- 更新日 : 2025年7月30日
労働条件通知書と雇用契約書は兼用できる?作成方法も解説
企業が労働者を雇う際に、労働条件通知書兼雇用契約書を取り交わす企業があります。労働条件通知書兼雇用契約書とは、文字どおり労働条件通知書と雇用契約書を兼ねる書類ですが、これらにはどのような違いがあるのでしょうか。
ここでは、労働条件通知書と雇用契約書の違いや労働条件通知書兼雇用契約書を作成する意味、記載しなくてはならない項目などについて解説します。
目次
労働条件通知書と雇用契約書の違いとは?
「労働条件通知書兼雇用契約書」は、その名のとおり「労働条件通知書」と「雇用契約書」を兼ねたものです。また、労働条件通知書と雇用契約書に記載される内容は一見似ています。では、この2つの書類にはどのような違いがあるのでしょうか。
労働条件通知書は労働基準法およびパートタイム労働法、労働派遣法を根拠法とするもので、書面交付(メールやFAX含む)が義務付けられています。こちらは、事業主から労働者に対して一方的に交付されます。
雇用契約書は労働契約法第4条が根拠条文であり、できる限り書面によって確認できるものとされています。労働条件通知書とは異なり、事業主と労働者が合意して取り交わす契約書です。「雇用」は、民法第623条に「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」と定められています。契約は口頭でも成立しますが、契約内容を書面として残し、取り交わすのが雇用契約書です。
このように、労働条件通知書は交付が義務付けられていますが、雇用契約書は任意です。しかし、労働条件などについて後でトラブルにならないように、雇用契約書を取り交わすケースが多いです。
この2つの書類に記載する事項はいくつか共通しているので、両方の書類を兼ねた「労働条件通知書兼雇用契約書」を作成し、取り交わす企業もあります。
参考:
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e-Gov法令検索
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律|e-Gov法令検索
労働契約法|e-Gov法令検索
民法|e-Gov法令検索
労働条件通知書兼雇用契約書はいつ作成する?
労働条件通知書兼雇用契約書を交付するタイミングは、法律によって定められている労働条件通知書に合わせるとよいでしょう。労働基準法第15条第1項において「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」とあります。労働条件を定めず採用を決定することはないため、労働条件通知書は内定時に交付するケースが多いようです。労働条件通知書を兼ねる書類である労働条件通知書兼雇用契約書を取り交わすタイミングも、同じタイミングになると考えてよいでしょう。そのため、労働条件通知書兼雇用契約書は、労働者として迎え入れる人との交渉を経て、内定までに作成することになります。
労働条件通知書兼雇用契約書に明示すべき事項
労働条件通知書兼雇用契約書で明示しなくてはならない項目は、法律で定められている労働条件通知書の内容と同様です。ここでは、労働条件通知書兼雇用契約書に明示すべき事項、すなわち労働条件通知書で明示することが定められている事項を紹介します。
絶対的明示事項
絶対的明示事項は、必ず記載しなければならない事項です。
労働契約期間
労働契約に期間がある場合に記載します。更新の有無も記載します。
期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
労働契約に期間が定められている場合、労働契約の更新方法や基準について記載します。
就業する場所、従事する業務に関すること
労働者が就業する場所や、仕事の内容について記載します。
始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
労働時間について記載します。有給休暇などの扱いについても、ここに記載します。
賃金の決定方法、支払時期などに関すること
賃金の決め方や、支払方法、時期などを記載します。
退職に関すること(解雇の事由を含む)
定年制の有無や自己都合による退職の届出時期、解雇に関する事由、その手続について記載します。
昇給に関する内容
実は、昇給に関する事項は絶対的明示事項ではありません。口頭でもよいとされますが、問題が生じた時のためにも、念のため労働条件通知書兼雇用契約書に記載したほうがよいでしょう。
相対的明示事項
相対的明示事項は、会社に定めがある場合に明示しなくてはならない事項です。
- 退職手当に関すること
- 賞与などに関すること
- 食費、作業用品などの負担に関すること
- 安全衛生に関すること
- 職業訓練に関すること
- 災害補償などに関すること
- 表彰や制裁に関すること
- 休職に関すること
パート・アルバイト、有期雇用労働者に対する労働条件の明示事項
パートやアルバイトなどの短時間労働者や有期雇用労働者については、以下の4項目についても明示しなければなりません。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口
労働条件通知書兼雇用契約書を作成する際の注意点
労働条件通知書は、契約更新の際も必要です。仮に契約内容が同じであっても、交付しなくてはなりません。したがって、労働条件通知書兼雇用契約書を取り交わした場合も、契約更新時に改めて取り交わす必要があります。
労働条件通知書兼雇用契約書を作成する際は、労働条件通知書を作成する際と同様に、以下のことに注意しましょう。
- 適切な方法によって明示されているか
- 明示する書面の項目に不足はないか
- 有期雇用の場合は、更新の有無や更新の判断基準が明記されているか
- パートやアルバイト、有期雇用労働者の場合は、追加で必要な4項目が明示されているか
雇入通知書_労働条件通知書のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
労働条件通知書兼雇用契約書は2つの書類を兼ねる重要な書類
労働条件通知書兼雇用契約書は、労働条件通知書と雇用契約書を兼ねる書類です。この2つの書類に記載する内容はほぼ同じなので、労働条件通知書兼雇用契約書として一つの書類にまとめて取り交わすケースが多いです。
労働条件通知書は法律で交付が義務付けられていますが、雇用契約書の作成・交付は任意です。しかし、労働条件などについてトラブルになることも考えられるため、双方が同意したことの証として契約書を取り交わすケースが多いです。
雇用契約書については、以下の記事で詳しく解説しています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
休職と復職を繰り返す社員・公務員の解雇は違法?適切な対応策とは?
休職と復職を繰り返すケースが続き、労働契約に定める労務の提供が受けられないと判断される場合には普通解雇の扱いです。また、会社が就業規則で定めるのが一般的であり、休職を繰り返しても回復の兆しが見られない場合は会社側の判断で解雇の検討を行います…
詳しくみる自律的とは?意味や自立的との違い、自律的に行動するための7つの方法
自律的とは、信条、理念、価値観などに対して自らの規範を作って、それに従って行動することです。 ビジネスにおいて、指示待ちではなく自律的に行動する人材のことを自律型人材と言います。本記事では、自律的の意味や、自立的との違い、自律的に行動するた…
詳しくみるパワハラ上司の特徴は?処分の注意点やパワハラ防止策を解説
パワハラ上司による問題行動は、職場全体の生産性を低下させる深刻な問題です。日常的に無化に対し、パワハラをする上司には、いくつかの特徴があります。 本記事では、パワハラ上司の特徴や行動事例、職場環境の改善策、そして企業としての対策を解説します…
詳しくみるMBBとは?MBOとの違いやメリット・デメリットを解説!
従業員の参画意識やパフォーマンスを高めながら企業が成長していくためには、従業員の自主性を促すマネジメントを機能させる必要があります。自主的に行動することで、従業員がモチベーションを持ち続けながら企業にとって必要な成果を創造するからです。その…
詳しくみる社員の健康管理とは?企業が取り組むべき施策・成功事例・メリットを徹底解説
近年、働く人々の健康に対する社会的関心が高まり、企業が社員の心身の健康状態を適切に管理することが求められるようになっています。 この記事では、社員の健康管理とは具体的にどのような取り組みを指すのか、なぜ企業にとって重要なのかをはじめ、健康管…
詳しくみる就業規則における健康管理の記載例|雛形をもとに義務や罰則、費用負担についても解説
従業員の健康は、企業の持続的な成長を支える最も重要な経営資源です。従業員の健康を維持・増進するために、常時使用する従業員への健康診断の実施が法律で義務付けられています。健康診断の実施とそのルールを定めた就業規則の整備は、企業の危機管理に不可…
詳しくみる