- 更新日 : 2026年7月7日
住宅手当を会社が導入するメリットとは?相場やデメリット、制度設計を解説
住宅手当の導入は、採用競争力の強化・定着率向上・企業イメージ改善につながる福利厚生です。
Q. 住宅手当と借り上げ社宅はどちらが会社に有利?
A. 税・社会保険料の節約には借り上げ社宅、運用のシンプルさを重視するなら住宅手当が有利です。
住宅手当を導入することで、採用力の強化や定着率の向上につながります。
一方、導入にあたって、社会保険料の負担増や支給基準の公平性など、注意すべき点があります。
本記事では、住宅手当を会社が導入するメリット・デメリットや相場、導入のポイントを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
住宅手当とは?
住宅手当とは、従業員の家賃や住宅ローンの負担を軽減するために、会社が支給する手当です。
毎月の給与に上乗せして、現金で支給される形が一般的です。一方、法律で義務づけられた手当ではなく、法定外福利厚生に位置づけられます。
そのため、支給の有無や金額、支給条件などの就業規則や賃金規程は、企業側が独自に定めることができます。
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住宅手当を支給している会社の割合と支給額の相場
厚生労働省の調査によると、住宅手当を支給している企業の割合は45.7%で、平均支給額は月額18,700円です。
支給割合は1,000人以上の企業では6割を超える一方で、30〜99人の企業では4割程度にとどまっていることから、企業規模が大きい会社ほど高い傾向があることがわかります。
企業規模別の平均支給額は、以下のとおりです。
| 企業規模 | 平均支給額 |
|---|---|
| 1,000人以上 | 21,100円 |
| 300〜999人 | 18,500円 |
| 100〜299人 | 16,400円 |
| 30〜99人 | 17,500円 |
なお、自社の規模や同業他社の水準にくわえて、人件費の予算を踏まえて支給額を設定することが求められます。
参考:令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省
住宅手当を導入する会社側のメリット
採用や定着、従業員満足度の向上など、会社にとって複数のメリットが住宅手当にはあります。
採用競争力が高まる
求人票などで「住宅手当あり」と打ち出せるため、家賃負担の大きい都市部や地方からの転居者、若手層に対しての訴求力を高められます。
求職者に「従業員の生活を大切にする会社」という印象を与えられるため、応募数の増加や採用単価の抑制にもつながるでしょう。
給与支給額の増加に直結するため、同程度の給与額を提示する競合と比べたときに応募の決め手にもなります。
とくに、新卒や第二新卒など、収入に対して家賃負担の割合が高い層に効果的です。
人材の定着率が向上する
賃金水準が高くない若手や子育て世代の従業員など、生活を安定させたい層の離職を防ぐ効果が期待できます。
住居費の負担が軽くなることで、生活基盤が安定するため、長く働き続けたいと思える従業員が増えやすくなります。
たとえば、勤続年数に応じた支給額にするなど、長期勤続を促す設計が効果的です。
従業員満足度・エンゲージメントが高まる
現金で支給されるため、従業員が金額として効果を実感しやすく、満足度につながりやすいのも住宅手当のメリットです。
住居費の不安が減り、生活基盤が安定することで、仕事への集中やモチベーションなどのエンゲージメントの向上が見込めます。
従業員の満足度やエンゲージメントが向上すると、離職率の低下といった形で会社の業績にも還元されます。
若手や子育て世代の従業員にとって、家賃補助による固定費の支援は、給与アップ以上に日々の生活に直結する福利厚生です。
企業イメージの向上につながる
従業員の生活を支える制度を整えていることは、求職者や既存従業員に対して、人を大切にする会社という印象を与えます。
福利厚生の充実は、採用広報やコーポレートサイト、求人媒体でアピールできる材料になり、企業ブランディングを後押しします。
働きやすさや福利厚生を重視して就職先を選ぶ求職者も多いことから、住宅支援は他社との差別化要素にもなる福利厚生です。
人的資本経営への関心が高まるなかで、従業員の生活支援に積極的な姿勢は、投資家や社会からの企業価値の評価にもつながります。
人件費として経費計上できる
会社が支給する住宅手当は、給与として全額を人件費に計上できます。
人件費として計上することで、課税所得が圧縮され、法人税の負担を抑える効果が期待できます。
社宅のように物件を管理する手間がなく、現金支給で完結するため、経理上の処理も難しくありません。
賃金規程に支給基準を定めておけば、損金算入の根拠も明確になります。
住宅手当を導入する会社側のデメリット
住宅手当には、押さえておくべきデメリットや注意点もあります。
人件費と社会保険料の負担が増える
住宅手当は、給与として扱われます。支給額がそのまま人件費として計上されるため、所得税や住民税の課税対象です。
さらに、社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額にも算入されるため、会社と従業員が折半して負担する社会保険料も増加します。
支給額以上のコストがかかる点を踏まえて、支給水準や対象範囲を慎重に決めましょう。
支給基準による不公平感が生じやすい
住宅事情は、従業員ごとに大きく異なるため、支給基準の設計によっては従業員間で不公平感が生まれやすい手当です。
たとえば、賃貸の従業員だけを対象にすると、住宅ローンを抱える持ち家の従業員や、実家暮らしの従業員から不満が出るおそれがあります。
不公平感を抑えるためには、支給する従業員としない従業員の線引きを明記しておくことが大切です。
支給対象や条件を明確に定め、就業規則や賃金規程に明記した上で従業員へ周知することで、トラブルを防止できます。
一度導入すると廃止・変更が難しい
住宅手当は、従業員の生活に直結します。そのため、いったん導入すると廃止や減額が難しい手当です。
支給額の引き下げや廃止は、労働条件の不利益変更にあたり、原則として従業員個別の同意が必要となります。
就業規則の変更によって行う場合も、変更内容に合理性が求められ、合理性を欠く変更は無効と判断されるおそれがあります。
将来的に支給額の変更や廃止が必要になった際に対応しやすいよう、支給期間や支給条件、見直しのタイミングをあらかじめ就業規則に定めておきましょう。
同一労働同一賃金への対応が必要になる
住宅手当を正社員にのみ支給したり、パートタイマーや契約社員に支給しなかったりする行為は、同一労働同一賃金の観点から不合理な待遇差と判断されるおそれがあります。
同一労働同一賃金は、正社員と非正規社員の間で不合理な待遇差を設けることを禁止する仕組みです。
そのため、支給対象を限定する場合は、雇用形態による差について合理的な理由を整理しておくことが求められます。
支給の目的を明確にし、対象範囲を雇用形態で線引きしない設計をしましょう。
住宅手当を導入する際のポイント
住宅手当は、運用しやすい制度設計にすることが大切です。導入する際は、以下のようなポイントを押さえておきましょう。
支給の目的と対象者を明確にする
住宅手当を設計するときは、まず支給の目的を明確にします。
転勤の可能性があり、それに伴う負担軽減なのか、あるいは福利厚生や生活費の補助が目的なのか、それによって支給対象も定まってくるため制度設計はクリアになります。
前者の場合は、転勤リスクのある正社員等に限定可能ですが、後者の場合は支給の有無や支給額に格差をつけることは、不合理と判断される可能性が高いです。
対象を絞る場合は、同一労働同一賃金の観点から、不合理な差別とみなされないような理由が必要となるため、慎重な対応が求められます。
支給条件はシンプルに設計する
支給条件は、できるだけシンプルに設計しましょう。
雇用形態や住居形態、扶養家族数など、支給条件を増やしすぎると、運用や説明が複雑になります。
条件が複雑になると、申請や審査の手間が増えるだけでなく、従業員が制度を理解しにくくなる原因にもなります。
家賃額や世帯主かどうかなど、客観的に判断できる項目を中心に基準を組み立てると、運用と説明の両面で設計しやすいでしょう。
支給額・支給方式(定額か定率か)を決める
支給額は、家賃額に応じて手当額が変わる方式で設計しましょう。
対象者全員に一律の定額で支給する方式は、割増賃金の算定基礎から除外できる住宅手当と認められない可能性があるため注意が必要です。
一方で、家賃に応じた方式であれば割増賃金の計算から除外でき、従業員の家賃負担の実態にもあわせやすくなります。
支給額に上限を設けておくと、人件費の総額がコントロールしやすくなるでしょう。
就業規則・賃金規程に明記して周知する
住宅手当の支給ルールは、就業規則や賃金規程に明記し、従業員に周知することが求められます。
支給対象や条件、金額、申請方法を就業規則や賃金規程に明記し、運用基準を社内で統一しましょう。
あわせて、申請書や賃貸借契約書などの証憑の提出方法も定めておきます。
支給基準を明文化することで、支給判断のばらつきや不公平感を防げます。
住宅手当の導入に関するよくある質問
ここからは、住宅手当の導入に関するよくある質問を紹介します。
住宅手当と家賃補助・社宅制度の違いは?
家賃補助は、住宅手当とほぼ同じ意味で使われることもあります。
しかし、社宅制度で企業が家賃の一部を負担する仕組みを指す場合があるなど、文脈によって意味が異なる言葉です。
一方、社宅制度は、会社が用意した住宅を従業員に貸し出す現物支給の制度です。
企業が物件を保有する社有社宅と、会社が賃貸物件を借りて貸し出す借り上げ社宅に分かれます。
社宅制度は現物支給である点で、現金を支給する住宅手当とは仕組みが異なります。
一人暮らしの従業員への住宅手当の支給は必要?
一人暮らしの従業員への住宅手当の支給は、法律上の義務ではないため、支給対象は各企業が就業規則や賃金規程で任意に定められます。
世帯主であることや本人が家賃を負担していることなどを条件として、賃貸に住む一人暮らしの従業員を支給対象とする企業もあります。
実家暮らしの従業員は、家賃を負担していないことを理由に対象外とする場合もあるため、自社の支給目的に沿って対象範囲を設計しましょう。
住宅手当と借り上げ社宅はどちらが会社に有利?
税金や社会保険料の負担を抑えたい場合は、借り上げ社宅のほうが有利でしょう。運用のシンプルさを重視する場合は、住宅手当のほうが向いています。
住宅手当は、現金で支給するため、全額が給与として課税対象になる上、社会保険料の算定にも含まれる手当です。
一方、借り上げ社宅は従業員から賃貸料相当額の50%以上を徴収すれば、会社が負担する家賃部分は給与課税の対象外となります。
社会保険料についても、現物給与の価額をもとに算定されるため、住宅手当に比べて負担を抑えられる場合があります。
賃貸料相当額は、建物や敷地の固定資産税の課税標準額などをもとに、算出する金額で市場の家賃よりも低くなる傾向があるのも特徴です。
ただし、借り上げ社宅は物件の契約や管理に事務負担がかかるため、税・社保のメリットを享受しつつ、運用負担を抑えられる仕組みをとり入れることがポイントです。
運用負担を抑える方法のひとつとして、従業員の賃貸物件を法人名義に切り替えるマネーフォワードクラウド福利厚生賃貸があります。
家賃を給与から天引きすることで、所得税や社会保険料の負担を抑えやすくなります。
契約手続きや管理会社との調整も代行されるため、運用負担に不安がある会社にも適したサービスです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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