- 更新日 : 2026年1月8日
白色申告における所得税率の計算の方法を解説!損しないためのボーダーラインは?
所得税の計算方法については、青色申告も白色申告も基本的には同じです。税率は、所得税のものが適用されます。所得税の税率は所得金額に応じて7段階に分かれています。
税率そのものを下げることはできませんが、節税対策を講じて課税所得金額を抑えることで、結果として適用される税率区分を下げられる場合があります。
今回は事業所得者の白色申告における所得税の計算方法と、税率の境目を意識して課税所得金額をどこまでに抑えると有利になるのかについて、具体的な金額を計算しながら紹介していきます。
目次
白色申告における所得税額の計算方法
所得税は、1年間で得た所得に対して課税される税金です。そのため、まず1年間の収入金額(事業所得の場合は売上合計)を計算します。そこから、その収入を得るために直接かかった必要経費を差し引きます。
収入金額から必要経費を差し引いた額を、税法上「事業所得の金額」といいます。計算式で表すと次のようになります。
売上合計 − 経費 = 所得金額
(例)1年間の売上合計が1,000万円で経費が400万円かかった場合
1,000万円 − 400万円 = 600万円
所得金額は、事業で得た利益(収入から必要経費を差し引いた金額)になりますが、政策上の理由から、その所得から控除してもよい金額が定められています。
具体的には、誰でも控除することが認められている基礎控除(48万円)や、生命保険料を支払っている場合に受けられる生命保険料控除などです。これらを税法上「所得控除」といい、所得から差し引くことができます。
一方で、所得控除を差し引いた後の金額は「課税所得」と呼ばれ、この金額を基準に所得税額が計算されます。ここまでを計算式で表すと次のようになります。
所得金額 − 所得控除 = 課税所得
(例)基礎控除48万円(2020年分以降、所得2,400万円以下の場合)と生命保険料控除として5万円受けられる場合
600万円 − 53万円(内訳:48万円+5万円) = 547万円
課税される所得金額が計算できたら、それに税率を掛けて税額を計算します。
税率は、累進課税といって、所得金額によって変わります。
税率の算定方法は次の通りです。なお、課税所得金額は1,000円未満を切り捨てて考えます。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
参考:所得税の税率|国税庁
(例)課税される所得金額が547万円の場合
547万円 × 0.2 − 42万7,500円 = 66万6,500円
※上記で算出した所得税額に対して、別途「復興特別所得税(所得税額×2.1%)」が課されます。
本件事例では、税額は66万6,500円と計算されました。では計算は、これで終わりなのかというとそうではありません。ここからさらに配当控除や寄付金控除といった税額控除をすることが認められています。これも政策的に決められているのですが、税金から直接控除が認められているため、この項目の金額が大きい場合、節税効果が高くなります。
課税される所得に対する税額 – 税額控除
(例)配当控除が6,500円 寄付金控除が30,000円ある場合
66万6,500円 − 36,500円(内訳:6,500円+30,000円) = 63万円
税額控除をして求めたこの630,000円は、所得税(本税)についての「差引所得税額」といいます。
この差引所得税額を基に、別途復興特別所得税が計算されます。さらに源泉徴収されている税額や予定納税額がある場合には、それらを差し引き、最終的な申告納税額または還付税額が確定します。
差引所得税額 – 源泉徴収税額 – 予定納税額
63万円 − 10万円 − 20万円 = 33万円
この33万円が、申告により新たに納付する所得税額(申告納税額)となります。
控除される金額はいろいろとあって、ここでは紹介しきれませんが、基本的な計算はこれですべてです。
※源泉徴収税額および予定納税額には、復興特別所得税が含まれています。
ご紹介しきれなかった控除については、「確定申告の所得控除一覧」をご参照ください。
白色申告の税率 損をしないためのボーダーラインはどこ?
白色申告の納税額は所得税の税率が適用されるため、所得税の速算表で確認することができます。
所得税の速算表では課税される所得金額ごとに税率と控除額が一覧としてまとめられています。
この速算表で注目すべき点は、下記です。
- 税率が10%と20%のボーダーラインとなる330万円
- 税率が23%と33%のボーダーラインとなる900万円
330万円と900万円といった税率区分の境界を超えた場合でも、所得金額の全体に一段上の税率が適用されるわけではありません。実際には、超過した部分に対してのみ高い税率が適用され、速算表はこの段階的な計算を簡略化したものです。
また所得金額が695万円を超えた場合においては、一段下の20%と比較すると上昇率は3%のみであることから、所得金額330万円と900万円が注目すべき金額となります。
所得金額330万円の場合で実際に計算してみると、
330万円 × 10% – 97,500円 = 232,500円
となりますが、所得金額350万円の場合は、
350万円 × 20% – 427,500円 = 272,500円
となり、所得金額が20万円増加すると、適用される税率区分が変わるため、税額は約4万円増加します。ただし、これは所得全体に高い税率がかかるわけではなく、速算表による計算結果として現れるためです。
所得金額が900万円の場合は、
900万円 × 23% - 636,000円 = 1,434,000円
となりますが、所得金額1,000万円の場合は、
1,000万円 × 33% - 1,536,000円 = 1,764,000円
となり、所得金額が100万円上がるだけで33万円も納税額が増えます。
税率区分が大きく変わる330万円や900万円といった水準は、税率構造上の節目となる金額であり、所得控除や経費計上によって課税所得を調整できるかどうかが、税負担に大きく影響するポイントとなります。
白色申告でも経費が多ければ青色申告と同じくらいお得
先ほどの白色申告では、所得金額が330万円を超えると、所得の一部に10%ではなく20%の税率が適用される区分に入り、また900万円を超えると、所得の一部に23%ではなく33%の税率が適用される区分に入ることがわかりました。
所得税は超過累進課税であるため、所得全体に高い税率が一律にかかるわけではありませんが、課税所得が増えることで、より高い税率区分が適用される部分が増えていく仕組みとなっています。
もし、所得金額350万円の白色申告者が青色申告に切り替えると、一定の要件を満たすことで青色申告特別控除65万円(※)を適用できます。
課税所得金額は350万円-65万円(※)=285万円となり、課税所得金額を330万円以下に抑えることができます。その結果、課税所得の大部分が10%の税率区分に収まり、税負担を軽減することが可能になります。
一方で、白色申告であったとしても、事業内容が小売業や卸売業など仕入に係る必要経費が多い場合や、各種所得控除を多く適用できる場合には、課税所得を大きく減らすことができます。その結果、青色申告特別控除を使わずとも、高い税率区分に入らずに済むケースもあります。
たとえば、国民年金保険料や国民健康保険料、介護保険料など、実際に支払った社会保険料は、社会保険料控除として全額を所得から控除できます。また、扶養親族がいる場合には扶養控除を適用することができ、控除額は扶養親族の年齢や同居の有無によって異なります。
一般の扶養親族の控除額が38万円であるのに対し、同居している70歳以上の扶養親族の控除額は58万円となるため、青色申告特別控除額65万円(※)に匹敵する控除額を適用することができます。扶養人数が多ければ多いほど治療などで通院や入院する可能性も高くなるため、医療費控除として最高200万円を控除額とすることもできます。
また、平成29年以後においては、セルフメディケーション税制により、市販の薬を購入した場合でも一定の条件を満たすと所得控除の適用を受けることができます。なお、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できず、いずれか一方を選択して適用します。
したがって、サービス業などで仕入などにかかる経費を計上できなかったり、核家族で扶養人数が少なかったりする場合は、青色申告に切り替えることによって税率を一段下に引き下げる節税対策が必要となります。
同じ収入金額であったとしても白色申告のままでは税金を多く納めることになる場合は、青色申告に変更するための手続きが必要となります。その年から青色申告に変更する場合は、3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。
もし3月15日を過ぎてしまった場合は、翌年から青色申告の適用を受けますが、新たに事業を開始した場合は、業務開始日より2か月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。
※2020年分以降の青色申告特別控除額は55万円となりますが、これまでの要件に加えて、e-Taxによる電子申告あるいは電子帳簿保存のいずれかを行うことで、控除額65万円を受けることができます。
白色申告の税率について理解できましたか?
以上のとおり、順番を追って計算していけば税額の計算は決して難しいものではありません。白色申告であってもきちんと計算して、正しく記入することを心がけましょう。
また、白色申告の事業内容や扶養内容によっては、青色申告に切り替えなくても十分な節税効果を見込むことができます。
適用できるのに申告していない控除がないかどうか確認するだけでなく、仕送りなどにより生計を一にしている別居中の両親を扶養に加えられる場合には、青色申告に切り替えなくてもできる節税対策が得られる可能性があります。本当に青色申告にする必要があるのか、実際にシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。
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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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