- 作成日 : 2026年7月6日
適用事業報告とは?書き方・提出期限・罰則・対象範囲と様式の入手方法も紹介
適用事業報告は、労働者を1人でも雇った事業所が労働基準監督署へ提出する届出です。
- パート・アルバイトも届出対象の労働者に含む
- 提出期限は明確に定められていないが、遅滞なく提出することが必要
- 未提出は30万円以下の罰金リスクあり
Q. 適用事業報告はどこへ、いつ提出する?
A. 事業所の所在地を管轄する労働基準監督署へ、雇い入れから遅滞なく提出します。
適用事業報告は、労働者を1人でも雇い入れた事業所が労働基準監督署(労基署)へ提出する届出です。正社員だけでなく、パートやアルバイトも対象に含まれます。本記事では、提出対象の判断基準から書き方、提出期限、未提出時の罰則まで、実務の流れに沿って解説します。初めて従業員を雇う経営者や労務担当者でも、届出の要否判断から提出完了まで迷わず進められる内容です。
目次
適用事業報告とは何か?
適用事業報告は、労働基準法の適用対象となった事業所が、その事実を労基署に報告するための書類です。労働基準法第104条の2および労働基準法施行規則第57条第1項に基づき、労働者を1人でも雇い入れた時点で提出義務が生じます。
「従業員を雇ったが、何の届出が必要かわからない」という声は、初めて人を雇う事業主から多く聞かれます。適用事業報告は、労基署が事業所の実態を把握し、労働条件の監督体制を整えるために設けられた制度です。
パート・アルバイトも「労働者」に含まれる理由
適用事業報告における労働者は、雇用形態を問わず広く対象に含まれます。正社員・パート・アルバイト・契約社員・臨時雇用者であっても、雇用契約を結んでいれば労働者としてカウントが必要です。
これは労働基準法第9条が、労働者を「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しているためです。週1回だけ出勤するアルバイトであっても、この定義に該当すれば対象から外れません。個人事業主が1人でもアルバイトを雇った場合も、法人・個人を問わず届出対象になります。
役員・親族・業務委託先は届出対象外になる
会社の役員、同居の親族のみで行う事業、業務委託先、一人親方は、労働基準法上の労働者に当たらないため、適用事業報告でカウントする必要はありません。
これらは使用者側の立場や、雇用契約ではなく請負契約に基づく働き方であるためです。具体的には以下のとおりです。
| 区分 | 労働者に該当するか | 理由 |
|---|---|---|
| 会社の役員(取締役・監査役など) | 該当しない | 使用者側の立場とされる |
| 同居の親族のみで行う事業 | 原則該当しない | 労基法の適用が原則除外される |
| 業務委託・フリーランス | 該当しない | 雇用契約ではなく請負契約の相手方 |
| 一人親方 | 該当しない | 事業主として独立して働く立場 |
ただし、業務執行権を持たず労働者と同様に働く使用人兼務役員は、労働者に該当する場合があります。判断に迷う場合は、管轄の労基署に確認するとよいでしょう。
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適用事業報告は事業所単位で提出が必要?
適用事業報告は、原則として事業所ごとに提出します。本社と支店がある場合は、それぞれの事業所で個別に届出が必要です。
判断の目安は「場所的に独立しているか」「人事・経理などの管理機能を持っているか」の2点です。例えば、本社とは別のビルに営業所を構え、独自に労務管理を行っている場合は別の事業所として扱われます。一方、同じフロア内にあり独立した管理機能を持たない部署は、本社の一部として扱うのが一般的です。複数店舗を展開する事業者でも、各店舗の店長が独立して勤怠管理を行っていれば、店舗ごとの届出が必要になるケースが多くなります。
適用事業報告の書き方は?
適用事業報告書(様式第23号の2)は、厚生労働省のサイトから無料でダウンロードできます。記入項目は限られており、事業所の基本情報と労働者数を正確に記入すれば完成します。
様式の入手方法
様式の入手先は、主に厚生労働省の公式サイト、管轄の労基署窓口、e-Gov(電子政府の総合窓口、デジタル庁が運営する行政手続きポータル)の3つです。厚生労働省サイトの「主要様式ダウンロードコーナー」では、PDFやWord、Excelなどの形式で入手できます。Word形式であればパソコン上で直接入力して印刷できるため、手書きの手間を省けます。電子申請を行う場合はe-Govから手続きが可能です。
参考:主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)|厚生労働省
記入項目と記載のポイント
適用事業報告書の主な記入項目と記載内容を整理します。各項目を正確に記入することが、提出時の修正対応を減らす最も確実な方法です。
| 記入項目 | 記載内容・ポイント |
|---|---|
| 事業の名称 | 法人名または屋号を記入。屋号がない個人事業主は個人名でも可 |
| 事業の所在地 | 郵便番号を含む事業所の住所を電話番号を含め正確に記入 |
| 事業の種類 | 日本標準産業分類に基づく業種名を記入 |
| 労働者数 | 届出時点の人数を男女別に記入。パート・アルバイトも含める |
| 使用者の職名・氏名 | 法人は代表者の職名と氏名、個人事業は事業主本人の職名と氏名 |
| 適用年月日 | 労働者を初めて雇い入れた日付 |
事業の種類欄は日本標準産業分類に沿って記入する
事業の種類欄には、総務省の日本標準産業分類(JSIC)に沿った業種名を記載します。これは、行政が事業所の実態を統計上分類するための共通基準だからです。
例えば、ITシステム開発を行う会社であれば「情報サービス業」、美容室であれば「生活関連サービス業」と記載します。自社の業種がどの分類に該当するか判断しづらい場合は、総務省の分類検索システムで確認するか、労基署の窓口で相談すると確実です。
参考:日本標準産業分類|総務省
労働者数はパート・アルバイトを含めて男女別に数える
労働者数の欄には、届出時点で雇用している全労働者を男女別に記入します。カウント対象になる人とならない人の線引きは以下のとおりです。
| 区分 | カウント対象か |
|---|---|
| 正社員 | 対象 |
| パート・アルバイト | 対象 |
| 契約社員・嘱託社員 | 対象 |
| 派遣社員(派遣元での報告) | 対象 |
| 役員(取締役など) | 対象外 |
| 業務委託先・フリーランス | 対象外 |
| 同居の親族 | 原則対象外 |
派遣社員は、派遣元(派遣会社側)が適用事業報告で労働者としてカウントし、派遣先の事業所ではカウントしません。自社で派遣スタッフを受け入れている場合は、人数に含めないよう注意が必要です。
適用事業報告の提出先・提出期限はいつ?
適用事業報告の届出先は、事業所の所在地を管轄する労基署です。提出期限は「遅滞なく」と定められており、明確な期限はありませんが、出来る限り早く提出することが推奨されます。
管轄の労基署を確認する方法
管轄の労基署は、厚生労働省のサイトに掲載されている都道府県労働局・労基署の所在地一覧から検索できます。本社と支店が別地域にある場合は、それぞれの管轄労基署へ個別に届出が必要です。
参考:都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省
提出方法は窓口・郵送・電子申請の3パターン
適用事業報告の提出方法は、窓口持参・郵送・電子申請の3つから選べます。それぞれ特徴が異なるため、状況に応じて選択するとよいでしょう。
| 提出方法 | 特徴 |
|---|---|
| 窓口持参 | 記入ミスがあればその場で修正できる |
| 郵送 | 控えの返送を希望する場合は返信用封筒を同封する |
| 電子申請(e-Gov) | オンラインで24時間申請でき、窓口に出向く手間が省ける |
初めて届出する場合は、窓口で記入内容を確認してもらえる窓口持参が安心です。複数事業所分をまとめて処理したいバックオフィス担当者には、GビズID(法人・個人事業主向けの共通認証システム)を使ったe-Gov電子申請が向いています。
提出期限は設けられていない
労働基準法施行規則は提出期限を「遅滞なく」と定めており、明確な日数の指定はありません。「遅滞なく」は1週間から数週間程度が目安となりますが、出来る限り早い提出が望まれます。
実務上は、労働保険の保険関係成立届(雇用日の翌日から起算して10日以内)や概算保険料申告書(同50日以内)と合わせて準備すると、漏れを防ぎやすくなります。同時期に求められる主な届出を一覧にまとめました。
| 届出書類 | 提出先 | 期限の目安 |
|---|---|---|
| 適用事業報告 | 労働基準監督署 | 遅滞なく |
| 保険関係成立届 | 労働基準監督署 | 保険関係成立日の翌日から起算して10日以内 |
| 概算保険料申告書 | 労働基準監督署・金融機関等 | 保険関係成立日の翌日から起算して50日以内 |
| 雇用保険適用事業所設置届 | 公共職業安定所(ハローワーク) | 設置日の翌日から起算して10日以内 |
これらは提出先や期限が異なるため、雇用開始日を起点に期限を逆算してチェックリスト化すると管理しやすくなります。
適用事業報告を提出しなかったらどうなる?
適用事業報告を提出しなかった場合、労働基準法第120条により30万円以下の罰金が科される場合があります。さらに、建設業許可の取得・更新時に未提出が発覚すると、審査に通らないリスクも生じます。
罰金が科される場合がある
労働基準法第120条には、報告義務を怠った場合の罰則として30万円以下の罰金が規定されています。即座に罰金が科されるケースは多くないものの、労基署の調査や臨検の際に未届出が判明すると、是正勧告や指導につながります。
是正勧告を受けた後も対応しなければ、送検や罰金の手続きに進む場合もあります。「知らなかった」「忘れていた」は免責の理由にはなりません。
建設業許可の取得・更新に影響する場合がある
建設業を営む事業者にとっては、罰金以上に深刻な影響が出る場合があります。建設業許可の申請・更新では、社会保険や労働保険への加入状況が審査されますが、適用事業報告が未提出だと、労働基準法を遵守していないと判断される材料になりかねません。
建設業では元請業者から現場入場時に控えの提示を求められることがあります。未提出のままでは現場に入れず、受注機会を逃す事態も起こり得るでしょう。
提出を忘れていた場合の対処フロー
すでに労働者を雇って数か月経過していても、気づいた時点で速やかに届出すれば、問題が大きくなる前に対処できます。対処の流れは次のとおりです。厚生労働省サイトまたは労基署窓口で様式第23号の2を入手し、届出時点の労働者数や事業情報を正確に記入します。続いて、管轄の労基署に持参または郵送で提出します。届出が遅れた理由を聞かれた場合は正直に説明しましょう。最後に、控えに受付印をもらい、社内で保管します。
労基署側も、届出の遅れ自体を厳しく罰するよりも、今後の適正な届出を求める姿勢をとるのが一般的です。放置するほどリスクが積み上がるため、気づいた時点で行動することが重要です。
届出後に変更が生じた場合の対応
事業所の所在地変更や事業の種類に変更があった場合は、改めて所轄の労基署へ届出が必要になることがあります。これは、労基署が事業所の最新情報を把握し、監督業務を適切に行うためです。
労働者数が大きく増減した場合も、最新の状況を労基署に伝えておくと、後の調査や手続きの際に行政側との確認がスムーズになります。変更内容や届出方法に不明点がある場合は、管轄の労基署に事前に問い合わせておくと安心です。
適用事業報告をスムーズに提出するために
適用事業報告は、パート・アルバイトを含む労働者を1人でも雇った時点で提出義務が生じる届出です。提出期限は明確に定められていませんが、未提出の場合は罰金や建設業許可への影響といったリスクが生じます。様式は厚生労働省サイトから入手し、事業所ごとに管轄の労基署へ提出しましょう。労働保険関連の届出と合わせてチェックリスト化しておくと、漏れなく手続きを進められます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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