• 更新日 : 2026年6月2日

扶養控除とは?対象となる要件や控除額、メリット・デメリットを解説

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Point扶養控除とは?

扶養控除とは、16歳以上の親族(年収136万円以下)を養う納税者の所得から一定額を差し引き、所得税・住民税を軽減する制度です。

  • 控除額は38万〜63万円(年齢・同居の有無で変わる)
  • 令和8年分から年収の壁が123万円→136万円に引き上げ
  • 申請は会社員が年末調整個人事業主確定申告

税法上の扶養(年収136万円以下)と社会保険の扶養(年収130万円未満)は基準が別です。両方の壁を確認する必要があります。

扶養控除(ふようこうじょ)とは、納税者に養っている親族がいる場合に、所得税や住民税の負担を軽減できる「所得控除」の制度です。企業の人事労務担当者にとって、扶養控除は年末調整や入社手続きの際に必ず扱う項目です。従業員から「子供がアルバイトを始めたが扶養のままいられるか?」「別居の親を扶養に入れたい」といった相談を受けることも多いため、正確な要件理解が欠かせません。

本記事では、扶養控除の仕組みや金額の計算方法、よく混同される「社会保険の扶養」との違いや、令和7年度・令和8年度税制改正のポイントまで、実務担当者が押さえておくべき情報を網羅的に解説します。

※本記事の内容は2025年12月公表の税制改正大綱をもとにしています。税制改正大綱は自民党が毎年12月頃に発表する改正のドラフトであり、国会での審議を経て翌年春頃に法律として制定されます。最終的に制定された法律の内容と異なる場合があります。

扶養控除とは?

扶養控除とは、納税者に「16歳以上の養うべき親族(配偶者を除く)」がいる場合、一定額を所得から差し引いて税金を安くする制度です。

扶養控除の仕組みと目的

親族を養うには、食費や学費など多くの経済的な負担がかかります。そのため、税法では「養う家族がいる人」と「独身の人」が同じ年収であっても、養う家族がいる人の税金を安くすることで負担の公平性を保っています。これが扶養控除の目的です。

扶養控除が適用されると、課税対象となる所得から一定額(38万円〜63万円など)が差し引かれます。結果として、課税所得が減り、所得税や住民税が軽減され、納税者の手取り額が増える仕組みです。

参考:No.1180 扶養控除|国税庁

配偶者控除・社会保険の扶養との違い

「扶養」という言葉は、税金の話と社会保険の話で意味や条件が異なります。ここを混同すると「税金は安くなったが、社会保険料が発生して手取りが減った」という事態になりかねません。

主な違いは以下の通りです。

項目 税金の扶養(扶養控除・配偶者控除 社会保険の扶養(健康保険等)
対象者 配偶者以外の親族(扶養控除)
配偶者(配偶者控除)
親族全般(配偶者含む)
目的 所得税・住民税の軽減 健康保険料や年金保険料の免除
年収の壁 令和8年分以後 136万円以下(合計所得62万円以下)
令和7年分 123万円以下(合計所得58万円以下)
※配偶者は201万円まで特別控除あり
130万円未満
(または106万円未満※令和8年10月より撤廃)
交通費 含まない(非課税分) 含む(106万円の算定には含めない)
判定時期 その年の12月31日の現況 将来に向かっての見込み
  • 扶養控除: 配偶者「以外」の親族が対象。
  • 配偶者控除: 配偶者が対象。扶養控除とは併用できません(重複してカウントしない)。
  • 社会保険の扶養: 年収130万円(従業員規模等により106万円)が基準。交通費を含んで判定される点に注意が必要です。
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扶養控除額はいくら?

一般の扶養親族であれば「所得税38万円・住民税33万円」の控除が受けられます。年齢や同居の有無により、最大で所得税63万円・住民税45万円まで増額されます。

年齢・区分別の控除額一覧

区分(年齢) 所得税の控除額 住民税の控除額
一般の扶養親族
(16歳~19歳、23歳~70歳未満)
38万円 33万円
特定扶養親族
(19歳以上 23歳未満)
63万円 45万円
老人扶養親族 ※同居以外
(70歳以上・別居の親など)
48万円 38万円
同居老親等
(70歳以上・同居の親など)
58万円 45万円
  • 特定扶養親族: 教育費がかかる大学生世代(19〜22歳)の手取りを増やすため、控除額が最も高く設定されています。
  • 同居老親等: 70歳以上で、納税者または配偶者と常に同居している直系尊属(父母・祖父母)を指します。病気入院による一時的な別居は同居とみなされますが、老人ホームへの入所は「同居」とはみなされず、老人扶養親族の区分となり、48万円(住民税38万円)の控除となります。

【シミュレーション】節税額の計算例

扶養控除によって実際に安くなる税金(節税メリット)は、おおよそ「控除額 × 税率」で計算できます。

例:年収500万円の会社員が、大学生(特定扶養親族・20歳)を1人扶養する場合

(※所得税率10%、住民税率10%と仮定)

1. 所得税の軽減額
特定扶養控除 63万円 × 所得税率 10% = 63,000円

2. 住民税の軽減額
特定扶養控除 45万円 × 住民税率 10% = 45,000円

3. 年間の節税合計額
63,000円 + 45,000円 = 約108,000円

このように、扶養控除を正しく申告することで、年間約10万円以上の手取り差が生まれるケースもあります。

扶養控除の対象となる扶養親族の要件とは?

その年の12月31日時点で、「16歳以上」「生計を一にしている」「年間の合計所得金額が62万円以下」「青色申告等の事業専従者でない」という4つの条件すべてを満たす親族が対象です。

1. 「136万円の壁」と所得要件

扶養親族になるには、年間の合計所得金額が62万円以下である必要があります。これを給与収入(年収)に換算すると136万円以下となります。

  • アルバイト・パート(給与所得)の場合:
    年収136万円以下(給与収入136万円 - 給与所得控除74万円※ = 所得62万円)

    ※令和8・9年分は給与所得控除の最低保障額69万円に5万円の特例加算(合計74万円)。令和10年分以後は69万円となる見込みのため、給与収入換算は131万円以下となる予定。

  • 年金受給者の場合:
    65歳未満:年金受給額118万円以下
    65歳以上:年金受給額168万円以下 (公的年金等控除を差し引いた後の所得が62万円以下になる額)

ここでの「年収」には、通勤手当(非課税分)は含みません。また、遺族年金や障害年金も非課税所得のためカウントしません。

2. 「生計を一にする」とは(別居・仕送り)

「生計を一(いつ)にする」とは、必ずしも同居している必要はありません。勤務、修学、療養などの事情で別居している場合でも、生活費や学費、療養費などを常に送金している場合は対象になります。

  • 別居の学生・単身赴任: 仕送りの事実があれば認められます。
  • 別居の高齢者: 銀行振込などで定期的に生活費を送っている証明が必要です(現金手渡しは証明が難しいため推奨されません)。
  • 老人ホーム入所: 療養のための入所は「生計を一にする」とみなされますが、前述の通り「同居老親等(加算)」の対象からは外れます。

3. 親族の範囲

6親等内の血族および3親等内の姻族が対象です。自分の子供や親だけでなく、兄弟姉妹、孫、祖父母、配偶者の親なども条件を満たせば対象になります。

4. 年齢要件(16歳以上)

その年の12月31日現在の年齢が16歳以上である必要があります。 16歳未満の子供は「児童手当」の支給対象となるため、現在、所得税の扶養控除の対象外です(ただし、住民税の非課税限度額の計算には人数が含まれるため、年末調整等での申告自体は必要です)。

扶養控除が適用されるメリットとは?

扶養控除の適用内であれば、納税者の「税負担」が減り、手取りが増える等のメリットがあります。

親族を養うための経済的負担を考慮し、税金を安くするための制度が「扶養控除」です。要件を満たして適用されることで、具体的に以下の3つのメリットが得られます。

納税者の所得税・住民税が軽減される

扶養控除が適用されると、課税対象となる所得から38万~63万円(住民税は33万〜45万円)が差し引かれます。 所得が減ったとみなされる分、そこにかかる税率(5%〜45%)を掛け合わせた金額の分だけ、所得税と住民税が安くなります。

結果として手取り金額が増える

税金が軽減されるということは、給与から天引きされる金額が減ることを意味します。 毎月の給与の手取りが増えたり、年末調整で払いすぎた税金が還付金として戻ってきたりするため、納税者(扶養する人)が実際に自由に使えるお金(手取り)が増える点が最大のメリットです。

企業の「家族手当」の支給対象になる可能性がある

多くの企業では、福利厚生の一環として「家族手当(扶養手当)」を設けています。 この手当の支給要件を「所得税法上の扶養親族に入っていること」としている会社は少なくありません。税金が安くなるだけでなく、会社から毎月数千円〜数万円の手当がもらえる可能性がある点も、見逃せないメリットです。

扶養範囲(年収の壁)を超えて外れるデメリットとは?

年収要件(136万円や130万円など)を超えて扶養から外れると、税金や保険料の負担が増し、世帯全体の手取りが減るリスクがあります。

収入が増えることは本来良いことですが、扶養控除の適用範囲を超えてしまった場合には、逆に負担が増えてしまうデメリットが発生します。

扶養者の手取りが減る

扶養控除が適用されなくなると、扶養者(親や配偶者)の課税所得額が38万~63万円高くなります。 課税所得額が増えると、それにかかる所得税や復興特別所得税、住民税が増え、結果として扶養者の手取りが減ります。

被扶養者の負担が増える

被扶養者(子供やパート勤務の妻など)の所得が増えた分に対して、本人にも所得税や住民税が課せられます。 また、年収が130万円を超えて社会保険の扶養からも外れた場合は、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料など)も被扶養者自身が支払わなくてはいけません。所得が増えた分よりも、税金や保険料の負担額のほうが多いケースもあり、本人の手取りが減る可能性があります。

世帯収入が減る可能性がある

扶養者と被扶養者の双方の手取りが減ることで、世帯全体の収入も減る可能性があります(いわゆる「働き損」の状態)。所得税や社会保険の扶養範囲内・外のボーダーライン前後の収入のときは、あえて働く時間を抑えて所得を減らすように調整することで、結果として世帯収入を増やせる(守れる)かもしれません。

令和7年度・令和8年度税制改正による変更点とは?

令和7年(2025年)分より、年収の壁が「123万円」に引き上げられ、さらに令和8年(2026年)分以後は「136万円」へと引き上げられます。

また、扶養控除のルールが段階的に変更されています。実務担当者は、各年の年末調整や確定申告において、以下の変更点に基づいて処理を行う必要があります。

1. 「年収の壁」の引き上げ

基礎控除・給与所得控除等の引き上げに伴い、扶養控除の対象となる年収の上限(いわゆる年収の壁)が、令和7年分は103万円から123万円へ、さらに令和8年分以後は136万円へと引き上げられます。

※個人住民税における所得要件の引き上げ(62万円以下)は、令和9年度分以後の適用となる点に注意してください。

2. 特定親族特別控除の創設

令和7年税制改正によって、「特定親族特別控除」が創設されました。この制度は、大学生年代(19歳以上23歳未満)で、合計所得金額が58万円超123万円以下(令和7年分)/62万円超136万円以下(令和8年分以後)の親族がいる場合に利用できます。

特定親族特別控除では、合計所得金額85万円(令和7年分)/89万円(令和8年分以後)以下であれば、最大となる63万円の控除が受けられます。特定親族特別控除の創設によって、扶養控除の対象を外れた場合でも、一定額以下の年収であれば、段階的な控除が受けられるようになりました。

出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁

扶養控除の申請手続き(年末調整・確定申告)は?

会社員は「年末調整」、個人事業主などは「確定申告」で申請を行います。

給与所得者(会社員・公務員)の手続き:年末調整

会社員や公務員の方は、原則として勤務先で行われる「年末調整」で手続きが完結します。

1.書類の入手(10月〜11月頃)

勤務先から配布される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を受け取ります。近年は紙ではなく、Web上の人事システムで入力する企業も増えています。

2.必要事項の記入
申告書の「B 源泉控除対象親族」欄に、以下の情報を正確に記入します。

  • 氏名・マイナンバー・生年月日・続柄: 正確に記入します。マイナンバーは、会社ですでに管理されている場合は記入不要とするケースもあるため、会社の指示に従ってください。
  • 所得の見積額: ここは「年収(額面)」ではなく「所得」を書きます。収入がない場合は「0」、パート収入がある場合は「給与収入-74万円」の金額を記入してください。計算結果が0円以下(マイナス)になる場合も「0」と記入します。
  • 区分のチェック: 親族の年齢に合わせて「特定扶養親族」「老人扶養親族」「同居老親等」などにチェックを入れます。
  • 16歳未満の子供: 所得税の控除対象ではありませんが、住民税の計算に必要なため、用紙下部の「住民税に関する事項」に忘れずに記入してください。

3.書類の提出

記入した申告書を、会社が指定する期限までに提出します。 ※国外に住む親族や、別居している親などを扶養に入れる場合は、送金の事実を証明する書類(「親族関係書類」および「送金関係書類」)の添付が必要です。

確定申告が必要な場合(個人事業主・申請漏れなど)

個人事業主やフリーランスの方、または会社員でも年収2,000万円を超える方は、ご自身で「確定申告」を行います。また、年末調整で扶養親族の申告を忘れてしまった場合も、後から確定申告をすれば還付を受けられます。

  • 申告期間: 原則として翌年の2月16日から3月15日まで。
  • 記入箇所:
    • 第一表: 「扶養控除」の欄に、控除額の合計金額(例:380,000など)を記入します。
    • 第二表: 「配偶者や親族に関する事項」の欄に、扶養する親族の氏名・マイナンバー・生年月日・続柄などを詳細に記載します。
  • 申請方法: 税務署の窓口や郵送のほか、国税庁の「e-Tax(電子申告)」を利用すれば、スマホやPCから自宅で手続きが可能です。

扶養控除の要件を正しく理解し、従業員への適切な案内を

扶養控除は、従業員の手取り額を大きく左右する重要な制度であり、人事労務担当者には正確な理解が求められます。

実務においては、まず対象となる基準が「16歳以上かつ年収136万円以下」であることを前提に、控除額が対象者の年齢や同居の有無によって38万円から63万円まで変動することを正しく把握しておく必要があります。また、別居していても常に生活費を送金していれば対象になる点や、従業員が混同しやすい「社会保険の扶養(130万円の壁)」とは基準が異なる点についても、適切に案内しなければなりません。

特に「別居親族の送金証明」や「学生アルバイトの年収超過」は、年末調整での申告ミスや後日の再計算が発生しやすいポイントです。年末調整の時期が来る前に社内アナウンスで注意喚起を行い、スムーズな回収・確認業務を目指しましょう。令和8年度税制改正大綱により「136万円の壁」への引き上げが決定しているため、常に最新情報をキャッチアップし、実務に反映させることが大切です。

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