- 更新日 : 2022年1月24日
再就職手当とは?受給額の計算方法や手続き方法を解説
再就職手当とは、失業して基本手当をもらっている人になるべく早く再就職するように促すための手当です。早く再就職できた場合の祝い金のようなものとイメージしていただけるとよいでしょう。今回は再就職手当の受給要件や計算方法、もらうための手続き、受給出来ないケースなどについて詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
再就職手当とは?
再就職手当とは、失業して基本手当をもらっている人に早期に安定した就職をしてもらうよう促すための雇用保険の給付のことをさします。基本手当とは失業手当と呼ばれるものの正式名称です。
ときどき、失業中の生活をサポートする基本手当を少しでも長くもらおうと、再就職活動をギリギリまで引きのばそうとする人が見受けられます。しかし、早く再就職が決まった場合には再就職手当が受け取れるため、頑張って早く再就職することを促す目的があります。
再就職手当の受給条件
再就職手当を受け取るためには、基準をすべてクリアしている必要があります。意外にたくさんあるため、まずは前提となる以下の内容が当てはまっているか確認してみましょう。
- 再就職したタイミングで、基本手当(失業手当)が3分の1以上残っている
- 1年を超えて雇用される安定した職業に再就職した
上記については、再就職手当の目的に立ち返るとわかりやすいかもしれません。受け取っていない基本手当が3分の1以上残っているということは、早い段階からしっかりと活動を始め、再就職が決まったということ。なるべく多くの基本手当をもらおうとして、本気で就職活動を始める時期を遅らせたというようなケースは当てはまらないはずです。
また「安定した職業についてもらう」という目的もあります。そのため「1年を超えて雇用されることが見込まれる職業についた」という受給要件が定められています。たとえば、雇用期間が短く、採用はされたものの、またすぐに転職活動を始めなければならないような就職は除外されると理解しましょう。どんな仕事であっても再就職できればOKというものではないということです。
ちなみに、雇用形態がアルバイトやパートであっても問題はありません。ただし、いわゆる短時間バイトといわれるような、週の労働時間が20時間に満たないようなものは当てはまらないことに気をつけましょう。
ここまでお伝えした内容が原則にあたるものですが、さらに厚生労働省令で定める基準というものがあり、こちらもすべてクリアしていないといけません。具体的には下記の内容になります。
- 以前と同じ事業主、また前職の会社と関係がある会社に採用されていない
- 基本手当をもらうための手続きを始めた後に内定をもらった
- 基本手当の待機期間を過ぎた後に職業についた
- 自己都合退職の場合、基本手当の待機期間が終了した後の1ヵ月間については、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介によって職業についた
- 雇用保険の被保険者になっていること
- 過去3年間において、再就職手当をもらっていない
- 再就職手当の支給決定の日までに会社を辞めていない
再就職手当を受給する際の注意点
前述した受給要件にもあるように、再就職先の事業主が前の会社と同じだったり、実はグループ会社の位置づけというように両者に関係があったりする場合は、要件から外れてしまうため注意しましょう。退職前から内定をもらっていたようなケースも認められません。
いずれも退職する前から再就職が決まっていたと見なされ、不正受給を防ぐ観点から要件に該当しないため注意が必要です。
過去3年間において、再就職手当を受け取っていないことも重要です。
再就職手当はなるべく早く、安定した職業につけるよう促すものです。過去3年間のうちに同じものを受け取っているということは、その時点では安定した仕事についたつもりが、比較的短い期間で辞めていることになります。
離職を繰り返しているようなケースでも支給を認めてしまうと、主旨に反してしまうといえるでしょう。再就職手当の支給決定日までに離職していないという受給要件についても同様です。
また、意外に見落としがちなのが大前提である「雇用保険に加入していること」です。たとえば正社員であっても、ごくまれに会社の手続き漏れなどによって未加入のままとなっているようなケースがあります。事前に確認しておくとよいでしょう。
再就職手当が受給できないケース
再就職手当をもらうには前述の受給要件をすべてクリアしていることが求められます。そのため、もらえないケースとしては過去3年間に既に再就職手当を受け取っていたり、新しい就職先が前職と関係があったり、実は退職前から内定をもらっていたりしたような場合など、さまざまな理由が考えられます。
その中でもっとも発生の可能性が高いのは、基本手当の残りの日数が少なかったというケースです。具体的な事例を見ていきましょう。
Aさん(32歳)が7年間勤めた会社を「仕事内容が自分に合わない」という理由で退職したとします。一般的に自己都合退職した場合にもらえる基本手当は年齢に関わらず、その会社に勤めていた年数が10年以内であれば90日と決まっています。
そのため、Aさんの基本手当の支給日数は90日です。そして、Aさんが再就職のための活動をおこない、新たな仕事を始めた日の前日までのタイミングで、既に70日分を受給していたとします。
基本手当は90日×3分の1=30日と、30日以上残っていないといけませんが、Aさんの残りの日数は90日−70日=20日間です。そのため、受給要件から外れてしまいます。
基本手当の日数は退職理由などによって異なるため、自分の再就職手当の金額を確かめたいという方はまずは基本手当の日数から確認することをおすすめします。
再就職手当はいくら受給できる?
再就職手当の額は、その人の基本手当日額と基本手当の支給残日数をかけたものに原則10分の6(早く再就職した場合は10分の7)をかけ合わせて算出します。再就職手当のおおよその金額の確認をすることが、早期の再就職のモチベーションにつながるかもしれません。ここからは、再就職手当の受給額の計算方法について解説していきます。
再就職手当の受給額の計算方法
再就職手当の額を算出する計算式は以下のとおりです。
基本手当日額とは、賃金日額(最後の6ヵ月間中に支払われた賃金を180で割ったもの)に100分の80〜100分の50をかけたものです。上限金額があり、60歳未満の場合は6,105円であることに注意しましょう。
具体的な事例を挙げていきます。
Bさん(30歳)
- 基本手当日額5,000円
- 基本手当の支給日数90日、40日分を受け取った後に再就職した(残日数は90分の50であり、3分の1≦残日数<3分の2であるため、給付率は10分の60)
=15万円
上記の計算式により、Bさんが受け取れる再就職手当の金額は15万円となります。
再就職手当の手続き(申請方法)
再就職が決まったら、さっそく再就職手当の申請の手続きをしにハローワークに行きましょう。はじめてハローワークに行く場合、敷居が高いと感じるかもしれませんが大丈夫です。面倒くさがらずに申請して、しっかり再就職手当を受け取りましょう。
再就職手当の申請の流れは次のとおりです。
- 再就職先に採用証明書の必要事項を記載してもらう
採用証明書は雇用保険の基本手当の手続きのときにもらう「受給者のしおり」の中に入っていますのでチェックしましょう。紛失してしまった場合も、ハローワークのホームページからダウンロードして対応できます。 - ハローワークで再就職手当の申請書をもらう
再就職手当申請書は、ハローワークにて採用証明書、雇用保険受給資格者証、失業認定報告書の3つの書類を提出して、受け取ります。 - 再就職先に、ハローワークでもらった申請書に提出し必要な内容を書いてもらう
以前に勤めていた会社との関係性がないことについて証明する書類への記入も重要です。 - 再就職先に必要事項を記入、証明してもらった再就職手当申請書を雇用保険受給資格証と一緒に提出する
再就職手当支給申請書と雇用保険受給資格証のほか、前職との関わりがないことを証明する書類、再就職先での勤務実態がわかるタイムカードのコピーなども提出が求められます。郵送でもOKですので、ハローワークに出向く時間がない場合は郵送を利用すると良いでしょう。
再就職手当の申請期限
再就職手当の申請期限は、再就職先で働き始めた日の翌日から1ヵ月以内が原則です。しかし、慣れない転職先の仕事が忙しく、この期間に申請手続きするのが難しいというケースもあるでしょう。その場合も、申請を諦めないでください。新しい職業についた翌日から2年間は時効の猶予があるため、慌てずに2年以内に申請するようにしましょう。
参考:申請期限が過ぎたことにより給付を受けられなかった方へ/厚生労働省
早期に再就職が決まった方は、再就職手当を検討してみよう
再就職手当は、再就職として早期に安定した職業についた際に受け取れる手当です。基本手当日額がいくらか、また基本手当が何日残っているかなどにもよりますが、ある程度まとまった金額を受け取ることができます。受給要件に当てはまっている場合には、申請して受け取りましょう。
基本手当(失業手当)を少しでも多くもらおうと粘るのではなく、早期に再就職をはたして再就職手当をもらう方が建設的といえるでしょう。就職活動を頑張ったご褒美として受け取るのも良いですね。申請する方法など、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
よくある質問
再就職手当とはなんですか?
早期に安定した再就職した場合に受給できる、雇用保険の手当です。詳しくはこちらをご覧ください。
再就職手当の受給条件にはどういったものがありますか?
基本手当の支給残日数が3分の1以上ある、安定した職業に再就職したなどの受給要件があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
労災保険とは?補償の種類や加入条件、労災保険料の計算方法、申請手続きまで解説
労災保険とは、労災事故にあった労働者に国が治療に必要な費用を補助し、休業した際の生活費を補償するなど、被災した労働者に必要な給付を行う社会保険制度です。業務上の事故、通勤中の事故のほか、仕事が原因で発症する病気も適用されます。給付を受けるに…
詳しくみる厚生年金保険料の計算方法
所得税や雇用保険料ほか、給料からはさまざまな税金や保険料が天引きされていることと思います。 そのなかのひとつ、厚生年金保険料の計算方法をご存じですか? 保険料は、毎月の給料とボーナスに定められた保険料率を乗じて計算されますが、正比例している…
詳しくみる育休申請(育児休業申請)の会社の手続きまとめ!申出から給付金申請まで
少子化対策の一環として、男女にかかわらず、仕事と育児を両立できるように従業員が育児休業を取得することが権利として保障されています。 この記事では、育休申請に関して会社が行う手続きの流れや、育休申請における手続き・必要書類、育児休業申請書(育…
詳しくみる会社役員や取締役は雇用保険に加入できる?労働者性の要件についても解説!
雇用保険は、事業主と雇用関係にあり、働くことで賃金を得る労働者が加入対象です。会社の役員、取締役といった人々は、経営者の立場にあり、原則として雇用保険の被保険者にはなりません。ただし、労働条件などから判断して労働者として雇用保険に加入できる…
詳しくみる随時改定に残業代は含む?標準報酬月額との関係や社会保険料に与える影響を解説
残業代が増減した場合、随時改定の対象になるのか疑問を抱く方もいるでしょう。 結論、残業代の増減だけでは随時改定の対象にはなりません。ただし、支給割合や固定残業代に変更があった場合は、対象となるケースがあります。 本記事では、随時改定の概要や…
詳しくみる社会保険料の徴収漏れが発覚したときのお詫びの仕方は?|原因や対策を解説
社会保険料の徴収漏れが発覚した場合は、速やかに原因を特定し、適切な対応とともに従業員へ謝罪することが重要です。 原因を特定し、再発防止策を講じることで、信頼を回復し業務の改善を図れます。本記事では、社会保険料の徴収漏れの原因や具体的な対応方…
詳しくみる