- 更新日 : 2025年12月5日
ウェルビーイングの使い方!意味から企業・個人での実践方法まで徹底解説
働き方や価値観の多様化が進む中で、「ウェルビーイング(Well-being)」という言葉を耳にする場面が増えてきました。
しかし、「結局どういう意味なのか?」「健康とは何が違うのか?」「企業や個人ではどう実践できるのか?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
ウェルビーイングは、単に心身が健康な状態だけではなく、仕事・経済面・人間関係・地域社会とのつながりなど、人生全体が満たされている状態のことです。組織においては従業員の生産性向上・離職防止・エンゲージメント向上につながり、個人にとっては「自分らしく豊かに生きるための軸」として注目されています。
本記事では、ウェルビーイングの基本的な意味から、構成要素、企業と個人それぞれにおける具体的な実践方法、導入時の注意点までわかりやすく解説します。
働き方・生き方をより良い方向へ整えたい方にとって、今後の行動に直結する内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ウェルビーイングとは?
ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に満たされた状態を指し、単なる「健康」や「幸福」を超えた包括的な概念です。
世界保健機関(WHO)憲章でも「健康とは完全な身体的・精神的・社会的福祉の状態」と定義されており、より広い視点での健康を示しています。この考え方は、一時的な幸せではなく、持続的でバランスの取れた幸福を目指す点が特徴です。
企業においては、従業員が心身ともに健康で、生きがいを持って働ける状態を指し、働きやすさや組織の活力向上につながります。また、経営や個人の生活においても「ウェルビーイング経営」や「ウェルビーイングな暮らし」といった形で広がりを見せています。
ウェルビーイングが注目されている理由
ウェルビーイングが近年注目される背景には、働き方改革やダイバーシティ推進、SDGs、人的資本経営といった社会的なトレンドの変化に加え、コロナ禍をきっかけとした人々の価値観の変化があります。
ここでは、こうした社会的背景とトレンド、そしてパンデミック以降の価値観の変化という2つの観点から、ウェルビーイングが注目される理由を整理して紹介します。
社会的背景とトレンド
働き方改革やダイバーシティ推進の広がりにより、多様な働き方や個人の幸福が重視されるようになりました。さらに、SDGsの「すべての人に健康と福祉を」に関連し、企業が社会的責任の一環としてウェルビーイング施策を強化しています。
加えて、人的資本経営の台頭により、従業員の幸福が企業の持続可能性に直結する時代へと変化しました。健康経営やエンゲージメント向上など、組織文化の変革が求められる流れの中で、ウェルビーイングは注目度を高めています。
パンデミック以降の価値観の変化
コロナ禍をきっかけにリモートワークや孤立といった精神的課題が顕在化し、多くの人が「働くことの意味」や「生きる目的」を見直すようになりました。その結果、健康・安全・つながり・心の安定など、生活の質を重視する傾向が強まりました。
こうした背景から、個人の幸福を基盤にした企業戦略が重視されるようになり、ウェルビーイングを組織文化に取り入れる企業が急増しています。
ウェルビーイングを構成する5つの要素
ウェルビーイングは、単に健康や幸福を指すだけではなく、人生を多面的に満たすための総合的な概念として捉えられています。代表的な枠組みとしてPERMAモデルが知られていますが、本記事ではビジネスシーンでの実践に役立つよう、ギャラップ社が提唱する5つの要素に沿って解説します。
以下では、各要素とそのポイントをわかりやすく紹介します。
1. キャリアウェルビーイング(仕事の充実度)
キャリアウェルビーイングは、日々の仕事に満足し、自分の働きが社会に役立っていると実感できる状態のことです。
働く目的ややりがいを明確に持つことは、長期的な幸福感につながります。また、ワークライフバランスが取れた働き方が求められるようになり、公平な評価制度やキャリア支援の充実がキャリア面の幸福を支える重要な要素となっています。
2. ソーシャルウェルビーイング(人間関係の幸福)
ソーシャルウェルビーイングは、信頼できる人間関係を築けることで精神的な安定を得られる状態のことです。
職場や家庭でのコミュニケーションの質は幸福度に直結し、孤立を防ぐためにも共感的な関係を保つことが欠かせません。特にリモートワークの普及後は、物理的な距離が生まれる中で「つながりを維持する工夫」が必要とされています。
3. フィナンシャルウェルビーイング(経済的安定)
フィナンシャルウェルビーイングは、収入の安定や将来に対する金銭的不安を解消することで安心感を得られる状態です。
経済的自立や納得できる報酬体系が幸福感の大きな支えとなります。また、お金の使い方そのものがウェルビーイングに影響を与えるとされており、公平な待遇や働きに見合った報酬が欠かせない要素です。
4. フィジカルウェルビーイング(心身の健康)
フィジカルウェルビーイングは、睡眠・運動・食事・メンタルケアといった基本的な健康習慣を整えている状態です。
身体的な健康と精神的な健康は相互に関係し合い、どちらかが欠けると全体のバランスが崩れてしまいます。ストレスマネジメントや十分な休息の確保は不可欠であり、健康状態は仕事のパフォーマンスにも大きく影響します。
5. コミュニティウェルビーイング(社会・地域とのつながり)
コミュニティウェルビーイングは、地域や周囲の人々とのつながりを持つことで安心感や意義の感覚を得られている状態です。
職場外での活動やボランティアへの参加は、自己効力感や充実感を高める要因となります。社会的つながりは精神的な健康の維持にも寄与し、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念とも通じる重要な要素です。
【企業向け】ウェルビーイングを高める方法
企業がウェルビーイングを高めるためには、まず導入の流れを整理し、次に社内での意識共有を行い、そのうえで具体的な施策へと落とし込んでいくことが重要です。
この3つのステップを踏むことで、単発的なイベントではなく、組織に根付く取り組みとして推進しやすくなります。
以下では、企業が取り組むべきポイントを順に解説します。
ウェルビーイング導入の流れを確認する
ウェルビーイングの導入は、現状把握と課題分析から始めましょう。従業員アンケートやストレスチェックを活用し、組織が抱える課題を可視化します。
次に、明確になった課題に基づき、改善に向けた目標を設定しましょう。高ストレス者の割合削減やエンゲージメント向上など、具体的な指標を設けることで取り組みの方向性が定まります。
最後に、目標に向けた施策計画を立案し、関係部署や経営層から理解を得ながら実行に移しましょう。取り組みの実施後は、定期的に効果測定とフィードバックを行い、改善を繰り返すことで施策の精度を高めます。
社内での意識共有を行う
ウェルビーイングを浸透させるためには、社内での意識共有が欠かせません。経営層が率先して重要性を発信し、全社員に理念を伝えることが重要です。
また、社内SNSやニュースレターを活用し、定期的に情報や成功事例を共有します。従業員の声を拾い上げながらボトムアップで取り組みを広げることで、現場に根付いた活動になります。
さらに、多様性を尊重し、価値観やライフステージに合わせた施策を設計することで、全従業員が参加しやすい環境を整えましょう。
具体的な施策を実施する
企業が取り組む具体的な施策には、働き方や健康支援、キャリア形成など幅広い領域があります。
- 柔軟な働き方:リモートワークやフレックス制度、休暇促進などの導入
- 健康支援:運動・食事イベント、健康診断やカウンセリングの充実
- キャリア支援:研修制度、資格取得支援、社内公募制度の活用
- コミュニケーション活性化:1on1ミーティング、メンター制度、社内イベント開催
これらを組み合わせることで、従業員が心身ともに働きやすい環境を整えられます。
【個人向け】ウェルビーイングを高める方法
個人がウェルビーイングを高めるためには、心身の健康を保つ生活習慣を整えることに加え、良好な人間関係を築き、自己成長や学びを通じて「意味」や「達成感」を感じること、さらにマインドフルネスや感情コントロールの習慣を取り入れることが大切です。
こうしたポイントを意識しながら、無理なく続けられる方法を取り入れることで、心身の健康と幸福感を持続させやすくなります。
心身の健康を保つ生活習慣を身につける
バランスの取れた食事や適度な運動、十分な睡眠を意識することで、心と身体の状態を整えられます。睡眠前のスマホ使用やカフェイン摂取を控えるなど、休息の質を高める工夫も効果的です。
さらに、定期的な健康チェックで状態を可視化し、ウェアラブルデバイスや健康管理アプリを活用することで習慣化を支援できます。自分に合った範囲で続けられる健康習慣を構築することが大切です。
良好な人間関係を築く
良好な人間関係はウェルビーイングに大きく影響します。感謝を伝え合い、共感的なコミュニケーションを行うことで、安心感と信頼を深めましょう。
また、信頼できる人との時間を増やしたり、職場や家庭でオープンな対話を促したりすることで孤立を防止できます。ネガティブな関係性とは適度な距離を保ち、心の安定を優先します。
自己成長や学びで「意味・達成感」を感じる
新しいスキルや知識を学ぶことで、キャリアや人生に目的意識を持てます。小さな目標の設定と達成を積み重ねることで、自己効力感を高めましょう。
趣味や創造的な活動に取り組むことで「自分らしさ」を再確認でき、充実感を得られます。さらに、仕事を通じた社会貢献や他者支援もウェルビーイング向上につながります。
マインドフルネスや感情コントロールを取り入れる
瞑想やヨガ、深呼吸を習慣化すると、心の静けさを取り戻しやすくなります。感情を否定せずに観察し、受容する姿勢を持つことでストレスへの耐性を高めましょう。
日記や感謝リストでポジティブ感情を意識的に増やすほか、自然とのふれあい・デジタルデトックスもストレス軽減に役立ちます。感情コントロール力を高めることで、幸福感の持続につながります。
ウェルビーイングを実践するときの注意点
企業がウェルビーイングを推進する際には、短期的な成果を求めすぎずに長期視点で取り組むこと、多様性を尊重して従業員への押し付けにならないよう配慮すること、経営層がしっかりとコミットすること、そして継続的な評価とフィードバックによって施策を形骸化させないことが重要です。
以下では、こうした4つの注意点について、実践時に意識すべきポイントを詳しく解説します。
短期的な成果を求めすぎない
ウェルビーイング向上は長期的な取り組みであり、短期間で大きな成果を期待すると形骸化しやすくなります。企業文化や従業員の行動変容には時間がかかるため、継続的な実践が必要です。
小さな変化や意識の高まりを評価し、進捗を可視化する工夫が求められます。成果よりもプロセスを重視し、定期的なフィードバックを行うことで改善を進めましょう。成功事例を共有することで社内のモチベーション維持につながります。
多様性を尊重し、押し付けを行わない
ウェルビーイングの感じ方は従業員によって異なり、画一的な施策では逆効果につながる可能性があります。
年齢や性別、ライフステージなど多様な背景を踏まえた柔軟なアプローチが必要です。複数の選択肢を用意し、従業員が自分に合った方法を選べる仕組みを整えることで、取り組みが前向きに受け止められます。
また、個人の声を継続的に収集し、ニーズを施策へ反映させることが重要です。企業側の善意が押し付けにならないような配慮が欠かせません。
経営層のコミットメントが欠かせない
経営層が率先してウェルビーイングの価値を発信することで、従業員の理解が深まり、全社的な取り組みへと広がりやすくなります。トップメッセージや行動で姿勢を示すことにより、施策の定着が促されます。
一方で、経営層の姿勢が曖昧だと、従業員は一時的な流行として捉え、施策が浸透しにくいです。定期的な進捗確認や成果共有を行うことで、取り組みの信頼性と継続性が高まります。
形骸化させないための継続とフィードバックを行う
施策を開始した後も、効果測定を継続し、定期的に評価と改善を繰り返す姿勢が求められます。従業員アンケートやパルスサーベイを活用して現場の声を収集し、柔軟にアップデートすることが効果的です。
また、成果を社内報や社内SNSで共有し、取り組みを「見える化」することで関心を維持できます。形だけの制度にしないために、実践の意義を定期的に見直す仕組みが必要です。
成功事例や改善点を共有し、組織全体で学び合う文化を形成することで、継続的な推進につなげましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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