- 更新日 : 2025年12月24日
サプリのOEM事業は儲からない?赤字を防ぐ販売戦略や税金の知識
健康食品ビジネスへの参入を検討する際、「サプリメントのOEMは儲からないのでは?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。市場規模が拡大を続ける一方で、撤退を余儀なくされる事業者がいるのも事実です。
サプリメントOEMが「儲からない」と言われる主な原因は、製造原価そのものではなく、広告宣伝費の高騰や在庫管理の失敗、そして差別化の難しさにあります。
しかし、適切な原価管理と法規制(薬機法・景品表示法)を順守したマーケティング戦略を組み合わせることで、安定した収益を上げることは十分に可能です。
本記事では、サプリOEMが苦戦する構造的な理由と、リスクを抑えて利益を生み出すための具体的な対策について、わかりやすく解説します。
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目次
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サプリのOEM事業は儲からないと言われる主な理由は?
サプリメントのOEM事業が利益を出しにくいと言われる最大の要因は、参入障壁の低さに伴う「競争の激化」と、集客にかかる「コストの高騰」です。単に商品を製造するだけでは売れないのが現状といえます。
競合過多による価格競争の激化
健康食品市場は多くの企業が参入しており、類似商品が溢れかえっているため、価格競争に陥りやすい傾向があります。
OEM(受託製造)を利用すれば、自社工場を持たずに誰でもオリジナルサプリを作ることができます。これはメリットである反面、他社も同様に容易に参入できることを意味します。結果として、消費者の奪い合いが起き、価格を下げざるを得ない状況に追い込まれるケースが少なくありません。
商品の差別化が難しい
成分やパッケージだけで消費者を引きつけることが難しく、明確な違いを打ち出せないと埋もれてしまいます。
特に大手メーカーのようなブランド力がない中小企業の場合、ただ「健康に良い」というだけでは商品は売れません。「誰の・どんな悩みを解決するか」というコンセプトが曖昧だと、数ある商品の中から選んでもらう理由がなく、販売は苦戦するでしょう。
広告宣伝費(CPA)の高騰
新規顧客を獲得するための広告費が年々上昇しており、商品が売れるたびに利益が残らない構造になりがちです。
インターネット広告を中心とした集客は、競合が増えれば増えるほど入札単価が上がります。サプリメントは一度の購入単価が数千円程度であることが多く、顧客一人を獲得するために数千円〜1万円以上の広告費がかかることも珍しくありません。この収益構造の理解不足が、「売れているのに儲からない」という事態を招きます。
在庫リスクと廃棄ロスの発生
需要予測を見誤り、過剰な在庫を抱えることでキャッシュフローが悪化し、最悪の場合は廃棄ロスによる損失が発生します。
サプリメントには賞味期限があります。製造コストを下げるために大量生産(大ロット)を行うと、1個あたりの原価は下がりますが、売れ残った場合のリスクは跳ね上がります。会計上、在庫は「資産」ですが、現金化できなければコストになり、廃棄すれば全額が損失となります。
サプリ販売のコスト構造はどうなっているのか?
サプリメント販売において利益を残すためには、「製造原価」だけでなく、販売にかかる「見えないコスト」までを含めた緻密な事業計画が必要です。
製造原価と販管費のバランス
商品の製造原価率を低く抑えても、広告宣伝費などの販売管理費が積み重なり、利益を圧迫するケースが多々あります。
一般的な物販ビジネスでは原価率30%程度が目安とされることが多いですが、サプリメント通販(D2C)の場合、広告費を考慮して原価率を15%〜25%程度に抑える設計が求められることもあります。しかし、品質にこだわれば原価は上がるため、バランスを取るのは容易ではありません。
物流コストと決済手数料の負担
配送費や決済手数料といった変動費は、商品が売れるたびに確実に利益を削っていきます。
見落としがちなのが、「配送費」「梱包資材費」「決済代行手数料」「倉庫保管料」といった物流・決済コストです。特に近年の配送料値上げは利益率に直撃します。これらを甘く見積もっていると、粗利(売上総利益)はあっても営業利益が出ないという状態になります。
安全性を守るための品質管理コスト
消費者に安全な商品を届けるためには、継続的な品質管理コストが発生します。
OEMメーカーへの委託費用の中には、菌検査などの品質検査費用が含まれます。コスト削減のためにここを削りすぎると、異物混入などのトラブルにつながりかねません。安全性を担保するためのコストは、ブランドを守るための保険のようなものといえるでしょう。
顧客対応(CS)の維持費
顧客からの問い合わせや解約手続きに対応するカスタマーサポート体制の維持にも、人件費やシステム利用料がかかります。
定期購入の解約対応や、成分に関する問い合わせ、クレーム対応など、顧客数が増えるほどサポート業務は増加します。これらを社内で行う場合も、外部に委託する場合も、事業規模に応じたコストが発生することを忘れてはいけません。
薬機法や景品表示法への対応はなぜコストになるのか?
健康食品ビジネスにおいて、法律(コンプライアンス)の順守は避けて通れない課題であり、これに対応するための専門知識や修正コストが発生します。
違法広告による行政処分のリスク
広告表現が法律に違反した場合、課徴金の納付や実名公表といった重いペナルティを受けるリスクがあります。
サプリメントはあくまで「食品」であり、医薬品のような「効果効能(例:痩せる、治る)」を標ぼうすることはできません。もし薬機法や景品表示法に違反した場合、行政指導や課徴金納付命令(売上の3%など)の対象となるだけでなく、サイトの閉鎖や社会的信用の失墜を招きます。
専門家による広告チェック費用
法的なリスクを回避するためには、薬剤師や弁護士などの専門家に広告チェックを依頼する費用が必要です。
安全に広告を運用するためには、自社の判断だけでなく、専門家の目を通すことが推奨されます。これには月額の顧問料や、スポットでのチェック費用がかかります。また、ガイドラインの変更に合わせてWebサイトやパッケージを修正する制作コストも予算に組み込んでおく必要があります。
機能性表示食品の届出にかかるコスト
差別化のために「機能性表示食品」として販売する場合、届出のためのデータ収集や書類作成に時間と費用がかかります。
「機能性表示食品」は、科学的根拠に基づいて機能性を表示できるため、強力な武器になります。しかし、消費者庁への届出には、システマティックレビュー(研究レビュー)の実施や、安全性試験のデータ準備などが必要で、これには数十万円〜数百万円単位の初期投資が必要になることがあります。
サプリのOEM事業の経費や税金の扱いはどうなる?
サプリメント販売で利益を確保するためには、マーケティングだけでなく、会計上のルールや税金の仕組みを理解しておくことも大切です。特に在庫の扱いや消費税、そして利益に対してかかる所得税の仕組みは、手元の資金繰りに直結するため注意が必要です。
所得税は利益が増えるほど税率が上がる
個人事業主としてサプリメント販売を行う場合、売上から経費を差し引いた「所得(手元に残る利益)」に対して所得税が課されます。
- 累進課税制度:
日本の所得税は、所得が大きくなるほど税率が高くなる「超過累進税率」を採用しています(5%〜45%)。売上が急増した年は、翌年の納税額も大幅に増えるため、納税用の資金をプールしておく必要があります。 - 青色申告の活用:
最大65万円の控除が受けられる「青色申告」を利用することで、節税しながら所得税を抑えることが可能です。
製造費は売れた分だけが経費になる
OEMメーカーに支払った製造費用は、支払った年に全額を経費として計上できるわけではありません。 確定申告において経費(売上原価)にできるのは、あくまで「その年に売れた商品の分だけ」です。
製造したものの売れ残った商品は、会計上「棚卸資産(在庫)」として扱われ、現金と同等の資産とみなされます。 そのため、大量に在庫を抱えていると、手元の現金は減っているのに会計上の利益は出ている状態になり、その利益に対して税金が発生します。決算時に予想外の納税で困らないよう、在庫量は慎重にコントロールする必要があります。
軽減税率8%と標準税率10%の混在
サプリメントは健康「食品」に分類されるため、販売時の消費税には軽減税率の8%が適用されます。 一方で、商品の発送にかかる送料や梱包資材、広告宣伝費などの経費には、標準税率の10%が適用されます。
- 売上(入ってくるお金): 主に消費税8%
- 経費(出ていくお金): 主に消費税10%
このように税率が異なるため、経理処理が複雑になりがちです。また、課税事業者になった場合は、受け取った消費税と支払った消費税の差額を納税するため、この税率差を考慮した資金計画が求められます。
在庫を廃棄する際は証明書類を残す
賞味期限切れなどで商品が販売できなくなった場合、廃棄処分を行うことで「廃棄損」として経費に計上できます。 ただし、税務調査の際に正当な処理であることを証明するためには、いつ、何を、どれだけ廃棄したかが分かる客観的な証拠が必要です。
自身の判断で捨てるだけでなく、廃棄業者のマニフェスト(管理票)や廃棄時の写真を保存しておくなど、第三者に説明できる状態で処理を行うことが重要です。
マネーフォワード クラウド会社設立は、個人事業主が法人成りを検討したほうがよいタイミングをまとめた「法人化を検討すべき7つのタイミング」を無料で用意しております。
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失敗しないために販売戦略をどう立てるべきか?
ターゲット選定から販売チャネルの構築までを一貫したストーリーとして設計することが求められます。
ターゲット(ペルソナ)の明確化
「誰の」悩みを解決する商品なのかを具体的に絞り込むことで、広告費の無駄遣いを防ぎます。
「20代〜50代の女性」といった広すぎるターゲット設定は、資金力のある大手企業との真っ向勝負になりがちです。「産後の抜け毛が気になる30代の働く女性」のように、ターゲットを具体化(ペルソナ設定)することで、訴求すべきメッセージが鋭くなり、成約率の向上が期待できます。
独自性のあるコンセプト設計
競合他社にはない強みやストーリーを打ち出し、選ばれる理由を作ります。
成分の配合量や産地へのこだわり、開発者の想いなど、他社商品と何が違うのかを一言で説明できるコンセプトが必要です。これが明確であればあるほど、価格競争に巻き込まれにくくなります。
LTV(顧客生涯価値)を高める仕組み
初回購入だけでなく、リピート購入を促す仕組みを作ることで、長期的な利益を確保します。
インターネット販売では、初回をお試し価格で提供し、その後定期購入につなげるモデルが一般的です。重要なのは、その後のフォローメールや同梱物での情報提供を通じて、顧客との信頼関係を築くことです。
LTV(一人の顧客が将来にわたって支払う総額)を高めることが、事業の安定化につながります。
小ロット生産は資金繰りの観点で有効か?
初期投資を抑え、市場の反応を見ながら事業を拡大できる「小ロット生産」は、特に中小企業や個人事業主にとって、資金繰りの安全性を高める有効な手段といえます。
最初は最小限の在庫でスタートし、売れ行きに応じて生産量を増やすことで、不良在庫を抱えるリスクを最小限に抑えることができます。
大ロットで発注すれば原価は下がりますが、数百万円単位の現金が先に流出し、在庫として倉庫に眠ることになります。
一方、小ロット(例えば100個〜500個程度)から対応可能なOEMメーカーを選べば、原価単価は多少上がっても、総額の初期投資を数万円〜数十万円に抑えられます。
テストマーケティングとして市場の反応を見たり、パッケージデザインを改善したりする際も、小ロットであれば柔軟に対応可能です。
まずは「現金を残す」ことを優先し、販売実績ができてからロットを増やすステップアップ方式が、堅実な経営といえるでしょう。
信頼できるOEMメーカーを選定するポイントは?
パートナーとなるOEMメーカー選びは、商品の品質だけでなく、事業の継続性やコンプライアンス順守にも関わるため、慎重に判断しましょう。
GMP認定工場による製造
一定の品質基準を満たしたGMP認定工場で製造することで、商品の安全性と信頼性を担保します。
サプリメントは口に入れるものである以上、安全性は最優先事項です。GMP認定工場とは、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、適正な製造管理が行われていると認められた工場のことです。この認定があるメーカーを選ぶことは、消費者へのアピールポイントにもなります。
トラブル時の対応体制
万が一の品質トラブルが発生した際に、迅速かつ誠実に対応してくれるメーカーかどうかを確認します。
クレームや異物混入などの問題が起きた際、原因究明や報告書の作成をスピーディーに行ってくれるかは非常に重要です。契約前に、トラブル時の対応フローや責任の所在について確認しておくと安心でしょう。
企画から販売までのサポート力
製造だけでなく、商品企画やパッケージデザイン、法規制対応まで幅広くサポートしてくれるメーカーを選びます。
特に初心者の場合、薬機法に配慮したパッケージ表記や、機能性表示食品の届出など、専門知識が必要な場面が多くあります。製造前後のプロセスまで伴走してくれるパートナーを選ぶことで、社内のリソース不足を補い、事業の成功確率を高めることができます。
サプリのOEM事業で利益を出すために
サプリメントOEM事業は、参入障壁の低さから競合が激化しており、明確な戦略なしでは「儲からない」可能性が高いビジネスモデルといえます。
赤字に陥る主な要因は、製造原価そのものではなく、CPA(顧客獲得単価)の高騰や在庫リスク、そして年々厳しくなる薬機法・景品表示法への対応コストなどの「見えないコスト」にあります。
市場で生き残るためには、大手企業と競合しないニッチな差別化戦略と、LTV(顧客生涯価値)を前提とした緻密な収益シミュレーションが不可欠です。安易な参入は決して推奨できませんが、構造的なリスクを正しく認識し、適法かつ戦略的に取り組むことで、事業としての勝機は見出せるでしょう。
マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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