• 更新日 : 2025年12月9日

インボイス請求書の送付から保存まで 担当者が知っておくべき業務フロー

2023年10月から始まったインボイス制度により、請求書の作成から送付、保存までの一連の業務フローは見直しが必須となりました。特に、仕入税額控除の要件となる適格請求書(インボイス)の取り扱いは、売り手・買い手双方にとって重要な課題です。本記事では、インボイス制度に対応した請求書の業務フローを「送付」から「保存」まで網羅的に解説します。担当者が押さえておくべき基本ルール、送付方法ごとのマナー、電子化のポイントまで、実務に沿ってわかりやすく説明しますので、ぜひ日々の業務にお役立てください。

インボイス請求書 送付から保存までの業務フロー

インボイス制度が始まってから、請求書に関する業務はより正確性が求められるようになりました。売り手(発行側)と買い手(受領側)それぞれの立場で、一連の業務フローを正しく理解しておくことが、円滑な取引の第一歩です。ここでは、送付から保存までの基本的な流れを4つのステップに分けて確認しましょう。

適格請求書(インボイス)の作成

最初のステップは、制度の要件を満たした適格請求書(インボイス)を作成することです。従来の請求書に「登録番号」や「適用税率」「消費税額等」といった項目を追加する必要があります。記載事項に漏れがあると、取引先が仕入税額控除を受けられなくなってしまう可能性があるため、細心の注意を払って作成しましょう。

取引先への送付

作成したインボイスは、取引先へ送付します。送付方法は、従来通りの「郵送」のほか、PDF化したデータを送る「メール」、専用のシステムを利用する「電子インボイス」などがあります。どの方法を選択するにしても、取引先に確実に請求書を届け、内容を確認してもらうことが重要です。送付方法については、事前に取引先と合意しておくとスムーズです。

送付した請求書の控えの保存

インボイスを発行した側(売り手)は、その写しを保存する義務があります。これは、税務調査などで取引の事実を証明するために必要となるものです。紙で発行した場合はその控えを、電子データで送付した場合はそのデータを、定められた期間、適切に保存しなければなりません。

受け取った請求書の処理と保存

一方、インボイスを受け取った側(買い手)は、その内容を確認し、仕入税額控除の適用を受けるために適切に保存する必要があります。記載内容が要件を満たしているか、自社の取引内容と一致しているかなどをチェックし、経理システムへの入力などの処理を行います。受け取った請求書も、発行側と同様に一定期間の保存が義務付けられています。

請求書の送付方法 メール・郵送・電子インボイスの比較

請求書の送付方法は、企業の状況や取引先の要望に応じて選択できます。ここでは、代表的な3つの方法「メール」「郵送」「電子インボイス」について、それぞれの特徴や注意点を比較しながら見ていきましょう。自社にとって最適な方法を選ぶための参考にしてください。

メールで送付する場合の注意点と文例

請求書をPDF形式のファイルにしてメールに添付し送付する方法は、迅速かつコストを抑えられるため、多くの企業で採用されています。ただし、送付する際は、ファイルにパスワードを設定するなどのセキュリティ対策を講じることが望ましいです。また、電子帳簿保存法の要件を満たしてデータを保存する必要がある点にも注意しましょう。

【メール文例】 件名:【株式会社〇〇】請求書送付のご案内(2025年10月分)

株式会社△△ 経理ご担当者様

いつもお世話になっております。 株式会社〇〇の〇〇です。

2025年10月分の請求書をPDFファイルにてお送りいたします。 ご査収のほど、よろしくお願い申し上げます。

添付ファイル:請求書_No12345.pdf パスワード:XXXXXXXX

ご不明な点がございましたら、本メールにご返信いただくか、 下記担当者までご連絡ください。

署名

郵送で送付する場合のマナー

従来から行われている郵送は、紙の原本が手元に残る安心感があります。請求書を郵送する場合、A4サイズの用紙を3つ折りにし、長形3号封筒に封入されることが一般的です。封筒の表面には「請求書在中」とスタンプを押すか手書きすることで、他の郵便物と区別しやすくなり、相手先社内でのスムーズな処理につながります。送付状(添え状)を同封すると、より丁寧な印象を与えられます。

電子インボイス(電子請求書)での送付

専用のクラウドシステムなどを利用して、請求書の作成から送付、受け取りまでをデジタルデータで完結させる方法です。郵送コストや印刷の手間を削減できるだけでなく、ヒューマンエラーの防止や業務全体の効率化に大きく貢献します。また、「Peppol(ペポル)」という国際標準規格に準拠した電子インボイスは、国内外の企業との取引をスムーズにする仕組みとして注目されています。

インボイス制度で必須となる請求書の書き方

インボイス制度において最も重要なのが、請求書の記載内容です。仕入税額控除の適用を受けるためには、定められた項目を正確に記載しなければなりません。ここでは、インボイスとして認められるために必須の項目と、関連書類との連携について解説します。

適格請求書に必要な記載項目

適格請求書には、以下の項目を記載する必要があります。従来の請求書からの主な変更点は、①登録番号、④適用税率、⑤税率ごとに区分した消費税額等です。これらの記載がないとインボイスとして認められないため、請求書フォーマットを必ず確認・更新しましょう。

①適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号

②取引年月日

③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)および適用税率

税率ごとに区分した消費税額等

⑥書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

請求書と納品書を関連付ける方法

取引の都度、納品書を発行し、月末にまとめて請求書を発行するケースも多いでしょう。その場合、請求書と納品書など、複数の書類を組み合わせることでインボイスの記載事項を満たすことも可能です。例えば、納品書に取引内容や取引年月日を記載し、請求書に登録番号や消費税額等を記載する場合、それぞれの書類に共通の番号(請求書番号など)を記載し、相互の関連性を明確にする必要があります。

インボイス請求書の電子化と保存のルール

請求書を電子データでやり取りする場合、電子帳簿保存法という法律のルールに従う必要があります。この法律は、国税関係の帳簿や書類を電子データで保存する際の要件を定めたものです。ペーパーレス化を進める上で、避けては通れない重要なポイントを解説します。

電子帳簿保存法の要件

メールで請求書(PDF)を受け取ったり、クラウドサービスからダウンロードしたりした場合、その電子データをそのまま保存することが義務付けられています(2024年1月より完全義務化)。保存する際は、「真実性の確保(データの改ざんがないことの証明)」と「可視性の確保(誰でもすぐに確認できる状態)」という2つの要件を満たす必要があります。具体的には、タイムスタンプを付与する、検索できる状態で保存するなどの対応が求められます。

法律で定められた請求書の保存期間

インボイス制度における請求書の保存期間は、発行側・受領側ともに、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則として7年間です。これは紙の請求書でも電子データの請求書でも同じです。ただし、会社法では会計帳簿の閉鎖の時から10年間の保存が義務付けられているため、実務上は10年間保存しておくと安心でしょう。

請求書発行システムによる送付業務の自動化

インボイス制度や電子帳簿保存法への対応は、手作業では煩雑になりがちです。そこで有効なのが、請求書発行システムです。多くのシステムは、法改正に対応したフォーマットで請求書を作成できるだけでなく、メール送付や電子インボイスとしての発行、控えの保存までを自動化できます。これにより、担当者の業務負担を大幅に軽減し、入力ミスや送付漏れといったヒューマンエラーを防ぐことにもつながります。

インボイス請求書送付に関するQ&A

ここでは、インボイス請求書の送付に関して、実務担当者の方からよく寄せられる質問にお答えします。日々の業務で生じるちょっとした疑問や不安を解消しましょう。

Q. 請求書の発行・送付は義務ですか?

実は、法律上、請求書の発行や送付が直接的に義務付けられているわけではありません。しかし、インボイス制度では、買い手(課税事業者)が仕入税額控除を受けるためには、売り手(適格請求書発行事業者)から交付されたインボイスの保存が必要です。そのため、買い手からインボイスの発行を求められた場合、売り手はそれに応じる義務があります。事実上、取引を円滑に進めるためには発行・送付が必須と言えるでしょう。

Q. 請求書を速達で送るのは失礼にあたりますか?

請求書の締め切りが迫っているなど、急を要する場合には速達を利用すること自体が失礼にあたることはありません。ただし、何の連絡もなく突然速達で送ると、相手を驚かせてしまう可能性があります。可能であれば、「請求書の到着が遅れており大変申し訳ございません。本日、速達にて発送いたしました」といった形で、事前に一本電話やメールを入れておくと、より丁寧な印象となり、スムーズなやり取りにつながります。

Q. 送付した請求書の内容に誤りがあった場合の対応は?

送付したインボイスの記載内容に誤りがあった場合は、修正したインボイスを再発行する必要があります。対応方法としては、①誤りのあった箇所を修正したものを改めて発行する方法と、②当初発行したインボイスとの差額や修正点を明記した書類(修正インボイス)を発行する方法の2つがあります。いずれの場合も、どの請求書を修正したものかが明確にわかるようにし、修正前の請求書と修正後の請求書の両方を保存しておく必要があります。

適切なインボイス請求書送付フローで円滑な取引を

インボイス制度下では、請求書の送付から保存まで、法令に準拠した正確な業務フローの構築が不可欠です。紙での郵送、PDFのメール送付、そして請求書発行システムを活用した電子化など、送付方法は多様化しています。自社の業務内容や取引先の状況に合わせて最適な方法を選択し、電子帳簿保存法などの関連法規への対応も忘れてはなりません。本記事で解説した一連の業務フローを参考に、担当者一人ひとりが正しい知識を身につけ、ミスなく円滑な取引を実現しましょう。


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