- 更新日 : 2026年7月7日
福利厚生の費用対効果を可視化する方法は?制度の見直し方を解説
福利厚生の費用対効果は、ROIと複数指標を組み合わせることで可視化できます。
- 利用率・満足度・定着率で多角的に測定
- 直接コストに加え管理工数も含めて算出
- 半年〜1年単位でデータを追い継続改善
Q. 福利厚生のROIはどう計算する?
A.「(効果額-福利厚生コスト)÷福利厚生コスト×100」で算出し、採用費削減や離職防止効果を効果額に換算します。
福利厚生は、採用力の強化や従業員満足度の向上、離職防止につながる施策です。しかし、制度を導入しても利用率が低かったり、申請・管理に手間がかかったりすると、期待した効果が得られない可能性があります。
本記事では、企業の経営者や人事・労務担当者に向けて、福利厚生の費用対効果を可視化する指標「ROI」の考え方をまとめました。また、費用の洗い出し方、改善・見直しの判断基準まで実務視点で解説します。
目次
福利厚生の費用対効果を可視化すべき理由
福利厚生の費用対効果を可視化する目的は、制度の継続に留まりません。限られた予算の中で、本当に必要な制度に資源を集中させるためです。
使われないとコストを圧迫するため
福利厚生は、実際に使われて初めて効果を期待できます。利用率が低いまま制度を続けると、補助金やサービス利用料だけが発生し続け、採用力・定着率・従業員満足度は思うように伸びません。
たとえば、年間100万円かけた福利厚生制度を10人が使えば1人あたり10万円、100人が使えば1人あたり1万円です。同じ費用でも、利用人数が少なければ、費用対効果は下がります。
経営層の理解を得るため
福利厚生を継続・拡充するためには、経営層から理解を得られるだけの根拠が必要です。「従業員から好評です」のように抽象的な説明では、予算配分の判断材料として不十分でしょう。
経営層が注目するのは、福利厚生が経営課題に対してもたらす効果です。たとえば、離職率の低下・採用応募数の増加・欠勤日数の減少などの変化を、数値で示す必要があります。
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福利厚生の費用対効果を測る主な指標
福利厚生の効果を、利用状況のみから判断するのは適切とはいえません。満足度・採用・定着・健康面など、複数の指標を組み合わせることで、制度のメリットと課題を把握できます。
利用率
利用率は、福利厚生が従業員に届いているか、確認するための基本指標です。計算式は、以下の通りです。
利用率=利用者数÷対象者数×100
たとえば、対象者が200人、利用者が80人であれば、利用率は40%となります。
ただし、利用率だけでは、福利厚生の費用対効果は判断できません。利用率の計算結果からは、育児支援や介護支援のような対象者が限られる制度の需要を読み取れないためです。全員が使わなくても、本当に必要な従業員に届いていれば、制度の価値があります。
計算する際は、全社の利用率に加えて、部署別・年代別・雇用形態別の利用率ももとめましょう。利用の偏りを把握することで、制度が届いていない層や、ニーズが合っていない層を特定できます。
従業員満足度・エンゲージメント
従業員満足度とエンゲージメントは、福利厚生が働きやすさに与える影響を測る指標です。「現在の福利厚生に満足しているか」「今後も利用したいか」「会社への愛着に影響しているか」のような質問をアンケートで集め、集計することでもとめられます。
3〜5段階の選択式評価だけでなく、自由記述も取り入れると、数字だけでは見えない不満や要望を集めることも可能です。
アンケート結果から制度を見直す際は、費用対効果にも注目しましょう。満足度が高い制度でも、費用が過大になっているケースも考えられます。満足度は単体で判断せず、利用率や1人あたりコストと並べて総合的に評価するのが有効です。
採用・定着に関する指標
福利厚生は、採用力や定着率にも影響を及ぼします。採用・定着の効果を見る際は、以下の指標から判断しましょう。
- 求人応募数
- 内定承諾率
- 採用単価
- 離職率
- 平均勤続年数
たとえば、福利厚生を見直した後に内定承諾率が上がった場合、求職者への訴求力が高まった可能性があります。同様に、福利厚生の見直し後に離職率が下がれば、採用費や教育費の削減にも直接つながるでしょう。
ただし、採用や離職は給与水準や上司との人間関係、仕事内容にも影響されます。福利厚生の効果と断定するのは、困難です。制度を導入した前後の変化と、従業員アンケートを組み合わせて、効果を測定しましょう。
生産性・健康に関する指標
健康支援制度や休暇制度の費用対効果を評価するには、生産性・健康に関する指標が欠かせません。主な確認項目を、以下にまとめました。
- 有給休暇取得率
- 欠勤日数
- 休職者数
- 健康診断受診率
- ストレスチェックの結果
食事補助や運動支援、メンタルヘルス支援といった制度は、短期間では売上に直結しません。そのため、体調不良による欠勤の抑制や、業務パフォーマンスの低下防止に役立っているかを判断する必要があります。
生産性や健康に関する指標は、月次・四半期単位で推移を追いましょう。制度導入前のデータを記録しておくと、導入後との比較が可能です。
福利厚生にかかる費用
福利厚生の費用対効果を把握するには、外部への支払いに加えて、社内の管理工数や見えにくい間接コストも含めて考える必要があります。支払いのような直接コストだけを見ていると、全体のコストを過小評価しかねません。
直接コスト
直接コストとは、福利厚生を提供するため、外部や従業員へ実際に支払う費用のことです。たとえば、以下のようなものが該当します。
- 住宅手当
- 食事補助
- 健康診断の追加補助
- 福利厚生サービスの月額利用料
- 社員旅行費
直接コストを把握する際は、まず制度ごとに年間費用を集計しましょう。月額費用の場合は、契約人数や利用人数を確認し、年間費用に換算します。月単位で見ると金額が小さく感じられることがあるため、年間総額で把握するのが重要です。
また、このような費用を福利厚生費として処理する場合は、対象者の公平性や金額の妥当性を確認しましょう。
管理コスト
管理コストは、人事・労務・総務担当者が、制度の運用に費やす工数です。以下のような業務に要する時間と労力が含まれます。
- 申請確認
- 問い合わせ対応
- 利用実績の集計
- 請求書処理
- 社内案内の作成
たとえば、月10時間の管理作業が発生し、担当者の時給換算が3,000円の場合、月3万円・年間36万円の管理コストが生じます。外部への支払いだけを見ていると、この負担を見落としがちです。
制度を評価する際は、担当者の作業時間も記録しましょう。申請や集計に時間がかかる制度は、フォーム化やアウトソーシングによって、負担を減らせる余地があります。
社宅管理のような見えにくい負担
社宅・借り上げ社宅制度は従業員にとって魅力的な一方、運用負担が見えにくい制度の代表例です。物件探し、契約手続き、更新管理、退去時の精算、家賃変更への対応など、継続的な手間が発生します。
従業員ごとに入居条件や会社負担額が異なる場合は、公平性の説明も必要です。制度設計があいまいなまま運用を続けると、問い合わせや個別対応が増えてしまいます。
社宅制度を評価する際は、家賃補助額だけでなく、管理工数や外部委託費も含めて考えましょう。見えにくい負担まで含めることで、実態に近いコストが見えてきます。
福利厚生の費用対効果の計算方法
福利厚生の費用対効果は、費用と効果額を分けて整理し、ROI(Return On Investment:投資利益率)で数値化しましょう。使用する計算式や指標を統一しておくことで、制度間の比較もスムーズになります。
ROIの基本式
ROIは、投資した費用に対して、得られた利益・削減効果の比率を示す指標です。福利厚生の場合は、次の式を用います。
たとえば、福利厚生コストが年間200万円、採用費削減や離職防止による効果額が300万円であれば、ROIは50%です。投資した金額に対して1.5の効果が出ている計算になります。
ただし、ROIはあくまでも判断材料のひとつに過ぎません。従業員の安心感や企業文化への影響など、数値に換算しにくい効果も存在します。ROIを複数の指標とあわせて、分析を行いましょう。
効果額の考え方
効果額は、福利厚生によって削減できた費用や、向上した成果を金額に換算したものです。対象となる費用や効果の一例を、以下にまとめました。
- 採用コストの削減
- 離職防止効果
- 欠勤の減少
- 生産性向上
たとえば、離職者が前年より3人減り、1人あたりの採用・育成コストに80万円かかった場合、効果額は240万円と計算できます。また、採用単価が下がった場合は、前年との差額に採用人数を掛ければ、算出が可能です。
計算時の注意点
費用対効果を計算する際は、導入した制度と結果の因果関係を、決めつけないことが重要です。たとえば、離職率の低下は、給与改定やマネジメントの改善といったほかの要因にも影響されるため、一概に制度の効果が出たとは言い切れません。
福利厚生の効果を計算する際は、導入前後の比較だけでなく、利用者と未利用者の傾向の違いも確認しましょう。たとえば、健康支援制度であれば、利用者の欠勤日数や、満足度の変化などが指標になります。
また、短期間のデータのみを根拠に、結論を出すのもおすすめできません。採用や定着において、福利厚生の効果が出るまでには、時間差がかかります。最低でも半年から1年単位でデータを追い、継続的な改善につなげましょう。
福利厚生の費用対効果が低い原因と対策
費用対効果が低い場合は、制度の内容以外に問題があるケースも否定できません。原因を切り分けて確認することで、廃止以外の改善策が見えてきます。
従業員ニーズと合っていない
費用対効果が低くなる原因のひとつは、従業員のニーズとのミスマッチです。企業がよい制度だと考えて導入しても、従業員の年齢・家族構成・勤務形態にあっていなければ、利用率は伸びないでしょう。
たとえば、子育て世代が多い職場では育児支援や在宅勤務への補助がもとめられます。一方、独身世帯が多い職場なら、食事補助・学習支援・住宅関連の支援に関心が集まるでしょう。
対策として、導入前後にアンケートを実施し、従業員の声を聞くのが有効です。「使っている制度」「使っていない理由」「今後ほしい制度」を選択式で尋ねつつ、自由記述欄も設けましょう。
また、必要としている人が少ない制度は、全社向けから対象者を絞った制度へ切り替える選択肢もあります。
制度が十分に周知されていない
従業員が制度の存在や使い方を知らないために、利用率が下がることも珍しくありません。
福利厚生は、必要になった瞬間に、制度の存在を思い出せることが重要です。たとえば、育児・介護・引っ越し・健康不安は、従業員ごとに発生するタイミングが異なります。必要なタイミングに、必要な制度を届けるには、定期的な案内が欠かせません。
制度一覧を社内ポータルやチャットに常時掲載し、申請方法まで1ページで確認できるようまとめましょう。新入社員研修・半期ごとの人事案内・年末調整の時期など、従業員が意識を向けやすいタイミングで再周知するのが有効です。
申請や管理が面倒になっている
申請や管理が煩雑な制度は、利用されにくくなります。内容が優れていても、申請に必要な書類が多かったり、承認フローが長かったりしては、従業員が申請を後回しにしかねません。
また、担当者側の管理負担にも、考慮が必要です。たとえば、Excelなどで利用実績を手入力している場合、集計ミスや確認漏れのリスクが発生します。問い合わせ対応が増えるほど、制度の改善に充てる時間も減るでしょう。
申請のハードルを下げるには、手順を可能な限りシンプルにすることが重要です。入力項目を最小限に絞り、申請フォーム・承認フロー・利用実績の管理を一元化します。また、よくある質問も同じ画面で確認できる仕組みにすることで、問い合わせを減らせるでしょう。
福利厚生を見直す・打ち切る判断基準
福利厚生制度を見直す・打ち切る際は、利用率だけを根拠に判断すべきではありません。以下の項目もチェックし、利用率との関連性を見つけるのが大切です。
- 満足度
- 費用
- 管理工数
- 経営課題
たとえば、利用率が低く、必要性も低い制度は廃止の候補となるでしょう。一方、利用率が低くても、育児・介護・健康支援のように特定の従業員がもとめる制度は、改善候補として扱う必要があります。また、満足度が高くても、費用や管理工数が過大であれば、運用方法の見直しが必要です。
制度の廃止を決める場合は、廃止の理由・代替案・終了時期を事前に明示することがもとめられます。突然廃止すると、従業員の不利益につながりかねません。
制度を見直す際は、以下の4区分で棚卸しすることからはじめましょう。
- 継続
- 改善
- 縮小
- 廃止
検討した結果、「継続」または「改善」と判断する場合は、管理負担まで含めて制度設計を見直すことが大切です。
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制度の管理工数やコストを抑えつつ、福利厚生を充実させたい場合は、選択肢のひとつとして検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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