• 更新日 : 2025年6月24日

失業保険をもらうと育休手当はもらえない?受給条件や代わりの支援策を解説

「失業保険を受け取ったら育休手当はもうもらえないの?」そんな疑問を抱える方も少なくありません。失業保険と育児休業給付金は、それぞれ目的や支給条件が異なるため、原則として同時に受け取ることはできません。この記事では、両制度の違いやどちらが得かの判断基準、育休手当がもらえなかった場合に利用できる代わりの支援策まで、わかりやすく解説します。

失業保険を受け取ると育休手当はもらえない?

失業保険を受け取ると、すぐには育休手当を受け取ることはできません。育児休業給付金と失業保険は、それぞれ支給対象となる状況が大きく異なるため、原則として同時に受け取ることはできない制度です。

育児休業給付金は「雇用を継続したまま育児に専念する人」のための制度であり、失業保険は「離職して再就職を目指す人」のための制度です。

また、失業保険を受け取ると、雇用保険の被保険者期間がリセットされるため、育児休業給付金の受給資格(直近2年間に12ヶ月以上の被保険者期間)を満たさなくなるおそれがあります。

たとえば、退職後に失業保険を受給した後、再就職して育休を取ろうとした場合、被保険者期間のカウントが新たに始まるため、12ヶ月の期間を積み直さなければ育休手当を受け取れないことになります。

失業保険を受け取るといつから育休手当はもらえる?

失業保険の受給を終えた後に再就職し、一定の雇用保険加入期間(原則12ヶ月以上)を満たせば、再度育児休業給付金を受給できるようになります。

具体的には、再就職後に育児休業(または産前休業)を取得し、その直前の2年間のうち、月に11日以上働いた実績のある月(または労働時間が80時間以上の月)が12ヶ月以上ある場合に、育児休業給付金の受給資格を得られます。たとえば、再就職してから1年間、月に11日以上勤務し続けた場合には、その勤務期間をもとに育児休業給付金を申請できる可能性があるということです。

なお、パートやアルバイトであっても、雇用保険の被保険者として要件を満たしていれば対象となります。ただし、失業保険を受け取った段階で前の被保険者期間がリセットされるため、再就職後に新たに12ヶ月以上の被保険者期間を積み上げる必要があります。

育休手当の支給タイミング

育児休業給付金の支給は、育児休業を開始してから約2ヶ月後が目安となります。初回は2ヶ月分がまとめて支給され、その後は2ヶ月ごとにハローワークへ申請することで継続的に受給できます。

ただし、育児休業開始時点で「受給資格確認通知書」が交付されていることが前提となるため、申請手続きは休業開始前から準備しておく必要があります。また、有期雇用の方は、育休期間中に契約満了が確定していない場合に限って支給対象となる点にも注意が必要です。

失業保険と育休手当はどちらが得?

育児休業給付金と失業保険のどちらが得かは、個人の状況によって異なりますが、一般的には育児休業給付金のほうが受給額は高くなる傾向にあります。ここでは、月収30万円の方を想定し、受給額や期間を比較してみましょう。

月収30万円で1年間育休を取得した場合

  • 支給期間:360日(子が1歳まで)
  • 賃金日額:30万円 ÷ 30日= 10,000円
  • 育児休業給付金の給付率:180日目までは67%、181日目以降は50%
  • 育児休業給付金の支給額(1年)
    最初の180日(6ヶ月):日額10,000円 × 67% × 180日 = 約120.6万円
    → 日額:6,700円181日目〜360日目(6ヶ月):日額10,000円 × 50% × 180日 = 約90万円
    → 日額:5,000円
  • 合計支給額:約210.6万円(非課税

育児休業給付金は非課税であり、育休期間中は社会保険料(厚生年金・健康保険)も免除されるため、手取り額はほぼ満額に近くなります。

また、2025年4月以降に両親がともに育児休業を取得した場合、「出生後休業支援給付金」の制度により、最初の28日間は育休手当に13%が上乗せされ、支給率が80%になります。

月収30万円の場合、この28日間の支給額は約24万円(30万円 × 80%、日額換算で約8,000円)となり、育児期間中の家計支援がさらに手厚くなります。

月収30万円で失業保険を受け取る場合(30代)

  • 支給期間:90日(自己都合退職、算定基礎期間10年未満の場合)
  • 賃金日額:月収30万円 ÷ 30日 ≒ 10,000円
  • 基本手当日額(2025年度、30〜44歳):7,845円
  • 総支給額:7,845円 × 90日 = 約70万6,050円(非課税)

失業保険は、退職理由(自己都合・会社都合)や、離職時の年齢、算定基礎期間によって大きく異なります。

30代で自己都合退職し、算定基礎期間が10年未満であれば、原則90日間の支給に限られます。これは「早期の再就職を促すための短期的支援」として制度設計されているためです。

また、自己都合退職では7日間の待期期間+1ヶ月の給付制限があるため、実際の支給開始までに約1ヶ月かかります。

失業保険は、育児休業給付金と同様に非課税です。ただし、社会保険の扶養判定では、収入とみなされます。

会社都合の場合は、同じ30代でも算定基礎期間によって給付日数が大幅に延びることがあります。30歳以上35歳未満であれば、1年以上5年未満で120日、5年以上10年未満で180日、10年以上20年未満で210日、20年以上では240日が所定給付日数となります。自己都合に比べて長期の支援が可能です。

失業保険か育休手当か迷ったら

仕事に戻る予定があり、会社との雇用関係を続けられる場合は、育児休業給付金を選ぶのが有利です。

この制度は非課税で、1年以上の支給が受けられ、育休中の社会保険料もかかりません。そのため、手元に残るお金(可処分所得)は失業保険より多くなる傾向があります。

反対に、育児休業後に退職する予定であれば、失業保険の対象になります。

ただし、支給される金額や日数、いつから受け取れるかには制限があるため、育児休業給付金との違いをよく理解し、自分の働き方や生活プランに合わせて選ぶことが大切です。

育休手当がもらえない場合の代わりの支援

失業保険を受け取った後に育休手当の条件を満たせなくても、出産・育児を支える支援制度は数多くあります。国・自治体・NPOなど様々な窓口に相談し、自分に合った制度を無理なく活用し安心して子育てを続けましょう。

出産時にもらえるお金

  • 出産育児一時金:健康保険または国民健康保険に加入していれば、出産1人につき50万円が支給されます(産科医療補償制度未加入医療機関は48.8万円)。直接支払制度により病院に直接支払われます。
  • 出産手当金(産休中の給与補償):会社の健康保険に加入している場合、産前42日・産後56日間(双子以上は産前98日)の給与の約2/3が支給されます。退職後は原則対象外ですが、条件を満たせば受給可能なケースもあります。
  • 出産・子育て応援給付金:妊娠届時に5万円、出生届提出後に5万円、合計10万円が市区町村から支給されます(面談など「伴走型支援」の受講が条件)。

育児中にもらえる主な公的手当

  • 児童手当:0歳~18歳の3月末まで支給。3歳未満:15,000円/月、3歳~高校生年代:10,000円、第3子以降:30,000円。2024年10月から所得制限なし。
  • 児童扶養手当(ひとり親世帯):1人目46,690円、2人目以降+11,030円
  • 特別児童扶養手当:障害のある子どもが対象。1級:56,800円、2級:37,830円(2025年度)。
  • 自治体独自の支援:おむつ補助、乳児用品券、医療費助成、子育て応援パスポートなど。各自治体により異なるため、居住地で要確認。

住まい・生活費の支援

  • 住居確保給付金:離職・収入減で家賃が払えないときに最大9ヶ月分(原則3ヶ月+延長)家賃相当額を代理納付。
  • 生活困窮者自立支援制度:就労支援、家計相談、一時生活支援、学習支援など多方面から支援。
  • 生活保護:最低生活を維持できない場合に、生活扶助・住宅扶助・医療扶助などを包括的に受けられる。

仕事・学び直しで使える支援

  • 求職者支援制度(職業訓練受講給付金):雇用保険の対象外の人が職業訓練を受ける際に、月10万円+交通費が支給される。
  • 教育訓練給付制度:雇用保険加入歴がある人が資格取得などを目指すときに受講費の20~80%を補助。専門実践講座では訓練中の生活支援給付もあり。
  • 高等職業訓練促進給付金(ひとり親向け):看護師・保育士等の養成学校に通うひとり親に月10万円(課税世帯は7万500円)支給。修了時の給付金もあり。

その他の支援

  • 国民年金の産前産後期間免除:国民年金加入者は出産予定日又は出産日が属する月の前月から4ヶ月間(多胎妊娠の場合は、出産予定日又は出産日が属する月の3ヶ月前から6ヶ月間)の保険料が免除される。
  • 高額療養費制度・医療費控除:出産が保険診療(帝王切開など)に該当する場合、医療費の自己負担上限を超えた分が払い戻される。年間10万円を超える医療費は確定申告所得控除も可能。
  • 国民健康保険料の軽減(非自発的離職者):会社都合退職や雇止めで離職した場合、保険料が大幅に軽減される。
  • 民間や地域の支援:子ども食堂、フードバンク、おむつバンク、ベビー用品のリユース会など。各地域で利用可能な団体に相談を。

制度があります。お住まいの自治体に確認し、必要に応じて申請することが重要です。

育休後にそのまま退職したら失業保険はもらえる?

育児休業後に退職した場合でも、求職の意思があり、雇用保険の加入期間が条件を満たしていれば、失業保険(基本手当)を受給できます。

失業保険の受給には、原則として、離職前の2年間に被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが必要です。ここでいう1ヶ月とは、賃金支払基礎日数が11日以上、または労働時間が80時間以上ある月を指します。

なお、会社都合退職や育児・介護など正当な理由がある場合は、「特定受給資格者」「特定理由離職者」に該当し、被保険者期間が6ヶ月以上でも受給対象になることがあります。

受給要件を満たさない場合

一方で、雇用保険の加入期間が短かった場合や、出産・育児のためにブランクがあり直近の勤務期間が条件を満たさない場合は、失業保険の給付は受けられません。

その場合でも、ハローワークが実施する求職者支援制度や、一定の条件を満たせば職業訓練受講給付金(月10万円+通所手当)などの制度を利用できます。雇用保険を受給できない人も利用可能です。

受給期間の延長ができる場合

子育てや病気などですぐに求職活動を始められない場合は、失業保険の受給期間を最大4年間まで延長できます。通常は離職日の翌日から1年以内が受給期限ですが、育児等のやむを得ない理由があるときは、ハローワークに申請することでこの期限を延ばすことが可能です。

たとえば育児休業が終わってもすぐに保育園に入れない場合や、体調の回復を待ってからの求職を希望する場合に活用できます。延長申請は離職後すぐに行う必要があるため、事前の相談がおすすめです。

育休手当の終了と失業保険の開始タイミング

育児休業給付金は、職場復帰を前提とした制度です。育休中にすでに退職が決まっている場合、育休手当は支給されない可能性がありますが、育休終了後に退職する場合は、退職日まで育休手当を受給できます

その後、退職し求職活動を開始すれば「失業の状態」となり、失業保険の申請が可能です。自己都合退職であれば、通常7日間の待期期間と1ヶ月の給付制限を経て支給が始まります。

つまり、育休後に退職する場合でも、失業保険を受け取ることは可能です。支給開始時期や申請のタイミングによって受給額や条件に影響が出るため、事前にハローワークに相談しておくことが安心です

失業保険と育休手当の制度の仕組みを理解して活用しよう

失業保険と育休手当は、制度の目的や前提条件が異なるため、原則として同時に受け取ることはできません。それぞれの制度を正しく理解し、自分のライフプランや働き方に応じて活用することが大切です。

もし両方の受給資格を同時に満たせない場合でも、職業訓練受講給付金や住居確保給付金といった代替支援制度を利用することが可能です。制度は改正されることもあるため、常に最新情報をチェックしながら、確実に支援を受けられるように準備を進めましょう。


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