- 更新日 : 2026年8月12日
葬祭給付とは?支給額の計算方法や申請手続き、埋葬料との違いを解説
葬祭給付は労災認定された死亡の葬儀執行者に支給される給付金で、申請期限は死亡翌日から2年以内です。
- 支給額は330,000円+日額30日分が基本
- 埋葬料・葬祭費とは制度・申請先が異なる
- 請求書は労働基準監督署へ提出する
Q. 葬祭給付の支給額はいくらですか?
A.「330,000円+給付基礎日額×30日分」と「給付基礎日額×60日分」のいずれか高い方が支給されます。
従業員が労災で亡くなった際、人事・総務担当者がまず把握すべきなのが葬祭給付(葬祭料)の制度です。葬祭給付は労災保険から葬儀を行った人へ支給される給付金で、支給額の計算方法や請求期限には独自のルールがあります。本記事では対象者・支給額・申請手続きに加え、混同されやすい埋葬料や葬祭費との違い、社葬時の税務処理まで整理します。
葬祭給付とは?
葬祭給付とは、業務上または通勤途中の災害で労働者が死亡した場合に、葬儀を行った人へ労災保険から支給される給付金です。厚生労働省の労災補償制度に基づく給付であり、遺族の経済的負担を軽減する目的があります。
労災保険の給付である以上、支給の前提となるのは労働基準監督署(労基署)による労災認定です。労基署は厚生労働省の出先機関として、労災保険の請求や労働条件に関する手続きを管轄しています。業務上または通勤途中の災害と認定されなければ、葬祭給付の対象にはなりません。
業務災害と通勤災害で名称が異なる
労災保険における葬祭に関する給付は、災害の種類によって呼び方が変わります。支給額の計算方法や手続きの流れに違いはなく、名称のみが異なる点を押さえておけば十分です。
| 災害の種類 | 給付の名称 |
|---|---|
| 業務災害(仕事中の事故など) | 葬祭料 |
| 通勤災害(通勤途中の事故など) | 葬祭給付 |
※本記事では便宜上「葬祭給付」の表記で統一します。
請求できるのは「葬儀を行った者」
葬祭給付を請求できるのは、実際に葬儀を執り行った人です。多くの場合は遺族(喪主)ですが、遺族以外に葬儀費用を負担した友人・知人や会社が請求者となるケースもあります。
人事・総務担当者が押さえておきたい要件は次のとおりです。
- 死亡原因が業務上または通勤途中の災害であること
- 葬儀を実際に行った者(喪主など)が請求すること
- 請求期限は労働者が死亡した日の翌日から2年以内であること
2年の時効を過ぎると請求権が消滅します。従業員が労災で亡くなった場合は、早い段階で遺族へ制度を案内し、会社側でも書類準備を進めておくことが望まれます。
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葬祭給付の支給額はいくら?
葬祭給付の支給額は「330,000円+給付基礎日額の30日分」が基本です。ただし、この額が「給付基礎日額の60日分」に満たない場合は、60日分の額が支給されます。
この計算方法は労災保険法施行規則に定められており、厚生労働省が公表するパンフレットでも同様の説明がされています。給付基礎日額が低い労働者であっても、一定額の給付が保障される仕組みです。
2つの計算式の仕組み
葬祭給付には2つの計算式があり、金額が大きい方が適用されます。
- 計算式A:330,000円 + 給付基礎日額 × 30日分
- 計算式B:給付基礎日額 × 60日分
給付基礎日額とは、原則として労災事故発生前3か月間に支払われた賃金の総額を暦日数で割った1日あたりの金額です。残業代や各種手当を含むため、基本給のみで算出しないよう注意が必要です。
参考:葬祭料、複数事業労働者葬祭給付及び葬祭給付の額の改正について|厚生労働省
参考:遺族(補償)等給付・葬祭料等(葬祭給付)の請求手続|厚生労働省
給付基礎日額ごとのシミュレーション
給付基礎日額が11,000円を境に、計算式Aと計算式Bの支給額が逆転します。日額がこれを下回る場合は計算式Aが、上回る場合は計算式Bが有利になる構造です。
| 給付基礎日額 | 計算式A | 計算式B | 支給額 |
|---|---|---|---|
| 8,000円 | 570,000円 | 480,000円 | 570,000円(Aを適用) |
| 10,000円 | 630,000円 | 600,000円 | 630,000円(Aを適用) |
| 11,000円 | 660,000円 | 660,000円 | 660,000円(同額) |
| 15,000円 | 780,000円 | 900,000円 | 900,000円(Bを適用) |
給付基礎日額には最低保障がある
給付基礎日額には、毎年度改定される最低限度額(自動変更対象額)が設定されています。実際の賃金水準からの日額がこの最低限度額を下回る場合は、最低限度額まで引き上げられます。
そのためパート・アルバイトなど賃金水準が低い労働者でも、一定の給付が保障される仕組みになっています。最新の金額は年度ごとに改定されるため、支給申請の際は厚生労働省の公表資料で最新値を確認してください。
葬祭給付と埋葬料・葬祭費の違いは?
葬祭給付・埋葬料・葬祭費はいずれも死亡時に支給される給付金ですが、適用される保険制度と支給額が異なります。業務上の災害か業務外の死亡かによって申請先が変わるため、担当者は制度を混同しないことが重要です。
3つの制度を比較する
葬祭給付は労災保険、埋葬料は健康保険(協会けんぽや組合健保)、葬祭費は国民健康保険(国保)から、それぞれ異なる制度に基づいて支給されます。
| 項目 | 葬祭給付(葬祭料) | 埋葬料(埋葬費) | 葬祭費 |
|---|---|---|---|
| 保険制度 | 労災保険 | 健康保険(協会けんぽ・組合健保) | 国民健康保険 |
| 対象となる死因 | 業務上・通勤途中の災害 | 業務外の死亡 | 国保加入者の死亡※第三者行為や公害を原因とする場合は支給されないことがある |
| 支給額 | 330,000円+給付基礎日額30日分 または60日分 | 一律50,000円 | 自治体により異なる |
| 請求者 | 葬儀を行う者 | 埋葬を行う者(行った者) | 葬儀を行う者 |
| 申請先 | 労働基準監督署 | 協会けんぽ・健保組合 | 市区町村役場 |
| 時効 | 2年 | 2年 | 2年 |
業務上か業務外かで申請先が変わる
従業員が亡くなった場合、まず確認すべきは「業務上(通勤含む)の災害かどうか」です。労災認定を受ければ葬祭給付の対象になり、業務外であれば健康保険の埋葬料が対象になります。両方を同時に受給することはできません。
例えば、通勤中の事故で死亡した場合は通勤災害として労災保険から葬祭給付が支給されます。一方、休日のプライベートな事故で死亡した場合は、健康保険から埋葬料が支給される流れです。
なお、国民健康保険の葬祭費は自治体ごとに支給額が異なり、5万円前後を基準としつつも幅があります。たとえば、東京23区では7万円が支給されるため、金額差は小さくありません。被保険者の住所地の市区町村へ確認する必要があります。
葬祭給付の申請手続きと必要書類は?
葬祭給付の申請は、所轄の労働基準監督署に請求書と添付書類を提出して行います。書類に不備があると差し戻しで支給が遅れるため、提出前に一式をそろえておくことが大切です。
STEP1 必要書類を準備する
主な提出書類は次のとおりです。
- 葬祭料(葬祭給付)請求書:業務災害は様式第16号、通勤災害は様式第16号の10
- 死亡診断書(死体検案書)の写し
添付書類については、併せて遺族補償給付の請求書を提出する際に添付してある場合、必要ありません。請求書の様式は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
参考:主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省
STEP2 請求書を作成し提出する
請求書には、死亡労働者の氏名・生年月日・災害発生日・事業場の名称などを記載し、事業主の証明欄への記入も必要です。記入後、添付書類とあわせて所轄の労働基準監督署へ提出します。
STEP3 審査から支給決定までの流れを把握する
労基署が書類を審査し、支給・不支給を決定します。支給が決定すると、請求者の口座へ給付金が振り込まれます。審査期間は案件により異なりますが、書類に不備がなければおおむね1か月前後で決定されるケースが多いでしょう。
なお、葬祭給付は単独で完結する手続きではなく、遺族補償年金や遺族補償一時金といった他の労災給付とあわせて請求が必要になるケースが多くあります。遺族へ案内する際は、葬祭給付だけでなく遺族補償給付についても説明しておくと手続きがスムーズです。
e-Gov電子申請を活用する
葬祭給付の請求は、政府の電子申請窓口「e-Gov(イーガブ)」からも行えます。紙での郵送・窓口提出に比べて移動時間が不要で、提出履歴も残るため、バックオフィス業務の効率化につながります。
e-Govの利用には、法人向け認証アカウントである「GビズID」または電子証明書の取得が前提になります。GビズIDは取得・更新手数料が無料である一方、発行までに一定の日数がかかる場合があるため、平時のうちに準備しておくと緊急時に慌てずに対応できます。
社葬を行った場合の葬祭給付の帰属や税務処理は?
社葬を行った場合でも、葬祭給付は原則として遺族に支給されます。古い行政通達では、葬祭を行う者について遺族が行うのが原則とされており、会社が社葬を行った場合でも遺族がいれば遺族が受給者となる考え方が示されています。
給付金の帰属先を確認する
社葬と葬祭給付の帰属関係を整理すると、次のようになります。
| ケース | 給付金の帰属先 |
|---|---|
| 遺族がいる(社葬と遺族葬の併催を含む) | 遺族 |
| 遺族がおらず会社が葬儀を行った | 会社 |
| 遺族も会社も葬儀を行わず友人等が行った | 葬儀を行った友人等 |
実務で多いのは、会社が社葬費用を負担しつつ、葬祭給付は遺族が受け取るパターンです。この場合、会社が負担した社葬費用と遺族が受け取った給付金は、それぞれ別に処理します。
社葬費用の経理処理を確認する
会社が社葬費用を負担した場合、社会通念上相当と認められる範囲の支出は損金に算入できます。この取り扱いは国税庁の法人税基本通達に定められています。
損金算入が認められやすい費用の例は次のとおりです。
- 会場費・祭壇費用など葬儀の運営にかかる費用
- 会葬御礼品・返礼品の費用
- 通知状・案内状の印刷・郵送費
一方、社葬の名目で行われる過度な接待費用や、社会的儀礼を逸脱した高額な支出は、損金として認められない場合があります。判断が難しいケースでは、顧問税理士へ事前に相談することが望ましいでしょう。
葬祭給付は非課税で所得税がかからない
労災保険から支給される葬祭給付は非課税所得に該当し、受け取った遺族の確定申告で収入に計上する必要はありません。同様に、健康保険の埋葬料や国保の葬祭費も非課税です。
経理担当者が遺族へ案内する際、「税金がかかるのでは」と不安を持たれることも少なくありません。非課税である旨をあわせて伝えると、遺族に安心してもらいやすくなります。
葬祭給付に関するよくある質問
実務で寄せられやすい疑問をQ&A形式で整理します。雇用形態やテレワーク中の災害など、判断に迷いやすい論点を取り上げました。
パート・アルバイトも葬祭給付の対象になる?
パート・アルバイトであっても労災保険の対象になります。労災保険は、雇用形態や勤務時間に関係なく、労働基準法上の「労働者」であれば加入する制度だからです。
労災保険は事業主が保険料を全額負担する強制保険であり、労働者個人による加入手続きは不要です。加入届の有無にかかわらず、労災事故が発生すれば給付の対象となります。
役員は葬祭給付の対象になる?
取締役などの法人役員は、原則として労災保険の適用対象外です。役員は「労働者」ではなく「使用者」にあたるため、業務中の事故で死亡しても葬祭給付は支給されません。
ただし例外もあります。中小事業主等の特別加入制度を利用している場合や、兼務役員(取締役兼部長など)で労働者としての性格が強い場合は、対象となる余地があります。中小企業の経営者は、自身が業務中に事故に遭うリスクも踏まえ、特別加入の検討を視野に入れておくとよいでしょう。
テレワーク中の死亡事故は労災認定される?
テレワーク中でも業務起因性が認められれば労災認定されます。厚生労働省のテレワークガイドラインでも、テレワーク中の災害は業務上の災害として労災保険給付の対象になると整理されています。
労災認定には「業務遂行性」(使用者の指揮命令下にある状態)と「業務起因性」(業務との間に相当因果関係があること)の両方が求められます。業務中にデスクから書類を取ろうとして転倒したケースは労災と認められる余地がありますが、休憩中に自宅の階段で転倒したケースは私的行為と判断され、認定が難しくなります。
テレワーク中の労災認定は、業務時間と私的時間の境界が曖昧になりやすく、個別の事情に応じて判断されます。会社としては、勤務時間中の作業内容やログを記録するルールを整備し、業務起因性を立証できる体制を整えておくことが実務上のポイントです。
葬祭給付の要件・金額・手続きを正しく理解するために
葬祭給付は、労災認定された死亡に対して葬儀を行った者へ支給される給付金で、申請期限は死亡翌日から2年以内です。支給額は「330,000円+給付基礎日額30日分」と「同60日分」のいずれか多い方が適用され、埋葬料や葬祭費とは制度・金額が異なります。
従業員が労災で亡くなった際は、まず厚生労働省のホームページから請求書様式をダウンロードし、社内の労災対応マニュアルに葬祭給付の手続きフローを追加しておくと、緊急時にも慌てず対応できるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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