• 作成日 : 2026年7月7日

人材確保等支援助成金とは?コースの種類や手続きの流れを解説

Point人材確保等支援助成金とは何か?

人材確保等支援助成金とは、職場環境整備や制度導入を通じて人材の採用・定着を図る企業を国が支援する助成金制度です。

  • 目的・業種別に7つのコースが存在
  • 離職率低下の達成が支給の主要件
  • 支給は後払いで計画開始から2年近くかかる場合も

コースや取り組み内容により異なり、数十万円〜最大225万円以上が支給されます。

人材不足が深刻化する中、従業員の定着率向上や働きやすい職場環境の整備は企業にとって欠かせない取り組みです。しかし、制度の導入や設備投資には一定のコストがかかるため、実施に踏み切れていない企業もいるのではないでしょうか。

その際に有効な選択肢となるのが、「人材確保等支援助成金」の活用です。

本記事では、人材確保等支援助成金の概要やコースの種類、申請から受給までの流れを解説します。ぜひ参考にしてみてください。

人材確保等支援助成金とは?

人材確保等支援助成金とは、従業員にとって魅力的な職場環境を整備し、人材の採用と離職防止を目指す企業を支援する制度です。

雇用管理制度の導入や労働者の負担を軽減する機器の整備などを行う企業に対し、支援金を提供してもらえます。

目的や業種に応じて複数のコースが用意されており、それぞれどのような取り組みを支援するのかが異なる仕様です。

たとえば、雇用管理制度・雇用環境整備助成コースでは職場環境のデジタル化や省力化を支援しており、ロボット掃除機や業務用食洗機などの導入に支援金が支給されます。

また、実施した取り組みが離職防止に寄与していることが支給要件として設けられているコースも多く、制度の活用時に離職率を算出する必要があるのも特徴です。

なお、以下の記事では、助成金を活用するメリットやデメリットについて解説しています。助成金の活用を検討している方は、あわせて参考にしてみてください。

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人材確保等支援助成金の種類

人材確保等支援助成金は目的や業種に応じて複数のコースが用意されています。

各コースの概要は、以下のとおりです。

雇用管理制度・雇用環境整備助成コース

社内の評価・賃金制度を新しく整えたり、現場の作業負担を減らす設備を導入したりして、離職率の低下に取り組んでいる場合に助成金が支給されるコースです。

対象者 雇用保険が適用される事業者
適用条件 どちらか一方を実施し、最終的に離職率の低下を達成すること

  • 賃金規定・諸手当・人事評価・職場活性化・健康づくり制度のいずれかを導入する

(雇用管理制度の導入)

  • 従業員の業務負担を軽減する機器・設備を導入する(業務負担軽減機器等の導入)
受けられる支援
  • 制度導入:1制度につき20万〜50万円(上限80万〜100万円)
  • 機器・設備導入:導入費用の1/2〜75/100(上限150万〜225万円)

中小企業団体助成コース

事業協同組合などの中小企業団体が、その構成員である中小企業の人材確保や職場定着を支援する事業を行った場合に助成されるコースです。

対象者 都道府県知事による改善計画の認定を受けた中小企業団体(事業協同組合、商工会など)
適用条件 合同企業説明会の開催や職業相談員の配置など、構成企業の採用・定着支援事業を実施する
受けられる支援 労働環境向上事業に要した費用の2/3
(上限額600万円〜1,000万円)
(上限額は団体規模に応じて決定)

建設キャリアアップシステム等活用促進コース

建設技術者へ能力・経験に応じた適切な処遇を与えるために「建設キャリアアップシステム(CCUS)」を活用している中小建設事業主を支援するコースです。

なお、令和8年度からは、登録手数料等の支援は終了し、「雇用管理改善促進事業」のみの実施となります。

※建設キャリアアップシステム(CCUS:Construction Career Up System)とは、建設業界で働く技術者や職人の資格や就業履歴を業界統一のルールで登録・蓄積し、適切な評価や処遇改善につなげるための仕組みを指す

対象者
  • 中小建設事業主
適用条件
  • 中小建設事業主の場合:雇用するすべての建設技能者のCCUS登録を完了し、能力評価(レベル判定)で昇格した技能者の賃金を5%以上増加させる
受けられる支援
  • 中小建設事業主の場合:算定対象となる建設技能者1人あたり16万円を支給

若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)

建設業界における若年者や女性の入職・定着を促進するための取り組みを支援するコースです。

なお、令和8年4月から「定着助成」が新設され、5区分となっています。

対象者
  • 建設事業主
  • 建設事業主団体
  • 職業訓練法人
適用条件
  • 建設事業者、建設事業主団体の場合:若年者、女性の入職・定着を目的とした事業を行う
  • 職業訓練法人:建設工事に関する訓練を推進する活動を行う
受けられる支援
  • 中小建設事業主:支給対象経費の3/5(賃金要件を満たせば3/4)
  • 建設事業主団体:中小団体は経費の2/3、それ以外は1/2
  • 職業訓練法人:支給対象経費の2/3
  • 定着助成(新設):魅力発信や育成・定着に取り組み、新規入職者が6ヶ月定着した場合に1人あたり42万円上乗せ支給

作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)

建設現場における女性専用施設(トイレや更衣室など)の導入や、職業訓練施設の整備、特定の地域(石川県)における宿舎確保を支援するコースです。

対象者
  • 中小建設事業主(自ら施工管理する現場に女性専用施設を借りる場合)
  • 広域的職業訓練を実施する職業訓練法人
  • 石川県に所在する中小建設事業主
適用条件
  • 中小建設事業主の場合:女性専用の作業員施設(トイレや更衣室など)を賃借で設置する
  • 職業訓練法人:認定訓練のための施設・設備を整備する
  • 石川県内の事業主:県内で作業員宿舎・賃貸住宅の賃借する など
受けられる支援
  • 女性専用施設(賃借):経費の3/5(賃金要件を満たせば3/4)
  • 訓練施設等:経費の1/2
  • 石川県内の作業員宿舎:労働者1人あたり25万円
  • 石川県内の賃貸住宅、作業員施設:支給対象費用の経費の2/3

外国人労働者就労環境整備助成コース

外国人労働者特有の事情に配慮した環境整備を行い、職場定着を促進する取り組みを支援するコースです。

対象者 外国人労働者を雇用する事業主
適用条件
  • 就労環境整備措置の導入:雇用労務責任者の選任、就業規則等の多言語化などを実施する
  • 離職率目標の達成:整備後の離職率15%以下を達成する
受けられる支援 1制度の導入につき20万円(上限80万円)

なお、外国人雇用の際に活用できる助成金については、以下の記事をご覧ください。

テレワークコース

適切な労務管理のもとでテレワーク制度を導入し、人材確保や雇用管理改善に効果をあげた中小企業を支援するコースです。

対象者 中小企業事業主
適用条件
  • 制度導入助成:評価期間中に、対象労働者全員が少なくとも1回はテレワークを実施する
  • 目標達成助成:導入後の離職率が、導入前と同等以下である
受けられる支援
  • 制度導入助成:1企業あたり20万円
  • 目標達成助成:1企業あたり10万円(賃金要件を満たせば15万円)

在宅勤務を導入する際に活用できる給付金や補助金については、以下の記事にまとめています。あわせて参考にしてみてください。

おすすめの助成金については、以下をご覧ください。

人材確保等支援助成金を申請する流れ

人材確保等支援助成金を申請する際の流れは、以下のとおりです。

1.雇用管理制度等整備計画の作成と提出

取り組みの内容や目指す目標計画を作成し、各都道府県の労働局に提出しましょう。

たとえば、自社の課題にあわせたコースを選択し、導入する制度や機器・設備の内容を盛り込んだ雇用管理制度等整備計画を作成します。

また、計画書には提出前1年間の計画時離職率の記載が必要です。申請前に計算しておきましょう。

なお、提出期限は、原則として計画開始日の1ヶ月前から6ヶ月前の日までです。

この期限を過ぎると、計画の開始を遅らせる必要があるため注意しましょう。

2.計画に基づいて実施

提出した計画を労働局から認定をもらったら、計画の内容に沿って、制度の導入や機器や設備の設置を行います。

一度導入した制度や機器などは、離職率の評価期間末日まで運用をし続けなければなりません。

導入後、想定していた成果を実感できなかったからといって途中で運用を中断したり、使用を停止したりすると、助成金の支給対象外になります。

途中で導入する制度や機器を変えたい場合は「雇用管理制度等整備計画(変更)書」を新たに作成し、管轄の都道府県労働局に提出する必要があります。

3.目標達成状況を測定

制度や機器を導入した結果、従業員の離職率はどの程度下がったのかをデータをもとに評価しましょう。

定められた期間における従業員の離職率を算出し、計画提出時に設定した目標値(離職率の低下目標)をクリアできているかを確認します。

計算の対象となる労働者の範囲は、各事業所における雇用保険に加入する従業員です。短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者などは、離職率の計算時に含まれません。

労働者の範囲を適切に認識していないと、計画目標の達成状況を正確に把握できないため、定義を理解したうえで算出しましょう。

4.助成金の支給申請

すべての取り組みと目標達成が完了したら、実際に助成金を請求します。

支給申請書に出勤簿や賃金台帳、機器の領収書などの申請に必要な書類を添付して、労働局に提出しましょう。

なお、提出期限は、評価期間終了日から2ヶ月以内です。

1日でも提出が遅れると受け付けてもらえないため、期間終了後にすぐ提出できるよう事前に書類を準備しておきましょう。

労働局によって厳正な審査が行われますが、確認項目が多いため支給決定まで数ヶ月かかるのが一般的です。

人材確保等支援助成金に関するよくある質問

ここからは、人材確保等支援助成金に関するよくある質問をご紹介します。

人材確保等支援助成金って結局いくらもらえる?

選択コースや取り組み内容によって支給される助成金額は異なり、数十万円から数百万円まで幅があります。

たとえば、雇用管理制度・雇用環境整備助成コースなら、制度導入1つにつき20万〜50万円、機器・設備導入なら上限225万円まで助成金が支給されます。

一方、離職率低下に伴う人件費の増加や機器導入による費用負担など、助成金をもらうまでの間は、企業側によるコスト負担が必要です。

そのため、支給される金額だけに着目するのではなく、発生するコストに対する費用対効果を比較することが求められます。

助成金は毎月もらえる?

助成金は毎月もらえる仕組みではありません。取り組みを完了し、その効果が確認された後に一括で支払われる後払い制です。

計画の申請から1年間の評価期間、労働局による成果の審査を得て、助成金が支給されるため、計画の開始から支給までに2年近くかかる可能性があります。

機器の購入費用をはじめとする費用は先に自社で負担する必要があるため、助成金の受給までの期間を考慮した資金繰りを検討しておきましょう。

どのコースを選べばいい?

「自社が現時点で一番解決したい課題」に直結するコースを選択しましょう。

離職率を下げたいなら雇用管理制度・雇用環境整備助成コース、建設業での採用・定着率向上を目指すなら各種建設業特化のコースがあげられます。

なお、解決すべき課題は、従業員のニーズも踏まえて特定することが求められます。

従業員が求めていない制度や機器を導入しても、運用の手間が増えるだけで離職率の低下にはつながらないうえに、助成金も得られません。

複数のコースを併用して利用することはできる?

要件さえ満たしていれば、複数のコースを併用して申請可能です。

たとえば、「テレワークコース」を使って在宅勤務用のシステムを導入し、それとは別に「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」を使って新しい社内評価制度を導入することができます。

ただし、1つの取り組みや1つの設備導入に対して、複数のコースを併用することはできません。

なお、定着率向上を実現する施策として、福利厚生を充実させることもひとつの選択肢です。

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