- 更新日 : 2026年7月2日
ジョブ型人事とは?制度のメリット・デメリットや導入手順を解説
ジョブ型人事は、職務内容や責任範囲を明確にして、採用・配置・評価・処遇を決める人事制度です。
- 職務内容や必要なスキルをジョブディスクリプションで整理する
- 年齢や勤続年数より、職務の内容や成果を評価に反映する
- 導入時は、既存の人事制度や労働法制との整合性を踏まえる
移行の際は、職務の洗い出しから評価・報酬制度の見直しまで段階的に進めましょう。
ジョブ型人事は、職務内容や役割を明確にし、それに基づいて採用・配置・評価・処遇を考える人事制度です。ジョブ型人事の導入を検討する企業もあり、その背景には、専門人材の確保や社員のスキルに応じた配置、評価基準の明確化といった人事上の課題があります。
本記事では、ジョブ型人事の基礎知識から導入の背景、メリット・デメリット、そして実務的な導入手順までを解説します。
目次
ジョブ型人事とは、職務内容を明確にして人を配置する仕組み
ジョブ型人事とは、職務内容や責任範囲を明確にしたうえで、人材の採用・配置・評価・処遇を決める仕組みです。担当業務や責任範囲、必要なスキルなどをジョブディスクリプション(職務記述書)で整理し、その職務に適した人材を配置します。
評価や処遇では、年齢や勤続年数よりも、職務の内容や責任、成果が重視されることがあるのが特徴です。役割が明確になることで、社員は期待される成果を理解しやすくなり、企業側も評価基準を設定しやすくなります。
ただし、日本で導入する際は、既存の人事制度や労働法制との整合性を踏まえて運用することが重要です。
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ジョブ型人事とメンバーシップ型人事の違いは何か?
ジョブ型人事とメンバーシップ型人事の違いは、仕事と人のどちらを起点にするかです。
メンバーシップ型人事は、職務や勤務地などを限定せずに採用・配置することがある日本型雇用の考え方です。職務や勤務地を限定しない場合、転勤やジョブローテーションが行われることも珍しくありません。一方、ジョブ型人事では、先に職務内容や必要なスキルを定め、その職務に合う人材を採用・配置します。
報酬面では、メンバーシップ型では能力や経験をもとに給与を決める職能給が用いられる傾向があります。一方、ジョブ型では、職務の内容や責任の重さに基づいて給与を決める職務給が用いられるのが一般的です。
メンバーシップ型雇用の特徴について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
日本企業でジョブ型人事が注目されている理由
長年メンバーシップ型を前提としてきた日本企業のなかで、ジョブ型人事を検討する動きが見られます。そこには、日本社会が直面している構造的な変化や、ビジネスのグローバル化が関係しています。
職務内容や必要なスキルを明確にすれば、採用・配置・評価の基準をそろえやすくなるでしょう。ここでは、日本企業でジョブ型人事が注目されている理由を解説します。
1. 専門人材やデジタル人材を採用しにくくなっている
従来の日本企業では、新卒一括採用で人材を確保し、入社後に時間をかけて育成する方法が取られてきました。しかし、少子高齢化などを背景に、若手人材の採用競争が続くなか、即戦力となる専門人材を外部から獲得する必要性が高まりました。
従来のように入社後の配属や育成を前提とするだけでは、必要なスキルを持つ人材を確保しにくい場合があります。
そのため、職務内容や必要なスキルを明確にし、職務に合う人材を採用・配置するジョブ型人事が注目されています。
2. 年功的な給与制度では若手登用や成果反映が難しい
年齢や勤続年数を重視する給与制度では、若手や中途入社者が担当業務で成果を出しても、昇給や昇進へすぐに反映されない場合があります。
たとえば、売上拡大や業務改善に貢献しても処遇が変わらなければ、評価への納得感が低下しかねません。こうした課題に対応するため、職務内容や役割の重要度を明確にし、評価・処遇に反映するジョブ型人事が注目されています。
3. テレワークで働く過程だけを評価しにくくなっている
オフィス勤務では、上司が勤務態度や周囲との関わり方を日常的に確認しやすい面がありました。しかし、テレワークでは仕事のプロセスが見えにくくなり、従来の曖昧な評価基準では評価者によって判断が分かれる可能性があります。
そのため、職務内容や期待する成果を明確にして評価するジョブ型人事が注目されています。
4. グローバル拠点と人事制度をそろえやすい
海外拠点を持つ企業では、日本本社と現地法人で評価基準や等級制度が異なり、人材配置や登用の判断が難しくなる場合があります。海外拠点では、職務やポジションを基準にした人事制度が用いられることもあるため、職務内容や必要なスキルを明確にしておくことが重要です。
基準がそろっていれば、専門性を持つ人材に仕事内容や処遇を説明しやすくなり、拠点をまたいだ異動や登用も検討しやすくなります。そのため、国内外で人材を比較・配置しやすくする考え方として、ジョブ型人事が注目されています。
ジョブ型人事の3つのメリット
ジョブ型人事を導入すると、企業と社員の双方にさまざまなメリットが期待できます。職務や役割が明確になることで、採用時に求める人材像を示しやすくなり、評価や給与の基準もわかりやすくなります。
社員が将来の役割を考える材料にもなるため、主なメリットを確認しましょう。
1. 即戦力人材を採用しやすくなる
ジョブ型人事では、職務内容や必要なスキル、処遇条件を明確にしたうえで採用を進めます。そのため、ITやデータ分析、法務など、特定の職務に必要なスキルを持つ人材に仕事内容を伝えやすいのが特徴です。
求職者も自分の経験やスキルが職務に合うか判断しやすいため、採用後のミスマッチを抑えやすくなります。新規事業や専門性が必要な業務でも、求める役割を明確にして人材を探しやすくなる点がメリットです。
2. 評価と給与の納得感を高めやすい
ジョブ型人事は、評価や給与の理由を説明しやすい点がメリットです。職務内容や役割、必要なスキルが明確になるため、社員はどの職務が給与にどう反映されるのか、どのスキルや成果が評価につながるのかを理解しやすくなります。
たとえば、管理職の職務要件に部門予算の管理経験が含まれていれば、社員は目指す役割に向けて必要な経験を把握できるでしょう。会社側も、職務や成果に応じて給与を決める理由を説明しやすくなります。
3. 社員が自分のキャリアを考えやすくなる
ジョブ型人事は、社員が自分のキャリアを考えやすくなる点がメリットです。
職務ごとに仕事内容や必要なスキル、責任範囲が明確になるため、社員は目指す役割に向けて必要な経験を把握しやすくなります。たとえば、営業担当からマネージャーを目指す場合、売上管理に加えて、メンバー育成や予算管理の経験が必要だと確認できるでしょう。
会社側も、社員の希望や現在の経験・スキルを踏まえて、次に目指せる職務を示しやすくなります。
ジョブ型人事の4つのデメリット・注意点
ジョブ型人事は職務や役割を明確にしやすい一方で、運用方法によっては現場に負担が生じる場合があります。導入前に注意点を整理すると、職務範囲の決め方や人材育成、ジョブディスクリプションの管理などで起こりやすい課題を把握しやすくなります。
1. 職務範囲を狭くしすぎるとチームワークに影響する
職務範囲を狭く運用しすぎると、チーム内の連携に影響する場合があります。従来の日本企業では、明確な担当外の業務でも周囲が協力して対応する場面がありました。
一方、ジョブ型人事で職務内容を厳密に区切ると、「自分の職務ではない」と考える社員が出て、部署をまたぐ業務や担当が曖昧な業務の調整に時間がかかる可能性があります。たとえば、複数部署に関わる顧客対応で役割分担が決まっていないと、対応の押し付け合いが起こりかねません。
導入時は、職務範囲だけでなく、部署間で協力する業務や例外対応の進め方も決めておくことが大切です。
2. ゼネラリスト育成や柔軟な異動が難しくなる
ジョブ型人事では職務ごとに役割や責任範囲を定めるため、異動や育成の設計には注意が必要です。
専門性を意識した配置はしやすい一方、職務を固定的に運用すると、幅広い業務を経験する機会が少なくなる場合があります。たとえば、営業や企画、人事などを横断して経験する機会が少ないと、複数部署を見ながら判断できるゼネラリストや幹部候補を育てにくくなりかねません。
専門人材だけでなく、全社の動きを理解して調整できるゼネラリストをどう育てるかも考えておくことが重要です。
ゼネラリストの役割や育成方法を詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
3. ジョブディスクリプションの更新に手間がかかる
ジョブ型人事では、職務ごとに仕事内容や責任範囲、必要なスキルを整理し、変化に応じて更新する手間がかかります。
新規事業の開始や部署再編によって役割が変わると、ジョブディスクリプションの見直しが必要になるためです。
たとえば、営業担当にデータ分析の役割が加わる場合、求める成果や必要な経験も書き換える必要があります。職務の数が増えるほど確認作業も増えるため、人事部門と現場管理職が連携し、実際の業務内容や責任範囲を反映することが大切です。
ジョブディスクリプションの具体的な書き方やテンプレートを確認したい方は、以下の記事も参考にしてください。
4. 制度が活用されない場合がある
ジョブ型人事は、制度を導入しても現場で使われなければ、形だけの運用になる点に注意が必要です。
ジョブディスクリプションを作成しても、評価面談や目標設定、配置判断に使われなければ、実際の業務と制度が結びつきにくくなります。また、日本では職務がなくなったことだけを理由に、直ちに解雇できるとは限りません。
整理解雇では配置転換などによる解雇回避の努力も判断材料になるため、雇用維持に向けて別の職務を検討する場面があります。そのため、職務を基準に人事を決めるジョブ型人事を徹底しにくい面もあると理解し、評価・配置での使い方や職務変更時の対応ルールを決めておくことが大切です。
ジョブ型人事の導入前に確認したい4つのポイント
ジョブ型人事を導入する際は、制度の内容だけでなく、自社で運用できるかを事前に確認することが大切です。目的や経営戦略とのつながり、等級・報酬制度との連動、評価や異動のルール、社員への説明が不十分だと、制度が現場に定着しにくくなります。主な確認ポイントを見ていきましょう。
1. 導入目的と経営戦略がつながっているか
ジョブ型人事を導入する前に、何のために導入するのかを明確にすることが大切です。
専門人材の採用を強化したいのか、若手登用を進めたいのか、事業変革に合わせて人材配置を見直したいのかによって、職務定義や評価・処遇の設計は変わります。
たとえば、デジタル領域を強化したい企業では、必要な職務やスキルを定めたうえで、人材をどう確保し、どの基準で評価して配置するかまで整理する必要があります。
2. 職務内容と等級・報酬制度を連動できるか
ジョブ型人事を導入する前に、職務内容と等級・報酬制度を連動できるか確認する必要があります。
職務内容や責任範囲をもとに等級を決め、その等級に応じて評価や報酬を考えられる状態にすると、社員は自分の役割と処遇の関係を把握しやすくなります。たとえば同じ営業職でも、大口顧客を担当するのか、新規開拓を担うのか、チーム管理まで行うのかによって、等級や報酬を分ける設計が考えられるでしょう。
評価者による判断のばらつきを抑えるため、評価基準や等級・報酬を説明するルールも整えておくことが大切です。
3. 評価制度や人事異動の運用ルールを整えられるか
ジョブ型人事を導入する前に、評価や人事異動の判断基準を明確にしておく必要があります。
職務内容を定めても、評価基準や異動の基準が曖昧なままだと、社員はどの基準で評価され、異動が決まるのかを十分に理解できません。たとえば、管理職へ登用する場合、求める成果や経験をあらかじめ示しておくと、判断の理由を説明しやすくなります。
人事異動では、会社の人員計画だけでなく、職務内容や本人のキャリア希望との整合性も確認することが重要です。
4. 社員への説明と社内コミュニケーションを十分に行えるか
ジョブ型人事の導入において、制度変更の理由や評価・給与・異動への影響を社員に説明できるか確認しておきましょう。
職務内容や評価基準、給与、異動の考え方が曖昧なままだと、社員は自分の役割や処遇がどう変わるのかを理解しにくくなります。全社説明会で制度の全体像を伝えたうえで、管理職向けの説明や個別面談を行い、現場ごとの疑問を把握しましょう。
導入前から質問や相談の機会を設け、社員の疑問を確認しながら説明を続けることが大切です。
ジョブ型人事へ移行する6つの手順
ジョブ型人事へ移行する際は、制度を一度に変えるのではなく、職務の整理から評価・報酬、人事データの運用まで段階的に進めることが大切です。手順を確認しておくと、現場の混乱を抑えながら、自社に合う移行計画を立てやすくなります。
1. 経営戦略に必要な職務を洗い出す
ジョブ型人事へ移行する際は、まず経営戦略の実現に必要な職務を洗い出します。
部署ごとの業務内容や役割、責任範囲を整理すると、どの職務を明確にするか判断しやすくなります。たとえば、海外展開を進める企業では、現地法人管理や海外営業などの職務を洗い出したうえで、それぞれに必要な語学力や交渉経験を確認しましょう。
実際の業務とずれた職務定義にしないため、人事部門だけで決めず、各部署の管理職や社員から業務内容を聞き取ることが大切です。
2. ジョブディスクリプションを作成する
ジョブ型人事を導入する際は、まずジョブディスクリプションを作成しましょう。
対象となる職務を洗い出し、それぞれの役割、責任範囲、必要なスキル、権限、期待される成果などを言語化する必要があります。現場のマネージャーや担当者に仕事内容や責任範囲を確認し、実際の業務に合う内容にすることが重要です。
また、事業内容や組織体制が変わったときに更新できる仕組みを整えておかないと、ジョブディスクリプションが実際の業務とずれやすくなります。
3. 等級制度・報酬制度・評価制度を見直す
次に、作成したジョブディスクリプションをもとに、等級制度・報酬制度・評価制度を見直します。
その際は、社内の公平性だけでなく、外部労働市場の賃金水準も参考にすることが大切です。外部の賃金水準と大きくずれると、採用や定着に影響する場合があります。
職務の難易度や重要度に応じてグレードを設定し、評価や報酬の理由を説明しやすい制度に整えます。
4. 管理職から段階的に導入する
ジョブ型人事へ移行する際は、全社員へ一度に適用せず、管理職から段階的に導入できるか確認することが大切です。管理職は役割や責任範囲を比較的整理しやすい場合があり、職務内容と評価基準・報酬レンジが合っているかを確認しやすくなります。
たとえば、部長・課長層でジョブディスクリプションを作成し、職務内容と評価基準・報酬レンジにずれがないかを確認しましょう。運用上の課題を修正しながら対象を広げると、現場の疑問や改善点を反映しやすくなります。
5. 社員説明と移行期間を設ける
ジョブ型人事へ移行する際は、社員説明と移行期間を設ける必要があります。
評価や給与、役割への影響を社員が理解しないまま進めると、制度変更の理由が伝わりにくくなるためです。たとえば、給与や手当が変わる社員には、変更理由や適用時期を説明したうえで、一定期間の給与差を調整する措置を検討します。
ただし、移行措置を長く続けると、新しい等級や給与基準を適用しにくくなる場合があるため、期間や対象をあらかじめ決めておくことが大切です。
6. 人事データと給与計算の運用ルールを整える
ジョブ型人事へ移行する際は、人事データと給与計算の運用ルールを整える必要があります。
職務内容や等級、評価結果、給与の基準が別々に管理されていると、職務変更や異動によって報酬が変わる際に、給与への反映漏れや反映時期の違いが起こる可能性があります。たとえば、職務変更の翌月から新しい給与を反映するのか、次回評価後に反映するのかを決めておくことが大切です。
給与に正しく反映できるよう、ジョブディスクリプションと等級、評価、給与の基準をひも付け、手当の扱いも整理しておきましょう。
ジョブ型人事の導入後に見直したい3つの人事・給与管理
ジョブ型人事は、導入後も職務や等級、給与情報を継続して見直すことが大切です。事業内容や組織体制が変われば、必要な職務や責任範囲も変化します。
人事・給与管理の方法を確認しておくと、異動や昇格、職務変更があった際にも、評価や給与計算へ反映しやすくなります。
1. 職務・等級・給与情報を更新できる状態にする
ジョブ型人事の導入後は、職務・等級・給与情報を継続して更新できる状態を整えておくことが大切です。職務内容や等級、評価結果、給与の基準をひも付けて管理すると、職務変更や昇格があった際に、等級や給与へ反映しやすくなります。
たとえば、専門職から管理職へ役割が変わった場合は、職務内容に合わせて等級や給与の基準を見直す必要があります。給与情報を見直す際は、自社の基準に加えて、職種や役割に応じた外部労働市場の賃金水準も確認しましょう。
2. 異動・昇格・職務変更を給与計算へ反映する
ジョブ型人事の導入後は、異動・昇格・職務変更を給与計算へ反映する運用を整えましょう。
職務が変わる場合は、ジョブディスクリプションを確認し、等級や給与の基準、手当の扱いを見直します。たとえば、担当者からチームリーダーへ変わる場合は、責任範囲に合わせて給与の基準や手当を確認することが求められます。
給与計算に反映する際は、適用時期や承認者、変更する項目をあらかじめ決めておくことが大切です。
3. ジョブディスクリプションの見直し時期を決める
ジョブ型人事の導入後は、ジョブディスクリプションの見直し時期をあらかじめ決めておきましょう。
半期や年度の始まりに対象となるジョブディスクリプションを確認し、組織再編や新規事業の開始で職務内容や役割が変わった場合は、個別に更新する流れにしておきましょう。見直しのタイミングを決めておくと、実際の業務内容とのずれを抑えやすくなります。
たとえば、営業職にデータ分析の業務が加わった場合は、業務内容だけでなく、等級や評価基準、給与の基準も見直す必要があります。
こうした情報を表計算ソフトや複数ファイルで管理する場合は、更新担当者や承認ルート、給与への反映時期を決めておかないと、更新漏れや反映時期のずれが生じかねません。
ジョブディスクリプションを見直す際は、職務内容や評価基準だけでなく、給与・手当・福利厚生を含めた処遇全体との整合性も確認しましょう。住宅手当や社宅制度などの福利厚生を見直す場合は、対象者や適用条件、給与への反映方法を整理しておくことが大切です。
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