• 更新日 : 2026年7月3日

職場のメンタルヘルス対策とは?予防法や企業事例を解説

Pointメンタルヘルス対策とは何をすればよいのでしょうか?

法的義務と経営リスクの両面から、従業員の心の健康を守る取り組みです。

  • 労働契約法の安全配慮義務が法的な根拠となる
  • 労働者50人以上の事業場はストレスチェックを行う
  • 予防は一次・二次・三次の3段階に分けて進める

経営層が率先し、相談しやすい環境を整えることが定着の鍵となります。

職場において、従業員がメンタルヘルスの不調に陥らないよう対策するのは、企業の大きな損失・業績悪化を防ぐうえで重要な課題です。

厚生労働省の「労働安全衛生調査(2024年)」によれば、メンタルヘルス不調が原因で「連続1カ月以上の休業」または「退職した」従業員がいた事業所は、12.8%に達すると公表されています。

本記事では、メンタルヘルスの具体的な対策法や実施時のポイントを解説します。

参考:労働安全衛生調査(令和6年)|厚生労働省

メンタルヘルス対策が企業に求められる理由

メンタルヘルス対策は、法律や経営上の理由から実施が求められる取り組みです。

ここでは、メンタルヘルス対策が企業に求められる理由を解説します。

安全配慮義務など法的根拠

労働契約法にもとづく安全配慮義務があるため、メンタルヘルス対策が必要です。

同法第5条では、以下のように定められており、これには心の健康も含まれます。

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」

さらに、労働安全衛生法第66条の10にて、労働者数50人以上の事業場はストレスチェックの実施が義務づけられています。なお、2028年4月1日からは、労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックが義務化されます。

参考:労働契約法|e-GOV法令検索
参考:労働安全衛生法|e-GOV法令検索
参考:「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」スタートガイド|厚生労働省

生産性低下・人材流出のリスク

メンタル不調を放置すると、生産性低下や貴重な人材の流出につながります。

2022年に実施された横浜市立大学の研究では、メンタル不調による生産性低下の経済的損失は、年間7兆6,000億円にも上るとされました。

また、厚生労働省の2024年「労働安全衛生調査」によると、過去1年間にメンタルヘルス不調で退職した労働者がいた事業所は6.2%でした。

メンタルヘルスの不調による離職は、企業の業績悪化や人員確保のコスト増加につながります。そのため企業にとって、メンタルヘルス対策は不可欠な取り組みです。

参考:メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に|横浜市立大学
参考:令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況|厚生労働省

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メンタルヘルス不調の主な原因

メンタルヘルス不調は、職場のさまざまなストレスが要因です。

厚生労働省の「労働安全衛生調査(2024年)」では、仕事や職業生活に強いストレスを感じている労働者の割合は68.3%でした。主なストレスの原因は、以下のとおりです。

  • 仕事の量:43.2%
  • 仕事の失敗、責任の発生等:36.2%
  • 仕事の質:26.4%
  • 対人関係(セクハラ・パワハラを含む):26.1%
  • 役割・地位の変化等(昇進・昇格、配置転換等):19.8%

とくに、仕事の量や責任などはストレスにつながりやすい要因です。

参考:第17表 仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスの有無 及び内容(主なもの3つ以内)別労働者割合|厚生労働省

メンタルヘルス対策における3つの予防段階

メンタルヘルス不調を予防するには、心の健康ならではの特性の理解が必要です。

  • 一次予防(未然防止): ストレス源を減らし、不調者の発生自体を抑える
  • 二次予防(早期発見): 重症化する前に対応し、長期休職への移行を防ぐ
  • 三次予防(復職・再発防止):スムーズな職場復帰を支え、再休職の悪循環を断つ

予防は「一次・二次・三次」の3段階に分けて進めると効果的で、各段階での予防について解説します。

参考:職場における心の健康づくり|厚生労働省

一次予防|メンタルヘルス不調を未然に防ぐ

一次予防は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐための取り組みです。

狙いは、下記の2つです。

  • 従業員がストレスに気づいて自ら対処できる状態を作ること
  • ストレスの原因自体を減らすこと

主な取り組み例は以下のとおりです。

  • セルフケアに関する研修やセミナーを実施し、ストレスへの気づき方や対処法、生活習慣の重要性を伝える
  • メンタルヘルスに関する正しい知識を、社内報やeラーニングで継続的に提供する
  • ストレスチェックの結果を本人に伝え、ストレス状態に気づく機会を作る
  • 時間外労働の削減や有給休暇の取得促進、適切な人員配置により、業務量・業務負担を調整する
  • ハラスメント防止の方針を明確にする
  • 上司と部下が定期的に面談し、業務の進め方や悩みを共有できる機会を設ける

二次予防|メンタルヘルス不調を早期に発見・適切につなぐ

二次予防は、不調を早期に発見し、適切に対応する取り組みです。

狙いは、下記の2つです。

  • 従業員自身が早く気づいて相談できるようにすること
  • 管理監督者や産業保健スタッフが兆候を見逃さず支援につなげること

主な取り組み例は以下のとおりです。

  • メンタルヘルス不調のサインや早めに相談する大切さを、研修・資料で従業員に伝える
  • 利用できる社内外の相談窓口を周知し、秘密が守られる体制を示して相談への心理的なハードルを下げる
  • 高ストレスと判定された従業員に、面接指導の利用を個別に促す
  • 管理監督者が部下の表情や行動、業務の遂行状況の変化に気づき、早めに声をかける
  • 睡眠障害や食欲不振などの訴えがある場合は、産業医や医療機関の受診を促し、業務負荷の軽減や配置を見直す

三次予防|メンタルヘルス不調からの職場復帰と再発防止を支援

三次予防は、休業した従業員の職場復帰を支援し、再発を防ぐ取り組みです。

狙いは、下記の2つです。

  • 復帰する本人が安心して働けるよう支えること
  • 受け入れる職場側の体制を整えること

主な取り組み例は以下のとおりです。

  • 復職前に本人と面談し、不安や体調について聞き取る
  • 本人に、主治医の指示に従い治療を続ける大切さを伝える
  • 復職後に体調や悩みを相談できる窓口を案内し、一人で抱え込まないよう働きかける
  • 産業医や主治医と連携し、本人の回復状況に応じた復職時期・勤務条件を定めた復職計画を作成する
  • 復職前に上司・関係者が本人の状況や必要な配慮を共有し、職場見学・試し出勤で環境に慣れる機会を設ける
  • 復職後も定期的に面談を行い、産業医や保健師が状況を確認しながら、勤務時間や業務内容を調整する

メンタルヘルス対策を効果的に行うポイント

職場のメンタルヘルス対策を形だけで終わらせず、効果が出る取り組みにするには、組織全体で共通認識をもち、継続的に進めることが大切です。

ここでは、メンタルヘルス対策を効果的に行うポイントを解説します。

経営層が率先して取り組む

経営層はメンタルヘルス対策を経営課題の一つとして位置づけ、率先して取り組みましょう。

経営層の理解や行動がなければ、現場の協力が得られず形骸化するリスクがあります。経営層が自ら心の健康づくりに関する方針や計画を策定し、経営課題として社内に発信すると、現場の意識改革と施策の定着につながりやすくなります。

企業全体の目標とし、必要な予算や人員を適切に配分したうえで、継続的な取り組みとして組織全体に浸透させましょう。

4つのケアを組み合わせて取り組む

職場のメンタルヘルス対策では、複数のケアを組み合わせることが重要で、厚生労働省の指針では、4つのケアが示されています。

管理監督者や専門家、外部機関がそれぞれ異なる役割を担うことで、見落としを防げます。

メンタル不調の予防策について詳しく知りたい人は、関連記事をご覧ください。

セルフケア

労働者自身が自らストレスに対処することで、ほかのケアが効果を発揮するため、メンタルヘルス対策の土台です。

具体的なケアとしては、深呼吸やストレッチなどのリラクゼーション技法が効果的です。

事業者は、外部講師によるセルフケア研修の定期開催や、eラーニングを用いたストレス対処法の継続発信を行いましょう。

また、従業員が休憩室でリラックスできるよう支援するのも有効です。

ラインによるケア

日常的に部下と接しており、不調のサインや職場環境の変化に気づきやすい管理監督者が行うケアです。

具体的には、職場環境の把握・改善や部下からの相談対応、不調者の早期発見、職場復帰の支援を担います。

事業者は、従業員からの相談を人事労務や産業医につなぐルートをマニュアル化しましょう。あわせて、不調のサインを察知する方法や傾聴技術を学ぶ研修の定期的な実施も大切です。

さらに、管理監督者がラインケアの時間を確保できるよう、業務量やマネジメント対象人数を適正化するなど環境を整備しましょう。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア

産業医や保健師、衛生管理者などが連携して行うケアです。

具体的には、心の健康づくり計画の立案・実施、労働者や管理監督者への教育研修、個別の相談対応などを担います。

事業者は、専門スタッフが現場の管理監督者と円滑に情報共有や役割分担を行えるよう、相談窓口の設置や報告ルートを明確にした社内体制を整備しましょう。

事業場外資源によるケア

事業場外資源によるケアは、外部の専門機関や専門家を活用して行うケアです。

具体的には、産業保健総合支援センターや地域産業保健センターへの相談、外部のEAP機関が提供するカウンセリングサービスの導入などを活用します。

事業者は、労働者が外部機関をいつでも利用できるよう、日頃から連絡体制を構築し、相談先を従業員へ周知する体制を整備しましょう。

相談しやすい職場環境に整える

従業員がためらわずに相談できる職場環境の構築も大切です。

どれほど充実した相談窓口を設置しても、職場の雰囲気やプライバシーへの不安から利用を躊躇されては、不調の早期発見・対処につながりません。

具体的には、以下の取り組みが必要です。

  • 相談しやすい雰囲気・安心感の醸成
    日頃から上司が部下の話を丁寧に聴く姿勢を示し、業務の進め方や個人の悩みを気軽に相談できる空気感を作る
  • 個人情報の厳重な管理体制の徹底
    相談内容やストレスチェックの結果など個人情報を厳重に管理し、本人の同意なく他者に共有されない運用を徹底する

「何でも話せる関係性」と「プライバシーが守られる安心感」の双方を確立すると、組織への信頼を生み出し、不調の早期発見・回復につながります。

定期的に振り返り改善する

メンタルヘルス対策は、定期的な振り返りと改善が必要です。

職場の環境や従業員の状況は変化するため、施策が現状に適しているかを継続的に検証しなければ、取り組みが形骸化してしまうおそれがあります。

具体的には、定期的に下記を確認し、施策の効果や新たな課題を抽出します。

  • ストレスチェックの集団分析結果
  • 休業者数
  • 相談件数の推移
  • 従業員の声 など

効果が不十分な場合は施策を見直し、より自社の実態に即した対策を目指しましょう。

メンタルヘルス対策に取り組む企業事例

メンタルヘルス対策を自社に取り入れる際は、他社の事例が参考になるでしょう。

ここでは、メンタルヘルス対策に取り組む企業事例を紹介します。

株式会社八天堂

株式会社八天堂は、従業員の心の状態を可視化し、早期に対応できるよう以下の取り組みを実施しています。

  • 多角的なアンケートとストレスチェックの実施
    毎年の社内アンケートで働く環境への満足度や仕事への意欲、上司からのサポート状況を把握。外部機関による健康習慣アンケートやストレスチェックも組み合わせて心身の状態を測定する
  • 専門家と連携した早期相談体制の構築
    産業医の助言のもとで臨床心理士の在籍する病院と提携。不調の兆候が見られる社員に対しては、会社負担で臨床心理士によるオンライン相談を受けられる

結果、社内アンケートでは「上司や職場が自分を一人の人間として気遣ってくれている」と回答した従業員が84%に上りました。

不調の兆候に対して「会社負担の専門家相談」という具体的な解決策まで用意しているなど、不調を早期に相談できる環境づくりにおいて参考になるでしょう。

参考:株式会社八天堂(広島県三原市):職場のメンタルヘルス対策の取組事例|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

株式会社ニチレイ

株式会社ニチレイは、東北・関西・九州にエリア保健師を配置し、本社保健師と月1回情報を共有しています。

50人以上の事業所に産業医を置き、医療職会議で産業医と保健師の連携を深めてきました。保健師が動画で解説するメンタルヘルス関連のeラーニングは、社内ネットに接続できる従業員の9割以上が視聴しています。

従業員が「自分ごと」として捉えやすい情報発信の工夫が、自社に対策を導入する際の参考になるでしょう。

参考:株式会社ニチレイ(東京都中央区):職場のメンタルヘルス対策の取組事例|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

メンタルヘルス対策に関するよくある質問

ここでは、メンタルヘルス対策において、よくある質問について解説します。

ストレスチェックを実施しない場合、罰則はありますか?

ストレスチェックを実施しなくても、法的な罰則はありません。

ただし、ストレスチェックは50人以上の労働者を使用する事業場には、結果を労働基準監督署へ報告する義務があります。怠ると、労働安全衛生法第100条と120条にもとづき50万円以下の罰金が科せられる規定です。

なお、2025年5月の法改正に伴い、2028年4月1日からは50人未満の事業場にも実施が義務づけられます。

参考:ストレスチェック制度について(労働者数50人未満の事業場)|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

参考:労働安全衛生法 | e-Gov 法令検索

メンタルヘルス不調者にはどのような対応をしたらいいですか?

本人の話を丁寧に聞き、産業医や相談窓口などの専門家につなぎましょう。

メンタルヘルスの不調には、医学的な判断やプライバシーへの高度な配慮が必要であり、社内関係者だけで抱え込むと症状の悪化・労務トラブルにつながるリスクがあります。

本人の同意を得たうえで健康情報を適切に管理し、産業医や社内外の相談窓口につなぐと同時に、業務量の調整や面談を実施しましょう。

メンタルヘルス不調者への具体的な対応手順は、関連記事をご覧ください。


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