高齢者雇用における契約更新の実態調査

更新日:2026年5月18日

1. 調査概要

本レポートは、定年退職後の再雇用者・有期雇用労働者の契約更新実務に携わる人事担当者・経営層627名を対象に実施した調査結果をまとめたものです。契約更新の判定基準、更新上限の伝達方法、トラブル防止策の実態を明らかにし、自社の制度設計・運用改善にお役立ていただけます。

  • 調査時期:2026年3月
  • 調査方法:Fastaskによるアンケート調査
  • 調査対象:定年退職後の再雇用者・有期雇用労働者の契約更新事務に関与する人事実務担当者・経営層
  • 有効回答数:627名(全回答者833名のうち、契約更新事務に「現在携わっている」54.0%+「過去に携わったことがある」21.2%)
  • 回答者属性:従業員10名以下~1,001名以上まで幅広い企業規模を網羅

回答者の勤務先従業員規模

  • 1,001名以上:24.6%
  • 101名~300名:17.4%
  • 11名~50名:16.9%
  • 51名~100名:16.1%
  • 501名~1,000名:9.9%
  • 301名~500名:9.6%
  • 10名以下:5.3%

2. 調査結果サマリー

4つのポイント

  1. 契約更新の判定基準は「評価ベース」と「自動更新」で二分
  2. 評価の要は「能力」よりも「勤怠・態度」と「健康」
  3. 更新上限の伝え方:約4割が「書面のみ」で済ませている
  4. トラブル防止策:現場の管理職支援は15.3%と手薄

3. 調査結果の詳細

3-1. 契約更新の判定基準の運用方針

65歳までの再雇用制度において、契約更新の判定基準をどのように運用しているかを尋ねました。

  • 一定の評価基準を設け、その基準に基づき更新の可否を判断している:45.8%
  • 基本的に希望者全員を自動更新とする方針である:38.1%
  • 基準はあるが、実際には本人との個別相談で柔軟に決定している:12.4%
  • 明文化された共通の更新基準は特に設けていない:3.0%

「評価基準に基づき判断」する企業が最多の45.8%を占める一方、「希望者全員を自動更新」とする企業も38.1%に上り、運用方針が大きく二分されている実態が明らかになりました。自動更新方針の企業では、シニア層の戦力化や適正評価に課題を感じているケースも少なくありません。

3-2. 更新可否の判断で重視する項目(複数回答)

更新可否を判断する際に、実務上どのような項目を重視しているかを尋ねました。

  • 出勤率などの勤怠状況や勤務態度:44.5%
  • 担当業務における遂行能力や成果:39.9%
  • 該当する業務(ポスト)の継続性:34.4%
  • 本人の健康状態や安全確保の可否:31.7%
  • 会社の経営環境や人員構成の状況:31.6%
  • 周囲との協調性やコミュニケーション:14.8%
  • 職務内容と給与水準のバランス:8.3%

最も重視されているのは「勤怠状況や勤務態度」(44.5%)であり、「業務遂行能力や成果」(39.9%)を上回りました。「健康状態や安全確保の可否」(31.7%)も上位に位置しており、シニア層特有の評価軸が存在しています。成果だけでなく、日々の出勤状況や職場での態度が契約更新の重要な判断材料となっている点は注目に値します。

3-3. 更新上限・通算期間の制限に関する伝達方法

契約期間の通算上限や更新回数の上限を設けている場合、本人へどのように伝えているかを尋ねました。

  • 書面の交付とともに、面談等の口頭で個別に背景を説明している:45.0%
  • 基本的に雇用契約書や通知書などの書面提示のみで行っている:39.7%
  • 制度上、更新上限や通算期間の制限自体を設けていない:9.3%
  • 現時点では、特に説明の機会やルール化は行っていない:5.3%

「書面+口頭で説明」が45.0%と最多ですが、約4割(39.7%)の企業は書面提示のみで済ませている実態が判明しました。書面のみの伝達は、本人の十分な理解を得られないまま契約が進行し、更新拒否時に「聞いていない」というトラブルに発展するリスクがあります。

3-4. トラブル防止に向けた取り組み(複数回答)

現場での混乱や本人との認識齟齬を防ぐために、どのような取り組みを行っているかを尋ねました。

  • 更新基準を数値化・可視化し、本人へのフィードバックを行う:46.3%
  • 契約満了の一定期間前までに、更新の有無を本人へ通知する:43.9%
  • 契約締結の段階で、将来的な更新上限について合意を得る:37.2%
  • 専門家(弁護士・社労士等)による契約文言の確認を行う:26.8%
  • 現場の管理職向けに、判定や面談の進め方の手引を作成する:15.3%
  • 定年時や更新時に、その後の雇用終了の条件を改めて共有する:13.2%

「基準の数値化・可視化+フィードバック」(46.3%)や「事前通知」(43.9%)への取り組みは比較的進んでいます。しかし、実際に再雇用者と面談を行う現場管理職向けの手引き整備はわずか15.3%にとどまっており、評価・面談の現場に大きなギャップが存在しています。

4. 調査結果から見える課題と対策

本調査の結果から、高齢者雇用の契約更新において多くの企業が直面する3つの課題と、その対策の方向性が浮かび上がりました。

課題①:「自動更新」に頼る運用の限界

約4割の企業が「希望者全員を自動更新」としていますが、この方針ではパフォーマンスに課題のある再雇用者への対応が後手に回り、職場全体のモチベーション低下や人件費の最適化が困難になります。

対策の方向性:自動更新であっても、定期的な評価面談と基準の明文化を組み合わせることで、更新の合理性を担保しつつ、シニア層のモチベーション維持・戦力化につなげることが重要です。

課題②:書面のみの伝達による「言った・言わない」リスク

書面提示のみで更新上限を伝えている企業が約4割存在します。口頭での説明がないまま更新拒否を行った場合、不当雇止めとして訴訟・労働審判に発展するリスクが高まります。

対策の方向性:契約締結時から将来的な更新上限について口頭で丁寧に説明し、合意内容を記録として残すプロセスを整備しましょう。「いつ・誰が・何を説明したか」を証跡として残すことが、万一のトラブル時に企業を守ります。

課題③:現場管理職への支援不足

再雇用者の評価・面談を実際に行うのは現場の管理職ですが、判定や面談の進め方に関する手引きを整備している企業はわずか15.3%です。属人的な対応に依存すると、評価のブレや不適切な発言によるトラブルが生じるリスクがあります。

対策の方向性:管理職向けに「評価シート」「面談マニュアル」「NGワード集」などの実務ツールを整備し、誰が面談しても一定の品質を担保できる仕組みを構築しましょう。専門家(弁護士・社労士)の監修を受けることで、法的リスクもカバーできます。

5. まとめ

本調査により、高齢者雇用の契約更新において多くの企業が「曖昧な基準」「不十分な伝達」「現場支援の不足」という3つの課題を抱えていることが明らかになりました。

  • 評価基準の曖昧さ:約4割が自動更新、明確な基準なし → シニア層のモチベーション低下・人件費の非効率化
  • 更新上限の伝達不足:約4割が書面提示のみ → 「聞いていない」トラブル・不当雇止め訴訟リスク
  • 現場管理職の支援不足:手引き整備はわずか15.3% → 評価のブレ・面談時の不適切対応

これらの課題を解消するためには、評価基準の明文化・可視化、面談プロセスの標準化、専門家による契約文言のチェックを三位一体で進めることが重要です。シニア層を「コスト」ではなく「戦力」として活かす制度設計が、企業の持続的な成長につながります。

出典:マネーフォワード クラウド、高齢者雇用における契約更新の実態調査(回答者:833名(有効回答:契約更新事務に関与する627名)、集計期間:2026年3月実施)