- 更新日 : 2023年8月25日
非認知能力とは?ビジネスにおける鍛え方から活用例まで
非認知能力とは、数値化できない能力を指します。テストや検査で数値化できる認知能力とは異なり、幼少期に主に育まれ、忍耐力や自己認識力など、生きていくために重要な能力とされています。しかし、非認知能力は大人になってからも鍛えることが可能です。ここでは非認知能力の種類や内容と、ビジネスでどのように役立つかを解説します。
目次
非認知能力とは?
非認知能力とは、数値化できない「生きていくために必要な能力」を指す用語です。協調性やコミュニケーション能力、忍耐力、自制心といった行動・考え方・取り組み姿勢などの心の部分が多く占めており、一般的にテストの点数や検査の指標には表れない能力が該当します。非認知能力は、円滑なコミュニケーションやリーダーシップ、新しいアイディアの発想など、ビジネスでも必要となる能力として注目されています。
認知能力との違い
人の能力は、大きくわけて「認知能力」と「非認知能力」の2種類があります。認知能力とは、学校のテストや検査などで点数化・指標化できる能力を指します。IQは認知能力を数値化した代表的なものといえるでしょう。
認知能力は、進学や就職する上で重要なものと捉えられていますが、社会で生きていくためには協調性や忍耐力、コミュニケーション能力などといった非認知能力が必要となります。非認知能力は、幼少期だけではなく大人になっても、人生の幸福度を高めるうえで重要なものであると考えられています。
また、ビジネスパーソンにとって、意欲や忍耐力、自己認識といった非認知能力は、自己を成長させるうえで重要なものとなります。
非認知能力が注目された背景 – 参考にされた実験
非認知能力が世間で注目されるようになったきっかけに、1960年代にアメリカ・ミシガン州で実施された「ペリー就学前プロジェクト」があります。シカゴ大学教授のジェームズ・ヘックマンが行ったもので、3〜4歳児を対象に「就学前教育を受けさせる」という実験です。主に経済的に恵まれない家庭からランダムに選ばれ、40年間にわたり追跡調査が行われました。
「ペリー就学前プロジェクト」を受けた子どもたちは、この教育を受けていない同じような経済的境遇にある子どもたちと比較した場合、IQには大きな差がないものの、非認知能力が高まることで学習意欲や社会性が養われ、結果として基礎学力が高くなり、安定した社会生活を送っていることがわかりました。犯罪率の低さや、自律した生活能力に、幼少期に育まれた非認知能力が関連しているとして、注目されたのです。
非認知能力の種類
非認知能力には以下のものが含まれます。
忍耐力・がまん強さ
忍耐力とは、粘り強く頑張る力です。難しい課題に直面したときや、自分の能力が試される状況に直面したとき、諦めずに最後までやり切ることにつながります。
社交性
社交性には、社会的能力として協調性や思いやりといったことが含まれ、人間関係を円滑に行ううえで求められる能力です。社交性に優れている人は、相手の気持ちや立場を想像できるため、誰からも好かれるコミュニケーションを図ることができます。
感情のコントロール
自制心、理性といったセルフコントロールを指します。感情に任されず、自身の感情を客観視し、行動を選択することができます。感情のコントロールに優れた人は、怒りや悲しみなどネガティブな感情に振り回されず、気持ちを切り替えることができます。
創造力(クリエイティビティ)
創造力とは、工夫をする力です。あるものを組み合わせ新しいアイディアを生み出したり、まったく新しいサービスを作ったりする原動力となります。
臨機応変さ
臨機応変さは、対応力や応用力です。状況に合わせて柔軟に対応することは、適切な判断を行い、行動する力となります。
やる気・モチベーション
意欲は、学習や仕事に重要です。やる気や集中力があることはモチベーションを高く維持することを可能とし、困難な業務も成し遂げます。
自己認識能力
自己認識とは、ありのままの自分を理解する力です。自身の能力を客観的に認識し、良い部分も悪い部分も受け止めることができるため、失敗を他者や環境のせいにせず、成長につなげていくことができます。また、他者が自分をどう見ているかもわかっているため、他者に合わせた柔軟な対応が可能になります。
メタ認知
メタ認知とは、自分の状況を客観的に理解・把握する力です。自身の視野を広く持ち、偏った見方ではなく、状況を客観的に見ることができる力をいいます。
非認知能力は大人になっても鍛えられる?
非認知能力を育てるには、幼少期の教育が重要だといわれますが、大人になってからも鍛えることができます。非認知能力が低いと諦めずに、日々の活動から少しずつ鍛えていくことが大切です。
たとえば、興味のあることを持続しやり遂げることは、非認知能力を育てます。仕事場や仕事以外の場で、「やりたいことを」を見つけ、「続ける」ことが重要です。
非認知能力の鍛え方
非認知能力を鍛えるために、以下のことを意識してみましょう。
やりたいことを発見する
やりたいことを見つけることは、非認知能力を高めます。自分が何をしたいのか、大人になると忘れてしまう人が多いものです。日記を書いたり、1日の前に出来事を振り返って、自分の感情を反芻(はんすう)してみましょう。そのなかで、やりたいこと、繰り返し行いたいことが見つかります。
続けてみる
計画を立て、繰り返し行い、達成度を管理・記録することで自制心が磨かれます。計画を実行し達成することの繰り返しによって、やりたいことが自身の活力となり、日々の生活や仕事のモチベーション向上につながります。
仕事場以外での人間関係を作ってみる
やりたいことが仕事関連ではない場合には、仕事場以外で人間関係をつくるのもよいでしょう。他の部署の人や職場以外の人とコミュニケーションを取ることは、新たな人間関係を築くチャンスです。仕事とは異なる場でのコミュニケーションには、今の職場にない協調性が求められるかもしれません。また、コミュニケーションを円滑にすることは、感情をコントロールする能力を養います。会話の仕方や相手とのやり取りを通じて、社交性を育むことができるでしょう。
ビジネスにおいて非認知能力は役立つ?
ビジネスパーソンにとって、非認知能力は社会人の基礎力のようなものです。行動を起こし、自分で考え、他者とチームで動くためには、これまで述べた非認知能力が求められます。非認知能力の高い人は、自ら進んで学び業務が遂行できるようになり、対応力や忍耐力が優れていることで、困難なプロジェクトにも課題解決に向けて取り組むことができます。
非認知能力には高いコミュニケーション能力も含まれ、「この人とまた一緒に仕事がしたい」と周囲に思わせる能力でもあります。組織のメンバーの非認知能力を鍛えることで、組織全体のチームワークを高め、効率的な業務遂行を可能とし、生産性を高めることができるでしょう。
大人になってからも非認知能力を鍛える
非認知能力は、幼少期だけではなく大人になってからも鍛えることができます。興味があることに継続的に取り組み、コミュニケーションを円滑にすることが、非認知能力を高め、職場での人間関係構築やモチベーション向上をもたらします。日常の過ごし方を意識し、自身の非認知能力を高めることは、ビジネスパーソンとして自己を成長させてくれるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
モラハラとは?家庭内や職場の事例や特徴、企業の対処法を解説
モラハラとは、倫理や道徳に反する行為で相手の精神・肉体を傷つけることです。企業には労働契約に伴い安全配慮義務を負うこととされており、労働者の身体だけではなく心の健康にも配慮する義務があります。 ここでは、モラハラの定義や職場内で該当する行為…
詳しくみる人的資本とは?定義や具体例、注目されている背景、高める方法を解説
人的資本とは、企業や組織における従業員の知識やスキルなど、人間を資本として捉える用語です。これらは単なる労働力にとどまらず、企業の競争力や持続可能な成長において重要な役割を果たします。 本記事では、人的資本の定義や具体例、高める方法について…
詳しくみるパートの雇用契約書は必要?|必要性や記載項目・更新について解説
パートの雇用契約書は、正社員とは違う働き方であっても、トラブル防止や条件の明確化に欠かせない重要な書類です。パート勤務における雇用契約書の基本的な役割や記載内容について理解を深めましょう。 本記事では、パート雇用における雇用契約書の必要性や…
詳しくみる研修とは?意味や目的・種類を紹介!
企業が行う研修は、業務で必要な知識やスキルの習得を目的に、勉強会や講座などで学ぶもので、インソースで行う社内研修とアウトソースで実施する社外研修があります。本記事では研修を行う意味や種類、実施する流れなどを解説します。研修に関連して支給され…
詳しくみる内定式は何をする?入社式との違いや準備、プログラム、面白事例を解説
内定式は、会社が内々定を出した学生に、正式な内定通知を出すための式典です。内定式はいつ行われるのか、何のために行われるのか、どのようなことを行うのか、ご存じでしょうか。 今回は、内定式の概要、内定式を行う理由、プログラムと流れ、事前準備、内…
詳しくみるディーセントワークとは?定義や取り組み内容についてわかりやすく解説
ディーセントワークを目指す職場が増えています。働き方や職場環境を改善する動きが広がっているのです。そこでこの記事ではディーセントワークという言葉の意味や、ディーセントワークの実現に向けた取り組みのメリットなどについてわかりやすく解説します。…
詳しくみる