- 更新日 : 2025年2月25日
所得税の税率について|税金の計算方法や法律改定など
所得税は個人の所得に課税される税金で、通常給与や賞与から源泉徴収され会社が代理納付します。年間の収入から経費や所得控除を差し引いた課税所得に税率を掛け合わせることで税額を算出することが可能です。会社勤めの方は自動で天引きされるため、税率を意識したことがないかもしれません。そこで、当記事では所得税の税率について詳しく解説します。
目次
所得税の税率の考え方
所得税は個人の所得に対し課税される税金で、1年間の全ての収入から必要経費と社会保険料などの所得控除を差し引いた課税所得に対し、税率を掛け合わせることで算出可能です。
源泉徴収制となっているため、会社員や公務員の方は毎月の給与や賞与から源泉徴収されます。過不足については年末調整で清算されますが、収入が一定額以上の方や個人事業主・自営業者は確定申告が必要です。原則、会社が一括して代理納付するため、税率についてはあまり意識したことがないかもしれません。ここでは所得税の税率と、税率が決まる仕組みについて解説します。
所得税の税率とは
所得税の税率は、所得の区分によって異なります。まずは、10種類の所得の区分について確認しておきましょう。
所得の区分 | 所得の内容 |
---|---|
利子所得 | 預貯金、国債、社債などの利子 |
配当所得 | 法人から受け取る剰余金の配当、株式などの配当 |
不動産所得 | 土地、建物、船舶、航空機などの貸し付けから生じる所得 |
事業所得 | 商業、工業、漁業、農業、自由職業などの自営業から生ずる所得 |
給与所得 | 給与、賞与などの所得 |
退職所得 | 退職金、一時払いの老齢給付金などの所得 |
山林所得 | 所有期間が5年を超える山林を伐採・譲渡したことなどによる所得 |
譲渡所得 | 土地、建物、借地権、株式、金地金、機械などを譲渡したことによる所得 |
一時所得 | 生命保険の一時金、賞金、懸賞当選金などの所得 |
雑所得 | 公的年金、恩給などの所得 |
総合課税は、全ての所得を合算し、その合計額に対し課税する方式です。
一方、分離課税は他の所得と合算せず個別に課税します。
これは、土地建物や株式の譲渡などによる一時的な所得の増加に伴い、給与所得などの税率が著しく高くなることを防ぐための制度です。
所得の区分と課税方式をまとめると下記のようになります。
所得の区分 | 課税方式 |
---|---|
利子所得 | 総合課税(特定公社債の利子など)または源泉分離課税(預貯金の利子など) |
配当所得 | 総合課税(剰余金の配当など)または申告分離課税(上場株式等に係る配当など) |
不動産所得 | 総合課税 |
事業所得 | 総合課税 |
給与所得 | 総合課税 |
退職所得 | 申告分離課税 |
山林所得 | 申告分離課税 |
譲渡所得 | 申告分離課税(土地建物や株式など)または総合課税(その他) |
一時所得 | 総合課税 |
雑所得 | 申告分離課税(先物取引やFXなど)または総合課税(公的年金など) |
※源泉分離課税:所得を受け取るときに一定の税額が源泉徴収される制度です。
※申告分離課税:確定申告によって他の所得と分離して税額を計算する制度です。
総合課税の所得に関しては累進課税となっているため、所得の金額に応じて税率が決まります。一方、分離課税の所得についてはそれぞれ一定の税率が適用されるため、混同しないように気をつけましょう。
参考:No.1300 所得の区分のあらまし|国税庁
参考:所得の種類と課税方法|国税庁
所得税率は所得金額で変わる
総合課税が適用される所得の税率は、所得が多くなるにつれ段階的に税率が上昇する累進課税となっています。
累進課税には単純累進課税と超過累進課税があり、日本の所得税は超過累進課税です。
単純累進課税は、所得が一定額を超えた場合、所得全体に対し高い税率が適用されます。一方、超過累進課税は、一定額を超過した所得に対してのみ高い税率が適用される課税方式です。
なお、所得税は収入全体に対し課税されるわけではありません。まず、収入から経費が差し引かれます。経費を差し引いた総所得から、所得控除を差し引いたものが課税標準である課税所得です。
会社員や公務員などは原則経費が認められませんが、その代わりに給与所得控除や特定支出控除などを受けることができます。
所得控除として認められているのは下記の15種類です。
所得税の計算方法
所得税は、年間の総所得から所得控除を差し引いた課税所得に税率を乗じることで算出されます。しかし、一括納付では負担が大きいため、会社員や公務員などは毎月の給与から概算額が源泉徴収され、会社や組織が代理納付するのが一般的です。差額については年末調整で清算されます。
ただし、収入が一定以上の方や、個人事業主・自営業者は確定申告しなければなりません。正確な所得税額を決定する手続きが年末調整もしくは確定申告だということを覚えておきましょう。ここでは、所得税の計算方法を具体的に紹介します。
超過累進課税について
前章でも紹介したとおり、我が国の所得税は超過累進課税です。所得の上昇とともに税率も高くなりますが、高い税率は一定額を超過した所得にのみ課税されます。例えば、年収(課税所得)が695万円の方に課される令和4年における所得税は下記の通りです。
課税所得金額 | 税率 | 所得税 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 195×0.05=9万7,500円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 135×0.1=13万5,000円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 365×0.2=73万円 |
所得税額:9万7,500円+13万5,000円+73万円=96万2,500円
あくまで、一定額を超過した所得にのみ高い税率が適用される点に注意しましょう。例えば、年収(課税所得)330万円で所得税を22万2,500円納税していた方が340万円に所得が増えた場合、所得税は25万2,500円となります。68万円になるわけではないため気を付けましょう。
- 超過累進課税での所得税額(課税所得340万円)
195万円×0.05=9万7,500円
135万円×0.1=13万5,000円
10万円×0.2=2万円
所得税額:9万7,500円+13万5,000円+2万円=25万2,500円
- 単純累進課税での所得税額(課税所得340万円)
340万円×0.2=68万円
所得税額:68万円
参考:所得税のしくみ|国税庁
所得税の速算表
所得税は下記の速算表を用いて簡単に算出することができます。平成27年分以後の所得税率は下記の通りです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
195万円から329万9,000円まで | 10% | 97,500円 |
330万円から694万9,000円まで | 20% | 427,500円 |
695万円から899万9,000円まで | 23% | 636,000円 |
900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
「課税される所得金額」は、収入から経費と所得控除を差し引いた課税所得のことを指します。なお、課税所得は1,000円未満の端数を切り捨てて計算されるため気をつけましょう。例えば、課税所得が342万1,650円の場合、1,000円未満を切り捨て342万1,000円に税率を乗じて所得税が計算されます。
「控除額」とは、課税所得に税率を乗じた額から差し引くことで、正しい税額を計算するための金額です。例えば、課税所得340万円に対し税率20%を掛け合わせると68万円となります。ここから42万7,500円を差し引くことで、正しい税額である25万2,500円が算出可能です。「単純累進課税を超過累進課税に修正するための金額」と考えれば分かりやすかもしれません。
所得税の税率についての注意点
ここまで、課税所得に税率を乗じた額が所得税額だと紹介しました。しかし、所得税額がそのまま納税額となるわけではありません。特定の条件を満たした方は、一定の税額控除を受けることが可能です。代表的な税額控除には、特定増改築等住宅借入金等特別控除や公益社団法人等寄附金特別控除などがあります。一定の基準を満たした家を建てたり、特定の法人に寄附をしたりした際に受けることができる控除です。所得税額から税額控除を差し引いたものを基準所得税額といいます。
一方で、平成25年から令和19年までは基準所得税額に対し2.1%の復興特別所得税が課されるため注意しましょう。
確定申告などで納付する申告納税額は、基準所得税額と復興特別所得税を足し合わせ、給与や賞与から天引きされた源泉徴収税を差し引いた額となります。
所得税額-税額控除=基礎所得税額
基礎所得税額×0.21=特別復興所得税
基礎所得税額+特別復興所得税-源泉徴収税=申告納税額
参考:所得税のしくみ|国税庁
参考:No.1200 税額控除|国税庁
所得税の計算方法
税率が変更されることで、何が変わるかを知るうえで、まずは所得税の計算がどのようになされるのかを理解しておく必要があります。
所得税は年間収入の合計金額から経費を引いて「所得」を出し、そこから所得控除を差し引いて「課税所得」を算出します。
収入 − 経費(給与所得控除等)= 所得
所得 − 所得控除 = 課税所得
そして、「課税所得」税率を掛けて「所得税額」をだし、そこから「税額控除」を差し引くことで「納税額」を計算するというのが基本です。
※給与所得者は必要経費の代わりに給与所得控除が認められています。
課税所得 × 税率 = 所得税額
所得税額 – 税額控除 = 納税額
税率について理解を深め、正しく所得税を計算しましょう!
所得税の税率について解説しました。会社員や公務員の方であれば、所得税は毎月の給与から源泉徴収されるため、税率を意識したことはないかもしれません。日本の所得税は超過累進課税となっており、所得が高ければ高いほど税率も高くなります。
所得税額は、収入から経費と所得控除を差し引いた課税所得に税率を乗じることで算出することが可能です。
所得税額からは一定の税額控除が差し引かれ、平成25年から令和19年までの25年間は復興特別所得税が加算されます。確定申告などで納付する申告納税額は、ここから給与や賞与から天引きされた源泉徴収税を差し引いた額です。
当記事でも紹介した速算表などを参考に、正しい所得税額を計算してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
調整手当とは?目的や種類・支給パターンを解説
調整手当とは、企業が従業員の給与バランスを保つために支給する給与の一部です。通常は一時的ですが、固定給の一部として継続的に支給されることもあり、初任給や基本給が低い場合に使用されます。公務員や教員にも適用されます。 本記事では、調整手当がど…
詳しくみる源泉徴収票はいつどこでもらう?もらえない時の対応方法も解説!
毎年の年末調整の時期や退職するときなどに会社からもらう源泉徴収票ですが、会社員が正しく税金を納める上でとても重要な書類です。 今回は、源泉徴収票に関して、どこでもらうのか、どのタイミングでもらう必要があるのか、どのような見方をすればよいのか…
詳しくみる住民税をクレジットカードで払う方法と4つの注意点
日々、何気なく過ごしていても、私たちは様々な税金を支払いながら生活をしています。その中でも、特に多く人に関わりのあるのが「住民税」。あなたはこの住民税をどのように納めていますか? 最近では銀行振込だけではなく、口座自動引き落としやPay-e…
詳しくみる名古屋市の給与計算代行の料金相場・便利なガイド3選!代表的な社労士事務所も
名古屋市は中部地方の経済の中心地として、多くの製造業やサービス業が集積しています。このような多様なビジネス環境で企業を運営する際、給与計算は正確かつ効率的に行うことが求められます。 本記事では、名古屋市における給与計算代行の料金相場を詳細に…
詳しくみる茨城県の給与計算代行の料金相場・便利なガイド3選!代表的な社労士事務所も
茨城県は工業が発展しており、特に自動車や電子部品の製造が盛んです。また、農業や観光業も重要な産業として位置づけられており、多様なビジネスが展開されています。こうした多岐にわたる業種では、給与計算の正確性と効率化が求められますが、中小企業にと…
詳しくみる借り上げ社宅は従業員が自分で選べる?選ぶポイントや注意点を解説
借り社上げ社宅は、企業ごとで物件選択の自由度が異なります。従業員の希望物件を法人契約する場合や、企業指定の物件から選ぶケースもあるでしょう。 本記事では、借り上げ住宅を従業員自身で探す際のポイントや流れ、注意点について解説します。 借り上げ…
詳しくみる