- 作成日 : 2025年12月23日
合同会社にかかる税金とは?株式会社との違いや節税方法も解説
合同会社を設立すると、どのような税金がかかるのでしょうか?
本記事では、合同会社に課される主な税金について、株式会社との違いや節税のポイント、個人事業主との比較にも触れながら解説します。
目次
合同会社にかかる税金は?
合同会社を設立・運営するにあたっては、法人として様々な税金の対象になります。これらの税金は、株式会社とほぼ同じ税目で構成されており、事業活動の内容や利益の状況、保有資産の有無によって発生するものです。以下では、合同会社にかかる主な税金を解説します。
法人税
法人税は、合同会社が1年間で得た所得(利益)に対して課される国税です。資本金1億円以下の法人であれば、年間800万円以下の所得には15%、それを超える部分には23.2%の税率が適用されます。たとえば、合同会社の年間所得が1,000万円の場合、800万円までは15%、超過する200万円には23.2%が課される計算となります。
また、赤字であれば法人税は発生せず、翌年以降の黒字と相殺できる繰越控除が利用できます。これらの仕組みは株式会社と同様で、法人として事業を行う際に押さえておきたい基本的な税金です。
法人住民税
法人住民税は、法人が所在する都道府県や市区町村に対して納める地方税です。「法人税割」と「均等割」で構成されており、法人税割は法人税額に応じて課税され、均等割は所得が赤字でも、資本金や従業員数に応じて定額で課されます。
たとえば資本金1,000万円以下で従業員が50人以下の合同会社では、均等割として年間7万円前後の負担が発生します。これは事業の黒字・赤字に関わらず、毎年発生する固定的な税負担です。
参考:法人住民税|総務省
法人事業税
法人事業税は、法人の所得に応じて都道府県が課税する地方税です。所得金額に応じて、3段階に区分された税率が適用され、所得が増えるほど高い税率が課される仕組みになっています。
加えて、法人事業税に連動して「特別法人事業税」も課税されます。これは、法人事業税の一部を国税として扱い、国を通じて地方へ再分配する仕組みです。合同会社でも、一定以上の所得があればこの2つの税負担が同時に発生する点に注意が必要です。
参考:法人事業税|総務省
消費税がかかるケースもある
消費税は、売上に対して顧客から預かる税金であり、基準期間(原則2期前)の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が生じます。合同会社を設立して間もない場合は、消費税の免税期間が設けられることもありますが、売上が一定以上になると申告・納付の義務が発生します。
取引先から消費税を受け取っていながら納付を怠ると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性もあるため、しっかりとした管理が求められます。
合同会社が保有する資産にも税金がかかる
合同会社が事業用に保有する車両や不動産がある場合、それぞれに応じた税金が発生します。自動車を保有していれば、毎年「自動車税(種別割)」が課され、車検時には自動車重量税が、取得時には環境性能割が課される場合もあります。
また、土地や建物を所有していれば「固定資産税」が毎年発生します。さらに、契約書や領収書などの文書を作成する際には、「印紙税」が必要になる場合もあります。これらは法人形態に関係なく、資産や契約が発生すれば共通してかかる税金です。
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合同会社と株式会社で税金に違いはある?
合同会社と株式会社は、どちらも税法上は「普通法人」に分類され、納める税金の種類や税率に基本的な違いはありません。ただし、設立時にかかる税金には差があります。ここでは両者の税金の共通点と相違点を解説します。
納める税金の種類・税率は基本的に同じ
法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税、消費税など、法人が事業を行ううえで発生する税金は、合同会社・株式会社のいずれにも共通して課されます。たとえば、年間所得800万円以下には法人税率15%、超過分には23.2%の税率が適用される点や、地方税の計算方法も同様です。主要な税金の種類や基本的な税率に関して、法人形態による大きな違いはありません。
ただし、実際の税負担は、所得や資本金の規模、適用される特例などによって変動します。税金の有利・不利が法人形態だけで決まるわけではなく、事業の実態に応じて税額が変わる点に注意が必要です。
登録免許税には明確な違いがある
例外となるのは「登録免許税」で、これは会社を設立する際に法務局へ支払う税金です。合同会社では「資本金の0.7%」または「6万円」のいずれか高い方、株式会社では「資本金の0.7%」または「15万円」のいずれか高い方が課されます。
たとえば、資本金300万円で設立した場合、合同会社なら6万円、株式会社なら15万円の登録免許税が必要になります。設立時の初期費用に関しては、合同会社の方が負担が少なくて済むと言えるでしょう。
運営後の税負担に差はない
設立後に発生する法人税や地方税、消費税についても、合同会社と株式会社で制度上の違いはありません。同じ所得を得れば、同じ税額を納める必要があり、「合同会社だから税制上有利」といった特別扱いはありません。つまり、法人形態によって継続的な税負担が変わるわけではなく、税制上の観点だけで会社形態を選ぶ必要は基本的にはないでしょう。
合同会社で有効な節税方法は?
合同会社では、法人として認められた制度や仕組みを活用することで、個人事業にはない節税効果を得られる場合があります。ここでは、合同会社で検討できる代表的な節税策を解説します。
法人税率を活用し個人より税率を抑える
法人の実効税率を利用すれば、個人事業主と比べて税負担を抑えられる可能性があります。個人事業主の所得税は累進課税(最大45%)ですが、法人税は中小法人であれば課税所得の一部に軽減税率(15%)が適用され、またたとえ超過部分でも法人税率は23.2%です。これにより、一定以上の所得がある場合、法人化することで税負担が軽くなるケースがあります。
たとえば、個人の課税所得が1,000万円の場合、所得税と住民税を合わせると高い税率が適用されますが、合同会社で同規模の利益を得た場合には、法人としての実効税率の方が相対的に低くなる可能性があります。所得が一定の水準に達し、事業収益が安定してくると、法人化によって個人事業主より税負担が軽くなるケースもみられます。
利益の成長に応じて法人税率のメリットを活かせる点は、合同会社を含む法人化による節税効果の一つといえます。
役員報酬を使った所得分散と経費計上
合同会社では、代表者に役員報酬として給与を支給でき、その金額は会社の経費(損金)として扱われます。たとえば利益が800万円ある場合、代表者に500万円の役員報酬を支給すれば、その分だけ法人の課税所得が減り、法人税の負担が小さくなる可能性があります。受け取る個人側も給与所得控除が適用されるため、事業所得として受け取る場合より税負担が軽くなるケースがあります。
また、法人は業務上必要な支出であれば経費として扱うことができ、生命保険料や福利厚生費、役員退職金などが損金となる場合があります。こうした仕組みを組み合わせることで、法人・個人の双方の税負担を抑えることができ、結果として節税効果につながります。
新設法人の消費税免税枠を使い負担を減らす
合同会社を新しく設立した場合、一定の条件を満たせば最大2年間、消費税の納税が免除されます。資本金が1,000万円以下で、1期目および2期目の特定期間の売上高または給与支払額が1,000万円以下であれば免税事業者となり、この期間は売上にかかる消費税の納付が不要となります。
個人事業主では、2年前の売上が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生しますが、法人化のタイミングを工夫することで、新設法人としての基準期間が新しく始まります。年商が伸びるタイミングで法人化することで、初期の消費税負担を軽減でき、資金繰りの面で余裕が生まれるケースもあります。小規模事業者にとっては検討する価値のある仕組みです。
個人事業主と比べて合同会社は税負担が軽い?
合同会社と個人事業主は、税金の仕組みに違いがあります。事業の利益が一定額を超えると、合同会社として法人化した方が手元に残る金額が多くなるケースがあります。
利益が増えると合同会社の方が税率が低くなる
個人事業主の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる「累進課税」です。税率は最大で45%に達し、住民税も加えると合計で50%近くになることもあります。一方、合同会社の法人税率は、所得800万円までは15%、超える部分は23.2%が適用され、個人の累進課税と比べると税率の上昇幅が緩やかに設定されています。
利益が800万円程度の事業であれば、個人事業主は所得税と住民税を合わせて30%台の負担になる一方、法人では実効税率がおおむね23%台に収まるケースがあり、結果として税負担が軽くなる場面もあります。年収ベースで800万円を超えるようになってくると、個人より法人の方が有利となる可能性が高まり、法人化を検討しやすいタイミングといえます。
法人化で消費税の免税特例を活用できる
個人事業主は、2年前の売上が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が発生します。これに対し、新たに合同会社を設立した場合は、一定の条件を満たせば最大2年間は消費税の納税義務が免除される「新設法人の免税制度」を活用できます。
個人事業で年商が1,200万円ある場合でも、期首から合同会社として事業を開始し、特定期間の売上高または給与支払額が1,000万円以下であれば、その年と翌年が消費税の免税対象となるケースがあります。免税期間中は消費税の納付が不要となるため、手元資金の確保がしやすくなります。。
社会保険料の負担には注意が必要
合同会社を設立すると、代表者1名でも社会保険(健康保険と厚生年金)への加入が義務付けられます。保険料は会社と個人が半分ずつ負担する仕組みで、役員報酬の設定によっては年額ベースで数十万円以上のコストになることもあります。
このため、利益が少ない段階で法人化すると、節税効果より社会保険料の負担が重くなる場合があります。一般的には、事業の利益や役員報酬が一定水準を超えてくると、法人化による税負担の軽減が社会保険料の増加分を上回りやすくなるとされていますが、実際の影響は報酬額や家族構成などによって異なります。
税金以外で見る合同会社と株式会社の違いは?
税金面では合同会社も株式会社も大差ありませんでしたが、設立や運営のしやすさ、制度上の違いなど税金以外の面では相違点があります。ここでは合同会社と株式会社の主要な違いを一覧表にまとめます。
| 項目 | 合同会社(LLC) | 株式会社 |
|---|---|---|
| 設立費用 | 安い(登録免許税6万円~。定款認証不要) | 高い(登録免許税15万円~。定款認証に約5万円) |
| 決算公告義務 | なし(官報公告不要。毎年の公告費用ゼロ) | あり(官報公告が必要。約6万円/年の費用) |
| 社会的信用度 | 株式会社より劣る傾向(知名度が低め) | 一般的に高い(取引先受けも良い) |
| 資金調達 | 株式発行ができず大規模資金調達は困難 | 株式発行による大規模調達が可能 |
| 意思決定 | 出資者=経営者。全員平等の決定権で迅速 | 株主総会・取締役会で意思決定(手続きに時間) |
| 利益配分 | 自由に決定可能(出資比率によらず定款で定める) | 出資比率(株数)に応じて配当(比例配分) |
| 役員任期 | なし(任期満了による役員変更登記不要) | 原則あり(取締役の任期は原則2年で満了) |
| 代表者肩書 | 代表社員(法律上の呼称。肩書きは自由) | 代表取締役(法律上の呼称) |
合同会社と株式会社で、税務申告手続きと決算に違いはある?
合同会社と株式会社は、どちらも法人であり、税務申告や決算における基本的な義務は共通しています。ただし、一部の法的義務や手続きの簡便さにおいて違いがあります。
税務申告における手続き内容は基本的に同じ
税務申告の基本的な内容は、合同会社と株式会社で大きな違いはありません。どちらも法人であるため、毎期決算を行い、「法人税」「法人住民税」「法人事業税」などの申告書を税務署および地方自治体へ提出する義務があります。
必要な申告書類には、損益計算書・貸借対照表を含む決算書一式と、それに基づいた各税目の申告書類が含まれます。また、売上高などの条件を満たす場合には消費税の申告が必要になる点も共通しています。提出期限も同様に、決算日から原則2か月以内と定められており、申告内容・納付方法に法人形態による制度上の差異はありません。
決算公告義務の有無が違う
明確な違いとして挙げられるのが「決算公告義務」の有無です。株式会社は会社法により、毎期の決算内容を官報などで公告する義務があり、公告には数万円の費用も発生します。これに対して、合同会社には決算公告義務がありません。
したがって、外部に対して決算内容を公開する必要がなく、公告費用も不要です。この点で、合同会社の方がコストと手間を抑えることができます。なお、融資や取引先の信用調査に備えて決算書を任意で開示することは可能です。
実務負担や運営コストでは合同会社がやや有利
両者とも税理士を活用するケースが多いですが、合同会社は組織構造がシンプルで、取締役会や株主総会の設置が不要なため、これらに伴う議事録作成や社内手続きが発生しません。その分、運営上の事務負担が比較的少なく済む傾向があります。
一方、株式会社は役員構成や組織変更に関する登記事項が多く、会社法上の手続きもやや複雑になりやすいため、決算に付随する業務も複雑化しやすい傾向にあります。こうした点から、規模の小さい法人や運営の効率を重視する場合は、合同会社の方が選ばれるケースが多いです。
合同会社の税金を見直し、最適な経営判断をしよう
合同会社にかかる税金は、法人としての基本的な枠組みに沿ったものであり、株式会社との違いはわずかです。ただし、節税策の活用や消費税の免税制度について理解しておくことで、手元に残る利益に影響が出る場合があります。役員報酬による所得分散、経費計上の柔軟性など、法人ならではの仕組みを適切に活用すれば、個人事業主よりも有利に経営を進められる場面も多くなります。
事業規模や利益の状況を踏まえ、利用できる制度を適切に活用しながら、より合理的な経営判断につなげていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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