- 作成日 : 2025年12月23日
合同会社に法人税はかかる?税率・申告や納付の流れを解説
合同会社を設立した場合、どのような税金が課されるのか、個人事業主との違いは何かという疑問は、起業を考える多くの方が直面するテーマです。
本記事では、合同会社に課せられる法人税の基本や申告・納付の流れ、法人税以外に必要な税金の種類などを解説します。
目次
合同会社に法人税は課税される?
合同会社は株式会社と同様に「法人」としての税務義務を負っており、利益が出た場合には法人税が課税されます。法人格を持つ以上は、税制上同じく法人税法の適用対象となります。以下で、合同会社に法人税がかかる理由や税務上の取り扱いについて見ていきましょう。
合同会社も法人格を持つため法人税の対象となる
合同会社は、2006年の会社法施行によって導入された法人形態であり、法的には株式会社などと同様に「法人格」を持ちます。法人格とは、法律上ひとつの人格として認められることを意味し、法人税の課税対象となる基礎です。つまり、法人格を持つ以上、合同会社は法人税法に基づいて課税されることになります。
株式会社、合同会社、合名会社、合資会社といった法人はいずれも、国に対して法人税を納める義務があります。この点において、法人の形態によって課税の有無が分かれることはなく、合同会社も例外ではありません。
したがって、個人事業主が所得税を支払うのと同様に、合同会社は事業活動による利益に対して法人税を支払うことになります。
利益が出れば法人税が発生し、赤字なら課税されない
法人税は「所得税」と同様に、あくまで利益が発生した場合にのみ課税されます。合同会社が事業年度の決算において、収益から経費を差し引いた結果、課税所得が生じた場合、その所得に法人税が課されます。
一方で、赤字(課税所得が0円以下)となった場合には法人税は発生しません。
ただし、法人税が発生しない赤字の年度であっても、後述する法人住民税の「均等割」は課税されるため、税金がまったくかからないというわけではありません。合同会社は法人であるため、利益が出ていれば法人税、その他の関連税目についても申告・納税が必要です。
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合同会社の法人税率と税額の計算方法は?
合同会社の法人税率は、会社の規模や所得額によって異なります。ここでは、法人税率の基本と計算方法、2025年度の税制改正による最新動向について解説します。
中小法人の軽減税率は15%、それ以外は23.2%
合同会社の法人税率は、原則23.2%ですが、資本金が1億円以下の「中小法人」に該当する場合、所得のうち年800万円以下の部分に15%の軽減税率が適用されます。これにより、同じ利益でも中小規模の合同会社は法人税負担を抑えることが可能です。
資本金500万円の合同会社で課税所得が1,000万円の場合、最初の800万円には15%、残り200万円には23.2%の税率が適用されます。これにより、法人税額は「800万円×15%+200万円×23.2%=166万4,000円」となります。
なお、この15%の軽減税率は恒久的なものではなく、本来は19%が標準税率です。しかし、2025年度の税制改正により、軽減税率15%の特例措置は2027年3月31日開始事業年度まで延長されています。したがって、2025年時点では引き続き15%が適用され、中小法人にとって有利な状況が継続しています。
法人税額の計算は課税所得×税率で求める
法人税は、合同会社が1事業年度に得た課税所得(利益)に対して課税されます。課税所得は「収入総額−必要経費」で求められ、ここで重要なのが「経費に含められる範囲」です。合同会社では、代表社員に支払う役員報酬も経費(損金)として扱えます。
年間利益が1,200万円の事業で代表社員に600万円の報酬を支払った場合、法人の課税所得は「1,200万円−600万円=600万円」となり、税率15%が適用されます。これにより法人税額は90万円となり、個人側では給与所得控除が適用されるため、全体の税負担が軽減されるケースもあります。
また、法人税は比例税率であり、所得が増えても税率が変わらない点が特徴です(累進課税である個人所得税とは異なります)。
そのため、利益が増えるほど税額は直線的に増加しますが、税率自体は一定です。この仕組みにより、法人では利益の規模が大きくなるほど税制面での優位性が生まれます。
「防衛特別法人税」が導入予定
2025年時点での税制動向として重要なのが、防衛特別法人税(「防衛強化税率」)の新設です。これは、法人税額に対して追加課税を課す制度で、2026年(令和8年)4月1日以後に開始する各事業年度から適用されます。
課税方式としては、「各課税事業年度の基準法人税額から年500万円の基礎控除を差し引いた金額」に対して税率4%を乗じて計算されます。
なお、この基礎控除の適用を受けた結果、おおよそ課税所得2,400万円程度以下の法人は課税対象外となるケースが多いと説明されています。 多くの合同会社のような中小法人にとっては、現時点では影響が限定的と考えられますが、将来的に利益規模が拡大した場合にはこの追加税負担も視野に入れておく必要があります。
合同会社が法人税以外に支払う税金は?
合同会社は法人税のほかにも、事業運営に関わるさまざまな税金を納める必要があります。それぞれの税の特徴を整理しておきましょう。
【法人住民税】赤字でも毎年支払いが発生
法人住民税は都道府県や市区町村に納める地方税で、「均等割」と「法人税割」から成ります。均等割は法人の規模に応じて定額で課され、利益の有無に関わらず発生します。小規模な合同会社であっても、年間7万円前後が最低ラインです。
一方、法人税割は法人税額に応じて課税されるため、赤字年度には発生しません。なお、法人住民税は経費として扱えず、利益から直接差し引く必要がある点に注意が必要です。
【法人事業税】利益に応じて課税される地方税
法人事業税は都道府県に納める税で、利益が出た場合にのみ課税されます。税率は所得に応じた段階的な累進制で、最大で7%程度となる場合もあります。合同会社のような資本金1億円以下の中小法人では、「外形標準課税」の対象外であるため、赤字の年度はこの税は発生しません。大きなメリットとして、法人事業税は損金算入が可能であり、支払った税額を経費として処理できるため、法人税額を抑える効果も期待できます。
【消費税】売上に応じた間接税
消費税は課税売上高が一定額を超えると納税義務が生じます。原則として、前々年度の課税売上高が1,000万円超である場合、課税事業者となります。設立初年度と2年目の新設法人は基本的に免税ですが、例外規定もあるため注意が必要です。また、インボイス制度導入により、免税事業者でも課税事業者の選択を求められるケースがあります。
【固定資産税・印紙税】状況に応じて発生する税
法人が土地や建物、一定額以上の設備を所有している場合、市町村から固定資産税(原則1.4%)が課税されます。また、契約書などには印紙税がかかり、契約金額に応じて数千円~数万円の支払いが発生することもあります。
合同会社の法人税の申告・納付の方法は?
合同会社は法人格を持つ以上、法人税の申告と納付が義務となります。ここでは、申告・納付の基本的な流れと留意点を整理します。
決算後2か月以内に申告と納付を行う
合同会社は事業年度終了後、原則として2か月以内に法人税の申告と納付を行う必要があります。3月末決算であれば、5月末までに手続きを完了させなければなりません。この期限は法人税(国税)だけでなく、地方税である法人住民税・法人事業税にも共通します。
申告書は所轄税務署や地方自治体に提出し、電子申告(e-Tax)を利用すれば一括での提出・納付が可能です。納付方法は、窓口・口座振替・インターネットバンキングなどが選べます。
中間申告・納付も必要なケースもある
前年度の法人税額が20万円超であった場合、その次年度には事業年度の中間時点でも「中間申告・納付」が義務づけられます。これは、前期税額の半額を目安として、6か月経過後に一度納付し、期末に精算する制度です。
初年度の合同会社や、前期税額が小さい場合にはこの中間納付は不要ですが、業績が伸びた場合は年に2回の納税が発生する可能性があるため、資金計画にも反映させておく必要があります。
主な提出書類
- 法人税申告書・地方法人税申告書(別表)
代表的な書類として「別表1(各事業年度の所得に係る申告書)」があります。法人税額・所得金額を記載する基本書類です。 - 決算報告書類
貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、株主資本等変動計算書、個別注記表などが含まれ、申告の基礎となる財務情報を示します。 - 勘定科目内訳明細書
収益・費用など主要勘定科目の明細を示す資料。決算書類と併せて提出されることが多いです。 - 法人事業概況説明書(または会社事業概況書)
会社の事業内容・経営状況を示すための資料で、税務署の運用によって提出を求められることがあります。 - 適用額明細書等(該当する場合)
中小法人軽減税率の適用、欠損金繰越控除など特別の税務処理を行う際には、その根拠となる明細書を添付する必要があります。
個人事業主が合同会社を設立すると節税できる?
合同会社を設立することで、一定の利益水準を超える場合には税率面での節税が可能です。ただし、法人維持にかかる固定費や事務負担もあるため、事業規模によって有利・不利が分かれます。以下に、節税が可能となる理由と注意点を整理します。
一定以上の利益があれば法人化で税率が下がる
個人事業主は所得に応じて最大45%の所得税・住民税が課される一方、合同会社では法人税等を含めた実効税率は中小法人でおよそ30%程度にとどまります。課税所得が800万円を超えるような事業規模であれば、合同会社の方が税率面で有利となるケースが多いです。
所得分散や控除制度によりさらに節税できる
法人化することで、代表者への役員報酬を損金(経費)にでき、所得を分散させることが可能です。給与所得控除の適用もあるため、個人で直接利益を得るよりも個人側の税負担も軽くなる傾向があります。また、法人は赤字を最大10年間繰り越せるため、長期的な税負担の平準化にも効果があります。
利益が小さい場合はコストが負担になることも
法人化すると利益がなくても毎年約7万円の法人住民税均等割がかかり、会計や申告の手間も増加します。さらに、代表者1人でも社会保険への加入義務が発生し、保険料負担も大きくなるため、利益が少ない場合には節税よりコスト増となることもあります。小規模な段階では、法人化が本当に有利かどうか、慎重なシミュレーションが必要です。
株式会社と合同会社で税金に違いはある?
合同会社と株式会社は法人格を持つ点で共通しており、税制上もほとんどの扱いが同じです。税率や計算方法、申告義務など基本的なルールは両社に共通するため、税金の軽減を目的に会社形態を選ぶことはあまり意味を持ちません。
税率・申告義務は基本的に同じで差はない
合同会社も株式会社も、法人税・法人住民税・法人事業税・消費税といった主要な税金については同一の税率と計算方法が適用されます。法人税率は原則23.2%、資本金1億円以下の中小法人には年800万円以下の所得部分に15%の軽減税率が適用される仕組みも共通です。したがって、「合同会社だから税金が安い」「株式会社だから税負担が重い」といった明確な違いはありません。
配当の有無などで税負担に違いが出る場合もある
例外的に税負担に差が出る可能性があるのが「配当」の取り扱いです。例えば、株式会社が出資者に配当金を支払うと、配当を受け取る株主側に課税されるため、法人と個人での二重課税になることがあります。もちろん、株式会社で配当を行わないケースも多々あります。合同会社では一般に配当は行わず、代表社員の役員報酬という形で利益を受け取るケースが多く、その分は経費として法人の損金にできるため、配当課税が発生しにくいという違いがあります。
税制上の違いよりも運営面の差に注目すべき
税金に大きな違いがない以上、会社形態を選ぶ際は税負担ではなく、設立費用や運営体制、対外的な信用力などの観点で検討すべきです。たとえば合同会社は設立費用やランニングコストが低く、役員任期もなく柔軟な経営が可能です。一方で、株式会社は株主総会や取締役会といった機関設計が必要になり、信用面では有利になることもあります。
したがって、「税金が安いから合同会社を選ぶ」という理由ではなく、経営スタイルや目的に応じて形態を選択することが重要です。
合同会社の法人税を正しく理解し、経営判断に活かそう
合同会社は、株式会社と同様に法人税の課税対象となる法人格を持つ事業形態です。税率や申告手続き、納付方法は他の法人とほぼ共通です。税負担は事業規模や利益構造によって変わるため、法人化の判断は節税効果とコストのバランスを見極めて行うことが重要です。合同会社の設立・運営を検討する際には、税制を正しく理解し、計画的に制度を活用していきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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