青色申告の特典を受けるための要件としては、帳簿の記帳義務がありますが、「正規簿記による方法」のほかに、業種によって多少異なりますが5種類の帳簿を基本構成とする「簡易簿記による方法」と、取引そのものではなく現金の支払いと連動する「現金主義簿記による方法」とがあります。これらの違いについて解説していきます。

同じ青色申告をするにしても、どの会計方式によって簿記を記帳しているかで、確定申告で認められる控除などにも違いがでてきます。記帳を方法を決める前に、違いや方法、事業内容における適正を考慮することが大切です。

正規簿記による方法

青色申告における正規の簿記とは、「資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を正規の簿記の原則に従い、整然と、かつ、明瞭に記録し、その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない」との規定に基づく記帳方法を称しています。

したがって、「正規の簿記」とは、損益計算書と貸借対照表が導き出せる簿記をいいます。一般的には複式簿記のことを指します。

ただし、簡易帳簿を利用した場合でも、資産や負債をきちっと管理し記録することで、貸借対照表と損益計算書を作成することができるので、必ずしも「正規簿記=複式簿記」と定義しているわけではありません。なお、正規の簿記による記帳がされている場合、青色申告特別控除が適用され65万円の控除を受けることができます。

簡易簿記による方法

簡易簿記による青色申告の方法とは、現金出納帳、経費帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳の5種類の帳簿に記録する方法をいいます。会計の知識がなくとも記帳することができるので、導入に対する抵抗感が少ないというメリットがあります。

事業を開始して間もない場合や従業員がいない場合などには利用する事業主も多い記帳方法です。簡易簿記を選んだ場合は、控除額は10万円となります。

現金主義簿記による方法

現金主義簿記とは、現金に変動があった時点で記帳する会計方法をいいます。これと対になる概念は、発生主義といいます。

発生主義は、現金の支払いや受け取りがなくても取引があった時点で記帳する会計方法です。具体例をみないとイメージがわかないと思いますので、取引例を上げてみましょう。

例:3月3日に商品を受け取ったが、代金の支払いは4月30日となっている。

この場合、発生主義によれば、3月3日に取引があるので記帳することになります。一方、現金主義によれば、3月3日には現金に変動がないので、記帳はしません。4月30日に代金を支払った時点で記帳することになります。たいして変わらないように思われるかもしれませんが、決算期が3月末だとすると、現金主義によれば、この取引は翌年度の取引ということになります。
とくに取引金額が大きいような場合には、決算の数字が大きく変わってくることになるので、現金主義はあまり望ましい会計処理ではありません。もっとも、小規模の事業を行っている場合には、現金の出入りで取引を把握した方がわかりやすい面もあるので、税法においては現金主義での記帳も例外的に認められています。そこで、次は、現金主義の特例を受けるための要件について解説していきます。

現金主義による所得計算の特例

青色申告において、現金主義で帳簿をつけたいという場合には、以下の条件を満たす必要があります。
ただし、この場合には10万円の控除になります。会計においては、発生主義が原則となっているため、複式簿記を採用している場合でも、現金主義の場合には正規簿記による方法とは認められず、65万円の控除は受けられません。

・青色申告の承認申請をしていること
・小規模事業者であること
・事前に「所得税の青色申告承認申請書、現金主義の所得計算による旨の届出書」を出していること

小規模事業者とは、その年の前々年分の事業所得等の合計額が300万円以下である事業者のことをいいます。なお、その計算の際は事業専従者給与(控除)の額を必要経費に算入してはいけません。

届出の提出時期

適用を受けようとする年の3月15日までに各種必要書類を提出してください。提出期限が土曜日、日曜日、祝日に当たる場合には、これらの日の翌日が期限となります。開業した日付が1月16日以後の場合は、開業日から起算して2カ月以内に提出する必要があります。

上記のように、青色申告の特典を受けるために必要な方法にも種類があります。それぞれ、メリットやデメリットがありますので、事業の規模や従業員の有無などを考慮のうえ、適当だと思う方法を選択してください。



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