- 更新日 : 2025年11月13日
備品発注のやり方は?オフィスの効率化と管理のコツを解説
オフィスの備品発注は、適切な手順と管理体制を整えることで、業務の停滞を防ぎ効率化できます。これにより、無駄なコストの削減や誤発注のリスク低減にもつながるでしょう。
「必要な時に限ってコピー用紙がない」「ボールペンの在庫がいくつあるかわからない」といったオフィスの悩みは、備品発注のやり方を見直すことで解決できるかもしれません。
本記事では、備品発注の基本的な流れから、管理の「見える化」、さらには効率化のポイントまでを、会計処理(仕訳)にも触れながらわかりやすく解説します。
目次
備品発注とは?消耗品との違いは?
備品の発注とは、オフィス運営や業務遂行に必要な物品(備品)を購入・手配する業務全般を指します。
備品と似た言葉に「消耗品」がありますが、会計上(税務上)は区別して扱われますので、この違いを理解しておきましょう。
備品と消耗品の会計上の違い
会計処理において、「備品」と「消耗品」は、その使用期間や取得価額(購入金額)によって区別されます。
一般的に10万円未満または使用可能期間1年未満は原則「消耗品費」で即時費用できます。例えば、文房具(ペン、ノート)、コピー用紙、トイレットペーパーなどがこれにあたります。
20万円未満は「一括償却資産(3年均等)」の選択肢があり、30万円未満は中小企業者等なら少額減価償却資産の特例で取得年度に全額損金とできる場合があります(年上限300万円、明細の申告添付要)。。
一方で、使用期間が1年以上であり、かつ取得価額が10万円以上のものは「備品(勘定科目としては「工具器具備品」等)」として資産に計上します。例としては、パソコン、デスク、応接セット、複合機等が該当します。
資産として計上された備品は、原則として「減価償却」という手続きを経て、使用可能期間(法定耐用年数)にわたって分割して費用化していきます。
自社方針を会計処理規や細則に定めて適切に運用していきましょう。
この記事で主に扱う備品の発注は、日常的に発生する文房具やコピー用紙などの「消耗品」の発注業務をイメージしていますが、会計上の「備品」の発注も含まれるものとして解説を進めます。
備品発注の基本的なやり方は?
備品発注の基本的なやり方(流れ)は、①必要性の把握と申請、②発注先の選定と発注書(メール)の作成、③納品と検収、④支払いと会計処理の4ステップで進みます。
STEP1:必要な備品を確認し、発注申請を行う
まず、どの備品がどれくらい不足しているか、あるいは必要かを把握します。
日々の業務の中で「コピー用紙がなくなりそう」「Aさんのデスクチェアが壊れた」といったケースが発生するでしょう。
小規模オフィスでは、担当者が目視で在庫を確認して発注判断をすることもありますが、発注漏れや重複発注を防ぐには「申請ルール」を設けるのが確実です。
申請方法としては、各部署で「備品発注カード」や「発注依頼ノート」に記入する方法のほか、ビジネスチャット(例:Slack, Microsoft Teams)やGoogleフォームを使って申請内容をまとめる方法もあります。
いずれの方法でも、備品の申請をルール化することで在庫状況を「見える化」し、管理の精度を高めることができます。
STEP2:発注先を選定し、発注書やメールを作成する
申請内容が承認されたら、次に実際の発注を行います。すでに取引先が決まっている場合は、登録済みの業者に連絡します。
新規の備品や高額な購入では、複数業者から相見積もりを取ることもあるでしょう。
発注手段は、電話、FAX、専用の発注サイト(アスクル、たのめーる、Amazonビジネスなど)、あるいはメールで行います。
備品発注メール(発注書)の記載事項
発注メールを送る際は、認識の齟齬による誤発注を防ぐため、必要な情報を明確に伝える必要があります。発注書や発注メールには、最低限以下の項目を記載しましょう。
- 発注日
- 発注者(自社名、担当者名、連絡先)
- 発注先(会社名、担当者名)
- 商品名(型番・品番)
- 数量
- 単価・合計金額
- 希望納期
- 納品場所
- 支払い条件(例:請求書払い、月末締め翌月末払い など)
最近では、取引先が用意している発注サイトを利用するケースが主流ではないでしょうか。サイトを利用する場合、発注履歴がデータとして残るため、管理がしやすい利点があります。
STEP3:納品された商品を確認(検収)する
商品が納品されたら、必ず内容確認(検収)を行いましょう。
検収とは、届いた商品が発注内容と合っているか(商品、数量、仕様など)、破損や不良がないかを確認する作業です。納品書と発注書(または発注メールの控え)を照らし合わせながら確認します。
もし問題が見つかった場合は、すぐに発注先に連絡し、交換や返品の対応を依頼します。
また、適格請求書の要件(登録番号・税率区分・税額等)と電帳法の保存要件を満たす証憑管理(PDF保管・検索要件)を実施可能な仕組み作りも徹底しましょう。
STEP4:支払い処理と会計仕訳を行う
検収が無事に完了し、発注先から請求書が届いたら、経理担当者が支払い処理を行います。
同時に、この取引を会計ソフトなどに入力し、「仕訳」を行います。
例:消耗品(コピー用紙5,000円)を購入した場合
(借方)消耗品費 5,000円 / (貸方)普通預金 5,000円
例:資産計上する備品(パソコン15万円)を購入した場合
(借方)工具器具備品 150,000円 / (貸方)未払金 150,000円
支払い時: (借方)未払金 150,000円 / (貸方)普通預金 150,000円
例:30万円特例を適用し備品(パソコン30万円)を購入した場合
(借方)消耗品費(少額資産) 300,000円 / (貸方)未払金 150,000円
例:一括償却該当資産(パソコン18万円)を購入した場合(3年で均等償却)
(借方)一括償却資産 180,000円 / (貸方)未払金 150,000円
このように、備品購入の金額や性質によって仕訳科目が異なるため、経理担当者がルールを把握しておくことが重要です。
備品発注の最適なタイミングはいつ?
備品発注のタイミングが遅れれば業務が止まり、早すぎれば在庫(コスト)が増えます。最適なタイミングを見極めるには「定期発注」と「定量発注」の2つの方式を理解し、物品の特性に合わせて使い分けるのがよいでしょう。
定期発注方式(決まったサイクルで発注)
定期発注方式とは、「毎週金曜日」「毎月25日」のように、発注する日(サイクル)をあらかじめ決めておくやり方です。
発注日になったら在庫量を確認し、必要な分だけを発注します。
この方式の利点は、発注業務をルーティン化できるため、発注漏れが起きにくいことです。ただし、在庫チェックを毎回行う手間がかかる点や、急な需要増加に対応しにくい側面もあります。コピー用紙やトイレットペーパーなど、一定のペースで消費される物品に向いています。
定量発注方式(在庫が一定量を下回ったら発注)
定量発注方式とは、「在庫が〇個になったら発注する」という発注点(発注する在庫量)を決めておくやり方です。
常に在庫を監視する必要はなく、発注点を下回ったタイミングで、あらかじめ決めておいた一定量を発注します。
この方式を採用すると、在庫チェックの手間が少なく、発注作業がシンプルになるというメリットがあります。一方で、需要の変動が大きい物品の場合、欠品や過剰在庫を招くリスクもはらんでいます。ペン、クリップ、封筒といった、比較的安価で消費量が予測しやすいものに適したやり方です。
適切な発注点(安全在庫)の設定方法
定量発注方式をうまく運用するには、「発注点」を適切に設定することがカギとなります。発注点は、一般的に以下の式で計算されます。
発注点 = (1日あたりの平均消費量 × 調達期間) + 安全在庫
- 調達期間(リードタイム):発注してから納品されるまでの日数
- 安全在庫:急な需要増など、不測の事態に備えて最低限保持しておく在庫量
例えば、1日に平均5本消費するペンがあり、発注から納品まで3日かかるとします。欠品を防ぐために安全在庫を10本持つと決めた場合、発注点は(5本×3日)+10本=25本 となります。つまり、ペンの在庫が25本になったら発注をかける、というルールです。
備品発注と管理を効率化するポイントは?
オフィス備品を適切に管理するには、まず「備品管理台帳」を整備し、何を・どこに・どれだけ保管しているのかを明確にしておくことが大切です。
特別なシステムを導入しなくても、ExcelやGoogleスプレッドシートで対応できます。
備品管理台帳の作成(エクセルやスプレッドシートの活用)
オフィスの備品を効率的に管理するためには、まず「備品管理台帳」を作成し、何を・どこに・どれだけ保管しているかを把握(見える化)する必要があります。
高価なシステムを導入しなくても、Excel(エクセル)やGoogleスプレッドシートなどで十分対応可能です。
備品管理台帳(エクセル)の主な項目例
| 管理番号 | 備品名(型番) | カテゴリ | 保管場所 | 数量 | 発注点 | 発注先 | インボイス 登録番号 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A-001 | コピー用紙 A4 | 消耗品 | 倉庫A棚 | 5箱 | 2箱 | 〇〇商事 | Txxxxx |
| B-001 | ノートPC | 資産(備品) | 田中(使用) | 1台 | – | △△リース | Txxxxx |
| C-001 | ボールペン黒 | 消耗品 | 事務室キャビネ | 50本 | 20本 | サイトB | Txxxxx |
備品ごとに「発注点(最低在庫数)」を設定しておくと、発注タイミングを判断しやすくなります。
定期的に台帳を見直すことで、不要な在庫や発注漏れを防ぐことができます。
発注ルールを統一し、属人化を防ぐ
備品発注が非効率になる大きな要因は、担当者ごとにルールが異なる「属人化」です。担当者Aさんしか発注方法を知らない、Bさんのデスクにしか在庫がない、といった状況は望ましくありません。
備品発注の仕組み化を進めるには、まず発注申請の承認者や発注担当者を決め、保管場所を1~2箇所に集約します。そのうえで、「誰が、いつ、どのように」申請・承認・発注するかのフローを統一し、社内で共有します。
また、取引先や発注サイトを絞り込むことで、請求処理や支払い管理の手間を減らすことができます。
管理システムや発注サイトを活用する
発注する備品の種類が多い、または拠点が複数ある場合は、エクセル(Excel)での管理では対応しきれないこともあります。その際は、備品発注や在庫管理に特化したシステムの導入を検討しましょう。
例えば、Amazonビジネス、アスクル、たのめーるなどの法人向けサイトでは、購入履歴や請求書払いの管理がしやすく、再発注の手間を減らせます。
さらに、発注点の自動通知や資産管理まで対応した専用システムを導入すれば、より正確で効率的な備品管理が可能になります。
備品発注カードを使って現場の発注を見える化する
システムの導入が難しい場合や、現場での管理を重視する場合には、「備品発注カード」を使った仕組みも効果的です。
例えば、ボールペンの箱に「残り20本」のラインを引き、その位置に「ボールペン(黒)発注」と書かれたカードを挟んでおきます。在庫が減ってカードが見えた時点で、発注担当者に渡すという流れです。
簡単な方法ながら、定量発注の仕組みを現場レベルで実現できます。
なぜ備品管理の「見える化」が必要なの?
備品管理における「見える化」とは、在庫の状況(何が、どこに、どれだけあるか)を誰でもすぐに把握できる状態にすることです。
この見える化を進めることで、オフィス内の備品発注や管理における無駄やミスを減らし、業務効率を大きく向上させることができます。
「見える化」で誤発注や在庫切れを防ぐ
在庫が適切に管理されていないと、「まだ在庫があるのに発注してしまった」「必要な時に在庫がなかった」といったトラブルが起こりやすくなります。
特に欠品は、業務の中断や納期の遅れなどにつながるため、避けなければなりません。備品管理台帳やシステムによってリアルタイムの在庫数がわかれば、適切なタイミングで発注できるようになります。
結果として、発注ミスや余剰在庫の発生を防ぐだけでなく、業務の安定化にもつながります。
コスト削減と業務効率化への効果
過剰在庫は、オフィスの保管スペースを圧迫するだけでなく、企業のキャッシュフロー(資金繰り)を必要以上に拘束する要因にもなります。使われない在庫は、いわば「眠っているお金」です。
また、在庫を探したり、発注担当者に状況を確認したりする時間も積み重なれば大きなロスになります。
備品管理の見える化は、これらの無駄なコストや時間を削減する効果があります。
備品管理の「見える化」を進める具体的な方法
備品管理の見える化は、大がかりな仕組みを導入しなくても始められます。
以下のような基本的な取り組みから始めてみましょう。
- 定位置管理を徹底する
備品ごとに保管場所を決め、使用後は必ず元の場所に戻すルールを設けます。これは5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の基本でもあります。 - ラベリングで誰でもわかる状態にする
棚や引き出しに「コピー用紙A4」「封筒 長形3号」など、明確なラベルを貼り、誰が見てもわかるようにします。 - 発注カードや発注点の設定
備品箱に「残り20本」のラインを引く、または「発注カード」を挟んでおくなど、在庫が少なくなったことを一目でわかるようにします。 - 管理台帳を共有化する
ExcelやGoogleスプレッドシートで作成した備品管理台帳を、クラウドや共有フォルダで社内共有します。
これにより、どの部署からでもリアルタイムで在庫状況を確認でき、発注漏れや二重発注の防止につながります。
備品発注でよくある失敗とその対策は?
備品発注の担当者になったものの、「うまくいかない」と悩むケースは少なくありません。ここでは、バックオフィス担当者が直面しがちな失敗例とその対策を紹介します。
失敗例1:数量・型番の誤発注をしてしまう
「コピー用紙を1箱頼むつもりが、間違えて10箱発注してしまった」「プリンターのトナーの型番を間違えて、使えないものが届いた」といった失敗です。
対策としては、発注内容(特に型番と数量)を、発注者本人だけでなく、別の人(上司や同僚)もチェックする体制を作ることが考えられます。また、発注サイトの「前回と同じものを注文する」機能を活用したり、発注書のひな形(テンプレート)を統一したりすることも、型番間違いを防ぐのに役立ちます。
失敗例2:過剰在庫によるコストとスペースの圧迫
「セールで安かったから」と大量に購入した結果、保管場所がなくなり、古い在庫が劣化してしまうケースです。文房具も長期間置けばインクが出なくなることがあります。
この問題への対策は、まず「発注点(安全在庫)」が過剰になっていないか、定期的に消費量を見直すことです。あわせて、「この棚に入るだけ」と物理的な上限を決めたり、「先入先出(古いものから使う)」のルールを徹底したりすることも在庫の適正化につながります。
失敗例3:担当者の依存で業務が止まる
「発注担当のAさんが休んだら、誰も発注のやり方や業者の連絡先がわからず、備品が発注できない」という事態です。
属人化を防ぐには、発注手順や発注先リスト(サイトURL、ID/PW、連絡先)、発注サイクルなどを記載したマニュアルを作成し、共有フォルダなどで誰もが閲覧できるようにしておくことが重要です。備品管理台帳もクラウド(Googleスプレッドシートなど)で管理し、副担当者を決めて情報を共有しておくと、万が一の際も安心でしょう。
備品発注は仕組み化しよう
備品発注は、単なる購入業務ではなく、オフィスの生産性とコスト管理に関わる重要な業務です。この業務を効率化するには、個人のスキルに頼るのではなく、「仕組み化」することが欠かせません。
まずは、自社の備品管理の状況を「見える化」することから始めましょう。在庫がどこにどれだけあるかを把握するために、備品管理台帳(エクセルやスプレッドシートで可)を作成し、保管場所を統一します。
そのうえで、発注の「やり方」や「タイミング」のルールを明確に定めることが大切です。マニュアル化し、社内で共有することで、担当者不在による業務停滞や誤発注のリスクを減らせるのではないでしょうか。適切な備品発注の仕組みを整え、よりスムーズなオフィス運営を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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