- 更新日 : 2026年7月3日
ストレスチェックの効果的な活用方法とは?課題や企業事例も解説
集団分析の結果を職場環境の改善につなげ、メンタル不調を未然に防ぐことが大切です。
- 部署・職種ごとに分析し、課題のある集団を見つけ出す
- 衛生委員会で共有し、改善施策を立案・実行する
- 個人結果と組織対応を連動させ、取りこぼしを防ぐ
2028年4月から50人未満の事業場でも義務化보されるため、早めの体制整備が有効です。
ストレスチェックは、得られたデータを具体的な改善策に落とし込むと、組織改善につなげられます。 ストレスチェックを「ただ実施しているだけ」で、結果を上手く活用できていない企業はもったいないといえるでしょう。
本記事では、ストレスチェックを活用する具体的なポイントや企業事例などから、ストレスチェックの効果的な活用方法を解説します。
目次
ストレスチェックは「実施」より「活用」が重要
ストレスチェックは実施することよりも、得られたデータを「活用」して組織や職場環境の課題を解決し、メンタルヘルス不調の発生を未然に防ぐことが大切です。
そもそもストレスチェックは、不調が深刻になる前に対処する一次予防で、以下2つが目的です。
- 従業員が自身のストレスに気づき、メンタル不調を未然に防ぐこと
- 検査結果を集団ごとに分析し、職場環境の改善につなげること
高ストレス者へ医師による面接指導を実施したり、集団分析の結果から業務負担の偏りや人間関係の課題を特定・改善したりと、データを「活用」してこそ制度本来の意義が果たされます。
なお、労働安全衛生法では、事業場に年1回の実施を義務付けています。従来、ストレスチェックの実施義務は「労働者数50人以上の事業場のみ」で、労働者数50人未満の事業場では努力義務でした。しかし、2028年4月1日からは、労働者数50人未満の事業場でも実施が義務付けられます。
おすすめのストレスチェックシステムについては、関連記事をご覧ください。
参考:「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」スタートガイド|厚生労働省
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ストレスチェック結果の活用の流れ
ストレスチェックの結果を組織改善に活かすには、順を追って進めることが大切です。
ここでは、活用の流れを4つのステップに分けて解説します。
なお、ストレスチェックの実施方法については、関連記事をご覧ください。
1.結果を集計・データ化する
従業員の回答が集計されると、客観的な数値データへ変換されて受検者に通知されます。
具体的には、各設問の選択肢に、1〜4点など点数を与えてスコア化されます。この数値を「仕事の負荷」「心身の症状」「周囲のサポート」など評価軸ごとに足し、個人のストレス度が均一に指標化された状態で自身のストレス状態を確認可能です。
扱うデータは、以下のとおりです。
- 基本情報:氏名、社員番号、所属部署
- 回答データ:各設問への回答内容(生データ)
- 判定データ:評価軸別のスコア、高ストレス判定、医師の面接指導の要否
なお、実施結果は企業には提供されず、従業員本人のみに通知されます。
2.集団分析で部署・職種ごとの傾向を把握する
組織全体の課題を見つけ職場環境を改善するために、集団分析で部署・職種ごとの傾向を把握しましょう。
集団分析とは、個人のストレスチェック結果を部署・職種・年代などのグループに分け、集計・分析し、組織としてのストレス傾向を把握する手法です。
自社の各グループの数値を全国平均(国が定めた標準的な基準値)と比較します。どの部署の負担が基準より高いのか・低いのか客観的に見極められるため、対処すべき優先順位を正確に判断できるでしょう。
参考:改正労働安全衛⽣法に基づくストレスチェック制度の概要|厚生労働省
3.課題を共有・議論する
集団分析の結果は、衛生委員会の議題に載せて共有しましょう。産業医・保健師、労働者代表が参加する場で報告すると、数値が悪化している背景を多角的に分析できます。
たとえば「量的負担が高い部署」があれば、該当部署の管理職に残業時間や人員の状況をヒアリングし、原因が業務量なのか人間関係なのかを調査します。
具体的な原因を特定することで、的確な対策を立案可能です。
4.改善施策を立案してPDCAを回す
原因が明確になったら、改善施策を立案・実行します。
たとえば、以下のような原因と対策が考えられます。
- 量的負担が原因:業務の再配分
- 相談相手の不在が原因:窓口の設置 など
実行後は、数値が改善したか確認し、効果が薄ければ施策を入れ替えます。ストレスチェックの結果をもとにPDCAを繰り返すと、職場環境の改善が進みます。
集団分析の結果の見方
集団分析の結果を見る際は「全国平均からの乖離」と「前年データからの変化」の2つの視点から、自社の組織課題を読み解くことが大切です。
具体的な指標とデータで確認すべきポイントは、以下のとおりです。
| 指標・視点 | 仕事のストレス判定図 | 健康リスク値 | 比較の視点 |
|---|---|---|---|
| 内容 | 「仕事の量的負担」「仕事のコントロール」「上司・同僚の支援」の3つの軸で集団のストレス状況を可視化する | 組織内で疾病休業が発生するリスクを示した指標(健康への影響度合いを数値化したもの) ※全国平均を100として表す |
部署別・年代別・職種別・経年で比較する |
| 確認 | どの軸が全国平均より、低い数値か |
100を上回る部署はないか 120を超えていないか |
課題が特定の集団に集中していないか 前年から悪化していないか |
なお、結果を読み解く際は、以下2つに注意が必要です。
- 平均値の罠:部署の平均値が良好でも、深刻な不調者が隠れている場合がある
- 管理職への安易なペナルティ:数値の悪化を上司の能力不足と決めつけず、突発的な業務増など背景をヒアリングする
ストレスチェックを活用できない企業に多い3つの課題
ストレスチェックを実施していても、なぜ結果を活用できていないのか、代表的な3つの課題を解説します。
得られたデータを組織改善に活用できていない
集団分析結果を受け取るだけで、次の行動に移せていないのは代表的な課題です。
厚生労働省の令和6年の労働安全衛生調査では、メンタルヘルス対策に取り組む事業所のうち、ストレスチェックの実施は65.3%なのに対して、集団分析を含む職場環境の評価・改善まで行うのは54.7%でした。調査結果を活用している企業の方が、少ないのが現状です。
ストレスチェックの結果は「いつ・誰がどのような対応をするか」まで具体的に決め、改善行動に移すことが大切です。
集団分析を具体的な改善策に落とし込めていない
集団分析結果の数値を見ても、何をどのように改善すればいいのかわからないケースがあるのも課題です。
たとえば「仕事の量的負担が高い」とわかっても、その原因が人員不足なのか業務の偏りなのかは、数値だけで判断できません。数値が悪い部署に対し、管理職へのヒアリングや職場巡視で実態を確かめましょう。
ストレスチェックの結果×職場環境の観察・従業員へのヒアリングによって「現場のリアルな課題」を的確に捉えると、的確な改善施策を実行できます。
不利益をおそれ、本音で回答していない
従業員が不利益をおそれ、本音で回答していないケースもあります。
「会社に知られて評価が下がるのでは」という不安があると、自分を良く見せようと嘘の回答が増え実態とずれます。
本音の回答を得るには、ストレスチェック実施前に「個人結果は本人の同意なく会社へ提供されないこと」「回答が人事評価に使われないこと」を明確に伝えましょう。
同時に、回答時間を就業時間内に確保し、上司の目が気にならない個室など落ち着いた環境で受検させる配慮も大切です。
なお、会社が個人の検査結果を取得する際は、従業員への不利益な扱いを防ぐための「同意書」の取り扱いが重要です。適切な手続きを知りたい方は、関連記事をご覧ください。
ストレスチェックを効果的に活用するためのポイント
ストレスチェックの効果を最大限に高め、企業の生産性向上へとつなげる活用ポイントを押さえておきましょう。
ここでは、4つのポイントを解説します。
経営層・管理職を中心に「やる意義」を社内に共有する
現場の協力を得るため、経営層や管理職が中心となって「やる意義」を共有しましょう。
経営層が「ストレスチェックを実施・分析・改善すると、どのような課題解決・成果につながるか」を全社へ発信すると、現場も協力的になりやすいでしょう。
また、集団分析の結果報告を経営会議でも共有しましょう。改善に必要な人員や予算を経営判断として確保できると、取り組みやすくなります。
受検率を高めて分析の精度を高める
回答者が少ないと数値が偏るため、受検率を高める工夫が必要です。
受検率を上げるには、従業員が「忘れる」「後回しにする」といった心理的・物理的なハードルを下げるアプローチが有効です。
- 未受検者へのリマインド:
「自分宛て」に通知が届くと、業務の合間に受検する優先度が上がり、回収率が向上する - オンラインでの受検環境整備:
紙での配布や回収の手間を無くし、受検への心理的ハードルを下げられる
外部の専門家の知見を活用する
解釈や施策に迷う場合は、外部の専門家の知見を活用するのも有効です。
社内に産業保健の専門人材がいないと、数値の読み取りや改善施策の検討で行き詰まる可能性があります。
産業医や各都道府県の産業保健総合支援センターに相談すると、集団分析を客観的に読み解き、改善施策の助言を受けられます。自社だけでは気づけない課題や、他社と比べた立ち位置が見えるのも利点です。
担当者の業務負担を抑えながら、的確な改善につなげられるでしょう。
個人結果のフィードバックと連動させる
集団分析による組織への対応と、個人結果のフィードバックを連動させましょう。
環境(組織)と個人、どちらか片方だけの対策では、職場環境は良くても個人の人間関係で悩む人を取りこぼしたり、個人のケアばかりでストレスの多い職場環境が放置されたりと抜け落ちが発生するかもしれません。
両面から同時にアプローチすることで、職場全体のストレス要因を軽減し、従業員の不調悪化を防げます。
ストレスチェックの活用に関する企業事例
他社の取り組みを知ることは、自社の活用方法を考えるうえで参考になります。
ここでは、ストレスチェックを活用している2社の事例を紹介します。
三井住友フィナンシャルグループ|早期対応体制を構築
三井住友フィナンシャルグループは、全従業員にストレスチェックを実施し、集団分析でストレスの数値が高いと出た拠点を特定しています。
特定された拠点には、拠点長へのフォローアップ研修を実施。SMBC日興証券株式会社では、支店ごとにメンタルヘルスサポーターを任命・配置しました。サポーターは日常的に従業員の様子を把握し、不調の兆候があれば早期に相談窓口へつなげる役割を担っています。
集団分析の結果を「特定の拠点への重点対応」という具体的な行動に落とし込んでいる点が特徴です。数値が悪い拠点に人員と労力を集中させることで、限られたリソースでも効果的な早期対応体制を構築しています。
株式会社アキュラホーム|部門・年代別の課題特定で改善を具体化
株式会社アキュラホームは、ストレスチェックを外部委託する際、社内担当者が各部門の体制や状況を事前に委託先へ説明することで、現場の事情を踏まえた実態に近い分析・解釈ができるよう工夫しています。
結果「30代に高ストレス者が多い」「設計部門で仕事のコントロール度が低い」など、部門別・年代別の課題を具体的に可視化できました。若手の定着支援にはメンター制度、裁量度の低さには上司との定期的なキャリア面談など、課題の内容に応じた施策につなげています。
どの企業でも、委託先に現場の実態を事前共有して分析の解釈精度を高め、可視化された課題に適した施策を当てはめている点は、精度を高めるのに有効なポイントです。
ストレスチェックに関するよくある質問
ここでは、ストレスチェックに関するよくある質問に回答します。
集団分析は最低何人から実施できますか?
集団分析は、原則10人以上で実施します。
10人未満で集計すると、個人の回答が会社側に特定されるおそれがあり、プライバシーを脅かしかねません。厚生労働省のストレスチェック制度導入マニュアルでも、注意書きがされています。
対象者全員から「結果を事業者へ提供すること」への同意を得れば、10人未満でも実施できます。
ストレスチェックの結果は何年間保存する必要がありますか?
ストレスチェックの結果の記録は、労働安全衛生規則にもとづき、事業者が5年間保存するのが義務です。
保存対象は、個人の検査結果のデータや面接指導の結果の記録などです。これらは個人情報のため、施錠できる場所や閲覧権限を限定したフォルダで管理し、第三者が閲覧できない状態にします。
同時に、本人が結果提供に同意したことがわかる書面も保存します。保管場所・閲覧者・廃棄方法を社内ルールで決めておきましょう。
参考:改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について|厚生労働省
ストレスチェック受験率の最新の全国平均はどのくらいですか?
厚生労働省が調査したストレスチェック制度の実施状況によると、受検対象者のうち実際に受検した割合が8割を超える事業場は、全体の77.5%でした。50人以上規模の事業場では、規模が大きくなるほど実施率は高くなっています。
一方、現状は努力義務である50人未満の事業場では実施率が低く、規模による差が課題でした。そこで、2028年4月1日から、50人未満の事業場でもストレスチェックが義務化されます。
参考:令和6年労働安全衛生調査結果の概要|厚生労働省
参考:ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策|厚生労働省
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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