- 更新日 : 2026年8月4日
社会保険料の決め方とは?標準報酬月額が決まる仕組みと変わるタイミングを解説
社会保険料は給与額ではなく「標準報酬月額」の等級に保険料率を掛けて決まります。
- 等級は入社時・定時決定・随時改定の3タイミングで変わる
- 通勤手当・残業代も報酬に含まれ算定対象になる
- 2026年4月から子ども・子育て支援金が上乗せ徴収
Q. 標準報酬月額が変わるのはどんなタイミングですか?
A. 入社時・毎年7月の算定基礎届(9月適用)・固定的賃金が2等級以上変動した随時改定の3つです。
毎月の給与計算を行う中で、社会保険料の金額が本当に正しいのか不安になることはないでしょうか。社会保険料の決め方は、給与の額面そのものではなく「標準報酬月額」という等級によって決まる点が最大のポイントです。本記事では、社会保険料の算出ロジックから、標準報酬月額が変わる3つのタイミング、賞与時の計算方法、2026年4月に始まった新制度の影響までを体系的に解説します。
社会保険料の決め方とは?
社会保険料は、毎月の給与額に直接保険料率を掛けるのではなく、給与を一定の幅で区分した「標準報酬月額」という等級に基づいて算出されます。この仕組みのため、給与が数千円上がっても等級が変わらず保険料が同額のままになることもあれば、わずかな昇給で等級が一段上がり保険料が増えることもあります。
標準報酬月額の仕組みを理解しておくことは、給与計算における社会保険料の決定方法を正しく把握するための土台になります。以下、決定の流れを構成要素ごとに分解して見ていきましょう。
標準報酬月額(等級)
標準報酬月額とは、被保険者が受け取る報酬月額を一定の幅ごとに区分し、等級として表した金額のことです。健康保険・厚生年金保険では事務処理を簡略化するため、実際の給与額をそのまま使わず、この標準報酬月額を計算の基礎とします。
- 健康保険:第1級(5万8千円)から第50級(139万円)までの全50等級
- 厚生年金保険:第1級(8万8千円)から第32級(65万円)までの全32等級
各等級には対応する報酬月額の範囲が定められており、従業員の給与がどの範囲に当てはまるかによって等級(標準報酬月額)が決まります。なお、厚生年金保険については上限等級の見直しが進められており、今後数年で段階的に上限額が引き上げられる予定です。最新の等級表は日本年金機構の公開情報で確認できます。


参考:令和2年9⽉分(10⽉納付分)からの厚⽣年⾦保険料額表(令和8年度版)|日本年金機構
保険料率はどう適用される?都道府県ごとの差異
決定された標準報酬月額に保険料率を掛けることで、実際に納める社会保険料の額が決まります。健康保険料率は協会けんぽ(全国健康保険協会)の都道府県支部ごとに異なり、厚生年金保険料率は全国一律です。
| 保険の種類 | 料率の特徴 | 補足 |
|---|---|---|
| 健康保険料率 | 都道府県ごとに異なる | 協会けんぽの支部単位で毎年見直される |
| 厚生年金保険料率 | 全国一律(18.3%) | 労使で折半して負担 |
| 介護保険料率 | 全国一律(協会けんぽの場合) | 40歳以上65歳未満が対象 |
組合健保(健康保険組合)に加入している企業の場合は、協会けんぽとは異なる独自の料率が設定されているため、自社が加入する保険者の最新の保険料額表を確認することが欠かせません。
会社と従業員の負担割合(労使折半)の考え方
算出された社会保険料は、原則として事業主(会社)と被保険者(従業員)が半分ずつ負担します。これを労使折半と呼びます。
例外として、子ども・子育て拠出金は全額が事業主負担です。給与計算の実務では、この折半後の金額を従業員の給与から控除する流れになります。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
算定基礎届の手続き完全ガイド
算定基礎届(定時決定)の手続きは、社会保険に加入する全従業員が対象になるため作業量が多く、個別の計算や確認事項の多い業務です。
手続きの概要や間違えやすいポイントに加え、21の具体例を用いて記入方法を解説します。
社会保険・労働保険の実務完全ガイド
これ1冊でしっかり網羅!社会保険および労働保険は、従業員の生活上・労働上のリスクに備えるための公的保険制度です。
本資料では社会保険・労働保険で発生する各種手続き方法を、入社・退職時や妊娠・出産時などのシーン別にまとめました。
随時改定がよくわかるガイド
月額変更届の手続き(随時改定)は、一定の要件を満たす従業員を対象にその都度対応が必要になります。
この資料では、随時改定の基本ルールと手続き方法に加え、よくあるミスの対処方法についても解説します。
算定基礎届 記入例
社会保険の算定基礎届を作成する際に役立つ、記入例を記載した資料です。実際の用紙への記載方法や記入の要領を、見本を通してご確認いただけます。
届出書類作成の正確性を高め、事務手続きをスムーズに進めるための参考資料としてご活用ください。
標準報酬月額が決まる・変わる3つのタイミングとは?
標準報酬月額は、入社時、年1回の定期見直し、給与の大幅な変動時という3つのタイミングで決定・改定されます。このタイミングを正確に把握していないと、実態とずれた保険料を徴収し続けてしまうリスクがあります。
それぞれの決定方法には異なる算定ロジックがあるため、順番に確認していきましょう。
資格取得時決定(入社したとき)
従業員が社会保険の加入資格を得た時点で、最初の標準報酬月額が決定されます。入社時点では実績の給与がないため、今後支払われる見込みの給与額をもとに算定する点が特徴です。
- 対象:新入社員、中途採用者など新たに加入する人
- 算定方法:雇用契約書で定められた基本給、通勤手当、残業手当の見込み額などを合算
- 適用期間:入社月から、その年の8月(1〜5月入社はその年の8月、6〜12月入社は翌年の8月)まで
定時決定(年に1回の定期見直し)
定時決定とは、年に1回、全被保険者を対象に標準報酬月額を見直す手続きであり、「算定基礎届」の提出によって行われます。4月・5月・6月の3か月間に支払われた給与の平均額をもとに、その年の9月から翌年8月までの新しい標準報酬月額が決定されます。
- 対象:7月1日時点で在籍している全被保険者(一部例外あり)
- 算定方法:4・5・6月の報酬総額 ÷ 3 = 平均月額
- 適用開始:9月分の保険料から(給与からの控除開始月は企業の締め日・支払日による)
随時改定(給与が大幅に変わったとき)の条件
随時改定は、昇給や降給によって固定的賃金が大きく変動し、実態と標準報酬月額に乖離が生じた場合に行う改定です。手続き上は「月額変更届」と呼ばれ、以下の3条件をすべて満たした場合に発生します。
- 固定的賃金の変動があること:基本給の昇降給、手当の新設・廃止、通勤手当の変更など
- 3か月間の平均額に2等級以上の差が出ること:変動後3か月の平均報酬月額と現在の標準報酬月額の間に2等級以上の差がある
- 3か月とも支払基礎日数が17日以上あること:特定適用事業所に勤務するパートタイムなどは11日以上などの例外規定あり
この3条件を満たすと、変動月から4か月目の標準報酬月額が改定されます。
| 決定・改定の種類 | 対象となる給与 | 新等級の適用時期 |
|---|---|---|
| 資格取得時決定(入社時) | 今後の支払見込み額 | 入社月から |
| 定時決定(年1回・7月届出) | 4月・5月・6月の平均 | 9月分から |
| 随時改定(条件合致時) | 変動後3か月の平均 | 変動から4か月目〜 |
社会保険料の計算に含まれる報酬・含まれない報酬とは?
社会保険料の計算基礎となる報酬には、基本給だけでなく、通勤手当や残業代など、労働の対償として受け取るほぼすべての賃金が含まれます。この算入範囲を誤ると、標準報酬月額そのものがずれてしまい、将来の年金額や各種給付金に影響が及びます。
報酬として扱われる範囲を、含まれるものと含まれないものに分けて整理します。
報酬に含まれる主なもの(算入対象)
金銭で支払われるものだけでなく、社宅や食事のような現物で支給されるものも報酬に含まれます。特に通勤手当は所得税の非課税枠と混同しやすいため、社会保険料の計算上は全額が算入対象になる点に注意が必要です。
- 基本給与:基本給、月給、週給など
- 各種手当:役職手当、家族手当、住宅手当、皆勤手当、勤務地手当など
- 残業手当:時間外手当、休日手当、深夜手当
- 通勤手当:定期代、ガソリン代など(非課税分も含めて全額対象)
- 現物給与:社宅、食事の提供、自社製品の支給など(通貨に換算して合算)
報酬に含まれないもの(対象外)
労働の対償と認められないものや、臨時的に受け取るものは報酬に含まれません。
- 実費弁償的なもの:出張旅費、交際費、赴任旅費など
- 臨時のもの:結婚祝金、見舞金、大入り袋など(年3回以下の賞与もここに含まれず、別途「標準賞与額」として計算)
- 退職金:退職を理由に支払われる手当
社会保険料額を算出する具体的な手順は?
社会保険料は、報酬月額の確定、保険料額表での等級確認、保険料率の適用という3つのステップで算出します。実際に給与計算を行う際や、従業員からの問い合わせに対応する際に役立つ手順を、STEPごとに解説します。
最新の保険料額表を手元に用意して進めるとスムーズです。
STEP1:報酬月額の総額を計算する
まず、対象となる従業員の報酬月額を確定させます。基本給だけでなく、残業代や通勤手当を含めた総支給額(額面)を用い、定時決定や随時改定の場合は3か月間の平均額を算出します。
例:基本給25万円+残業代3万円+通勤手当1万円=報酬月額29万円
STEP2:保険料額表で等級(標準報酬月額)を確認する
次に、協会けんぽや加入している健康保険組合が発行する保険料額表を参照します。算出した報酬月額が表の「報酬月額」欄のどの範囲に当てはまるかを確認し、対応する等級(標準報酬月額)を特定します。
例:報酬月額29万円の場合、報酬月額の範囲「290,000円〜310,000円」に該当し、標準報酬月額30万円(22等級・健康保険の場合)となります。
STEP3:保険料率を掛けて納付額を出す
特定した標準報酬月額に保険料率を掛けることで、最終的な納付額が確定します。多くの保険料額表には等級ごとの全額(納付額)と折半額(本人負担額)がすでに記載されているため、計算せずとも表を見るだけで金額がわかります。
- 介護保険第2号被保険者(40歳〜64歳)に該当するかどうかで、見るべき健康保険料の列が異なる
- 厚生年金保険料も同じ行の金額を参照する
- 2026年4月以降は、後述する子ども・子育て支援金の分も併せて確認する
賞与(ボーナス)の社会保険料はどう決まる?
毎月の給与とは別に支払われる賞与にも社会保険料がかかります。賞与の場合は、毎月の標準報酬月額ではなく「標準賞与額」という別の基準を用いて計算する点が大きな違いです。
標準賞与額の算出方法と上限
賞与の総支給額から1,000円未満を切り捨てた額を標準賞与額とし、これに保険料率を掛けて算出します。算出された保険料は、毎月の給与と同様に労使折半で負担し、健康保険・厚生年金保険それぞれに上限が設けられています。
- 計算式:(賞与総支給額-1,000円未満切り捨て)×保険料率
- 健康保険の上限:年度の累計額で573万円(4月1日〜翌年3月31日)
- 厚生年金保険の上限:1か月あたり150万円
年4回以上支給される賞与の特例ルール
年4回以上支給される賞与は、社会保険上の賞与ではなく通常の報酬として扱われます。この場合、賞与時の保険料計算(標準賞与額×料率)は行わず、支給額を月々の標準報酬月額の算定対象に組み込んで計算します。支給回数が多い企業では、通常の賞与と手続きが根本的に異なるため注意が必要です。
2026年4月開始の子ども・子育て支援金は社会保険料の決め方にどう影響する?
2026年4月分の保険料から、子ども・子育て支援金が健康保険料に上乗せされる形で徴収が始まりました。標準報酬月額・標準賞与額に支援金率を掛けて算出され、従来の社会保険料の決め方の枠組みに新たな計算要素が加わったことになります。
少子化対策の財源確保を目的とした制度で、被用者保険の加入者(会社員等)であれば原則対象となります。給与計算実務に直結するため、概要を押さえておく必要があります。
支援金の計算方法と給与計算上の注意点
2026年度の支援金率は全国一律0.23%とされ、本人負担額はその半分にあたる0.115%相当が標準報酬月額・標準賞与額に対して算出されます。労使折半である点は通常の社会保険料と共通です。
- 計算式:標準報酬月額(または標準賞与額)×0.23%(労使折半のため本人負担は0.115%相当)
- 反映時期:保険料の翌月控除を採用する企業では、4月分を5月支給の給与から控除するケースが一般的
- 免除規定:産前産後休業・育児休業期間中は、社会保険料と同様に支援金も免除される
- 賞与:標準賞与額に対しても同じ料率で算出されるため、賞与計算時の設定漏れに注意
支援金は2026年度から2028年度にかけて段階的に構築される制度で、料率が今後見直される可能性があります。給与明細への表示方法や控除タイミングは自社の運用ルールに合わせて事前に確認しておくとよいでしょう。
状況別に見る社会保険料の決め方と注意点は?
通常の給与計算だけでなく、産休・育休や退職時など、状況によって社会保険料の決め方(徴収・免除のルール)が異なるケースがあります。実務で判断に迷いやすい4つのケースを、判断基準とともに解説します。
産前産後休業・育児休業期間中の免除
産前産後休業および育児休業を取得している期間中は、事業主・被保険者の両方が社会保険料を全額免除されます。免除期間中も将来の年金額は保険料を納めたものとして扱われるため、従業員にとって重要な制度です。
- 手続き:事業主が年金事務所等へ申出書を提出する
- 期間:休業開始月から、休業終了日の翌日が属する月の前月まで
退職月の保険料徴収(資格喪失日との関係)
退職する従業員の社会保険料をいつまで徴収するかは、資格喪失日によって決まります。社会保険の資格喪失日は「退職日の翌日」です。
40歳・65歳・70歳などの年齢到達時の変更ルール
従業員が特定の年齢に達した際も、社会保険料の種類や徴収の有無が変わります。年齢到達日は「誕生日の前日」として判断される点が実務上のポイントです。
- 40歳(介護保険料の徴収開始):40歳の誕生日の前日が属する月から徴収開始(例:10月1日生まれは9月分から徴収)
- 65歳(介護保険料の徴収終了):65歳の誕生日の前日が属する月から、給与天引きではなく市区町村からの直接徴収等に切り替わる(原則)
- 70歳(厚生年金保険の資格喪失):70歳の誕生日の前日が属する月の前月で保険料の徴収が終了
入社した月に退職した場合(同月得喪)
同じ月に入社し、その月のうちに退職した場合を「同月得喪」と呼びます。在籍期間が数日であっても日割り計算は行われず、1か月分の社会保険料が全額発生します。
- 厚生年金保険の特例:同月得喪後、同じ月内に別の会社で厚生年金に加入した場合に限り、前の会社での保険料納付が不要(還付)になるケースがある
- 健康保険:別の会社に入った場合でも、それぞれの会社で保険料が発生する(二重に負担するような形になるが、制度上正しい処理)
社会保険料の免除手続きにおける実務担当者の現状
株式会社マネーフォワードでは、自社において従業員の産休・育休に関する実務に携わっている担当者を対象に、手続きに関する調査を実施しました。
産休・育休中の社会保険料免除や試算に伴う業務負担
調査の結果、育児休業に関する一連の手続きの中で特に工数がかかる、または判断が難しい業務として最も多かったのは育児休業給付金の申請書類作成と提出で43.2%、次いで社会保険料免除(産休・育休中)に関する手続きが42.3%でした。また、育休中の社会保険料や給付金の予測額の試算・説明を挙げた割合は29.8%となっており、社会保険料に関わる手続きや、従業員への説明業務が担当者にとって一定の負担になっていることがわかりました。
このように、社会保険料の決定方法や免除の仕組みを正しく理解しておくことは、日々の正確な給与計算だけでなく、休業する従業員に対してスムーズな説明を行うためにも重要です。
出典:マネーフォワード クラウド、特に工数がかかる、または判断が難しい業務【産休・育休に関する調査データ】(回答者:従業員の産休・育休に関する実務に携わっている674名、集計期間:2026年3月実施)
社会保険料の決め方を正しく理解して正確な給与計算につなげる
社会保険料の決め方は、標準報酬月額という等級制度を軸に、入社時・定時決定・随時改定という3つのタイミングで変動する仕組みです。通勤手当や残業代といった報酬の算入範囲、40歳以上の介護保険料、賞与時の標準賞与額、そして2026年から始まった子ども・子育て支援金まで、複数のルールが組み合わさって最終的な保険料が決まります。
これらの決定方法を正しく理解しておくことは、従業員の手取り額や将来の年金額に関わるだけでなく、企業の法定福利費管理やコンプライアンス遵守の観点からも重要です。まずは自社の給与体系で何が報酬に当たるかを再確認し、直近の定時決定・随時改定の反映状況をチェックすることをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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