- 作成日 : 2022年8月8日
年金の3階建てとは?1階・2階との違いなどをわかりやすく解説!
年金制度の仕組みは建物の構造に例えられ、日本は2階建てや3階建てであるといわれます。国民年金と厚生年金で構成される公的年金が2階建てになっていて、その上に私的年金を積み上げることで3階建てになります。個人型確定拠出年金を正式名称とするiDeCoは、ほかの私的年金に上乗せすることができ、その場合は4階建てになります。
年金の3階建てとは?
年金は高齢になったり、障害を負ったり、生計を支えていた大黒柱を失ったりした場合に受け取ることができる、社会保障制度の一つです。日本の年金制度は、2階建てや3階建てといわれます。建物のように2階建てや3階建てといわれる理由や、それぞれの階が何を示しているのかを説明します。
そもそもなぜ階層がある?
日本の公的年金には、国民年金と厚生年金があります。国民年金は、20歳から60歳までの国民が全員加入する年金です。国民年金に対して会社員などが加入する年金が厚生年金です。国民年金は国民全員が加入するため、厚生年金加入者も国民年金から脱退するわけではありません。国民年金に上乗せする形になるため、1階の上に2階部分が乗っかっている形になります。
さらに企業年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)などが上に乗っかる形になるため、階層ができます。
年金の1階
日本の年金制度の1階部分に該当する年金は国民年金です。国民年金は国民全員を対象とする年金で、20歳になると強制的に加入になります。被保険者は、第1号被保険者・第2号被保険者・第3号被保険者に区分され、このうち第1号被保険者のみに保険料納付義務があります。
国民年金の加入対象者 | 20歳以上60歳未満の全ての人 |
国民年金保険料 | 1カ月あたり16,590円(2022年度) |
国民年金による老齢年金給付 |
|
年金の2階
日本の年金制度の2階部分とされる年金は厚生年金です。厚生年金は会社員などを対象とする年金で、適用を受ける会社に勤める人や公務員などが加入します。厚生年金保険料のうち1/2は会社が負担します。
厚生年金の加入対象者 | 会社員や公務員など |
厚生年金保険料 | 毎月の保険料額=標準報酬月額×保険料率(18.3%) |
厚生年金による老齢年金給付 |
|
年金の3階
日本の年金制度の3階部分とされるのは、私的年金です。私的年金は単位別に企業型と個人型、給付額決定方法別に確定給付型と確定拠出型に分けられます。
単位別 | 企業型 :企業を単位とする 個人型:個人を単位とする |
給付額決定方法別 | 確定給付型:加入期間などに基づいて、あらかじめ給付額が決まっている 確定拠出型:拠出額と運用収益との合計額に基づいて、給付額が決定する |
それぞれの組み合わせにより、以下のような年金があります。
- 確定給付企業年金(DB)
あらかじめ給付が約束されていて、運用で生じた不足分は企業が補填する年金です。規約型確定給付企業年金と基金型確定給付企業年金の2種類があります。 - 企業型確定拠出年金
企業が掛金を拠出し、従業員が運用を行う年金です。 - 個人型確定拠出年金
個人が拠出を行う年金で、iDeCoと呼ばれます。拠出だけでなく加入申込み、掛金の運用の全てを、加入者が個人で行う年金です。掛金とその運用益との合計額をもとにした給付を受け取ることができます。2016年までは自営業者などの限られた人だけが加入できる制度でしたが、2017年から基本的に20歳以上・60歳未満の全員が加入できるようになりました。
規約型確定給付企業年金 | 労使が合意した年金規約に基づき、厚生年金適用事業所の事業主が年金資金の管理・運用や年金給付を行う。 |
基金型確定給付企業年金 | 別の法人格を持った基金を設立し、基金が年金資金の管理・運用や年金給付を行う。 |
年金に4階はある?
3階部分に相当する個人型確定拠出年金(iDeCo)は、ほかの私的年金に上積みすることができます。その場合には、確定給付企業年金や企業型確定拠出年金を3階、個人型確定拠出年金を4階とする、4階建てになります。
3階建ては日本だけ?
日本と同じようにオランダも年金制度を公的年金・職域年金・個人年金による3階建てにしています。
人事労務担当者として日本の年金制度について確認しておこう
日本の年金制度は、1階を国民年金、2階を厚生年金、3階を私的年金とする3階建てになっています。国民年金は、対象年齢の国民全員が加入する年金、厚生年金は会社員などが加入する年金です。私的年金には、確定給付企業年金や企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)が該当します。
企業の人事労務担当者は厚生年金の手続きを行いますが、従業員へ説明したり質問に答えたりもしなければならないでしょう。そのためには年金制度について、ある程度の知識も必要になります。スムーズに対応できるよう、確認しておきましょう。
よくある質問
年金の3階建てとは何ですか?
対象年齢の国民全員が加入する国民年金を1階部分、会社員などが加入する厚生年金を2階部分、私的年金を3階部分とする日本の年金制度のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
年金に4階はありますか?
確定給付企業年金や企業型確定拠出年金に、さらに個人型確定拠出年金(iDeCo)を積み上げると4階建ての年金になります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
労災保険の休業補償給付を請求する際に医師の証明は必要?請求時に必要な書類も解説
休業補償給付とは、業務上のケガや病気が原因で休業する場合に、休業日の収入の一部を補填するための給付です。休業補償給付をスムーズに受け取るには、医師の証明が必要かどうかを含め、手続きの流れや必要書類に関する正しい理解が必要です。 本記事では、…
詳しくみる付加年金とは?厚生年金においても活用できる?
付加年金は国民年金第1号被保険者が納付することで、将来受け取る年金額を増やすことができる制度です。月額400円を国民年金保険料と一緒に支払うことで、「200円×付加保険料納付済期間の月数」の付加年金が、老齢基礎年金に上乗せされます。国民年金…
詳しくみる公務員の社会保険は会社員と違う!?自営業についても解説!
公務員と会社員の社会保険には、同じ点もあれば違う点もあります。公務員の年金は会社員と同じ厚生年金保険ですが、健康保険は会社員が協会けんぽや健康保険組合に加入するのに対し、公務員は共済組合に加入する点が異なります。 共済組合には国家公務員共済…
詳しくみる月額変更届とは?随時改定で標準報酬月額が変更されるタイミングは?
健康保険や厚生年金保険の保険料は、給与に応じて区分した標準報酬月額によって決まります。標準報酬月額の決定方法には、資格取得時決定、定時決定、随時改定の3つがありますが、なかでも忘れやすいのが随時改定の手続きです。 随時改定に関する基礎知識と…
詳しくみる2カ所以上の会社で雇用されるようになった場合の社会保険の取り扱いについて
一般に、会社勤めの方は勤め先の会社(適用事業所)で社会保険に加入します(※1)。 社会保険には「健康保険」(※2)と「厚生年金保険」があり、従業員のみならず会社の社長や役員の方でも加入できます。 通常、社会保険の加入手続きは、入社と同時に会…
詳しくみる労働保険の一般拠出金とは
労働保険では、2007年4月1日から「一般拠出金」についての申告および納付を行うことになっています。この「一般拠出金」は、「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づいたものです。石綿はアスベストという名で知られており、アスベストを使用し…
詳しくみる