- 更新日 : 2026年7月7日
DEIとは?意味や企業事例、推進ポイントをわかりやすく解説
DEIとは、多様性・公平性・包括性の頭文字で、あらゆる人材が能力を発揮できる組織づくりの考え方です。
- D(多様性)E(公平性)I(包括性)の3要素で構成
- 少子高齢化・グローバル化を背景に企業に不可欠
- イノベーション促進・企業価値向上などに効果
Q. DEIとD&Iの違いは何ですか?
A. D&Iにスタート地点の不平等を是正する「Equity(公平性)」を加えた概念がDEIです。
近年、多様な人材が活躍できる組織づくりの考え方として、「DEI」の導入を進める企業があります。
DEIとは、多様な人材が組織の一員として尊重されて能力を発揮するための考え方です。少子高齢化による労働力不足が深刻化する日本において、優秀な人材を確保し、企業の競争力を高めるために不可欠なものとなっています。
本記事では、DEIが注目される背景や企業事例、推進ポイントなどを解説します。
DEIとは?
DEIとは「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包括性)」3つの頭文字を取った略称です。
多様性や公平性を尊重し、誰もが受け入れられる包括的な組織や社会を実現しようとする取り組みを指します。
もともとは「D&I」と呼ばれていたものの、障がいの有無や性別によって希望のポジションに就けないといった、スタート地点からの不平等が問題視されていました。
現在では、不平等を是正する観点から「Equity(公平性)」が加わり、D&Iから派生した新たな取り組みのひとつとして知られています。
ここでは、DEIを構成する3つの要素を解説します。
Diversity(多様性)
Diversity(多様性)とは、組織の中に多様な属性や価値観をもつ人材が共存している状態です。
性別・年齢・国籍・障がいの有無といった外見的な属性だけでなく、職歴・宗教・価値観・ライフスタイルなどの内面的な属性も含まれます。
経済産業省も、多様な人材の採用によりイノベーション・競争力強化につなげる「ダイバーシティ経営」の推進を掲げており、その具体的なアプローチのひとつがDEIです。
ダイバーシティ経営について、より詳しく知りたい方は関連記事もご覧ください。
Equity(公平性)
Equity(公平性)とは、一人ひとりの状況に応じた支援を行い、誰もが公平に機会を得られる状態を指します。
全員に一律で同じ支援を行う「平等(Equality)」とは異なり、個々のスタートラインや抱える課題の違いを考慮して対応する点が特徴です。
たとえば、育児や介護を担う社員に短時間勤務制度を適用したり、外国人社員に言語サポートを提供したりする取り組みが挙げられます。
個別の支援によって格差を是正し、誰もが能力を発揮できる環境を整えることがEquityの目的です。
Inclusion(包括性)
Inclusion(包括性)とは、多様な背景や意見をもつ人たちが組織の一員として尊重され、個々の能力を最大限に発揮できる状態を指します。
どれほど多様な人材を集めて公平な機会を提供しても、個人の意見が無視される職場では組織として機能しません。全従業員が遠慮なく発言でき、主体的に業務へ関与できる環境づくりが求められます。具体的には、若手や外国人社員の提案を積極的に採用したり、育児短時間勤務者の意見をプロジェクトへ反映したりするといったことが挙げられます。
一人ひとりの価値を組織の力へ変えていく考え方が、Inclusionです。
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DEIが注目されている背景
DEIが重視されるようになった背景を理解すると、一時的な流行ではなく、企業にとって必要な取り組みだとわかるでしょう。
ここでは、DEIが注目されている背景を解説します。
少子高齢化による労働力不足
日本では少子高齢化が進み、働き手となる生産年齢人口(15〜64歳)は減少傾向にあるため、多様な人材の労働力を活かすDEIの取り組みが重要です。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると、2020年に約7,509万人だった生産年齢人口は、2043年には6,000万人を下回ると推計されています。
人手不足が加速するなか、従来の均質な採用だけでは必要な人員の確保は難しく、女性やシニア、外国人など幅広い人材が活躍できる環境づくりが必要です。
参考:日本の将来推計人口(令和5年推計)|国立社会保障・人口問題研究所
グローバル化と外国人労働者の増加
経済のグローバル化が進み、企業が海外市場とかかわる機会や外国人労働者を雇用する機会が増えています。文化・労働観の違う人材に定着してもらうには、企業側の歩み寄りが必要です。
たとえば、言語や習慣の違いに配慮した社内制度を整えると、外国人社員が定着しやすくなるでしょう。
また、多様な視点をもつ人材の活躍は、海外の顧客ニーズへの対応力を高める効果も期待できます。
多様な働き方への変化
リモートワークの普及や共働き世帯の増加など、働き方に対する人々の考え方は多様化しています。
従来の画一的な勤務形態では、制約のある人材が能力を発揮しにくく、離職を招きかねません。たとえば、勤務時間や場所を柔軟に選べる制度があれば、育児や介護を担う社員も活躍しやすくなります。
価値観や生活背景の違いを尊重するDEIの考え方は、変化に対応できる柔軟な制度設計に役立ち、優秀な人材の確保に貢献できるでしょう。
DEIに取り組む3つのメリット
DEIの推進は、社会的な意義だけでなく、企業の経営にとってもメリットがあります。ここでは、DEIに取り組む3つのメリットを解説します。
イノベーションが生まれやすくなる
性別や年齢、国籍など異なる背景をもつ人材が意見を出し合うと、さまざまな視点が交わり、新たな発想が生まれやすいでしょう。
似た経歴や価値観の人だけで構成された組織は、考え方が偏り、市場の変化に対応しにくくなりがちです。多様なメンバーで議論を重ねれば、革新的な製品・サービスの創出や業務プロセスの効率化が期待できます。
DEIの取り組みは、組織の創造力を高め、競合他社との差別化になるでしょう。
市場競争で優位に立てるイノベーションについては、以下の関連記事をご覧ください。
従業員のエンゲージメントが向上する
一人ひとりが尊重され、公平に評価される職場では、従業員からの信頼や帰属意識が高まります。
エンゲージメントの高まりは、下記のような効果をもたらします。
- 従業員が自身の役割に誇りをもつ:主体的に業務へ取り組むため、組織全体の生産性向上が期待できる
- 心理的安全性や仕事への意欲向上:優秀な人材の離職を防ぐ定着率の向上に直結する
人材の定着・獲得の両面で効果が得られる点は、労働力不足に悩む企業にとってメリットです。
また、DEI推進により従業員の定着率や採用競争力を高めるには、制度面での裏付けも必要です。なかでも借り上げ社宅制度は、従業員の手取りを実質的に増やしながら多様な人材の定着を後押しできます。マネーフォワードのクラウド福利厚生賃貸なら、管理コストを抑えながら効率的に導入可能です。
企業価値が向上する
DEIへの取り組みは、企業の社会的な評価を高める要素になります。
DEIの推進状況を公開すれば、健全な組織運営を示す材料となり、投資家からの資金を呼び込みやすくなります。これは財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンスを重視する「ESG投資」を行う投資家から注目されやすくなるためです。
また、多様性を尊重する企業だと認知されると、顧客からの信頼獲得や採用市場での訴求力も高まり、中長期的なブランド力の向上も期待できるでしょう。
DEIに取り組む2つのデメリット
DEIの推進には多くのメリットがある一方、導入にあたって企業が直面する課題やリスクもあります。
ここでは、DEIに取り組む2つのデメリットを解説します。
導入・運用に時間とコストがかかる
DEIの推進には、相応の時間とコストが必要です。
現状の組織課題を洗い出す実態調査や、全社的な意識改革を促す継続的な社内研修の実施、柔軟な働き方を支援するシステムの整備など、短期間では達成できない施策が多く存在します。
また、評価制度の改定や新たな人事運用の開始に伴い、人事・管理部門の業務工数も増加します。
社内に摩擦や混乱が生じる場合がある
多様な価値観をもつ人材が急激に増えると、組織内に意見の対立やコミュニケーションの摩擦が生じる場合があります。
従来の組織風土に慣れた従業員にとって、急な変化は戸惑いの原因となりかねません。たとえば「なぜ特定の層ばかり優遇されるのか」といった、企業の意図とは異なった受け取り方による不満から、逆差別への懸念が噴出するリスクがあります。
十分な相互理解がないまま推進すると、組織の結束力が乱れる要因となるでしょう。
DEIの企業事例
DEIを自社で進める際は、各社の制度や目標設定を知っておくと進めやすいでしょう。
ここでは、DEIの企業事例を紹介します。
資生堂|LGBTQ+に関する「PRIDE指標」で最高評価のゴールドを受賞
資生堂は、同性パートナーを異性の配偶者と同様に処遇する制度を導入しています。具体的には、育児・介護休業や特別休暇などの福利厚生が適用対象です。
資生堂の取り組みは、職場におけるLGBTQ+への取り組みを評価する「PRIDE指標」で最高位のゴールドを通算4回受賞しました。
また、多様な人材の活躍と企業成長の関係をデータで検証する「資生堂DE&Iラボ」を設置し、女性活躍の知見を社内外へ発信しています。
参考:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン|資生堂
参考:資生堂DE&Iラボ|資生堂
パナソニックコネクト|LGBTQ+支援イベントでトップスポンサー
企業の役員に占める女性割合の向上を目指すキャンペーン「30% Club Japan」に参加し、2035年までに女性管理職比率を30%とする目標を掲げています。
また、性的指向や性自認にかかわらず、誰もが自分らしく生きられる社会を訴えるイベント「東京レインボープライド」では、2024年にトップスポンサーを務めました。
ジェンダー平等の実現に向けた具体的な目標設定と、LGBTQ+への理解促進に向けた外部発信の両面で、DEIを推進するモデルケースです。
ソニーグループ|障がい者の雇用率は法定雇用率を上回る2.75%
ソニーグループは、優秀な人材を集めるため、国籍や性別を問わない公平な採用選考を実施しています。
とくに、女性の活躍推進への具体的な取り組みで、コアタイムのないフレックスタイム制やテレワーク制度を導入し、育児・介護と仕事の両立を支える柔軟な勤務制度を設けています。女性管理職比率は9.3%(2019年)から12.8%(2024年)と、年々伸び、2024年1月には「プラチナえるぼし認定」も取得しました。
また、障がいの有無にかかわらずキャリアを築ける職場づくりにグループで取り組み、雇用率は2.75%(2025年3月時点)と法定の2.5%を上回っています。
自社でDEIを推進する際のポイント
DEIを自社で進める際には、順序立てて取り組むことが大切です。
ここでは、自社でDEIを推進する際のポイントを解説します。
現状の課題を把握し目標指標を設定する
DEIを進める前に、以下の項目を可視化し、自社の現状と課題を把握しましょう。
- 従業員の男女比率
- 年齢構成
- 中途採用者の比率
- 管理職に占める多様性の割合
- 育休取得率
可視化されたデータを参考に、自社が解決すべき経営課題に直結する項目から、優先的に目標指標を設定します。
また、形骸化を防ぐための具体的な運用ルールも必要です。たとえば、「半期ごとに従業員の女性比率を集計して役員会で共有する」「年1回の従業員意識調査(サーベイ)で心理的安全性やDEIへの理解度を数値化する」といった管理方法が挙げられます。
定期的な測定により、施策の効果を客観的に評価しましょう。
経営層が主導し、社内に浸透させる
DEIは経営層が主体となり「なぜ取り組むのか」というビジョンを社内外へ発信し続けることが重要です。
DEIは、一部の部門や従業員だけで進めても定着しません。経営層の明確な方針は、現場の反対意見や警戒感を和らげ、全社的な協力を引き出します。
同時に、経営企画や人事部門に限らず、各部門の責任者を巻き込んだ推進体制を構築しましょう。
DEIを経営戦略の優先事項として位置づけることが、社内全体への浸透につながります。
研修・対話の場を設け、心理的安全性を高める
DEIを定着させるには、社員一人ひとりが多様性を受け入れ、互いの違いを尊重できる状態を作りましょう。
具体的には、無意識の偏見に気づくための研修や、立場の異なる社員同士が意見を交わす対話の場を設けます。定期的に実施して学びを積み重ねることが大切です。
誰もが発言・行動を批判されない「心理的安全性」の高い環境が整うと、多様な意見を引き出しやすくなります。
心理的安全性についての詳しい解説は、以下の関連記事をご覧ください。
DEIに関するよくある質問
ここでは、DEIに関するよくある質問に回答します。
DEIとポリコレの違いは何ですか?
DEIとポリコレは、目的と適用範囲が以下のように異なります。
| DEI | ポリコレ |
|---|---|
| 多様な人材が、公平に活躍できる組織や社会を作るための、より広い枠組みを指す | 人種や性別などによる偏見や差別を含まない、中立的な言葉遣い・表現を指す |
DEIは組織制度の設計にかかわるのに対し、ポリコレは対外的な発信や言動における表現を指します。
反DEIとは何ですか?
反DEIとは、近年アメリカを中心に広がっている、DEIの推進方針を見直そうとする動きです。アメリカでは政治的・社会的背景から「特定の属性を優遇することは逆差別にあたる」と批判の声が上がっています。
また、アメリカでは2025年1月、トランプ大統領が連邦政府のDEIプログラムを廃止する大統領令に署名し、企業や教育機関にも影響が及んでいます。
参考:トランプ米大統領、連邦政府の多様性、公平性、包摂性(DEI)を終了する大統領令に署名(米国)|日本貿易振興機構
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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