- 作成日 : 2026年3月27日
賃上げで活用できる補助金は何がある?経営を支える制度の全容と申請のポイント
賃上げは「厚労省助成金+経産省補助金」の組合せで実現する
- 業務改善・キャリアUP等
- IT導入・省力化・ものづくり
- 交付決定前発注は対象外
Q:申請で一番多い失敗は?
A:交付決定前に契約・発注・支払いして不支給になる
昨今の物価高騰や深刻な人手不足を背景として、企業にはこれまで以上に積極的な賃上げへの対応が期待されています。一方で、人件費の増加は中小企業の経営に大きな負担を与えるため、国が提供する様々な補助金や助成金を戦略的に活用することが経営安定の鍵を握ります。
本記事では、人事労務担当者や経営層の方々に向けて、賃上げを強力に支援する各種制度の概要から、申請時の注意点までを網羅的に解説します。
目次
賃上げを直接的に支援する厚生労働省の助成金にはどのようなものがあるか?
厚生労働省が管轄する助成金は、主に労働環境の改善や雇用維持を目的としており、賃上げに連動して支給されるメニューが豊富に用意されています。これらの制度は、要件を満たせば受給できる可能性が高いため、自社の状況に合わせた適切なコース選択が経営の助けとなります。まずは代表的な三つの制度について、その仕組みと活用方法を詳しく見ていきましょう。
業務改善助成金による設備投資と事業場内最低賃金の引き上げ支援
業務改善助成金は、生産性を高めるための設備投資を行い、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた場合に費用の一部を助成する制度です。POSレジの導入や自動化設備の購入といった前向きな投資と同時に、従業員の所得向上を実現できるため、攻めの経営を目指す中小企業にとって極めて有用な手段となります。
引き上げる賃金額や対象人数に応じて助成上限額が変動するため、自社の資金計画に合わせて最適な幅を検討することが成果を最大化する近道となります。事業実施計画において、いかに生産性を高めて賃上げ原資を確保するかを明確にすることが、採択後の円滑な受給につながります。
キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)による非正規雇用の処遇改善
キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースは、非正規雇用労働者の賃金規定を改定し、賃金を引き上げた場合に支給されます。すべての非正規雇用者を対象とする場合のほか、一部の層に限定した引き上げであっても、要件を満たすことで助成の対象となり、人件費負担の軽減に大きく寄与します。
人事労務の現場では、対象者の雇用契約書や賃金台帳を正確に整備し、法的な要件を漏れなく満たしているかを確認する作業が前提となります。あらかじめキャリアアップ計画書を労働局へ提出し、計画に沿った運用を徹底することが、確実に受給するための土台となります。
働き方改革推進支援助成金による労働時間短縮と賃金アップの両立
働き方改革推進支援助成金は、残業削減や有給休暇の促進に取り組みつつ、賃金を引き上げる中小企業を支援する制度です。詳細を述べると、勤怠管理システムの導入や外部専門家によるコンサルティングといった取り組みが助成対象となり、これらと並行して賃金を一定割合以上アップさせることで加算額が支給されます。
生産性向上と労働環境の改善をパッケージで支援してもらえる点がこの制度の魅力です。労働時間の短縮を効率的な働き方への転換期と捉え、補助金を活用してデジタル化を一気に進めることで、賃上げに耐えうる強靭な組織へと進化させることが可能になります。
参考:働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)|厚生労働省
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
給与計算の「確認作業」を効率化する5つのポイント
給与計算の確認作業をゼロにすることはできませんが、いくつかの工夫により効率化は可能です。
この資料では、給与計算の確認でよくあるお悩みと効率化のポイント、マネーフォワード クラウド給与を導入した場合の活用例をまとめました。
給与規程(ワード)
こちらは、給与規程のひな形(テンプレート)です。 ファイルはWord形式ですので、貴社の実情に合わせて編集いただけます。
規程の新規作成や見直しの際のたたき台として、ぜひご活用ください。
給与計算 端数処理ガイドブック
給与計算において端数処理へのルール理解が曖昧だと、計算結果のミスに気づけないことがあります。
本資料では、端数処理の基本ルールをわかりやすくまとめ、実務で参照できるよう具体的な計算例も掲載しています。
給与計算がよくわかるガイド
人事労務を初めて担当される方にも、給与計算や労務管理についてわかりやすく紹介している、必携のガイドです。
複雑なバックオフィス業務に悩まれている方に、ぜひご覧いただきたい入門編の資料となっています。
生産性向上を通じて賃上げを後押しする経済産業省の補助金はどれか?
経済産業省の補助金は、企業の競争力強化やデジタルトランスフォーメーションを主眼に置いており、要件の中に賃上げが組み込まれているものが多く存在します。賃上げを約束することで補助率が上がったり、審査で優遇されたりする仕組みがあるため、設備投資を検討する際は賃上げとセットで考えることが合理的です。
IT導入補助金の賃上げ要件活用によるソフトウェア導入コストの軽減
IT導入補助金は、中小企業が課題解決に資するITツールを導入する際の費用を補助する制度です。賃上げを実施することで補助額が引き上げられたり、採択審査において有利に働いたりする枠組みがあり、DXの推進と従業員の処遇改善を同時に加速させることが可能となります。
給与支給総額を年率1.5パーセント以上増加させるなどの目標を掲げる場合、ITツールの活用によって創出された利益を適切に従業員へ還元する仕組みを整えるべきです。システム導入による業務の自動化は、賃上げの原資となる利益を生み出すための有力な手段となり得ます。
中小企業省力化投資補助金を通じた人手不足解消と賃金原資の確保
中小企業省力化投資補助金は、カタログから選んだロボットやIoT機器を導入し、人手不足を解消するための投資を支援する制度です。従来はカタログ型のみでしたが、現在は個別の現場や事業内容などに合わせた多様な省力化投資を支援する一般形の申請も可能となっています。省力化によって労働生産性を高めることが目的であり、その成果を賃上げという形で従業員に分配することが強く期待されています。
従来の補助金に比べて申請のハードルが低く、導入後の効果も分かりやすいため、現場の負担軽減に直結します。人手に頼らない体制を構築できれば、自然と賃金を引き上げるための余力が生まれ、結果として離職率の低下や求人への応募増という長期的なメリットを享受できます。
ものづくり補助金の賃上げ加点項目による設備投資の採択率向上
ものづくり補助金は、新製品開発や革新的なサービスに向けた設備投資を支援する代表的な制度です。賃上げ計画の策定が必須要件の一つとなっており、さらに高い水準の賃上げを表明することで、審査時の点数が加算される仕組みが導入されています。
大規模なプロジェクトには欠かせない支援策であり、採択されれば数千万円単位の補助を受けられることもあります。申請書では事業の革新性とともに、賃上げによる地域経済への貢献度をアピールすることが、高い採択率を獲得するための鍵となります。
参考:ものづくり補助事業展示会「中小企業 新ものづくり・新サービス展」|全国中小企業団体中央会
補助金を活用して賃上げを断行するメリットにはどのような側面があるか?
賃上げは固定費の増大というコスト面が目立ちますが、補助金を組み合わせることで、それを上回る多大な恩恵を享受できます。国が多額の予算を投じているのは、賃上げが企業の競争力を高め、経済全体の成長に寄与すると考えているからです。ここでは、企業が享受できる主要な三つのメリットについて整理します。
賃金上昇に伴う人件費の急増を緩和する財務面での直接的な効果
補助金を利用する最大の利点は、キャッシュフローへの負担を直接的に軽減できる点です。賃上げは一度実施すると下げることが難しいため、将来の固定費増が不安要素となりますが、国からの資金援助を受けることで、立ち上がり時期のコストを補填することが可能になります。
浮いた自己資金を賃金アップの原資に回すことで、財務的な健全性を保ちながら処遇改善を進められる点は非常に合理的です。さらに賃上げ税制などの税制優遇措置と併用すれば、法人税の減税効果も期待でき、トータルでのコスト削減効果は一段と大きくなります。
採用市場における競争力の向上と従業員の定着率改善
賃上げの実績は、採用市場における自社のブランド価値を飛躍的に高める効果があります。他社よりも高い賃金水準を提示できれば、優秀な人材が集まりやすくなるだけでなく、既存従業員のモチベーション向上や離職の防止にも顕著な効果を発揮します。
取り分け人手不足が深刻な現代においては、賃金条件が応募の決め手となるため、補助金を活用した賃上げ実績は強力な武器となります。安定した雇用条件を提供できる企業であるという認識が広がれば、採用コストの削減にもつながり、結果として経営効率が向上します。
最新設備の導入による業務プロセスの効率化と利益率の向上
多くの補助金は生産性向上のための設備投資を条件としており、これが企業の利益率を根本から改善するチャンスとなります。古い設備を最新のシステムや機械に置き換えることで、劇的な効率化が実現し、同じ時間でより多くの成果を生み出せるようになります。
改善によって創出された利益の一部を賃上げに充てることができれば、企業は無理なく高賃金体制へと移行でき、競合他社に対する優位性を築けます。補助金を投資の呼び水として捉え、自社のビジネスモデルをアップデートすることこそが、長期的な成長を支える柱となります。
賃上げ補助金の申請において失敗を避けるための注意点は何か?
補助金の申請は厳格なルールに基づいた正確な事務処理が求められます。些細なミスや手順の前後によって不採択になったり、受給後に返還を求められたりするリスクもあるため、事前の準備と正確な理解が欠かせません。申請を円滑に進めるための三つのポイントを確認しておきましょう。
就業規則の改定や賃金台帳の整備といった労務管理の徹底
助成金の申請において最も土台となるのが適正な労務管理です。賃上げを約束して受給を狙う場合、その内容が正しく就業規則に反映され、労働基準法に基づいた手続きを経て改定されているかが厳しくチェックされます。規定の文言一つで対象外となることもあるため、慎重な対応が不可欠です。
実際の支給状況を証明する賃金台帳や、労働時間を確認するための出勤簿などの帳簿類が完璧に整っていることも条件となります。日頃からの労務コンプライアンスの遵守が前提条件であることを忘れず、当局からの調査があった際にいつでも提示できる体制を整えておくべきです。
交付決定前の発注や支払いが原則認められない事務手続きの順序
補助金申請において非常に多い失敗が、交付決定が出る前に設備の発注を行ってしまうことです。原則として、採択後に届く交付決定通知よりも前に契約・発注・支払いを行った経費は補助の対象外となります。いかに事業に必要なものであっても、このルールを破ると資金援助を受けられません。
内定が出た段階で注文書を出してしまったり、手付金を支払ったりすることは禁物です。補助金のスケジュールと自社の事業計画を照らし合わせ、適切なタイミングでアクションを起こす工程管理を徹底し、正式な契約締結は必ず交付決定後に行うという原則を社内で共有しましょう。
賃上げ実施後の実績報告と一定期間の雇用維持に関する遵守事項
補助金は支給後にも実績報告書の提出が必要となり、賃上げが計画通りに行われたか、設備が適切に運用されているかが厳格に確認されます。この報告を怠ったり内容が計画と乖離していたりする場合、交付された資金の返還を命じられることもあるため、最後まで丁寧な対応が求められます。
また、一定期間にわたって対象労働者を継続して雇用していることが条件となる制度もあります。会社都合による解雇などが発生すると、受給要件を満たさなくなる可能性が高まるため、安定した雇用環境を維持するマネジメントを計画段階から盛り込んでおくことが責任ある企業の姿です。
補助金と賃上げの組み合わせが企業の持続的な成長の鍵となる
賃上げは現在の日本企業にとって避けては通れない経営課題であり、同時に優秀な人材を惹きつけて組織の生産性を高める絶好の機会でもあります。業務改善助成金やIT導入補助金といった制度は、その挑戦を資金面からバックアップしてくれる心強い味方です。制度ごとの要件を正確に把握し、自社の事業計画に合致する補助金を戦略的に選択することで、人件費負担を抑えながら前向きな投資を実現できます。
もちろん、申請にあたっては労務管理の徹底や事務手続きの遵守など、一定の注意が必要となります。しかし、それらのプロセスをクリアすることは、企業の健全な経営基盤を築くことにも直結します。補助金を自社の未来を切り拓くための変革の原資として活用し、従業員と共に成長し続ける強靭な企業体質を作り上げることが、これからの時代を生き抜くための最善の戦略となるはずです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
- # 給与計算
【テンプレ付】給与規程(賃金規程)とは?作成時の規則と手順を解説
労働者が事業主と労働契約を締結する際、最も重視する労働条件として賃金があります。その事業所で根拠となるのが給与規程(賃金規程)ですが、そもそも作成は法的に義務づけられているのでしょ…
詳しくみる - # 給与計算
源泉所得税の納付書について書き方を解説!提出方法や期限も紹介
源泉所得税は、給与や報酬の支払者が、支払額の中から源泉徴収して国に納付する所得税のことです。通常、この源泉所得税の納付は、納付書を使用して手続きを行いますが、所得の種類ごとに使用す…
詳しくみる - # 給与計算
中小企業が利用できる退職金制度は?導入率や金額の相場もあわせて解説【テンプレート付き】
中小企業にとって退職金制度は、人材の確保・定着に関わる重要な制度です。企業規模や業態によって最適な制度は異なりますが、中退共や特退共、企業型DCなど多くの選択肢があります。 本記事…
詳しくみる - # 給与計算
千葉県の給与計算代行の料金相場・便利なガイド3選!代表的な社労士事務所も
千葉県は国際貿易港である千葉港や成田空港を有し、物流や輸出入業が活発です。また、農業や観光業も盛んで、多様なビジネスが展開されています。こうした多岐にわたる業種では、給与計算の正確…
詳しくみる - # 給与計算
福利厚生費に所得税はかかる?課税・非課税の条件をケース別に解説
福利厚生費に対する所得税の取扱いは、制度の内容や運用方法によって異なります。適切な知識を欠いたまま処理を行うと、課税対象とみなされるリスクもあるため、制度に対する正確な理解が不可欠…
詳しくみる - # 給与計算
【未払い時の対応リスト付】給料は何時に振り込まれる?土日の扱いや退職後を解説
給料が口座に反映される時間は、金融機関により異なりますが「支給日当日の午前0時から午前10時頃」が一般的です。これは銀行のシステム(全銀システム)や企業側の振込手続きの方法によって…
詳しくみる

-e1762740828456.png)

