- 作成日 : 2026年1月14日
マイクロ法人で後悔しないために!売上なしの失敗事例や違法性、設立時のポイントを解説
マイクロ法人の設立は、事業の法人化により税務・社会保険の取り扱いを合法的に変え、負担を軽くする手段です。しかし、安易な設立により、うまくいかないことがあるのも事実です。
本記事では、マイクロ法人の設立で失敗しやすいポイントや、デメリット、維持費の負担について解説します。本記事により自分にとって最適な選択をするための判断材料としてください。
目次
マイクロ法人の設立で後悔する理由とは?
マイクロ法人を作って後悔する最大の理由は、期待していた節税・社会保険料削減効果よりも、維持コストや事務作業の手間が上回ってしまうことです。ここでは、多くの人が陥る後悔のポイントを解説します。
1. 経理・事務作業が煩雑化し、本業を圧迫する
個人事業主の簡易な帳簿付けとは異なり、法人の決算は「貸借対照表」や「損益計算書」の作成ルールが厳格です。これをすべて自力で行おうとすると、税法の学習コストが膨大になり、肝心の本業に割く時間を圧迫してしまいます。
「節税のために始めたのに、事務作業に追われて稼ぐ時間がなくなった」という本末転倒な事態は、マイクロ法人運営でよくある後悔パターンです。特に「役員報酬」の決定や「社会保険」の手続きなど、個人事業主時代にはなかったタスクが発生することを覚悟しなければなりません。
2. 赤字や売上なしでも法人住民税の均等割が発生する
個人事業主であれば、赤字なら所得税・住民税は原則ゼロになります。しかし、法人には「法人住民税の均等割」という制度があり、赤字や売上なしの状態でも、最低年間7万円程度(地域により異なります)を納税しなければなりません。
事業が軌道に乗る前や、利益が薄い段階で法人化してしまうと、この固定費が重荷となり、資金繰りを圧迫する原因となります。
3. 法人の赤字と個人の給与所得で損益通算ができない
法人の赤字を、個人の給与所得と相殺することはできません。
個人事業主の場合、事業所得で赤字が出れば、給与所得と相殺(損益通算)することで、給与から源泉徴収された所得税を取り戻すことが可能です。しかし、マイクロ法人は法律上「別人格」として扱われるため、法人がどれだけ赤字を出しても、個人の税金計算には一切影響しません。この仕組みの違いを理解しておくことはマイク法人を設立するか否かの判断において重要です。
4. 税理士費用などの維持コストが節税額を上回る
年間15万〜30万円程度の税理士報酬が発生し、期待していた社会保険料の削減効果が相殺されてしまうことがあります。
多くの人は法人の決算申告を税理士に依頼することになりますが、顧問料や決算料といった固定費が毎年重くのしかかります。仮に社会保険料を年間20万円削減できたとしても、税理士費用に同額を支払ってしまえば、手元に残るお金は増えません。「コストと手間をかけて法人化したのに、結局プラスマイナスゼロだった」というのは、典型的な後悔パターンです。
5. 会社に副業がバレるリスクがある
本業の会社に副業がバレるリスクがあり、最悪の場合、懲戒処分等のトラブルに発展します。
マイクロ法人の役員として社会保険に加入すると、本業の会社との「二重加入」の状態になります。この際、年金事務所を通じて本業の会社に「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」に関する通知が届くため、法人の存在が会社に知られる可能性は高くなります。就業規則で副業規程がある場合は、事前に社内ルールの確認が必須であると言えます。
参考:複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き|日本年金機構
6. 違法性を疑われるリスクがある
マイクロ法人そのものは違法ではありませんが、単に社会保険料を減らすためだけに設立し、実体のない法人経営等は、税務調査や年金事務所の調査で脱税(違法)とみなされるリスクがあります。
「違法ではないか?」と不安を抱えながら運営するのは精神衛生上良くありません。定款に記載した事業を実際に行い、活動の実態や証拠を残すことが重要です。
7. 廃業(解散)の手間と費用が高額
会社を畳む際にも、登記・公告などが必要で、実費がかかります。
「ダメならすぐ辞めればいい」と安易に考えるのは危険です。法人の廃業には、解散登記や清算結了登記が必要で、登録免許税や司法書士費用がかかります。また、官報公告の手続きなどを含めると完了まで2ヶ月以上かかるため、撤退のハードルが個人事業主より遥かに高いのが現実です。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
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※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
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マイクロ法人の設立でよくある失敗事例は?
ここでは、シミュレーション不足などが原因で陥りやすい具体的な失敗事例を紹介します。
事例1. 売上・利益が少なすぎて維持費倒れ
自身のビジネスの利益率や売上規模が小さい段階で法人化してしまい、手元に残るお金が減ってしまうケースです。
マイクロ法人の維持には、税理士費用や均等割などのコストに加え、法人口座の開設費用や設立登記費用も必要です。粗利が年間80万〜100万円以上確保できていない段階では、これらのコストを賄いきれません。「節税」という言葉に惹かれて設立したものの、経費ばかりが出ていき、「これなら個人事業主のままで良かった」と後悔することになります。
事例2. 本業を退職してしまいメリットが消滅
マイクロ法人は、本業の給与で生活費を賄いつつ、法人からは最低限の役員報酬(月額4.5万円など)を受け取ることで、社会保険料を最低等級に抑えるのが定石です。
しかし、本業を退職してフリーランス一本になると、生活費をすべて法人から引き出す必要が出てきます。生活のために役員報酬を上げれば社会保険料も跳ね上がるため、最適化効果が消滅し、法人の維持費だけが無駄に残る結果となります。
事例3. インボイス制度導入による消費税の負担増
インボイス登録により消費税の納税義務が生じ、事務負担と税負担が想定外に増加するケースです。
かつては売上1,000万円以下であれば消費税の免税事業者でいられましたが、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入により状況が変わりました。取引先からインボイスの発行を求められた場合、課税事業者として登録する必要があり、消費税の申告・納税義務が発生します。これにより、小規模法人のメリットの一つであった免税メリットが薄れ、事務負担もさらに重くなっています。
マイクロ法人の損益分岐点は?年収いくらからお得?
マイクロ法人を検討する際、「年収いくらからお得になるのか」という分岐点を正しく把握することが重要です。
一般的な法人化の目安
一般的に、所得税と法人税の税率差を利用した節税目的の法人成りの目安は、課税所得が800万〜1,000万円と言われています。しかし、これはあくまで「税金」の話です。
サラリーマンが副業でマイクロ法人を作る目的は「社会保険料の削減」です。そのため、売上や利益がもっと少ない段階でもメリットが出ることがあります。一般的な法人化の基準と混同しないようにしましょう。
マイクロ法人の損益分岐点
維持コスト(約30万円〜)を差し引いても手取りが増える目安は、副業の年間粗利(利益)が100万円〜150万円程度ある場合です。
このラインを超えてくると、国民健康保険・国民年金の負担を減らすメリットが、法人の維持費を上回る可能性が高くなります。ただし、ご自身の家族構成(扶養家族の有無)や本業の年収によってシミュレーション結果は大きく異なるため、一概に「いくらから」とは断言できません。必ず個別の試算が必要です。
後悔しない!マイクロ法人を設立するための手順は?
マイクロ法人の失敗を避けるために、以下の手順で慎重に検討・設立を行うことをおすすめします。
1. 節税シミュレーションを行う
まずは具体的な数字を出し、維持費を差し引いても年間数十万円以上のメリットがあるか必ず確認してください。
現在の国民健康保険料・国民年金保険料と、マイクロ法人設立後の社会保険料(法人負担分含む)+法人維持費を比較します。この差額が年間30万〜50万円以上のプラスにならない場合、手間を考えると割に合わない可能性があります。Excelなどを活用し、厳しめに見積もりましょう。
2. 設立費用が安い合同会社を選ぶ
特段の理由がなければ、設立コストが安くランニングコストも抑えられる合同会社(LLC)がおすすめです。
株式会社の設立には約20〜25万円かかりますが、合同会社であれば約6〜10万円で設立可能です。また、株式会社には役員の任期があり、重任登記のたびに費用がかかりますが、合同会社にはそれがありません。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 (LLC) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 約20〜25万円 | 約6〜10万円 |
| 維持コスト | 年間約20万円〜 | 年間約20万円〜 |
| 役員の任期 | 原則2年〜10年 | なし |
| 決算公告 | 義務あり | 義務なし |
マイクロ法人は自分一人の会社であり、対外的なブランド力よりもコストパフォーマンスを重視すべきです。節税スキームとしての機能はどちらも変わりません。
3. クラウド会計ソフトで税理士費用を削減する
ITリテラシーがあるなら、クラウド会計ソフトを活用して自力で決算を行い、最大の固定費である税理士費用を圧縮しましょう。
クラウド会計ソフトを使えば、簿記の知識が少なくても小規模な法人の決算申告を行うことが可能です。年間約30万円の税理士費用を削減できれば、マイクロ法人の損益分岐点は大幅に下がり、成功率が高まります。ただし、初年度だけはスポットで税理士にチェックを依頼するなど、税務リスクへの対策も検討してください。
マイクロ法人の設立で後悔しないために
マイクロ法人の設立で後悔しないためには、「節税」という言葉に踊らされず、維持コストや廃業時のリスク、そして事務負担をトータルで評価することが不可欠です。
特に、均等割や税理士報酬を含めた年間20万円以上のランニングコストや、想像以上に時間を奪われる社会保険・税務の手続きには注意が必要です。また、このスキームは本業の給与所得があって初めて社会保険料削減の最大効果が得られるものであり 、万が一撤退する際にも廃業費用がかかるため、安易な設立は避けるべきです。
まずは副業規程の確認 、現状の社保・税負担の把握 、法人化後の固定費等の見積りの3点を試算してから判断しましょう。
ご自身の事業規模と将来設計を照らし合わせ、シミュレーションを入念に行った上で、本当に法人化が必要か判断してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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