- 作成日 : 2025年8月29日
一人で会社を作る手順は?会社設立のメリットやリスク、個人事業主との違いも徹底解説
かつては会社の設立には複数の人員が必要でしたが、現在では法律の改正により、一人でも株式会社や合同会社を設立できるようになりました。
この記事では、一人で会社を設立するための具体的な手順、必要な費用、そして注意すべき点を、誰にでも分かりやすく解説します。
目次
一人で会社を作る手順
一人で会社を設立する場合の手続きの流れは、以下の通りです。
1. 会社の基本事項を決定する
まず、会社の骨格となる基本事項を決定します。これらは後に作成する「定款(ていかん)」に記載する重要な項目です。
- 会社形態
株式会社か合同会社かを選びます。一人会社の場合、設立費用の安さや手続きの簡便さから合同会社を選ぶケースも多いですが、社会的信用度や資金調達のしやすさでは、一般的に株式会社の方が有利になる可能性が高いとされています。 - 商号(会社名)
あなたの会社の顔となる名前です。同じ住所に同じ商号の会社は登記できないため、法務局のオンラインシステムなどで事前に調査しましょう。 - 事業目的
会社としてどのような事業を行うのかを具体的に記載します。将来的に行う可能性のある事業も記載しておくと、後から定款を変更する手間が省けます。 - 本店所在地
会社の住所です。自宅や賃貸オフィス、バーチャルオフィスなどが選択肢となります。 - 資本金
事業を運営していくための元手となる資金です。法律上は1円から設立可能ですが、会社の信用度や当面の運転資金を考えると、運転資金として3か月分程度を用意するのが一般的です。 - 会社設立日
法務局に登記申請をした日が会社設立日となります。 - 事業年度(会計年度)
会社の利益を計算する期間です。自由に設定できますが、決算月の繁忙期を避けるなどの考慮が必要です。
2. 法人用の印鑑を作成する
会社の運営には、以下の3つの印鑑が必要になるのが一般的です。
3. 定款を作成し、認証を受ける
基本事項が決まったら、会社のルールブックである定款を作成します。定款には、先に決めた基本事項などを記載します。
株式会社の場合は、作成した定款を公証役場に提出し、認証を受ける必要があります。この際、紙の定款を提出する場合には4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款で提出をすれば収入印紙は不要になります。なお、認証手数料はどちらも資本金に応じて3万円~5万円がかかります。合同会社の場合、定款の作成は必要ですが、公証役場での認証は不要です。
4. 資本金を払い込む
定款の認証(合同会社の場合は作成)が終わったら、発起人の個人口座へ資本金を入金します。法人名義の口座はこの段階ではまだ開設できないため、資本金の払い込みには個人口座を使用することになります。通帳のコピーなど、払い込みを証明する書類は登記申請に必要なので、大切に保管してください。
5. 法務局で設立登記を申請する
必要書類を揃えて、本店所在地を管轄する法務局に会社設立の登記申請を行います。
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙(株式会社は最低15万円の登録免許税が必要)
- 定款
- 発起人の決定書
- 設立時取締役の就任承諾書
- 印鑑証明書
- 資本金の払込証明書
- 印鑑届書
書類に不備がなければ、1週間〜10日ほどで登記が完了し、晴れて会社が設立されます。
6. 会社設立後の手続き
設立登記が完了したら、事業を開始するために以下の手続きを行います。
一人で会社を作るメリット
なぜ個人事業主ではなく、あえて会社を設立するのでしょうか。そこには、法人ならではの明確なメリットが存在します。
1. 社会的信用の向上
法人格を持つことで、個人事業主よりも高い社会的信用を得やすくなります。これは、金融機関からの融資審査、大手企業との取引、優秀な人材の採用など、事業のあらゆる場面で有利に働きます。会社は法務局に登記されており、誰でもその情報を閲覧できるため、取引相手に安心感を与えます。特にBtoB(法人向け)のビジネスを展開する上では、法人化が前提となることがあります。
2. 節税効果
「一人会社と個人事業主」を比較する際、最も大きな違いの一つが税金です。個人事業主の所得は「事業所得」として総合課税の対象となり、所得が増えるほど税率が上がる累進課税が適用されます。一方、法人の利益にかかる法人税は、一定の税率です。また、役員である自分自身に給与(役員報酬)を支払うことで「給与所得控除」が適用され、個人の所得税・住民税を抑えることが可能です。売上が一定規模を超えると、法人化した方がトータルでの税負担を軽減できる可能性が高まります。
3. 有限責任によるリスクの限定
株式会社や合同会社といった法人は、有限責任が原則です。これは、万が一事業が失敗し、会社が倒産して負債を抱えたとしても、経営者個人の責任は「出資した範囲内」に限定されるというものです。つまり、会社の借金を返済するために、個人の財産(自宅や預貯金など)をすべて差し出す必要はありません。個人事業主が無限責任で事業の全責任を負うのと比較すると、これは事業に再挑戦する上での大きなセーフティーネットと言えるでしょう。
一人で会社を作るデメリット・リスク
メリットがある一方で、もちろんデメリットやリスクも存在します。設立してから後悔しないよう、コスト面や手続きの煩雑さについてもしっかりと理解しておくことが重要です。
1. 設立・維持コスト
最大のデメリットはコスト面です。前述の通り、株式会社の設立には最低でも約20万円の法定費用がかかります。さらに、たとえ事業が赤字であっても、法人住民税の均等割(最低でも年間約7万円)を毎年納付する義務があります。個人事業主であれば開業コストはほぼゼロで、赤字の場合の税負担はありません。この「とりあえず会社を作る」前に知っておくべき維持コストは、重要な判断材料です。
2. 社会保険の加入義務
一人会社であっても、役員報酬を支払う以上、健康保険や厚生年金保険といった社会保険への加入が法律で義務付けられています。これは、経営者自身が加入する義務があるということです。保険料は会社と個人で折半して負担するため、会社にとっては法定福利費というコストが増加します。個人事業主の場合は、国民健康保険と国民年金に加入するのが一般的です。
3. 会計・事務手続きの煩雑化
法人は、個人事業主よりも厳格な会計処理と事務手続きが求められます。日々の経理処理はもちろん、年に一度の決算申告(法人税申告)は非常に複雑です。税理士に依頼するのが一般的ですが、その分の費用も発生します。また、役員の変更や本店の移転などがあった場合は、その都度、法務局での変更登記手続きと費用が必要となり、個人事業主と比べて自由度は低いと言えます。
一人会社と個人事業主の違い
会社設立と個人事業主、どちらが良いか迷う方も多いでしょう。それぞれのメリット・デメリットを比較してみましょう。
項目 | 一人会社(法人) | 個人事業主 |
---|---|---|
社会的信用度 | 高い | 法人よりは低い |
税金 | 役員報酬を経費にでき、節税の選択肢が多い。ただし赤字でも法人住民税がかかる。 | 所得が増えると税率が高くなる。 |
責任の範囲 | 有限責任(出資額の範囲内) | 無限責任(事業の負債すべて) |
設立・運営の手間 | 設立に手間と費用がかかる。社会保険への加入義務あり。経理も複雑。 | 開業届を出すだけで始められる。手続きが簡単。 |
信用を重視し、大きな取引や融資を考えているなら法人、スモールスタートで手軽に始めたいなら個人事業主という選択が一般的です。個人事業主として始めて、事業が軌道に乗ってから法人化するという選択肢もあります。
一人会社の設立に関してよくある質問
最後に、一人で会社設立を検討する方が抱きがちな疑問についてお答えします。
資本金1円でも株式会社は設立できる?
はい、法律上は資本金1円で株式会社を設立することは可能です。ただし、1円では金融機関からの融資が受けにくかったり、取引先から信用されなかったりする可能性があります。また、設立直後から経費の支払いがあるため、運転資金としてある程度の資本金を用意しておくのが現実的です。
副業でも一人会社を作れる?
副業の所得が増えてきた場合、節税目的で法人化を検討するのは有効な選択肢です。ただし、勤務先の就業規則で副業や会社設立が禁止されていないか、必ず確認が必要です。また、設立・維持コストがかかるため、副業収入がそれほど多くない段階では、個人事業主として青色申告を行う方がメリットが大きい場合もあります。
とりあえず会社を作るリスクは?
明確な事業計画がないまま「格好いいから」「何となく」といった理由で「とりあえず会社を作る」ことは、あまりおすすめできません。前述の通り、会社には赤字でも発生する維持コストがあり、事務手続きの負担も増えます。事業の実態がないと、銀行口座の開設を断られるケースもあります。まずは個人事業主としてスモールスタートし、事業が軌道に乗った段階で法人化を検討する方が、リスクを抑えられるでしょう。
一人会社のメリットとリスクを十分に理解しましょう
一人で会社を設立することは、手順を理解し、計画的に準備を進めれば十分に可能です。法人化には、社会的信用の向上や節税といった大きなメリットがある一方で、設立・維持コストや事務負担の増加というデメリットも存在します。
重要なのは、ご自身の事業規模や将来のビジョンを踏まえ、「個人事業主」と「法人」のどちらが最適かを見極めることです。本記事で解説したステップや判断基準を参考に、ぜひあなたのビジネスに合った最適な形を選択してください。もし手続きに不安があれば、司法書士や税理士といった専門家への相談も有効な手段です。あなたの挑戦が、成功への大きな一歩となることを願っています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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