- 更新日 : 2026年9月15日
青色事業専従者に年末調整は必要?要件と手続きを解説
家族への給与も給与所得である以上、ほかの従業員と同じ手続きが必要です。
- 12月の精算で改正後の控除額が反映される
- 月次の源泉徴収は11月まで従来どおり続く
- 専従者給与は年間38万円を上回る水準にする
設定額によっては世帯全体の税負担が増えるため、事業主の所得と合わせて見比べましょう。
個人事業主が家族に支払う青色事業専従者給与も、ほかの従業員への給与と同じく年末調整の対象になります。
今回は、家族が青色事業専従者とされる要件と、年末調整を行うことによるメリットや手続・方法について解説していきます。
そもそも青色事業専従者とは?
税法上、個人事業主の事業に従事する一定の要件を満たした親族のことを「専従者」と呼んでいます。本来、所得税には「親族に対する賃金給与は原則として経費に計上できない」という考え方があります。家族で所得を分散すれば、不当な租税回避ができるからです。
とはいえ、専従者である家族に対して一切の経費を認めないというのも実態から乖離し、適切な課税ができないことになります。そこで、確定申告では、専従者について青色申告と白色申告に分け、前者には「専従者給与」、後者には「専従者控除」という仕組みを設けています。
なお、青色申告については事前に納税先の税務署に申請し、承認を受けていることが必要です。青色申告の専従者給与では、親族に対して実際に支払った給与の額について経費に算入できます。
しかし、白色申告の専従者控除では、専従者への給与は経費にはできず、定額控除だけが認められています。節税効果としては、青色事業専従者給与のほうが大きいといえるでしょう。
青色事業専従者に該当するには、次の要件をすべて満たしていることが必要です。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
- その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
- その年を通じて6ヵ月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、事業に専ら従事していること
上記の要件は、白色申告の専従者控除の対象となる専従者もほぼ同じですが、節税効果の大きい青色事業専従者とするには、後述するように所定の手続をしなければなりません。
| 項目 | 青色申告(専従者給与) | 白色申告(専従者控除) |
|---|---|---|
| 経費にできる額 | 実際に支払った給与の額 | 配偶者86万円、その他の親族50万円と、事業所得等を専従者の数に1を足した数で割った金額のいずれか低い額 |
| 事前の手続き | 届出書の提出が必要 | 届出は不要 |
| 節税効果 | 支給額に応じて大きくなる | 定額の上限までにとどまる |
青色事業専従者については、以下の記事も参考にしてください。
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青色事業専従者にも年末調整は必要
青色事業専従者も給与所得者にあたるため、ほかの従業員と同じように年末調整を行います。個人事業主は源泉徴収義務者として、1年間に源泉徴収した税額の合計と年税額を一致させる精算をしなければなりません。
給与所得者である以上は年末調整の対象になる
青色事業専従者は親族であっても給与所得者にあたるため、年末調整が必要です。パートやアルバイトでも、一定期間定期的に雇用するときは税法上は正社員と同じ扱いです。
脱サラして、これから個人事業を開始しようとする方は、今まで給与所得者として勤務先で年末調整をしてもらう立場だったため、年末調整がどのようなものかつかみにくいこともあるでしょう。年末調整は、事業主が従業員に支払う毎月の給与から所得税などの租税を天引きした1年間の徴収額と、実際の納付額(年調年税額)の過不足を年末に計算し、精算する手続きです。事業主は、源泉徴収をした所得税などの合計額が年調年税額よりも多い場合には、その差額の税額を過納となった従業員の各人ごとに還付します。
源泉徴収が始まる給与の目安
令和8年分では、社会保険料等を差し引いたあとの月額給与が105,000円以上になると源泉徴収が発生します。専従者の立場で考えれば、支払われた給与については所得税などの納税義務が生じます。
令和8年分の所得税では、ほかに所得がなければ給与収入178万円以下まで所得税はかかりません。基礎控除104万円と給与所得控除の最低保障額74万円を合わせた金額が、課税の下限になるためです。
ただし、1年間の給与が最終的にいくらになるかは年末を迎えるまで確定しません。そこで毎月の給与計算では、国税庁の源泉徴収税額表にもとづいて概算の税額を天引きします。令和8年分の月額表では、扶養控除等申告書の提出がある場合、社会保険料等控除後の給与が105,000円未満であれば税額は0円です。
105,000円以上になると源泉徴収が発生し、年末調整による精算の対象になります。なお、令和9年分の源泉徴収税額表は、基礎控除などの引き上げが反映されるため、このラインも見直されます。
参照:令和9年分 源泉徴収税額表|国税庁
参照:令和8年分 源泉徴収税額表|国税庁
令和8年からの税制改正で年末調整はどう変わる?
令和8年度税制改正による基礎控除と給与所得控除の引き上げは、令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税に適用されます。月次の源泉徴収事務は11月まで従来どおりで、12月に行う年末調整からが変更の対象です。
12月の年末調整で改正後の控除額により精算する
令和8年11月までの源泉徴収は改正前の税額表で行い、12月の年末調整で改正後の控除額により1年分を計算し直します。令和8年度税制改正では、基礎控除が58万円から62万円へ、合計所得金額が一定以下の場合の特例を含めると最大104万円まで引き上げられました。給与所得控除の最低保障額も65万円から74万円になっています。
この改正が施行されたのは令和8年12月1日で、令和8年分以後の所得税に適用されます。ただし源泉徴収の現場が混乱しないよう、令和8年11月までの月次の源泉徴収事務に変更は生じません。1月から11月までは改正前の税額表で天引きし、12月の年末調整で改正後の控除額をもとに1年分の税額を計算したうえで、すでに源泉徴収した金額と精算する流れです。
| 時期 | 適用する控除額 |
|---|---|
| 令和8年1月〜11月の月次の源泉徴収 | 改正前(令和8年分の源泉徴収税額表にもとづく) |
| 令和8年12月の年末調整 | 改正後(基礎控除・給与所得控除の引き上げを反映) |
引き上げ後の控除額で計算し直すことになるため、令和8年分の年末調整では専従者に還付が生じやすくなります。
扶養親族等の所得要件は12月1日以後の給与から変わる
扶養控除などの対象になる親族の所得要件は、合計所得金額58万円以下から62万円以下に引き上げられました。給与収入だけで判定する場合は、123万円以下から136万円以下に広がります。勤労学生の要件も、合計所得金額85万円以下から89万円以下(給与収入163万円以下)になりました。
この改正は令和8年12月1日以後に支払う給与から適用されます。改正によって新たに要件を満たすことになった親族について扶養控除などを受けるには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの提出が必要です。専従者本人に扶養する家族がいる場合は、年末調整の書類を集める段階で確認しておくとよいでしょう。
なお、青色事業専従者として給与の支払いを受ける人は、事業主の同一生計配偶者や扶養親族にはなれません。
青色申告特別控除は令和9年分から最大75万円になる
令和9年分以後の所得税では、e-Taxでの申告に加えて優良な電子帳簿を保存している場合に、青色申告特別控除が75万円になります。令和8年3月31日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」により、青色申告特別控除の区分が見直されました。
複式簿記による記帳とe-Taxでの申告を行えば65万円、これに加えて仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿として保存していれば75万円になります。一方で、書面で提出する場合の55万円という区分はなくなり、10万円に下がります。
| 条件 | 令和8年分まで | 令和9年分以後 |
|---|---|---|
| 複式簿記+e-Tax+優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存 | 65万円 | 75万円 |
| 複式簿記+e-Tax | 65万円 | 65万円 |
| 複式簿記+書面で提出 | 55万円 | 10万円 |
適用されるのは令和9年分以後の所得税で、令和8年分の確定申告までは現行の最大65万円のままです。専従者給与を経費にしながら特別控除も最大限に使うのであれば、令和8年のうちに帳簿の保存方法を整えておく流れになります。
参考:優良な電⼦帳簿の保存⼜はデジタルシームレス保存により75 万円の⻘⾊申告特別控除を適⽤しましょう︕|国税庁
防衛特別所得税が令和9年1月から源泉徴収に加わる
令和9年1月以後に生じる所得からは、源泉徴収する所得税額の1%にあたる防衛特別所得税が併せて徴収されます。同じ改正で、復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に引き下げられ、課税期間が令和29年12月31日まで延長されました。
防衛特別所得税の1%と合わせた付加税率は2.1%のままで、源泉徴収税額の計算方法そのものに変更はありません。年末調整も、これまでと同じく年調所得税額に102.1%を乗じて計算します。
名称と内訳が変わる改正なので、納付書や給与明細の表記が変わっても計算方法を見直す必要はありません。
参照:令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について|国税庁
青色事業専従者の年末調整にはどんなメリットがある?
青色事業専従者給与は支払った額をそのまま必要経費に算入できるため、事業主の所得を圧縮できます。専従者側も年末調整によって納めすぎた所得税が戻るため、世帯全体で見た税負担が軽くなります。
専従者給与を全額必要経費にできる
青色事業専従者給与は、労働の対価として適正な金額であれば上限なく必要経費に算入できます。親族に対して実際に支払った給与の額について経費に算入できる点が、青色申告を選ぶ利点のひとつです。
もちろん、あまりにも高額な給与を支払っている場合や、事業主本人の収入と比較して相対的に高額であるなど適正さが問題となる場合には、経費性が否定されることになるでしょう。いずれにしても、青色事業専従者給与は、親族である専従者に支給した額だけ個人事業主としての所得の圧縮が可能となります。
給与を年間38万円以上にする理由
青色事業専従者にすると配偶者控除や扶養控除が使えなくなるため、給与は年間38万円を上回る水準に設定します。青色事業専従者については、確定申告で配偶者控除や扶養控除が使えなくなります。配偶者控除は、最高で38万円(老人控除対象配偶者は48万円)です。
したがって、それよりも低い金額を専従者給与とすると節税ではマイナスとなってしまいます。節税効果を考えるのであれば、配偶者に支払う青色事業専従者給与は年間38万円以上にする必要があります。
なお、令和8年分から配偶者控除の対象になる配偶者の所得要件は、合計所得金額62万円以下(給与収入だけなら136万円以下)に広がりました。控除額そのものは38万円のまま変わりません。
世帯全体で見たときの節税効果
節税効果は事業主と専従者を個別に見るのではなく、世帯単位で組み立てると判断しやすくなります。整理すると、押さえておきたいのは次のような点です。
- 青色事業専従者給与は年間38万円を上回る金額にすること
- 社会保険料等控除後の月額給与が105,000円以上であれば、年末調整によって所得税などの過納分が還付されること
- 青色事業専従者給与は必要経費であるため、高額になればその分、事業主の所得が少なくなること
- 所得税の税率は所得が高いほど高い超過累進課税となっていること
これらからいえるのは、青色事業専従者給与を源泉徴収の対象となる適正な金額とすれば、事業主の所得が下がることで税率も低くなり、一方、青色事業専従者も年末調整によって還付が受けられるということです。つまり、青色事業専従者給与とすることによって、個人事業主の世帯全体として節税効果が大きくなります。
青色事業専従者が年末調整を行うための手続き
まず税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、給与を必要経費にできる状態を整えます。そのうえでほかの従業員と同じように書類を集め、年末調整と住民税の手続きを進めます。
税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する
専従者給与を必要経費にするには、納税地の税務署へ「青色事業専従者給与に関する届出書」を出しておく必要があります。この手続きによって事業に従事する家族を青色事業専従者とし、給与を必要経費に算入できるようにします。届出書に記載した内容とは別に給与規程を定めているときは、その写しも添付することになります。
提出期限は、専従者給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日までです。その年の1月16日以後、開業した場合や、新たに専従者がいることになった場合については、その日から2ヵ月以内となっています。提出期限が土・日曜日・祝日などに当たる場合は、これらの日の翌日が期限となります。
年末調整で回収する書類をそろえる
年末調整では、扶養控除等(異動)申告書や保険料控除申告書などを専従者本人から集めます。こうした手続きをしたうえで給与を支払い、ほかの従業員と同様に年末調整を行います。青色事業専従者から回収する書類には、次のようなものがあります。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書
令和8年分は、基礎控除申告書などの様式が前年分から変更されています。前年の書式を流用すると記載事項が不足しやすいため、最新の様式を使いましょう。
住民税は給与支払報告書の提出後に始まる
年末調整が終わったら、翌年1月31日までに市区町村へ給与支払報告書を提出します。提出された給与支払報告書をもとに住民税が計算され、事業主のもとに決定通知書と納付書が届きます。
給与から住民税を天引きする特別徴収が始まるのは、専従者として給与を支払い始めた翌年の6月からです。所得税の源泉徴収とは開始時期がずれるため、初年度は住民税の天引きがない状態が続きます。
参照:A1-10 青色事業専従者給与に関する届出手続|国税庁
専従者本人が確定申告するのはどんなとき?
年末調整は事業主が行う手続きであり、従業員がすることはありません。青色事業専従者も同様です。ただし年末調整では所得控除できないケースもあり、この場合は青色事業専従者本人が確定申告しなければなりません。
給与以外の所得が20万円を超えるとき
給与所得や退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合は、専従者本人の確定申告が必要です。例えば、FX、動画配信、ネットビジネスなどで収入があるようなケースが挙げられます。
いずれも副業として行われていることは少なくないでしょう。専従者給与のほかに事業所得や不動産所得があるときも同じ扱いです。
ふるさと納税の控除を受けるとき
ふるさと納税は年末調整では控除できないため、確定申告かワンストップ特例のいずれかで手続きします。青色事業専従者にも所得税や住民税が課税されていれば、夫婦別に寄附の申込が可能です。
寄附先が5団体以内で、ほかに確定申告をする必要がなければ、寄附先の自治体に申請することにより確定申告なしで控除を受けられます。これをふるさと納税ワンストップ特例制度といいます。
6団体以上に寄附した場合や、医療費控除などのために確定申告をする場合は、寄附金額を寄附金控除額の計算に含めて申告します。控除は、所得税の還付と翌年度の住民税からの控除という形で受けることになります。
年末調整については、以下の記事も参考にしてください。
青色事業専従者の給与と年末調整は世帯全体で考える
青色事業専従者への給与は、年末調整まで含めた世帯全体の税負担で判断すると決めやすくなります。専従者給与は事業主の必要経費になる一方、専従者本人には所得税と住民税がかかるため、片方だけを見ても適正な金額は定まりません。令和8年分は12月の年末調整で改正後の控除額により精算されるため、毎月の天引き額と最終的な年税額の差が例年より大きくなりやすい年です。
令和9年分からは青色申告特別控除の区分も変わります。支給額と帳簿の整え方を、早めに見直しておきましょう。
よくある質問
青色事業専従者とは何ですか?
一定の要件を満たした親族の従業員です。詳しくはこちらをご覧ください。
青色事業専従者にも年末調整が必要ですか?
ほかの従業員と同様に必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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