- 更新日 : 2024年10月17日
定形外の郵便料金はいくら?事業者への影響と対策も解説
2024年10月1日から郵便料金が値上げされます。オンラインショップ等で事業者の利用が多い定形外郵便も例外ではありません。この記事では、郵便料金の値上げの背景や、個人や事業者に値上げが与える影響、規格ごとの値上げ額や値上げ率、定形外郵便に該当する郵便物の具体例、値上げに対して事業者が実施できる対策を紹介します。
目次
郵便料金の値上げはいつから?
定形外郵便を含む郵便料金の値上げは、2024年10月1日から実施されます。ポストへの投函で10月1日の最初の取集分以降、窓口での対応は10月1日0時以降の取り扱い分以降が新料金の対象です。
今回の値上げの背景には、郵便物数の減少と、人件費や燃料費の増加が挙げられます。郵便物数が減り収入が減る一方で、事業を継続していくための支出は増え続けており、郵便局として安定的なサービスの提供を維持していくために、郵便料金の値上げ判断に至ったようです。
また総務省は、2024年6月から25g以下の定形郵便物の上限額を定めた郵便法施行規則の規定を改正して84円から110円に引き上げました。これに伴い、他の郵便料金も併せて改定することになったようです。
この値上げは、郵便サービスを利用する全ての人に影響を与え、特に郵便物を多く発送する事業者への影響は必至です。
個人利用者・事業者への影響
今回の値上げが、個人利用者や事業者に、どの程度のコスト増加をもたらすのかシミュレーションします。自身のケースと比較しながら確認してみてください。
一般利用者への影響
一般利用者が定形外郵便を利用するのは、できるだけ安く親戚や友人に書籍や小物を送付したいときだと考えられます。
仮に、年に10回程度、規格内・規格外を含めて定形外郵便物を送付すると仮定します。定形外郵便物の送料の平均金額は、値上げ前では455円/個、値上げ後は589円/個です。よって、(589円/個-455円/個)×10個と想定すると、コストへの影響は年間1,340円となります。
個人事業主への影響
個人事業主への影響をシミュレーションするために、ここでは以下の前提を設定します。
- オンラインショップ等、インターネットを通じてモノやサービスを提供する電子商取引を行っており、その商品発送において定形外郵便を利用している
- 年間の売上は500万円
- 取り扱う商品の平均販売単価は1,000円
上記設定の場合、発送個数は(500万円÷1,000円/個)であり、1つの発送について今回の値上げで平均(589円/個-455円/個)のコスト増が見込めると考えると、コスト増の金額は、(500万円÷1,000円/個)×(589円/個-455円/個)=67万円です。
つまり、500万円程度の売上の個人事業主は、定形外郵便の値上げによって、年間67万円のコスト増になると考えられます。
事業者への影響
事業者への影響をシミュレーションするために、ここでは以下の前提を設定します。
- オンラインショップ等、インターネットを通じてモノやサービスを提供する電子商取引を行っており、その商品の発送において定形外郵便を利用している
- 年間の売上は1億円
- 取り扱う商品の平均販売単価は5,000円
上記設定の場合、発送個数は(1億円÷5,000円/個)であり、1つの発送について今回の値上げで平均(589円/個-455円/個)のコスト増が見込めると考えると、コスト増の金額は、(1億円÷5,000円/個)×(589円/個-455円/個)=268万円です。
つまり、1億円程度の売上の事業主が、定形外郵便の値上げの影響を受けた場合、年間268万円のコスト増になると考えられます。
定形外郵便料金の新旧比較表
具体的に定形外郵便料金は、どの規格について、何円値上げされたのでしょうか?また、値上げ率はどの程度なのでしょうか?表にまとめましたので、ぜひご参照ください。
なお、定形外郵便には「規格内」と「規格外」2つの区分があります。規格内は、荷物の大きさが、34cm×25cm×3cm以内で重さが1kg以内である送付物です。規格外はそれ以外の送付物ですが、3辺の和が90cm以内かつ最も長い部分の長さが60cm以内、さらに重さが4kgという最大サイズの制限があります。
区別 | 重量 | 現行料金 | 新料金 | 値上げ率 |
---|---|---|---|---|
定形外郵便物(規格内) | 50gまで | 120円 | 140円 | 17% |
100gまで | 140円 | 180円 | 29% | |
150gまで | 210円 | 270円 | 29% | |
250gまで | 250円 | 320円 | 28% | |
500gまで | 390円 | 510円 | 31% | |
1kgまで | 580円 | 750円 | 29% | |
定形外郵便物(規格外) | 50gまで | 200円 | 260円 | 30% |
100gまで | 220円 | 290円 | 32% | |
150gまで | 300円 | 390円 | 30% | |
250gまで | 350円 | 450円 | 29% | |
500gまで | 510円 | 660円 | 29% | |
1kgまで | 710円 | 920円 | 30% | |
2kgまで | 1,040円 | 1,350円 | 30% | |
4kgまで | 1,350円 | 1,750円 | 30% |
その他の郵便料金については以下の記事をご覧ください。
定形外郵便に該当するもの
次に、具体的に定形外郵便にどのようなものが該当するのかについて、よく利用される50gから1kgの重量の範囲で、簡単な例示をします。
重量 | 定形外郵便物 (規格内) | 定形外郵便物 (規格外) |
---|---|---|
50gまで | 書類 (A4用紙10枚程度) | アクセサリ等の小物 |
100gまで | CDやDVDを1~2枚程度 | 鍔付きの帽子、手袋等の小物衣類 |
150gまで | 文庫本、新書を1冊 | 無線マウス等の小物機器 |
250gまで | 漫画本を1冊 | 携帯式の扇風機等の中型機器 |
500gまで | 一般書籍を1冊 | 饅頭等の菓子類10個入り程度のもの |
1kgまで | 雑誌を1冊 | 1Lサイズの水筒1本 |
定形外郵便の値上げに対する事業者の対策例
ここでは、定形外郵便の値上げに対して、コスト増をカバーするべく、事業者側で実施できる代表的な対策を紹介します。
不必要な発送を削減する
まず一番に検討するべきなのは、現在、実施している定形外郵便の送付が、本当に必要かどうかです。例えば、ダイレクトメールについては、本当に送付するべき宛先かどうか見直すとよいでしょう。継続的にサービスを利用してくれる顧客等、遡求効果が高い顧客に絞って送付すれば、定形外郵便の送付数を減らすことができます。
電子化できないかを検討する
次に検討するべきは、発送物のペーパーレス化です。例えば、ダイレクトメールやカタログ等を送付しているとすれば、それらをEメールやEカタログ等に代替できないかを検討してみましょう。納品書や請求書を送付している場合も、PDF化してEメールに添付して送付できないか、電子納品書・請求書に変更できないか、検討してみる価値があります。
大口の取引では、取引開始の前に契約書を送付するケースも考えられます。この場合も、契約書をPDF化し、添付ファイルにパスワードをかけたうえで、Eメールで送付する方法が考えられます。
特に契約書の場合は、PDF化して電子契約書として送付することで、印紙税が非課税になるといったメリットがあります。これは、電子契約書が、印紙税の課税根拠となる「文書を作成したこと」に該当しないためです。もちろん印紙税が非課税であるからといって契約の法的効果に影響しないため安心してください。
電子化できない発送物は、発送回数/重量を減らせないか検討する
発送物の電子化をできない場合は、発送回数と重量を減らせないか検討してみましょう。例えば「同一顧客からの複数の注文については、1回にまとめて送付する」「梱包材を気泡緩衝材等の軽量なものに変更する」「梱包材の量を減らす」といった対応が考えられます。
郵便局が提供する割引制度を利用する
紙媒体で送付しなければならない定形外郵便物でも、郵便局が提供する割引制度を利用するとコストダウンを図れます。例えば、広告宣伝を目的としたダイレクトメールの場合は広告郵便物割引を利用できます。差出通数によって割引が受けられるサービスで、定形郵便物だけでなく、定形外郵便物も対象です。割引率は、2,000通以上から3,000通未満が12%、3,000通以上から5,000通未満が15%、それ以上になると割引率が高くなり最大37%の割引を受けられます。
一定の地域にまとまって顧客が存在する場合は、郵便区内特別郵便物の割引制度も有効です。集配郵便局ごとに定められている配達区域内に、100通以上定型・定形外郵便物を同時発送する場合に受けられる割引で、50g以内の定形外郵便物は111円となっており、値上げ後の新料金140円より29円お得です。
さらに、所定の条件を満たす場合に適用できる区分郵便物割引といったサービスも存在します。受取人の住所や差出郵便局指定の郵便区番号ごとに区分されることによって、1〜6%程度の割引が受けられるサービスです。
定形外郵便でも、郵便局が提供している割引制度をうまく使うことで、安く発送できます。ただし、複数の割引制度があるので、郵便局に問い合わせ、自社に合った割引制度を紹介してもらうことをおすすめします。
紙媒体の場合は、印刷代や封入封緘自動化を検討する
紙媒体の定形外郵便物について、印刷や封入封緘作業を一度にまとめて外注すると、ボリュームディスカウントを狙えます。依頼部数が多くなるごとに1部単位の印刷コストが安くなり、大手印刷代行会社では、100〜1,000部単位で徐々に割引率が高くなる価格設定になっています。納期についても、1週間程度の余裕のある納期で依頼するほうが、短納期で依頼するよりも費用を抑えられます。
封入封緘機(インサーター)を導入すると、印刷物を折る・封筒に収める・糊付けするといった一連の事務作業を自動化できます。ただし、工数の大幅な削減が見込まれる一方、機材の購入・リースに少なくないコストが発生します。大量の定形外郵便物を発送するような事業者は検討するとよいでしょう。
定形外郵便の値上げによる事業への影響を把握し、適切な対策を取ろう
2024年10月1日に実施される郵便料金の値上げは、定形外郵便を利用する個人や事業者にとって、平均30%というコスト増を求めるものです。しかし、不要な発送を削減したり、ペーパーレス化を推進したりするための好機と捉えることもできます。
これを機に、値上げの影響額を把握し、実務の効率化とコストダウンを実現できないか検討してみてはいかがでしょうか?
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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