• 更新日 : 2026年6月15日

従業員が同棲する場合の家賃補助はどうなる?支給ルールや二重取りリスクについて解説

Point同棲の場合、家賃補助はどうなる?

会社の規定により自由に設定できますが、同棲の場合、多くの企業では契約者かつ世帯主の1名のみに支給されます。

  • 支給対象は契約者かつ世帯主が基本
  • 二重取りを防ぐ仕組みづくり
  • 規定の明文化でトラブル予防

パートナーが他社から手当を受けている場合は世帯で二重取りになることもあるため、申請時に同居人の受給状況も確認しておくと安心です。

「同棲時の家賃補助はどうなる?」

「割り勘なら2人とも貰える?」

上記のような従業員からの相談や、質問への対応に悩んでいる方もいるでしょう。

同棲時の支給は、会社の規定次第で自由に設定できます。

本記事では、二重取り防止策や従業員が同棲している場合の家賃補助の対応について解説しています。不正受給や折半によるトラブルを防ぐための参考にしてください。

従業員が同棲する場合の家賃補助は支給すべきか

会社としての基本的なスタンスを決めるにあたっては、法的義務の有無と、他社・公的機関の一般的な運用基準を把握することが重要です。

従業員の同棲に家賃補助を出すかは会社規定による

同棲する従業員に対して家賃補助を支給するかどうかは、法律上の義務はなく、各企業の就業規則や賃金規程によって自由に決定できます。住宅手当は、法律で定められた「法定福利厚生」ではなく、企業が任意で設ける「法定外福利厚生」に該当するためです。

厚生労働省の調査によると、住宅手当を支給している企業は全体の半数以下(47.2%)にとどまり、支給要件も企業ごとに異なります。

参考:令和2年就労条件総合調査|厚生労働省

同棲を理由に手当を支給する・しないの判断は、自社の福利厚生の目的と予算に照らし合わせて自由に制度設計することが可能です。同棲に対して一律支給を認める企業がある一方で、「婚姻関係がある場合のみ」と限定する企業もあり、いずれも法的に問題はありません。

支給対象の基本は「賃貸借契約の契約者」かつ「世帯主」であること

実務上、支給対象の最もスタンダードな要件は、「従業員本人が賃貸借契約の主たる契約者」であり、かつ「住民票の世帯主」であることです。

家賃を「実質的に誰が負担し、生活の責任を負っているか」を客観的な公的書類・契約書類で証明しやすくするためです。住民票の「世帯主」表記と、アパートの賃貸借契約書の「契約者名」が従業員本人の名前と完全に一致している場合のみ、申請を受理する運用が一般的です。

同棲の場合であっても、この2つの要件を明確に満たしている側にのみ支給を認める運用が、最も管理しやすく公平です。書類の提出タイミングを入居時と毎年の更新時の2つの段階を設けると、のちの実態の把握にも役立つでしょう。

規定により家賃補助をもらえない・同棲禁止として扱うケース

企業によっては、同棲の場合は、一律で家賃補助を「支給対象外」と明記しているケースもあります。同棲関係は法的な婚姻関係に比べて流動的であり、実際の家賃負担割合の証明が難しく、管理コストの増大や他の単身従業員との公平性が保てないためです。

その場合は、就業規則に「支給対象は、単身独立生計者、または法律上の配偶者・扶養家族と同居する世帯主に限る(友人との同居・未入籍の同棲は対象外)」と記載し、トラブルを未然に防ぎます。

運用が曖昧だと、言った・言わないのトラブルに発展しかねないため、対象外とする場合は規程に明記しておきましょう。実際に同棲が発覚してから対応するのでは遅く、採用面接や入社時の書面確認のタイミングで規程を周知しておくのが理想です。

公務員や大企業における同棲時の家賃補助基準

公的機関や大企業では、「自ら居住するため住宅を借り受け、家賃を事実上支払っている者」のみを対象とする基準を設けています。原資が税金や多額の会社経費であるため、二重支給や不正受給、同居人の単なる負担による受給を仕組み上で防ぐ必要があるためです。

国家公務員の住居手当運用方針では、「住宅を借り受けた者と共に居住している職員は、家賃を事実上負担している場合においても要件を満たさない」と明記されており、名義人でなければ支給されません。

参考:住居手当の運用について|人事院

公的機関の厳密な運用基準は、民間企業が同棲規定を作成・見直す際の参考となります。とくに、実質的な家賃負担者が誰かではなく、契約名義人が誰か、を判断基準にするという考え方は、広く採用されています。

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従業員が同棲している場合の家賃補助の二重取りリスクへの対応

カップル双方が家賃補助を受け取る二重取りの防止策と、虚偽申告や意図的な隠蔽に対するペナルティの整備が必要です。

社内のカップルが同棲する場合

社内において同棲を始めた場合、同一物件に対して会社から二重に手当が支払われないよう仕組み化が必要です。1つの住居に対して2人分の手当を支給することは、単身者や家族持ちの従業員との間に著しい不公平感を生むためです。

賃金規程に「同一世帯(または同一住所)から複数の申請があった場合は、主たる生計維持者1名にのみ支給する」という一文を追加し、住所変更手続きの際に社内同居人がいないか照合します。

社内カップルによる二重取りは、会社側のシステム上の紐付け・住所確認によって未然に防ぐことが可能です。人事部が扶養控除等申告書や健康保険の被扶養者情報と突合することで、同一住所の申告を早期に発見できます。

パートナーが別会社の場合

パートナーが別会社に勤めている場合でも、その他社側で家賃補助が支給されていないかを確認する対応が求められます。従業員自身が契約者・世帯主であっても、パートナーの会社側から同居人を理由に手当が支給されている場合、世帯全体で見れば実質的な二重取りになる可能性があるためです。

手当の申請時に「同居人の有無」および「同居人の勤務先からの住宅関連手当の受給の有無」について記載・署名させる誓約書を提出させるという方法もあります。

他社の実態を完全に調査することは困難ですが、誓約書を取ることで心理的な抑止力を働かせ、虚偽申告時のペナルティの根拠とできます。年に一度、現況確認として誓約書を更新させる運用が漏れを防ぎやすいです。

会社に内緒の同棲が発覚した場合

単身用手当などの不正受給を目的に、会社に無断で同棲していた事実が発覚した場合は、就業規則に則った厳正な処分が必要です。居住実態を偽って手当を受給する行為は、会社への詐欺的な行為であり、社内の秩序を大きく乱すためです。

発覚した時点で事実確認の面談を行い、意図的な隠蔽であれば過去に遡って不正受給分の全額返還を求めるとともに、就業規則の懲戒規程に基づく処分を下します。

単なる届け出の遅延か、悪質な隠蔽かを見極めつつ、毅然とした対応をとることが社内規律の維持に繋がります。懲戒規程に「虚偽申告による不正受給は懲戒処分の対象とする」と明記しておくことで、抑止力が高まります。

就業規則・住宅手当規定の見直しポイント

同棲に伴うトラブルを防ぐためには、住宅手当規定の対象者・対象外要件の解像度を上げ、具体的に見直す必要があります。「世帯主に支給する」といった古い・曖昧な表現のままでは、ルームシェアや同棲など多様化する居住形態において解釈の相違が生まれるためです。

「同居人がいる場合は、その続柄を申告すること」「契約名義人以外が家賃の折半を行っていても支給の対象としない」など、グレーゾーンになりやすいケースに対する会社の回答を明文化しましょう。

ライフスタイルの変化に合わせて規定を定期的にアップデートすることが、不要な労使間トラブルを回避する対策です。社会保険労務士などの専門家とともに年に1回程度の見直しを習慣化するとよいでしょう。

同棲している社員の家賃補助に関するよくあるトラブル

個人間の金銭のやり取りと手当支給要件の切り離し、審査基準の明確化と客観的な証明書類の整備が鍵となります。

契約者や世帯主ではない場合

家賃補助を適正に運用するには、住民票が単に「世帯主」となっているかだけでなく、賃貸契約の契約者と一致しているかを必ず確認しなければなりません。同棲カップルは、同じ住所であっても住民票上でそれぞれが世帯主となる「世帯分離」の手続きが可能であり、手当目的で世帯主の肩書だけを取得される恐れがあるためです。

住民票上は世帯分離をして両者が「世帯主」になっていたとしても、会社側は「物件の賃貸借契約書上の主たる名義人であること」を絶対条件として審査します。住民票の表記と契約書をセットで確認するフローにすることで、世帯分離を悪用した不正受給を防げます。両書類の原本確認を申請フローに組み込み、コピーだけでなく原本確認を徹底することも有効です。

家賃の割り勘・折半を従業員から相談された場合

「同棲相手と家賃を半々で支払っているから、自分にも家賃補助を出してほしい」という要望は、原則として却下すべきです。会社としては、個人間のプライベートな金銭のやり取りを客観的に証明する手段がなく、それを認めると管理が著しく煩雑・不透明になるためです。

公務員の基準と同じく、「実質的に家賃の一部を負担していても、契約名義人でなければ制度上は支給対象にならない」という方針を、丁寧に説明して理解を得ましょう。

家賃の実際の負担割合に関わらず、「契約名義人1名」を基準とすることで、公平かつシンプルな制度運用を保てます。この基準は従業員への説明会や規程の前文に明記しておくことで、入社後の不満を予防できます。

片方にだけ家賃補助が出る場合

同棲カップルの一方にのみ手当が支給される場合、貰えない側の従業員に対して、不公平感を持たせない論理的な説明が必要です。同じように生活費を負担しているのに損をしている、という不満は、従業員のモチベーション低下や会社への不信感に直結するためです。

「住宅手当は家賃そのものへの補填ではなく、住居の法的責任(契約義務)を負う主たる生計維持者の生活基盤を支援する会社の制度である」という手当の趣旨を日頃から周知しましょう。

制度の目的と支給要件の合理性を透明化しておくことが、従業員の納得感を引き出し、不満を抑える有効な手段となります。入社オリエンテーションや社内マニュアルに制度の目的や対象者、対象外の具体例を掲載しておくと効果的です。

同棲している社員の家賃補助に関するよくある質問

実務担当者が直面しやすい、グレーゾーンやイレギュラーな事例への対応について解説していきます。

社員が同棲を始めた際は家賃補助は打ち切るべき?

途中で同居人が増えた場合の対応は、自社の規定が「単身者限定」か「世帯主であれば同居人を問わない」かによって判断が分かれます。手当の支給目的が単身者の支援であれば支給要件から外れますが、契約者であること自体を要件としている場合は実態が変わらないためです。

「単身者限定」としている企業であれば同棲開始の事実をもって支給停止となります。また、トラブルを防ぐため「同居人に変更があった場合は14日以内に届け出ること」を義務付ける規程にしておくことが重要です。

途中の状況変化に対応できるよう、速やかな報告義務と、要件を外れた場合の即時打ち切りルールを事前に定めておくべきです。届出があった月末をもって支給を停止するケースが多く、日割り計算の方法についても規程に明記しておくと安心です。

婚約中の同棲と、単なるルームシェアで規定を変える必要はある?

婚約中の同棲と単なるルームシェアで、規定や支給基準を変える必要はなく、実務上は一律で同居人として扱うのが安全です。

「婚約」状態は法的な客観的証明が極めて難しく、どこからが婚約でどこからが単なる交際やシェアかの線引きを会社が行うのは困難だからです。

「入籍をしているか否か」を明確な基準とし、未入籍の段階ではいかなる関係性でも特例を設けず、契約者本人のみに支給する運用とします。

感情論や主観を排除し、「公的書類で証明可能か」を判断基準にすることで、担当者ごとのブレや労務管理上の矛盾を防げます。婚約指輪の有無や交際期間などを判断材料にしてしまうと、かえって個人情報の問題や公平性の欠如を招くため注意が必要です。

自治体の家賃補助制度を従業員に案内して会社の負担を減らすことはできる?

会社からの家賃補助の代わりに、あるいは併用して、自治体の家賃補助制度を従業員に案内するのも有効な方法です。多くの自治体が、若年層や新婚・同棲世帯の定住促進を目的に独自の助成を行っており、これらを活用すれば会社の経費負担なしで従業員の生活支援ができるためです。

会社として給与面での手当拡充が厳しい場合でも、こうした公的支援の情報を人事部から積極的に伝えることも、従業員満足度を高める福利厚生の一つになります。社宅制度の導入や住宅補助の体制整備も含めて幅広く検討したい場合は、マネーフォワードクラウド福利厚生賃貸のサービスも参考にしてみてください。


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