- 更新日 : 2026年1月28日
源泉徴収票の発行の仕方は?手順や発行しないリスクなど徹底解説
源泉徴収票の発行の仕方を正しく理解できていますか? この業務は単なる印刷作業ではなく、1年間の所得税を確定させ、従業員や国に証明する重要な手続きです。
本記事では、年末調整の計算から作成、そして交付に至るまでの具体的な3つのステップを中心に、実務で必要な情報を網羅して解説します。税務署・市区町村・本人への提出ルールや期限といった基本フローはもちろん、混同しやすい「源泉徴収簿」との違いや、支払金額などの記載項目の見方についても詳しく紹介します。
また、マイナンバーや住所記載における注意点、万が一発行しなかった場合の法的な罰則やリスクについても触れています。1月31日の期限までにミスなく確実に業務を完了させるためにご活用ください。
目次
源泉徴収票の発行の仕方とは?
源泉徴収票の発行業務は、「1年間の税額を確定し、所定のフォーマットに出力して関係各所へ渡す」という一連の流れを指します。
単にソフトから印刷するだけでなく、その前段階にある「年末調整」の精度が源泉徴収票の正しさを決定づけます。
具体的な実務は、以下の3つのステップに沿って進めます。
ステップ1:年末調整を行い税額を確定させる
まず、源泉徴収票に記載するための「正しい数字(元データ)」を作成します。
その年の最後の給与・賞与の支給額が確定した後、年収総額から各種控除(扶養控除、生命保険料控除、住宅ローン控除など)を引き、正しい所得税額(年調年税額)を算出します。
- 根拠・理由
毎月の給与から天引きされている所得税はあくまで「概算」です。年末調整で再計算を行い、過不足を精算(還付または追加徴収)した結果が、源泉徴収票の「源泉徴収税額」となります。この計算が終わらない限り、源泉徴収票は作成できません。
ステップ2:源泉徴収票を作成・出力する
確定した年収や税額等のデータを、国が定める「給与所得の源泉徴収票」の様式に反映させます。
作成・出力の方法は、会社の規模や導入システムによって主に以下の3パターンがあります。
ステップ3:従業員および提出先へ交付する
作成した源泉徴収票は、本人用として発行するほか、税務署へ提出する分も用意します。また、ほぼ同様の内容を記載した給与支払報告書は、市区町村へ提出します。
基本的には書面(紙)を直接手渡しするか郵送で交付しますが、近年はWeb明細などの「電子交付」も普及しています。
- 詳細解説:電子交付の注意点
条件を満たせばメール添付や社内システムを通じたデータ(PDF等)での提供が可能です。ただし、実施には以下のルール遵守が必須です。- 事前の承諾: 必ず従業員から「電磁的方法による提供の承諾」を得ること(専用の同意書フォーマットや、システム上での同意クリック等で可)。
- 改ざん防止: 容易にデータ改ざんができない措置や、本人確認が必要な仕組みが求められます。
- 紙の希望: 電子化に同意していても、従業員から「紙で欲しい」と請求された場合は、書面で発行する義務があります。
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源泉徴収票発行の提出先と期限は?
源泉徴収票を渡す相手は、「従業員本人」「所轄の税務署」の2か所です。一方、源泉徴収簿とほぼ同様の内容を記載した給与支払報告書は、市区町村に対してのみ提出し、従業員には交付しません。
提出期限は原則として翌年1月31日までですが、退職者については個別の期限があるため注意が必要です。
発行が必要なタイミング(通常時と退職時)
発行のタイミングは、大きく分けて以下の2パターンです。
- 年末調整終了後(通常):
12月の給与計算・年末調整が完了した後、その年の12月最後の給与支払時、もしくは翌年1月中に発行します。 - 中途退職した時:
年の途中で従業員が退職した場合、年末調整は行いませんが、退職日までの給与額を記載した源泉徴収票を発行する義務があります。この場合、「退職日から1ヶ月以内」に交付しなければなりません。
提出先1:従業員本人へ交付
給与を支払った全ての従業員(正社員、契約社員、パート、アルバイト含む)に対して発行し、交付します。
- 期限: 翌年1月31日まで(退職者は退職後1ヶ月以内)
- 目的: 従業員自身の確定申告、住宅ローン審査、家族の扶養認定、転職先の入社手続きなどの証明書類として使用されます。
- 注意点: 紛失等による再発行依頼には、回数制限なく速やかに応じる必要があります。
提出先2:税務署へ提出(法定調書)
会社を管轄する税務署へ提出します。全従業員分ではなく、「役員」や「給与総額が一定額を超える従業員」などの条件に該当する人のみ提出義務があります。
- 期限: 翌年1月31日まで
- 主な提出対象者:
- 役員(その年の給与等の支払金額が150万円を超える人)
- 弁護士や税理士等(その年の給与等の支払金額が250万円を超える人)
- 上記以外については、その年の給与等の支払金額が500万円を超える人
そもそも源泉徴収票とは?
源泉徴収票とは、1年間(1月1日〜12月31日)の給与実績と、確定した所得税額を証明する公的な書類です。
「給与明細の12ヶ月分の合計」とは異なり、年末調整を経て税金が確定した証明書である点に大きな意味があります。
給与額と納税額を証明する2つの機能
源泉徴収票は、公的機関や金融機関に対し、以下の事実を証明するために使用されます。これが発行必須である理由です。
- 所得の証明(収入証明):
「この人は年間これくらい稼ぐ力がある」という証明です。住宅ローンの審査、クレジットカード作成、賃貸契約、児童手当の申請、保育園の入園申請などで求められます。 - 納税の証明(税務証明):
「この人は所得税をこれだけ納めた(または納める必要がない)」という証明です。自身の医療費控除などの確定申告や、転職先での年末調整で使用します。
源泉徴収「票」と「簿」の違い
実務で初心者が最も間違いやすいのが、源泉徴収「簿(ぼ)」との混同です。名前は似ていますが、役割と提出義務が明確に異なります。
| 項目 | 源泉徴収票(ひょう) | 源泉徴収簿(ぼ) |
|---|---|---|
| 役割 | 対外的な「証明書」 | 社内計算用の「帳簿・メモ」 |
| 作成根拠 | 所得税法 | 法的義務なし(便宜上の作成) |
| 提出義務 | あり(本人・税務署) | なし(あくまで社内用) |
| 入手方法 | 会社が発行して渡す | 通常、従業員には渡さない |
実務においては、「源泉徴収簿」で毎月の計算や扶養親族の異動を記録・集計し、その結果を清書して提出用の「源泉徴収票」を作成する、とイメージしてください。
源泉徴収票の主な記載項目と見方
源泉徴収票には多くの数字が並んでいますが、その構造は「収入から経費や控除を引いて、税金を算出する計算式」そのものです。
事務担当者が特に確認すべき、4つの重要ブロックを解説します。
1. 支払金額(年収・額面)
その年(1月〜12月)に会社から本人へ支払われた給与・賞与などの総支給額です。
ここには通勤手当などの「非課税手当」は含まれません。一般的に「年収はいくらですか?」と聞かれた際に答える金額は、手取り額ではなく、この「支払金額」を指します。
2. 給与所得控除後の金額(所得金額)
「①支払金額」から、会社員における経費にあたる「給与所得控除」を差し引いた金額です。
自営業者でいう「売上 - 経費 = 利益」の「利益」に相当する部分であり、税法上は「給与所得」と呼ばれます。所得税の税率を掛けるための計算ベースとなる重要な数字です。
3. 所得控除の額の合計額(個人の事情への配慮)
個人の事情に応じて所得から差し引ける金額の合計です。
「社会保険料控除」「生命保険料控除」「地震保険料控除」「配偶者控除」「扶養控除」「基礎控除」などが含まれます。
この金額が大きければ大きいほど、課税される対象額(課税所得)が減るため、結果として税金が安くなります。年末調整で従業員から申告書(マル扶やマル保)を集めるのは、この金額を正しく算出するためです。
4. 源泉徴収税額(1年間の所得税)
最終的に確定した、その人がその年に納めるべき「所得税の総額」です。
毎月の給与から天引きされていた概算の税額合計に対し、年末調整によって過不足を精算したあとの「正しい年税額」がここに記載されます。
※ここが0円になっている場合は、年収が低く税金がかからなかったか、住宅ローン控除等で全額還付されたケースなどが考えられます。
源泉徴収票を発行する際の5つの注意点
作成時の主なリスクは、「マイナンバーの記載ミス」と「住所の記載誤り」です。
事務担当者が特に注意すべき5つのルールを解説します。
1. 従業員へ渡す「控え」にはマイナンバーを記載してはいけない
源泉徴収票へのマイナンバー(個人番号)記載は、提出先によってルールが厳格に異なります。
- 税務署提出用: 記載が必須
- 従業員本人への交付用: 記載不可
本人用の控えにマイナンバーを載せてしまうとマイナンバーの流出などにつながってしまうため、記載しないようにしましょう。
給与計算ソフトから出力する際は、必ず「本人交付用(マイナンバー非表示)」の設定になっているか、マスキングされているかを確認してください。
2. 住所欄は作成日の現況の住所を記載する
原則として源泉徴収票を作成する日の住所を記載することとなっています。一方、給与支払報告書については、源泉徴収票を提出する年の1月1日現在の住所を記載する必要があります。そのため、複写式の給与支払報告書を使用して源泉徴収票を作成する場合、提出する年の1月1日現在の住所を記載しても差し支えありません。
3. パート・アルバイト・退職者を含む「全員」に発行義務がある
「正社員だけ」「扶養内で働いているから不要」という認識は間違いです。
金額の多寡や雇用形態に関わらず、給与を支払ったすべての人(退職者含む)に発行義務があります。学生アルバイトであっても、親の扶養認定の確認や、自身の勤労学生控除の申告で必要になるため、必ず全員分を作成・交付しましょう。
4. 会社の「社印(角印)」は押さなくても有効
現在、法令上は源泉徴収票への押印義務はありません。
社判や代表者印がなくても、公的な証明書類として有効に機能します。ただし、従業員への信頼感や、提出先金融機関の慣例等を考慮し、社内ルールとして押印(または電子印影の表示)を続けることは問題ありません。
5. コンビニでの発行はできない
源泉徴収票は、住民票や印鑑証明のように「マイナンバーカードを使ってコンビニのマルチコピー機で発行」することは原則できません。
マイナポータル連携等でデータ閲覧ができるケースは増えていますが、書面としての源泉徴収票は「会社(給与支払者)から交付されるもの」しか存在しません。その点を従業員に周知しておくと、「コンビニで取れると思って紛失してしまった」というトラブルを減らせます。
源泉徴収票を発行しないとどうなる?
源泉徴収票の交付は、所得税法第226条で定められた事業者の義務です。
「忙しいから」「退職者だから連絡したくない」と発行を怠ると、法律違反になるだけでなく、税務署の調査対象になるリスクがあります。
源泉徴収票を発行しない場合の法的罰則
正当な理由なく発行しなかった場合、または内容を偽って作成(虚偽記載)した場合、所得税法第242条の規定により「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」が科される可能性があります。
決して「事務作業の遅れ」で済まされるものではありません。
税務署から「源泉徴収票不交付の届出」が出されるリスク
会社が発行に応じない場合、従業員は税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。
これが提出されると、税務署から会社に対して事実確認の連絡や、強力な行政指導(税務調査のきっかけになることも)が入ります。行政指導を受けることは、会社の社会的信用を大きく損なう結果になります。
従業員の生活への実害
発行が遅れると、従業員は以下の手続きができなくなります。
- 確定申告による税金の還付(払いすぎた税金が戻らない)
- 住宅ローンの本審査(家が買えない)
- 保育園の入園申請(子供を預けられない)
- 失業保険の手続き(給与額の証明が必要な場合がある)
これらは従業員のライフプランに直結するため、遅延は労使トラブルの火種となります。
源泉徴収票の発行の仕方を理解し、1月31日までに確実な処理を
源泉徴収票の発行業務は、1年間の給与計算と年末調整の総仕上げとなる重要な仕事です。 単なる事務作業ではなく、従業員の生活(住宅ローン審査や確定申告など)に直結する公的な証明書であることを忘れてはいけません。
本記事のポイントを振り返ると、発行対象はアルバイトや退職者を含む「全員(フリーランスを除く)」であり、期限は原則「翌年1月31日まで(退職者は1ヶ月以内)」と決まっています。 特に注意すべきは、本人への交付用には「マイナンバー」を絶対に記載しないこと、そしてコンビニでの発行はできないため必ず会社から交付する必要があるという点です。
「発行しない」「内容が間違っている」といった不備は、会社の社会的信用を損なうだけでなく、法的な罰則対象にもなります。 正しい発行手順とルールを把握し、余裕を持ったスケジュールで準備を進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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