• 更新日 : 2026年1月28日

育児休業給付金の80%引き上げはいつから?人事労務担当者が注意するポイントも解説

2025年4月1日より、育児休業給付金の実質給付率が80%(手取り10割相当)へ引き上げられました。これは新設された「出生後休業支援給付金」によるものですが、「夫婦ともに通算14日以上の取得」などの適用条件を正しく運用できていますか?

本記事では、制度の仕組みや計算方法、従来の給付金との違い、同時に開始された「育児時短就業給付」について徹底解説。さらに、就業規則の記載漏れやシステム設定の再確認など、人事労務担当者が今押さえておくべき運用の注意点を網羅的にまとめました。制度の誤解を防ぎ、確実な運用のためにぜひお役立てください。

目次

育児休業給付金の80%引き上げはいつから開始?

この給付率引き上げは、2025年(令和7年)4月1日から施行され、同日以降に育児休業を取得する対象者から順次適用が開始されました。

出典:育児休業等給付について|厚生労働省

施行日と適用対象

制度の切り替えは2025年4月1日が基準日となります。この変更は、雇用保険法の改正に伴い新設される「出生後休業支援給付金」によって実現するものです。

2025年4月1日時点で要件を満たす育児休業(産後パパ育休を含む)を取得している、または新たに開始する被保険者が対象となります。

引き上げの目的は「男性育休の促進」

給付率を80%(手取り10割相当)まで引き上げる最大の目的は、男性の育児休業取得率の向上です。

これまでの給付率(67%)では収入減への懸念から育休取得をためらうケースがありましたが、産後の一定期間に限って上乗せ給付を行うことで、「収入が変わらないなら休んで育児に参加しよう」という行動変容を促す狙いがあります。これにより、男女が共に育児・家事を担う体制の構築を支援します。

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出生後休業支援給付金とは?

従来の給付金(67%)に13%を上乗せし、産後最大28日間だけ手取りを実質100%にするのが、この新制度の概要です。

80%給付の内訳と計算式

出生後休業支援給付金は、それ単体で機能するものではなく、既存の給付に上乗せされる「2階建て」の構造になっています。

具体的な計算式は以下の通りです。

  • 【1階】従来の給付:休業開始時賃金日額 × 67%
  • 【2階】新しい給付(出生後休業支援給付金):休業開始時賃金日額 × 13%
  • 【合計】:80%

なぜ「額面80%」で「手取り10割(100%)」と言えるのか?

通常、給与(額面100%)からは税金や社会保険料が控除され、手取りは約80%になります。一方、この給付金は非課税かつ社会保険料免除となるため、「控除なしの80%」がそのまま支給されます。結果として「働いていた時の手取り額」と同等の金額が確保される仕組みです。

対象期間は「産後の最大28日間」

この高率給付が適用されるのは、育児休業の全期間ではなく、子の出生後8週間以内のうち「最大28日間」に限られます。

  • 最初の28日間: 給付率80%(手取り10割相当)
  • 29日目以降: 給付率67%(手取り8割相当)に戻る

この「28日間」は、男性の「出生時育児休業(産後パパ育休)」の取得可能日数とリンクして設計されており、「産後のもっとも負担が大きい時期」にフォーカスした重点支援策です。

条件は「夫婦ともに通算14日以上の育休を取得」

制度の目的が「夫婦での共同育児」にあるため、支給には男女ともに「通算14日以上」の育児休業を取得することが要件となります。

  • 男性: 子の出生後8週間以内に、通算14日以上の「出生時育児休業(産後パパ育休)」または「育児休業」を取得。
  • 女性: 産後休業(8週間)終了後に、通算14日以上の「育児休業」を取得。

※男性が先に取得し、女性が後から取得するなど、時期がずれていても対象になります。 ※「ひとり親家庭」など、配偶者がいない等の事情がある場合は、本人単独の取得(通算14日以上)でも支給対象となる例外規定が設けられています。

前提となる「受給資格」と「上限額」に注意

この給付金を受け取るためには、大前提として従来の育児休業給付金の受給資格を満たしている必要があります。また、給付額には上限が設けられます。

  • 受給資格:
    • 原則として、育児休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が「12ヶ月以上」あること。
    • ※入社直後の従業員や、転職したばかりの従業員は対象外になる可能性があるため注意が必要です。
  • 支給上限額:
    • 給付率80%には支給限度額(上限)が設定されます。
    • 高収入の従業員であっても、計算上の給付額が上限を超えた場合は、上限額までしか支給されません(上限額は毎年更新されます)。

出生後休業支援給付金と従来の育児休業給付金の違いは?

新制度は独立した別個の給付金ではなく、既存の育児休業給付金に対する「期間限定の追加オプション」という位置付けで機能します。

制度比較:新制度は「追加オプション」の位置付け

新しい「出生後休業支援給付金」と、従来の「育児休業給付金」の違いを整理しました。

重要な点は、新制度は単体で申請するものではなく、既存制度(67%)への「追加チャージ(13%)」として扱われることです。

項目従来の育児休業給付金出生後休業支援給付金(新設)
開始時期運用中2025年4月1日
給付率67%(180日まで)

50%(181日以降)

13%(従来の67%に上乗せ)

※合計で80%

対象期間子が1歳(最長2歳)まで最大28日間
実質手取り約8割約10割(手取り100%)
取得要件一定の条件を満たした雇用保険被保険者であること原則、両親ともに育休を取得することなど

(ひとり親等は除く)

名称の注意点:「出生時育児休業給付金」とは別物

名称が非常に似ていますが、「出生時育児休業給付金」と「出生後休業支援給付金」は別のものを指します。

  • 出生時育児休業給付金:産後パパ育休に対するベースの給付(67%部分)のこと。
  • 出生後休業支援給付金:今回新設される上乗せボーナス(13%部分)のこと。

これらは以下のように組み合わせて支給されます。

  • これまで(〜2025年3月):
    • 産後パパ育休 → 「出生時育児休業給付金(67%)」のみ支給。
  • これから(2025年4月〜):
    • 産後パパ育休 → 「出生時育児休業給付金(67%)」+「出生後休業支援給付金(13%)」=合計80%支給。

制度としては別々の名前がついていますが、2025年4月以降の申請手続きにおいては、これらを一本化して申請できる様式が整備されています。

80%引き上げと同時新設された「育児時短就業給付」とは?

フルタイム復帰せず「時短勤務」を選択した場合でも、賃金の10%が上乗せ支給される新たな支援制度が同時に始まりました。

出典:育児時短就業給付の内容と 支給申請手続|厚生労働省

時短勤務で低下した給与を補う「賃金の10%支給」の仕組み

2025年4月からは、休業中の給付率80%引き上げ(出生後休業支援給付金)と同時に、職場復帰後の支援として「育児時短就業給付」が創設されています。

通常、育児のために労働時間を短縮(時短勤務)すると、その分だけ給与は減額(ノーワーク・ノーペイ)されます。この給与低下がネックとなり、復帰をためらうケースも少なくありませんでした。

新制度では、この減額分の一部を補填する形で現金給付が行われます。

  • 計算イメージ:
    • 時短勤務後の賃金が月額20万円の場合
    • 20万円 × 10% = 2万円を支給
    • 総収入は22万円となります。

この給付により、「フルタイムで働くのは体力的にきついが、収入が減りすぎるのも困る」という層に対し、無理のないペースでの職場復帰を経済面からサポートします。

制度の対象者と「キャリア継続」を支援する目的

対象は「2歳未満の子」を養育する被保険者であり、離職を防ぎキャリアを継続させることが最大の目的です。この制度は、単にお金を配るだけでなく、育児期における従業員のキャリア断絶(離職)を防ぐという明確な狙いがあります。

  • 対象となる条件:
    • 育児休業給付の対象となる育児休業に引き続き、同一の子について育児時短就業を開始していること、または、育児時短就業開始日前2年間において、賃金支払基礎日数が11日以上(これに満たない場合は、賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上)ある月が12ヶ月以上あること。
    • 2歳未満の子を養育していること。
    • 育児・介護休業法に基づく「短時間勤務制度(時短勤務)」を利用していること。
  • 導入の背景と目的:これまでは「完全に休んで給付金をもらう(育休)」か「無理をしてフルタイムで働く」か「給与が減っても時短で耐える」か、選択肢が限られていました。 この給付金ができることで、「完全に休む期間(出生後休業支援給付金)」が終了した後、「少しペースを落として働く期間(育児時短就業給付)」にも切れ目なく支援が続くことになります。結果として、育児と仕事の両立を諦めて退職してしまうリスクを減らし、スムーズな職場定着を促します。

育児休業給付金80%引き上げで注意するポイントは?

2025年4月の施行から時間が経過しましたが、現場での運用に「慣れ」が生じ、思わぬミスが発生していないでしょうか? ここでは、特に実務で間違いやすいポイントに絞って、現在の運用フローを再確認しましょう。

就業規則と説明資料の記載内容を再確認

就業規則や育児介護休業規程が、2025年改正の内容(給付率引き上げや通算14日以上の取得要件など)に合わせて正しく改定されているか、再度確認してください。 特に、従業員向けのハンドブックやイントラネット上の資料で、古い給付率(一律67%)のままになっている箇所はありませんか? 「要件を満たす場合は最大28日間80%」という特例が正しく周知されているか、記載のメンテナンスが必要です。記載がなくても法定通りに支給はされますが、従業員への制度周知という意味でも、古い規程は改訂が必要です。

勤怠・給与システムの計算・管理精度をチェック

新制度の肝である「通算14日以上の取得」や「産後28日間」の日数管理は、システム上で正しく機能していますか? 特に、通常の育休と産後パパ育休がシステム上で明確に区分され、給付要件の判定が自動化されているか確認しましょう。もし手動で管理している部分がある場合は、ヒューマンエラーを防ぐためのダブルチェック体制が機能しているか見直しをおすすめします。

新様式での申請フローが定着しているか確認

2025年4月より、申請書式は「育児休業給付金/出生後休業支援給付金」の兼用様式に一本化されています。 社内に古い様式のデータが残っており、誤って使用していないか注意が必要です。また、夫婦ともに取得要件を満たしているか確認するための添付書類(配偶者の育休取得証明書など)の収集フローが、現場で遅滞なく運用されているかも併せて確認しておきましょう。

対象従業員へのシミュレーション提示と周知

これから出産・育休を迎える従業員に対し、制度のメリット(手取り10割)が正しく伝わっているでしょうか? 施行から時間が経ち、制度への関心が薄れている可能性もあります。「夫婦で取得すれば手取りが変わらない」というメリットを改めて個別にシミュレーション提示することで、男性の育休取得をさらに促進できます。最新のQ&Aや事例を交えながら、継続的な情報発信を心がけましょう。

育児休業給付金80%引き上げに関するQ&A

Q. 2025年3月に生まれた子どもの場合、4月1日以降に休めば対象になりますか?

A. はい、対象となります。 制度の施行日(2025年4月1日)以降に取得する休業期間が対象です。3月生まれであっても、産後8週間以内の期間が4月1日以降にかかっていれば、その期間分については新制度(上乗せ給付)の申請が可能です。

Q. 「手取り10割」ということは、ボーナス(賞与)も補償されますか?

A. いいえ、ボーナスは補償されません。 「手取り10割」というのは、あくまで「毎月の給与(月給)」に対する表現です。育児休業給付金の計算基礎に賞与は含まれないため、年収ベースで見ると、賞与の支給がない分だけ収入は減少することになります。従業員への説明時には「月給の手取りは変わりませんが、賞与は出ません」と補足が必要です。

Q. 妻が専業主婦の場合、夫は上乗せ給付の対象になりますか?

A. はい、対象となります。 本来は「夫婦ともに取得」が条件ですが、配偶者が雇用保険に入っていない(専業主婦/夫、自営業など)ため育休を取得できない事情がある場合には、例外措置として、本人が要件(通算14日以上の取得など)を満たせば支給対象となります。

育児休業給付金80%引き上げの制度を正しく運用し、男性育休をさらに促進しよう

2025年(令和7年)4月1日の施行から時間が経過しましたが、この法改正は男性の育休取得と夫婦での共同育児を強力に後押しする重要な仕組みとして定着しつつあります。制度の核心は、既存の給付率67%に「出生後休業支援給付金」13%を上乗せし、出生後8週間以内の最大28日間にわたり手取りで実質10割となる80%の給付を実現している点です。この手厚い支援を確実に届けるためには、原則として夫婦ともに「通算14日以上」の育児休業を取得するという条件を、従業員が正しく理解しているか常に確認が必要です。

また、職場復帰時に時短勤務を選択した場合に賃金の10%が支給される「育児時短就業給付」も、キャリア継続の支えとして重要な役割を担っています。人事労務担当者の皆様には、制度運用が形骸化していないか定期的に見直しつつ、積極的な情報提供を通じて、従業員が安心して制度を活用できる環境づくりを継続して進めていきましょう。


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