕事の延長のように感じられ、敬遠されやすいためです。
従来の集合寮を廃止し、バス・トイレ別のワンルームマンションを会社で複数戸借り上げる形式へ移行する企業も増えています。
設備基準としては、以下を最低ラインとするのが現在の主流です。
- バス・トイレ別
- エアコン付き
- 独立洗面台
従業員のストレスを軽減し早期離職を防ぐためには、時代に即したプライバシー重視の物件を選びましょう。
人間関係のトラブルを防ぐための工夫
社員寮内での人間関係トラブルを防ぐには、干渉しすぎないルールの設定と社外の相談窓口の設置が有効です。
職場の上下関係がそのまま寮生活に持ち込まれると、従業員にとって休まらない環境となり、パワハラ問題や退職の引き金になりやすいからです。
「寮内での業務に関する説教・持ち込み禁止」などを明文化し、厚生労働省の指針にもある、ハラスメント等に対応できる外部のEAP(従業員支援プログラム)窓口を機能させましょう。
参考:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して|厚生労働省
物理的な環境だけでなく、心理的安全性が保たれるルールと逃げ道を用意することが重要です。
社員寮運営のポイント
自社で運用する場合の物件の借り方のメリット・デメリットを理解し、運営効率と従業員満足度を両立させる体制を整えることが重要です。
一棟貸しと複数戸借りの選び方
まとまった人数の受け入れや独自のセキュリティを重視するなら一棟貸し、柔軟な増減や社員個別の希望エリアに応えるなら借り上げ型が適しています。一棟貸しは管理効率が良い反面、空室リスクや初期費用が大きいです。借り上げ型は解約の柔軟性が高く、社員の希望エリアに対応しやすいためです。
製造業の工場勤務や新入社員の研修拠点としては一棟貸しを、中途採用やリモートワーク中心の企業では、各々が好きな物件を選べる複数戸借りを選ぶケースが多いです。自社の採用計画の確実性と、従業員に提供したい体験によって最適な手法を選択しましょう。
社員寮運営会社の選び方
運営会社を選ぶ際は、物件紹介だけでなく、契約管理や支払代行、退去手続きなどを一元化できる社宅代行サービスを選びましょう。
- 契約管理
- 支払代行
- 退去手続き
複数の賃貸物件を借り上げると、家主や管理会社がバラバラになり、毎月の支払いや修繕手配など、人事・総務部門の事務負担がパンクしてしまいます。大手の社宅代行サービスを導入し、敷金精算や契約更新の窓口を一本化したことで、担当者の業務工数を最大80%削減できた事例もあります。
運営会社の選定では、初期の仲介手数料だけでなく、長期的な管理コストをどれだけ外注できるかを評価基準にするとよいでしょう。
家具家電付き・食事付きサービスの導入の有無
家具家電付きや食事付きの寮サービスは、従業員の生活の負担を減らし、企業の採用力や健康経営を後押しします。新入社員や単身赴任者にとって、引っ越し費用や日々の家事の負担は小さくありません。こうした面を企業が支えることで、遠方の人材も採用しやすくなります。
住まいを用意するだけでなく、健康面や暮らしやすさへの配慮も伝えられるため、他社との差別化につながります。
従業員が退職した場合の社員寮の対応のポイント
退職時の契約整理は実務上最もトラブルになりやすいため、フローを確立しておく必要があります。退職が決まった時点で速やかに動くことが重要です。
会社と貸主間の「賃貸借契約」は継続する
従業員が退職しても、法人名義で締結している賃貸借契約は自動的には終了しません。契約の主体は会社と貸主であり、入居者個人の在籍状況は契約の存続に直接影響しないためです。
部屋が空室になった後、別の従業員を入居させるか、賃貸借契約書の解約予告期間に従って貸主に解約を申し出るか、会社側で選択する必要があります。
退職予定が判明した時点で速やかに次の対応を決定し、無駄な空室家賃の発生を防ぐ必要があります。解約予告期間を考慮した退職スケジュールの調整を、退職面談の段階から着手するとよいでしょう。
従業員との社宅使用契約は終了する
退職と同時に、会社と従業員間の社宅使用契約は終了し、従業員は原則として退去しなければなりません。社宅や社員寮は、在籍従業員への福利厚生を目的とした貸与であるため、雇用関係の終了をもって使用の前提条件が失われるためです。
退去遅延による不法占拠状態を防ぐため、社宅規程に「退職日から14日以内(または月末まで)に明け渡すこと」「遅延した場合は家賃の〇倍の損害金を請求する」といった、明確な条項を設けておきましょう。
スムーズな退去を促すためには、就業規則や社宅規程に退去期限を明記し、退職の申し出があった際に、書面で退去日を確約させることが重要です。
個人契約への切り替えを認めるケース
退職する従業員が引き続き居住を希望する場合、貸主の承諾を得られれば、法人契約から個人契約へ名義を変更することが可能なケースがあります。貸主にとっても、退去による空室期間や原状回復の手間を省き、家賃収入を継続できるメリットがあるため、合意に至りやすいためです。
元従業員が新たに保証会社の審査を受け直し、敷金等を支払って再契約を結びます。その際、会社側は法人契約期間中の原状回復費用の精算を明確にします。
引っ越しの負担を減らすという従業員支援になりますが、会社としては原状回復の責任範囲を貸主と会社、元従業員の三者間で切り分けることが重要です。
社宅制度全体の管理をよりスムーズに進めたい場合は、マネーフォワードクラウド福利厚生賃貸のサービスも参考にしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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