- 更新日 : 2026年1月5日
個人エステは儲からない?赤字の原因と黒字化するための戦略術
個人エステサロン業界で、「施術の腕には自信があるのに、手元にお金が残らない」「自宅サロンだから経費はかからないはずなのに、なぜか赤字が続く」といった悩みを抱えているオーナー様は少なくないでしょう。
個人エステが儲からないといわれる要因は、集客不足という側面もありますが、それ以上に適正な価格設定ができていないことや、経費管理の甘さにあります。逆にいえば、これら数字の裏付けを持って経営を行えば、自宅サロンであっても年収500万〜1,000万円を目指すことは十分に可能です。
この記事では、会社設立や会計の専門知識をふまえ、個人エステサロンが陥りやすい赤字の構造と、利益を確保するために今日からできる具体的な改善策について解説します。
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個人エステ経営が儲からないと言われるのはなぜか?
個人エステサロンの多くが利益を出せずに苦しむ最大の理由は、経営者としての数字管理よりも施術者としての技術向上を優先してしまうためです。技術が高いことは前提条件ですが、それだけでは集客や利益確保にはつながらないのが現実です。
新規集客の難しさとリピート率の低さ
個人エステが儲からない大きな要因の一つとして、新規集客のハードルの高さと、リピート客の定着率の低さを正しく理解する必要があります。大手サロンのように多額の広告宣伝費をかけられないため、認知を広げること自体が困難です。
また、コンセプトが曖昧なまま開業してしまうと、誰のためのサロンかが伝わらず、一度来店してもリピートにつながらないことが多くあります。
J-Net21の調査によると、30代以上の女性の約3割が過去に利用経験があるものの、現在は利用していないと回答しており、多くの顧客が定着せずに離脱している実態があります。
しかし、今後も利用したいと考える層や、一定の金額を支払う意思のある層は現在の利用者数よりも多いため、価格やサービス内容さえ合致すれば利用したいと考えている潜在顧客は市場に十分存在するといえるでしょう。
常に新規集客に追われる経営状態では、安定させることは難しいでしょう。
参照:エステティックサロン|J-Net21(中小企業基盤整備機構)
ビジネスと趣味の境界線が曖昧になりがち
儲からないサロンの典型的な特徴は、収支計算がどんぶり勘定になりがちな点です。
自宅サロンだから家賃はかからない、友人に来てもらえればいいといった感覚で、相場より極端に低い価格を設定してしまうとビジネスとして成立しません。ビジネスとして行う以上、自分の労働対価をコストとして計算し、利益が出る構造を作らなければ、疲弊するだけのボランティアになってしまう可能性があります。
他との差別化が不足している
大手サロンから個人サロンまで競合が乱立する中で、差別化ができていないことも収益につながらない原因になるでしょう。
誰に、どんな価値を提供するかが曖昧なままでは、価格競争に巻き込まれてしまいます。40代からのたるみ専門や肌質改善専門といった、特定の悩みに特化したコンセプトがなければ、数ある選択肢の中から選ばれることは難しいかもしれません。
経営知識の不足と経費管理の甘さ
エステティシャンとしての技術は一流でも、経営者としての数字管理がおろそかになっていると利益につながりにくいでしょう。よくあるのが、プライベートな出費と事業経費が混ざってしまうことで、正確な経営状況を把握できていない場合もあります。
特に、自分の給料である人件費や、数年後に必要となる機器の買い替え費用などを経費としてあらかじめ計算に入れていないと、帳簿上は黒字でも手元の現金が足りないという事態に陥りかねません。目先の売上だけでなく、税金の支払いや将来の投資も見据えた資金管理を行うことが、サロンを長く存続させるためには不可欠といえるでしょう。
個人エステが儲からない状態を脱する価格設定とは?
個人エステの利益が出ない価格設定を見直すには、労働の対価ではなく、お客様が得られる価値を基準にし、さらに目に見えない経費も含めた原価計算を行うことが必要です。
近隣のサロンが60分5,000円だからという理由だけで価格を決めるのは危険といえるでしょう。なぜなら、家賃負担や使用している化粧品のグレード、オーナー自身の生活費の基準がそれぞれ異なるからです。ここでは適正価格を導き出す手順を解説します。
労働の対価ではなく提供価値で価格を決める
個人エステが儲からない状況を変えるには、価格の決め方を根本から変える必要があります。単に施術時間いくらと決めるのではなく、その施術によってお客様が得られる結果や価値に対して価格を設定します。
例えば、肌質改善やリラクゼーションによる疲労回復など、提供するベネフィットに見合った価格であれば、相場より高くても納得して支払ってもらえるはずです。また、友人や知人に対する過度な割引、いわゆる友達価格は、ビジネスとしての価値を下げる要因になるため、開業初期を除き廃止するのが賢明でしょう。
目標売上と稼働時間から適正な時間単価を計算する
感覚ではなく計算によって適正価格を導き出すことも重要です。まず、欲しい手取り収入に加え、家賃や広告費などの固定費と、消耗品費などの変動費を足した目標売上を設定します。
次に、自分が月に何時間施術できるかという稼働可能時間を現実的に算出します。
最後に、目標売上を稼働可能時間で割ることで、最低限必要な時間単価を割り出します。
この時間単価を下回らないようにメニュー価格を決定することで、構造的な赤字を防ぐことができます。
個人エステの損益分岐点の計算方法は?
個人エステのサロン経営を黒字化するためには、いくら売り上げれば赤字にならないかという損益分岐点を正確に把握することから始まります。具体的な数値目標を立てましょう。
毎月の支出を固定費と変動費に分類して整理する
まずは毎月かかる費用を売上に関わらず発生する固定費と、売上に連動して増える変動費に分類しましょう。
| 費用の種類 | 内容の例 | 備考 |
|---|---|---|
| 固定費 | 家賃、広告宣伝費(定額)、通信費、減価償却費、借入返済 | 自宅の場合は家賃・光熱費の一部を按分して計上 |
| 変動費 | 施術材料費(オイル・化粧品)、店販商品仕入、お茶菓子代 | 売上により発生する費用 |
損益分岐点の計算式に当てはめて目標を知る
損益分岐点は以下の計算式で求められます。これを知ることで、最低限必要な売上が見えてきます。
※変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
※(1 - 変動費率)は限界利益率とも呼ばれます。
【計算シミュレーション:自宅サロンの例】
固定費合計:15万円(広告費5万、雑費・通信費5万、その他5万)※自分の給与を含めるならここに加算
変動費率:0.1(10%)(売上の10%が材料費等と仮定)
この場合、月間売上が約16.7万円を超えて初めて利益が出始めます。もしオーナー自身の生活費として20万円を確保したいなら、固定費を35万円として再計算する必要があります。
このように計算すると、単価5,000円なら月に約78人の来店が必要ですが、単価10,000円なら39人になります。
個人エステで儲かるための戦略は?
安定して利益を出すためには、高単価でも選ばれる理由を作り、リピーターを積み上げる仕組みが必要です。価格競争から抜け出すための戦略を実行しましょう。
ターゲットを絞り込みコンセプトを明確にする
誰でも歓迎ではなく、特定の誰かに深く刺さるコンセプトを設定しましょう。
例えば、痩身エステとするより、産後太りに悩む30代ママのための骨盤・痩身ケアとした方が、ターゲット層には強く響きます。ターゲットを絞ることで、発信内容も明確になり、広告の反応率も向上するでしょう。専門性が高まることで、信頼感と単価アップにもつながります。
利益率の高いメニューと集客商品を組み合わせる
利益率の高いメニューと、集客しやすいメニュー(フロントエンド商品)を組み合わせることが有効です。
すべてのメニューを一律の利益率にする必要はありません。初回はハードルの低い価格設定で来店を促し、2回目以降に利益率の高い本命メニューや回数券、店販商品を提案する流れを作りましょう。また、施術時間が短くても満足度の高いオプションメニューを追加することも、客単価アップに効果的です。
信頼関係を構築してSNSやMEOで集客につなげる
InstagramやTikTokなどのSNSは強力なツールですが、ただ更新するだけでは不十分です。
どんな悩みが解決するかというビフォーアフターや、施術者であるオーナーの人柄が見える投稿を心がけましょう。個人サロンにおいて、お客様は技術だけでなく人につきます。
また、無料ツールだけでなく、地域密着型のMEO対策(Googleマップ登録)も必須です。口コミを丁寧に集め、返信を行うことで、第三者からの信頼性を高めましょう。
自宅サロンとテナントはどちらがリスクが低い?
初期費用を抑えるなら自宅サロンが有利ですが、集客のしやすさと信用力ではテナントです。それぞれのメリット・デメリットを比較し、ご自身の状況に合わせて選択しましょう。
自宅開業は金銭的リスクが抑えられる
自宅サロンの最大のメリットは、固定費(家賃)がかからない、または生活費と按分できる点です。
毎月の家賃負担がないため、損益分岐点が低くなり、少ない客数でも黒字化しやすいのが特徴です。一方、テナントは家賃に加え、保証金や内装工事費などの初期投資が数百万円単位でかかる場合もあり、回収までの期間が長くなります。
テナントは集客が見込める
テナントサロンはお店としての実体があるため、お客様の入店ハードルが低く、看板を出せば通りがかりの集客も見込めるのが強みです。社会的な信用度も高いため、単価を上げやすく、スタッフ雇用もしやすいでしょう。
対して、自宅サロンは閉鎖的なイメージを持たれがちです。住所が非公開だったり、部屋の様子がわからなかったりすると、お客様は不安を感じます。
この不安を払拭するためには、以下の対策が有効でしょう。
- ホームページやSNSで店内の写真を多めに掲載し、清潔感をアピールする
- オーナーの顔写真を出し、経歴や想いを伝える
- 料金体系を明記し、追加料金がないことを約束する
- 予約時に詳細な地図や外観写真を送る
生活感を消して非日常を演出する
テナントは最初から商業用として設計できますが、自宅サロンは生活空間の一部を使用するため、「非日常感」の演出にハンデがあります。玄関の家族の靴、生活音、料理の匂いなどは、夢を求めて来店するお客様を現実に引き戻してしまいます。テナントに対抗するためには、動線をパーティションで区切る、専用のアロマで香りを演出する、BGMで生活音を消すといった徹底した配慮で、プロの空間を作り込むことが不可欠です。
個人エステの経営者として知っておくべきお金の知識とは?
個人サロンを長く続けるためには、売上を上げることと同じくらいお金を守ること(管理・節税)が重要です。どんぶり勘定を卒業し、強い財務体質を作りましょう。
事業用口座と個人用口座を明確に分けて管理する
基本的なことですが、仕事用とプライベート用の現金は分けます。
個人の財布とサロンのレジ金が混ざっている状態では、正確な利益が把握できません。事業用の銀行口座とクレジットカードを作り、サロンの入出金はすべてそこで完結させましょう。これにより、確定申告の際の手間が激減し、税務署からの信用度も上がります。
青色申告を活用して最大65万円の控除を受ける
個人事業主として開業届を出したら、必ず青色申告承認申請書も提出しましょう。
複式簿記での記帳が必要になりますが、現在は会計ソフトを使えば難しくありません。青色申告には、最大65万円の特別控除や、赤字を3年間繰り越せるメリットがあります。開業当初の赤字を翌年以降の黒字と相殺できるため、節税効果が非常に高い制度です。
キャッシュフローを把握して黒字倒産を防ぐ
利益は出ているのに現金がないという黒字倒産を防ぐため、現金の流れを把握しましょう。
特にクレジットカード決済を導入している場合、売上が入金されるのは翌月や翌々月になります。しかし、材料費や広告費の支払いは先にやってきます。手元の現金がショートしないよう、入金サイクルを把握し、最低でも固定費の3〜6ヶ月分の運転資金を確保しておくことが、精神的な余裕につながります。
個人エステは数字に基づいた経営戦略をとる
個人エステサロンが儲からないといわれる背景には、市場の飽和や価格競争がありますが、根本的な原因は数字に基づいた経営戦略の不足にあります。
しかし、逆に言えば、以下のポイントをしっかりと押さえれば、個人サロンは十分に勝算のあるビジネスモデルといえます。
- 損益分岐点を把握し、オーナーの給与を含めた適正価格を設定する。
- ターゲットを絞り込み、大手にはできない密なコミュニケーションでリピーターを作る。
- 自宅サロンの強みである低い固定費を活かしつつ、生活感を消して信頼を得る。
- 事業としてのお金の管理を徹底し、青色申告などで賢く節税する。
素敵なサロンを作りたいという情熱に、冷静な計算という武器を加えましょう。お客様に愛され、かつご自身も豊かになれるサロン経営は、正しい計画の上に成り立ちます。
まずは、ご自身のサロンの固定費と、目標とする利益を書き出すことから始めてみてはいかがでしょうか。
マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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