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  • 作成日 : 2021年8月20日

累進課税制度とは?税率計算や対象となる所得税等の税金について解説

累進課税制度とは?税率計算や対象となる所得税等の税金について解説

所得税をはじめ、日本国内の税金の一部には累進課税制度が採用されています。累進課税制度は、具体的にどのような仕組みなのでしょうか。この記事では、累進課税の概要から種類、日本で採用されている理由、累進課税が適用される税金、適用される税金の速算表と計算方法まで、累進課税全般について解説します。

累進課税制度とは

国や都道府県などの地方自治体が公共サービスや公共施設を提供できるように、さまざまな税金が設けられています。身近なものでは、消費税や所得税、固定資産税などが知られています。

税金は種類ごとに計算方法が異なり、重量などに応じて一定額を課税するものや、課税額に対して一定率を課税するものもあります。累進課税制度も、課税方式の一つです。

累進とは、数量が増えるにともなって比率が増加することです。よって、累進課税制度では課税対象額が増えるほど税率が上がります。累進課税制度での税額計算は、単純に税率をかける場合よりも複雑になることから、実務上では計算をわかりやすくするために、税率ごとの区分と控除額を示す速算表が用いられます。

累進課税制度の種類

累進課税には、単純累進課税と超過累進課税があります。日本で使われているのは超過累進課税です。

一定の金額を超過した分だけ、超過累進課税率を使って計算します。以下は、超過累進課税の概念図です。

【所得税の累進課税率を例にした超過累進課税の概念図】

所得税の累進課税率を例にした超過累進課税の概念図

超過累進課税の計算例

1. 所得300万円の場合
 195万円×5%+(300万円-195万円)×10%=202,500円(税額)

2. 所得500万円の場合
 195万円×5%+(330万円-195万円)×10%+(500万円-330万円)×20%=572,500円(税額)

一方で単純累進課税(※日本では使われていません)は、累進課税率を課税額全体に適用する方法です。仮に単純累進課税を適用した場合は、以下のような計算になります。

単純累進課税の計算例

1. 所得300万円の場合
 300万円×10%=30万円(税額)

2. 所得500万円の場合
 500万円×20%=100万円(税額)

単純累進課税と超過累進課税を比べると、超過累進課税のほうが課税額の上昇が緩やかです。前述のとおり、日本では超過累進課税が採用されています。

累進課税となっている理由

累進課税が採用されている税金の代表が、所得税です。所得税は、累進課税を採用している相続税や贈与税よりも前に創設されました。

所得税が導入されたのは、1887年(明治20年)。すでに所得税を導入していたイギリスにならって導入されました。このときから所得税には累進課税が採用されており、日本では130年以上の歴史があります。

「納税者の担税力(納税できる力)に合わせて税負担を決めよう」ということで、納税者の税負担の公平を図るために累進課税が採用されました。

累進課税の対象となる税金

日本で累進課税が採用されているのは、所得税、相続税、贈与税の3つです。

所得税

所得税は、個人の所得に課税される税金です。所得とは個人が得た利益のようなもので、事業で得た所得や、会社に勤務することで得た所得、銀行にお金を預け入れることで得た所得など、何らかの対価として得た利益を表します。一部累進課税が適用されない所得もありますが、基本的には年間の所得に対して累進課税による所得税率が適用されます。税率は5~45%の7段階です。

相続税

相続税は、亡くなった人の財産を相続または遺贈により取得したときにかかる税金です。財産を取得したという事実に基づいて、相続税が課税されます。相続税も累進課税が適用される税金です。相続税の対象となる財産の評価額に応じて、10~55%の8段階の相続税率が設定されています。

贈与税

贈与税は、個人から財産をもらったときに課税される税金です。法人からの財産の贈与は、贈与税ではなく所得税の対象です。贈与税にも累進課税が採用されており、税率は10~55%の8段階です。ただし、年間の贈与について計算する暦年課税でなく、相続時精算課税で申告する場合の一定額を超過したときの税率は累進課税ではありません。

累進課税制度のメリットとデメリット

累進課税制度のメリットは、「納税者それぞれが負担できる範囲で課税しよう」という応能負担がベースになっていることです。課税額に比例して税率が上がるため、課税額が多い人、所得税なら所得が多い人ほど税負担が大きくなります。所得税であれば、「所得の低い人はそれに応じた納税を、所得の高い人はより多く納税を」という考えで、税負担の公平が図られています。これによって、富の格差が広がらないことが累進課税のメリットといえます。節税の面では、贈与であれば贈与する時期をずらすことなどによって税率を調整できます。場合によっては、節税対策を行える点も累進課税のメリットといえるでしょう。

しかし、累進課税には問題もあります。インフレ(物価上昇)によって、実質的な所得が変わらなくても所得額が増えることで納税額が増えてしまう問題。所得額に比例して税率が上がることで労働報酬の中立性が失われ、所得の高い人ほど労働インセンティブが減ってしまう問題。課税額が大きい人ほど負担が大きくなるため、可処分所得(税金や社会保険料などを差し引いた後で手元に残る額)が少なくなり、貯蓄が思うようにできなかったり、自由に使えるお金が減ったりすることで経済の循環を滞るといった問題があります。

所得税の税率区分ごとの速算表と計算

所得税を適用する税率で区分すると、総合課税、申告分離課税、源泉分離課税に分けられます。総合課税とは対象となる各種所得の合計額に対して課税することで、申告分離課税とは総合課税とは所得を分けて税額を計算し、申告によって課税することです。源泉分離課税は、申告分離課税と同じく総合課税と分けて税額を計算するものの、申告はせず源泉徴収されるものです。

申告分離課税の対象は、山林所得や土地・建物の譲渡所得、株式等の譲渡所得などです。源泉分離課税は、銀行口座の利息(利息支払時に金融機関から税額分を源泉徴収される)などが該当します。総合課税に該当するのは事業所得給与所得など、申告分離課税にも源泉分離課税にも該当しない所得です(総合課税と分離課税を選択適用できる場合は、総合課税を選択したときは総合課税にその所得を含みます)。

このうち累進課税が適用されるのは、総合課税です。前述のとおり、所得税は7段階の超過累進課税によって計算しますが、非常に手間がかかります。そこで使用するのが、課税所得の区分ごとに税率と控除額が一覧で表示された速算表です。所得税の速算表は年収ではなく、年収から経費(会社員の場合は決められた給与所得控除)などを差し引いた所得額をもとに所得税額を計算します。
※厳密には、課税所得は所得から所得控除を差し引いた後の額です。

所得税の速算表

課税所得金額税率控除額
195万円未満5%0円
195万円以上330万円未満10%97,500円
330万円以上695万円未満20%427,500円
695万円以上900万円未満23%636,000円
900万円以上1,800万円未満33%1,536,000円
1,800万円以上4,000万円未満40%2,796,000円
4,000万円以上45%4,796,000円

出典:No.2260 所得税の税率|国税庁

速算表を使った計算

例)課税所得500万円のときの所得税額
 500万円×20%-427,500円=572,500円

相続税の税率区分ごとの速算表と計算

相続税にも、超過累進課税の適用による計算をより簡易的にするために、法定相続分に応ずる取得金額の区分ごとに税率と控除額が一覧で表示された速算表があります。法定相続分に応ずる取得金額とは、相続した遺産総額をもとに以下の手順で算出した金額のことです。

  1. 遺産総額の評価額に相続時精算課税制度の適用があればその額を加える
  2. 非課税財産、葬式費用、債務を差し引き、遺産額を出す
  3. 遺産額に相続開始前3年以内の贈与財産を加え、正味の遺産総額を出す
  4. 正味の遺産総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引く
  5. 基礎控除を差し引いた後の課税遺産総額を法定相続分で分配する

法定相続分とは、民法で定められた相続割合のことです。実際の相続は必ずしも法定相続に従う必要はありませんが、税額計算上は法定相続分を基準にします。例えば、亡くなった人に配偶者1人、子どもが2人いたときの法定相続分は、配偶者が2分の1、子どもが4分の1ずつです。

相続税の速算表

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%0円
1,000万円超3,000万円以下15%50万円
3,000万円超5,000万円以下20%200万円
5,000万円超1億円以下30%700万円
1億円超2億円以下40%1,700万円
2億円超3億円以下45%2,700万円
3億円超6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

出典:No.4155 相続税の税率|国税庁

速算表を使った計算

例)法定相続人は配偶者1人で、法定相続分に応ずる取得金額が1億円だったとき
 1億円×30%-700万円=2,300万円(税額)

贈与税の税率区分ごとの速算表と計算

贈与税の計算と納税は暦年課税のほか、相続時精算課税を選択できます。暦年課税とは、年間(毎年1月1日から12月31日まで)の贈与に対して課税する方法のこと。相続時精算課税は一定の要件を満たすときに利用できる制度で、相続時に贈与分をまとめて計算し課税する方法です。累進課税は、暦年課税に適用されます。

暦年課税での贈与税の計算を簡易にするために、基礎控除(110万円)後の課税額の区分ごとに税率と控除額が一覧で表示された速算表を用います。

贈与税の速算表(一般税率)

基礎控除後の課税額税率控除額
200万円以下10%0円
300万円以下15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下30%65万円
1,000万円以下40%125万円
1,500万円以下45%175万円
3,000万円以下50%250万円
3,000万円超55%400万円

出典:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

速算表を使った計算(一般税率)

例)兄弟から500万円の贈与を受けたとき(基礎控除後の課税額は390万円)
 390万円×20%-25万円=530,000円(税額)

上記の一般税率の速算表を使うのは、兄弟間の贈与や夫婦間の贈与など、特例税率が適用されない場合です。父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合(受贈者はその年度の1月1日時点で20歳以上であること)は、以下の特例税率の速算表を使って計算します。

贈与税の速算表(特例税率)

基礎控除後の課税額税率控除額
200万円以下10%0円
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

出典:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

速算表を使った計算(特例税率)

例)20歳以上の人が祖父母から500万円の贈与を受けたとき(基礎控除後の課税額は390万円)
 390万円×15%-10万円=350,000円(税額)

日本の税金のうち所得税などの一部は累進課税で計算する

累進課税は、課税額が高いほど適用される税率が上がる課税方式です。日本では、所得税、相続税、贈与税に採用されています。いずれも超過累進課税が適用されるため、適用される税率が増えるにつれて計算が複雑になります。税額を簡単に算出するためには、国税庁のホームページにも掲載されている速算表を利用するとよいでしょう。

よくある質問

累進課税制度とは?

課税額が高くなるにつれて税率が上げる課税方法のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

なぜ累進課税が採用される税金がある?

累進課税制度が採用されているのは、納税者の負担の公平を図るためです。詳しくはこちらをご覧ください。

累進課税の対象になる税金は?

日本では、所得税、相続税、贈与税に累進課税が適用されます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岩波 竜太郎 (公認会計士 / 税理士 / 経営学修士)

公認会計士・税理士・経営学修士。大手監査法人、ベンチャー企業を経て、2015年に独立開業。大手監査法人での海外経験や管理本部長としての幅広い経験を武器に会計アドバイザリー業務を主たる業務として行うとともに、東証1部上場企業である株式会社OrchestraHoldingsの社外役員をはじめ、経営アドバイザーとして複数の企業に関与。Webメディア等の記事執筆・監修業務も積極的に行っている。