- 更新日 : 2025年1月31日
請求書に印鑑は必要?請求書の役割や押印の種類、脱ハンコについて解説
業務を行う上で欠かせない請求書に、押印は必要なのでしょうか。この記事では請求書における印鑑の必要性の可否、そして押印するのであればどのような印鑑を選べばいいのかをご紹介します。個人事業主の方が押印する場合の印鑑の選び方と押印の仕方、そして電子請求書のケースについても解説しますので、ぜひご覧ください。
目次
請求書には代金回収の役割がある
請求書は、基本的に商品やサービスの代金回収を目的として発行されます。
請求書には取引内容や取引日、取引金額などが記載されており、取引が公正に行われたのかという過去の取引状況を確認することもできるため、場合によっては取引の証拠として扱われることもあるのです。
請求書には印鑑がなくてもいい
請求書への印鑑の押印は必須ではありません。請求書に印鑑を押すことを義務とする法律は存在せず、発行者が印鑑を押していない請求書での支払い請求も可能です。
しかし日本では、請求書へ印鑑を押すことは一般的な商習慣となっており、押印がなければ受け付けないという企業も少なからずあるので、取引をスムーズに行うためにも、請求書への押印は忘れないようにしましょう。
請求書にあえて印鑑を押す意味は?
多くの場合、印鑑が押された請求書が使われます。それは、余計なトラブルを避けるためです。会社の印鑑を押すことで、その会社が請求書を発行したことが推定されます。そのため、印鑑のない請求書よりも信頼度が増します。
あくまで推定ですので印鑑が偽造された場合は無効となりますが、印鑑が押されている請求書を偽造した場合は、有印私文書偽造で3ヶ月以上5年以下の懲役となります。他方、印鑑のない請求書を偽造した場合は、無印私文書偽造で1年以下の懲役または10万円以下の罰金となります。印鑑が押されている請求書の偽造の方が厳しく罰せられるため、印鑑を用いた不正は行われにくく、信頼度が増すといえます。
また、請求書への押印は長く行われている慣習のため、会社によっては印鑑の押印がない請求書は受け付けないなどの規定が設定されている場合もあります。
よって法律上の義務ではありませんが、トラブル防止や印鑑がない請求書を受け付けない会社への対応として、請求書に押印を行うことがあります。
請求書に押印する場合はどの種類の印鑑が適切?
会社には実印・銀行印・角印の3種類があり、それぞれ異なる用途を想定した上で用意されています。請求書に印鑑を押印することは法律で定められていないため、どの印鑑でもよいのですが、押印の機会が多い書類に使用する印鑑は一般的に「角印」です。
実印とは
印鑑登録した印鑑を実印と呼ぶのが一般的です。この実印は、会社の登記時以外では、代表取締役の変更や不動産売買、公的な書類など非常に重要な場面でしか使用されることはありません。
形が指定されているわけではありませんが丸型であることが多く、丸印や代表者印と呼ばれることもあります。
どの会社においても最も重要な印鑑であり、普段の請求書作成などの際に使用するのには適していません。
銀行印とは
銀行印とは、文字通り、銀行などの金融機関で口座を開設する際に届け出る印鑑です。金銭の出納や、手形・小切手の振り出しなどに使用されます。金融取引に関係した場合で使用される印鑑であるため、請求書作成などの日常の書類に使用するのには適していません。
なお、実印をそのまま銀行印とすることもできますが、摩耗が早くなる、紛失のリスクが大きくなるという理由から、一般的に、会社では実印と銀行印は分けて用意されています。
角印とは
角印とは、実印や銀行印以外の会社の印鑑で、四角のものが多いことから、そのように呼ばれるものです。見積書や請求書、領収書といった通常業務では基本的に、この「会社の認印」とも言われる角印が使われています。対外的に発行する書類で発行元が自社であるということを明らかにするためにも使われるため、角印は社印とも言われることもあります。
個人事業主・フリーランスに必要な印鑑
法人ではなく、個人事業主やフリーランスの場合、印鑑は認印があれば十分だと考える方もいるかもしれません。しかしながら、認印はあくまでプライベート用の印鑑であり、ビジネス用に別途、印鑑は持っていたほうがよいでしょう。
具体的には、個人事業で屋号がある場合は、事業用の丸印、角印、銀行印の3つになります。
丸印は、法人の場合と同様に内側の円内に代表者名、外側の円内に屋号を刻印した二重書きの印鑑がよく使用されます。個人事業でも官公庁などの業務を受託し、正式な契約書を交わすような場合、信頼度という点からは重要な意味があります。
角印は、領収書や請求書などの帳票に押印する場合に必要になります。
銀行印は、法人・個人事業を問わず、ビジネスで金融機関の預貯金口座の開設や金銭の出納があるため、不可欠な印鑑です。屋号がある場合には法人と同様にこちらも二重書きの印鑑が使用されます。
屋号がない個人事業やフリーランスの場合は、以上の3つの印鑑のうち、角印は作る必要はありません。事業用の丸印と銀行印の2つで十分でしょう。いずれも個人名が刻印されたものです。
請求書に押印する際の注意点
前述の説明の通り、法人の場合、請求書には角印が使われます。押印の際は以下の点に気をつけましょう。
印鑑を押印する位置
請求書に印鑑を押印する際、まずは押印欄があるかどうかを確認しましょう。押印欄が設けられた書式の請求書の場合は、その押印欄に押印します。
押印欄がない場合は、住所や社名など会社情報の右側に印刷された文字と少しだけ重なるようにして押しましょう。これは、印刷された文字と印影が重なることで、印影のコピーや請求書の偽造防止に繋がる効果があるからです。
印鑑の押印の仕方
印鑑がかすれたり、ズレたりしないように押印することも重要です。見栄えの問題だけでなく、問題が起こった際に証拠資料として使えなくなる可能性があるためです。
頻繁に作成する請求書の印鑑について、その必要性や、使用する印鑑の種類などについてまとめました。法律上、請求書に押印は不要ですが、トラブルを避けるためにも押すようにしましょう。その際、正しい印鑑を正しい位置に押印できるように、適切な方法を確認しましょう。
請求書に訂正印は使用しない
請求書で書き損じが発生してしまった場合、基本的には訂正印は使わず、請求書を再発行しましょう。
これは、請求書は金銭支払いに関係する書類であり、このような重要な書類の書き損じは会社の信用にも関わってくるためです。
請求書の再発行が難しい状況で、書き損じの訂正の必要が出てきてしまった場合は、通常の訂正と同じように、訂正箇所に二重線を引いた上で訂正印を押して、修正するようにしましょう。
請求書における脱ハンコの取り組み
契約書や請求書、稟議書、行政サービスなどで必要とされる押印をなくす「脱ハンコ」の動きが進みつつあります。
脱ハンコには、どのようなメリットがあるのでしょうか。そのデメリットとともに見ていきましょう。
脱ハンコのメリット
押印作業には、朱肉を用意し、プリントアウトした用紙にインクを付けた印鑑を押印する一連の工程があります。書類が1枚であればそれほどの作業時間は要しませんが、実際の事務処理の現場では、大量の書類に押印が必要な場合もあります。
脱ハンコによって押印が不要となれば、これらの工程がなくなり、大きな業務効率化につながります。生産性の向上も期待できるでしょう。
また、印鑑は紛失する可能性があります。現状では印鑑はさまざまな場面で重要な役割を担っており、他人に悪用される可能性も否定できません。ハンコが不要であれば、こうしたリスクは排除できます。
脱ハンコは、柔軟な働き方を推進する動きにも適合しています。押印は印鑑の持ち主だけが行うことが基本です。新型コロナの影響でテレワークや在宅勤務を導入する企業が増えていますが、押印するためだけに出社しなければならないケースもあります。
脱ハンコは、柔軟な働き方のボトルネックの解消にもつながります。
脱ハンコのデメリット
ハンコ文化が浸透している日本では、決裁や承認にハンコ以外の方法が考えられない、という方も少なくないでしょう。業務フローを変更することは大変な労力を伴うケースもあります。
こうした傾向は、電子印鑑を含めてIT化が遅れている業界や組織では、より顕著と言えるでしょう。
電子印鑑の導入で請求書を業務効率化する
2001年に「電子署名法」が施行されました。この法律では、電子署名に手書きによる署名や印鑑の押印と同じ法的効力を認めています。
これによって、印影画像をデータ化した電子印鑑をWordやPDFなどの電子文書に押印する企業が増えてきました。
電子印鑑を導入する具体的なメリットについてみていきましょう。
業務効率の向上
まず、業務効率を向上することができます。旧来の方式では、作成した文書をプリントアウトし、朱肉を使用して印鑑を押印します。この作業工程だけでも一定の時間がかかります。
電子印鑑は、データ化した電子印鑑を押印するため、前述の脱ハンコとはまったく同じとは言えませんが、朱肉と用紙を使用する工程がないため、脱ハンコと同様に業務効率が向上するというわけです。
ペーパーレス化によるコスト削減
電子印鑑の脱ハンコと最も大きな違いは、請求書などの用紙のプリントアウトが不要なことです。ペーパーレスであるため、用紙代やインク代などのランニングコストを大幅に抑えることができます。
また、書類に不備があった場合でも、パソコン上で修正することができ、プリントアウトする手間がかかりません。
請求書に電子印鑑を押印して送付する場合、データ上で承認や契約が完結するため、切手を貼付したり、郵送する作業が不要になります。
管理方法も大きく変わります。紙媒体では、オフィスにキャビネットを設置するなど保存スペースが必要ですが、そもそもペーパーレスであるため、キャビネット自体が不要です。
請求書を電子的に発行する場合はどうする?
請求書を郵送ではなく、メールで送ってほしいという取引先も多いでしょう。その際も紙の請求書のときと同じく、印鑑は必須ではありません。しかし、中には押印したものが欲しいという取引先もいるでしょう。このような場合、「電子印鑑」で対応することになります。電子印鑑の種類と作り方についても押さえておきましょう。
印影から作った電子印鑑
角印や認印の印影を画像に変換し、その背景を透過処理したものを電子印鑑として使うことができます。簡単に作成することが可能ですが、第三者でも作れてしまう、改ざんが簡単にできるといった点がデメリットです。
フリーソフトで作成した電子印鑑
電子印鑑を作成できるフリーソフトもあります。デザインを決め、その中に名字・社名などの文字を入力すれば簡単に作成ができます。ただし、印影から作る場合と同様に、第三者でも作れてしまうというデメリットがあります。
識別情報が含まれた電子印鑑
オンライン上の印鑑作成サービスを利用すると、識別情報(タイムスタンプなど)が含まれた電子印鑑が作成できます。「いつ、誰が押印したか」が判別できるため、請求書や印鑑の偽造防止には非常に有効です。ただし、有料で提供されるサービスとなっていますので、作成の際は各社のサービスを比較検討しましょう。
なお、電子印鑑については下記の記事で詳しく説明しています。
電子印鑑で脱ハンコすれば業務効率化が可能!
請求書における役割と印鑑の必要性、そして脱ハンコと電子印鑑のメリットなどについて解説してきました。
ハンコ文化から脱するには、まだ時間がかかりそうな日本ですが、すでに脱ハンコ、電子印鑑の導入は進みつつあります。
業務の効率化などのメリットを考慮した場合、請求書などについて電子印鑑の導入を検討する価値は大いにあるでしょう。
よくある質問
請求書には印鑑を押す必要がありますか?
法律で決められているわけではないため、必須ではありません。詳しくはこちらをご覧ください。
請求書に押印する場合、どの種類の印鑑を用いるべきですか?
法人の場合は「角印」、個人事業主の場合は「認印」「シャチハタ」です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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