• 更新日 : 2023年12月14日

ストックオプションの確定申告|税金額の計算や課税時期、申告方法について

ストックオプションの確定申告|税金額の計算や課税時期、申告方法について

ストックオプションとは、簡単に説明すると、将来、株式をあらかじめ決定した価格で購入できる権利のことです。なお、ストックオプションを得たとき、ストックオプションの権利を実行したときなど、ストックオプションに関連して所有者にとって利益が発生すると考えられるタイミングがあります。このような利益に対して、確定申告は必要になるのか、この記事では、ストックオプションと税金の関係、確定申告のやり方まで解説します。

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ストックオプション取引による収入は確定申告が必要?

まず、ストックオプションとはどのような取引か、確定申告が必要なのはどのようなケースか、概要を解説します。

ストックオプションは決まった価格で株を購入する権利

ストックオプションとは、新株予約権の一種です。新株予約権は、株式会社があらかじめ決定した行使価格で株式を交付することを約束するもので、所有者には一定期間の間に行使価格で株式を取得する権利が与えられます。

そして、新株予約権の一種であるストックオプションは、株式会社の取締役、監査役、雇用関係にある使用人など、主に会社内部の者に対して新株予約権を付与する取引のことをいいます。

ストックオプション所有者は、ストックオプションの行使価格に対して株式の時価が高ければ、時価よりも低い金額で株式を取得することが可能です。権利行使によって株式の含み益を得ることができ、所有し続けることで、さらなる利益を狙うこともできます。現金による支給とは異なりますが、株式の時価が行使価格よりも上昇している場合は、付与された者の給与や報酬の上乗せと考えることもできるでしょう。

そして、ストックオプションを付与する会社側からすると、付与する取締役や使用人などが、企業価値の向上や経営成績の向上のために頑張ってくれるのではと期待がもてます。取締役や使用人の頑張りで業績が上がれば、株式の時価も上昇する可能性があるためです。このように、社員や役員のモチベーションを上げることなどを理由にストックオプションの付与は行われます。

ストックオプション取引で確定申告が必要なケース

詳細は、次の見出しである「ストックオプションの課税のタイミング」で後述しますが、ストックオプションを所有する場合、いくつかの時点で所得税が課される可能性があります。つまり、確定申告が必要なケースがあるのです。

そして、確定申告の必要性について知る前に理解しておきたいのが、ストックオプションの種類です。後述しますが、ストックオプションは、税制適格ストックオプション、税制非適格ストックオプション、有償ストックオプションの3つに分けることができ、それぞれで課税のタイミングと課税の有無、計算方法などが異なります。

ストックオプションの課税のタイミング

ストックオプションの課税時期は、取得から売却までを考えると3つの段階に分けられます。

ストックオプションを取得したとき

ストックオプションを取得したときとは、将来、行使価格で株式を取得する権利を得たときです。ストックオプションを取得した段階では、株式を購入する権利を得ただけであって、権利を行使するかどうかはまだわかりません。課税については、経済的利益があること、つまり何らかの利益があることを重視します。権利だけでは経済的利益を得ることは確定していないため、ストックオプションを取得した段階では課税されません。

ストックオプションの権利を行使したとき

ストックオプションの権利を行使したときとは、行使価格で株式を取得したときです。時価が行使価格よりも高い場合は、時価よりも安い価格で株式を取得したことになります。利益は確定していませんが、利益が生じたという事実から、権利行使時に課税されることがあります。

ストックオプションの権利行使によって取得した株式を譲渡したとき

ストックオプションの権利行使後は、株式を取得する権利から、株式の所有へと変化します。所有する株式の譲渡は課税対象になるため通常の株式譲渡と同様に課税されます。

つまり、ストックオプションに関連して課税されるタイミングは、権利行使時と株式譲渡時です。ただし、次の見出しで詳しく説明しますが、ストックオプションの種類によって課税の有無が変わります。

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ストックオプションにかかる税額の計算方法と必要書類は?

税制適格ストックオプション、税制非適格ストックオプション、有償ストックオプションに分けて、それぞれの税金の計算式と必要書類を解説します。

税制適格ストックオプションにかかる税金の計算と必要書類

会社法に定められた無償発行であること、譲渡禁止規定があること、付与契約時の時価以上の行使価格を設定することなど、ストックオプション税制の数々の要件を満たしたストックオプションを「税制適格ストックオプション」といいます。

ストックオプションでは権利行使時と株式譲渡時に課税される可能性があると説明しましたが、税制適格ストックオプションは権利行使時に関しては課税を繰り延べられます。つまり、課税対象になるのは株式譲渡時だけで、権利行使時には課税されないということです。

■株式譲渡時の税金の計算

収入金額(譲渡価格)-【取得費+譲渡費用(委託手数料など)】= 譲渡所得

 

税制適格ストックオプションの取得費については、権利行使時の時価ではなく、株式取得にあたり実際に負担した価額で計算します。また、申告分離課税で、譲渡益に対して20%(所得税15%、住民税5%)と復興特別所得税が課税されます。

■確定申告の必要書類

  • 申告書第一表
  • 申告書第二表
  • 申告書第三表(分離課税用)
  • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(特定権利行使株式分及び特定投資株式分がある場合)

税制非適格ストックオプションにかかる税金の計算の計算と必要書類

税制適格ストックオプションに該当しない、無償のストックオプションを「税制非適格ストックオプション」といいます。税制非適格ストックオプションは、権利行使後に取得した株式の譲渡時点だけでなく、ストックオプションの権利行使時も課税される点に注意が必要です。

■権利行使時の税金の計算

(権利行使時の株式の時価 - 権利行使価格)× 株式数 = 所得金額

 

権利行使時には、権利行使価格よりも行使時の時価が高い場合に、差額分が所得金額として課税対象になります。ストックオプションは、通常、取締役や使用人に対して交付するものであるため、一般的には給与所得です。給与所得の場合は、発行会社にて源泉徴収の対象となります。ただし、すでに退職している場合は退職所得、業務に関連する第三者の場合は事業所得雑所得になることもあります。

■株式譲渡時の税金の計算

収入金額(譲渡価格)-【取得費+譲渡費用(委託手数料など)】= 譲渡所得

 

譲渡時の税金は、税制適格ストックオプションのときと考え方は同じです。
取得費は権利行使時の価格となり、譲渡時に利益があれば確定申告が必要です。ただし、権利行使後に特定口座(源泉徴収あり)に株式を入庫した場合は、原則、確定申告は不要です。

■譲渡時の確定申告の必要書類

  • 申告書第一表
  • 申告書第二表
  • 申告書第三表(分離課税用)
  • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

有償ストックオプションにかかる税金の計算と必要書類

有償ストックオプションは、取締役や使用人などが公正価格の計算に基づいた一定額を払い込んで取得するストックオプションをいいます。税制適格ストックオプションや税制非適格ストックオプションのように無償で付与されるものではないため、取締役や使用人の給与とはみなされません。よって、ストックオプションの権利行使時に課税されることはありません。課税されるのは、権利行使後に取得した株式を譲渡したときです。

■株式譲渡時の税金の計算

収入金額(譲渡価格)-【取得費(発行価格を含む)+ 譲渡費用(委託手数料など)】= 譲渡所得

 

有償ストックオプションの場合、取得費は権利行使時の時価ではなく、権利行使にあたり実際に負担した価額で計算され、ストックオプション取得時の発行価格が含まれます。

■譲渡時の確定申告の必要書類

  • 申告書第一表
  • 申告書第二表
  • 申告書第三表(分離課税用)
  • 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

ストックオプション取引における確定申告の記入例

権利行使時にも所得税が課税される可能性はありますが、給与所得として課税されることが多いため、今回は権利行使後に株式を譲渡したケースの確定申告について解説します。なお、税制非適格ストックオプションなど特定口座の利用が可能で、特定口座(源泉徴収あり)に株式を入庫した場合の譲渡益は源泉徴収の対象となるため、基本的に確定申告は必要ありません。

(例)行使価格1,500円(1株当たり)の税制適格ストックオプションについて、令和元年10月1日に権利行使し、上場株式(ABC工業)を1,000株分取得した。一般口座へ入庫後、時価が上昇したため、令和4年12月1日に3,000円(1株当たり)で売却している(※取得費以外の費用は発生しなかったものとする)。
※上記は簡易的な例です。実際は年間取引報告書など書類をもとに記載していきます。

 

[株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(特定権利行使株式分及び特定投資株式分がある場合)]

ストックオプション取引における確定申告の記入例
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(特定権利行使株式分及び特定投資株式分がある場合)」を加工して作成

計算明細書は、まず2面から記入していきます。例は、上場株式で一般口座での譲渡なので、2面の下、「特定口座以外で譲渡した株式等の明細」に詳細を記入します。赤枠の合計額は、1面に転記する部分です。

「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(特定権利行使株式分及び特定投資株式分がある場合)」
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(特定権利行使株式分及び特定投資株式分がある場合)」を加工して作成

2面から該当する箇所に金額を転記し、最終的な所得金額を出します。例は、上場株式なので上場株式等の欄に金額を記載、ストックオプションなので、内訳は「内、特定権利行使株式分」に記載します。赤枠は、確定申告書第三表(分離課税用)に転記する箇所です。

[確定申告書第三表(分離課税用)]
明細書に記入した内容をもとに、確定申告書第三表に数字を転記します。

明細書に記入した内容をもとに、確定申告書第三表に数字を転記

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第三表(分離課税用)【令和4年分以降用】を加工して作成

税金の計算の欄は、例では上場企業の譲渡所得に該当するため、80番に記入します。今回、一般株式等の譲渡所得はないため、72番の金額をそのまま転記します。

税金の計算の欄
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
申告書第三表(分離課税用)【令和4年分以降用】を加工して作成

株式の譲渡所得については、課税所得金額に所得税15%を乗じて、税額を算出します。課税所得は今回150万円であるため、15%の22.5万円が税額です。今回は、88番のみになるため、93番の合計は、88番の金額がそのまま入ります。

[確定申告書第一表]

確定申告書第一表
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
「申告書第一表・第二表【令和5年分以降用】」を加工して作成

分離課税を申告するため、確定申告書第一表の「分離」に〇をします。

第三表で計算した額を31番に転記し、最終的な申告納税額を計算

出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
「申告書第一表・第二表【令和5年分以降用】」を加工して作成

第三表で計算した額を31番に転記し、最終的な申告納税額を計算します。なお、第三表で復興特別所得税が計算外なのは、この段階で加算されるためです。納める税額がある場合、100円未満を切り捨てた額が納税額になります。

ストックオプションにかかる確定申告の注意点

ストックオプションに関連して、確定申告は、権利行使後の株式を譲渡した際に必要になることがあります。ただし、源泉徴収口座ありの特定口座から譲渡したなど、譲渡の事実はあっても確定申告が不要なこともあるため、状況をよく整理しておきましょう。

仮に、譲渡所得の確定申告を忘れ、申告漏れとなったときは、無申告加算税が納付税額に課せられることもあります。無申告加算税は、税務調査前に自主的に期限後申告した場合は軽減されるため、申告漏れに気づいたら速やかに申告を行うようにしましょう。

ストックオプションにかかる確定申告のやり方はこれでばっちり

ストックオプションの所有者に所得税が課せられる可能性があるのは、権利行使したとき、また権利行使後に株式を譲渡したときです。所有しているだけでは所得税は課されません。中でも重要なのは、権利行使後の株式譲渡時の確定申告です。この記事でも解説したやり方で、必要があれば確定申告しましょう。

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よくある質問

ストックオプション取引による収入は確定申告が必要?

ストックオプションは3つの種類に分けることができ、それぞれ課税のタイミングと課税の有無、計算方法などが異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

ストックオプションの課税のタイミングは?

ストックオプションを取得したとき、権利を行使したとき、権利行使によって取得した株式を譲渡したときの3つタイミングがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

ストックオプションにかかる税額の計算方法と必要書類は?

税制適格ストックオプション、税制非適格ストックオプション、有償ストックオプションによって異なります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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